キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

172 / 327
記憶欠ける炎 アイドルプリキュアのサイン

アイドルプリキュア対ズキューンキッスソウルのお料理対決が終わってから数日が経過。夏休みも近づいて気温が上がって本格的に暑くなる……そんなある日。

 

「おはようございます」

 

「あ、天城さん。今日もよろしくね」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

スラッシューこと天城は一人で喫茶グリッターにやってきていた。理由は勿論バイトのためである。彼女はロッカールームに向かうと早速バイトのための着替えを始めた。

 

「……ダークイーネ様。私に怒りを向けてきた。理由はわかってる……私がいつまでもあのお方を待たせてるからだ」

 

天城は着替えをしながらダークイーネから向けられた敵意の目を思い出して震える。

 

「私にもきっと、あまり時間が残されてない」

 

スラッシューの心に焦りの気持ちが湧いてきていた。ただ、やはりどうしてもグリッターで暴れる事には躊躇の気持ちがある。

 

「どうして?……私、何でこんなに胸が苦しいの?」

 

天城の胸に苦しさが走るとまた頭を抑えた。このままではバイトどころでは無い。ただ、自分が体調不良でもバイトのシフトに穴を開けたく無いと考えた天城はそれを無理矢理押さえつけた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

天城はこれ以上は危険だと分身を作るための水晶を出してそれに代役を頼もうとする。そんな時だった。脳裏にある光景が浮かび上がる。

 

「……え?」

 

そこは今と比べるとどこかレトロな雰囲気を醸し出す舞台の袖だった。そして、天城は水色のフリフリの衣装を着たドレス姿である。

 

「何で……こんな服着てるんだろ……」

 

すると天城へと声をかける女性の声があった。天城がふと前を見るとそこにいたのは自分と同じように黄色いフリフリのドレス姿に髪には黄色いリボン。瞳は緑で、黒い髪をポニーテールにした女性がいた。

 

彼女はニコニコとした様子で不安そうな顔をしていたと思われる天城へと明るく話しかける。

 

“○○○!そんな不安な顔したらダメだよ、私達の歌ならどんな人にだってきっと届いてくれる!だから今日も一緒に頑張ろ!”

 

その声質はどこかで聞いた事あるような物だった。そして、彼女の雰囲気に関しても天城はどこかで見て知っているように感じる。

 

「あなたは……誰?」

 

天城はどうにか必死に思い出そうと思考。だが、その直後にダークイーネの目が発光すると天城の頭にまた痛みが走った。

 

「あああっ!?」

 

天城はその場に崩れ落ちるとその声を聞いたのか、音が慌てた様子でやってきた。

 

「天城さん!?大丈夫ですか!?」

 

「はっ!?私……何してたんだろ。すみません、ご心配をおかけしました」

 

天城は立ち上がると先程思い出そうとした女性の顔は全く浮かぶ事はなかった。ただ、何かを忘れてしまっている。そんな潜在的な気持ちだけが残る事になった。

 

「……私、何を忘れているんだろ」

 

天城はモヤっとした感情を残しつつバイトへと入る。そんな時、天城が肩からかけていたバッグには二つのキーホルダーが付けられていて両方とももう既に古びているのかボロボロで何が描かれているのかわからないものの、裏面の左端に19という数字だけが辛うじて残っているのだった。

 

同時刻、キラキランドのはなみちタウン出張所へと場面は移る。メロロンは初っ端から不機嫌そうな顔をしていた。

 

「……どうしてうちに集まるのメロ」

 

その理由は簡単。今現在、メロロンの前では影人、うた、なな、こころ、レイの五人がプリルンと共にケーキを食べていたからである。

 

「あーん!」

 

しかも、丁度そのタイミングでプリルンがうたからケーキに乗っているイチゴを食べさせてもらっている所を見せつけられる形になったのでメロロンは余計に苛立った。

 

「美味しいプリ!うた、ありがとプリ!」

 

「どういたしまし……ふぶうっ!?」

 

「このねえたま泥棒!普段からねえたまを誑かしているのに飽き足らず、ねえたまとメロロンの家にまで来て!」

 

メロロンはうたの行動がとうとう我慢できずに顔面に回転式のタックルを命中させる。うたはメロロンの攻撃に後ろに倒れるとななは慌ててうたを起こした。

 

「うたちゃん!?大丈夫?」

 

「だ、大丈夫。メロロン……やっぱり打ち解けてくれないね」

 

「今のは咲良さんがメロロンの目の前でプリルンとイチャイチャしたと捉えられたからじゃないのか?」

 

「うぅ……」

 

「というか、メロロン。お前とプリルンの家って言ってたけど正確には……」

 

「……私の家ですね」

 

そこに上の階から階段をゆっくりと降りてくる影。それはこの家に住む本来の住人の田中であった。彼はいつも通りのスーツ姿で完全に仕事モードである。

 

「家の話はともかくとして、皆さんにお知らせがあります」

 

影人達の前に姿を現した田中の手には丸められていたとある紙が握られていた。さっそく彼がそれをテーブルの上に広げると一枚のポスターとなる。

 

「これって……」

 

「ええ、今回もPretty_Holicからの依頼です。ファンの方に抽選でプレゼントするとの事でこちらのポスターにサインをいただきたいのです」

 

「サイン?」

 

そこにあったのは少し前から始まったPretty_Holicのキャンペーンの際に作られたポスター。アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルの六人の絵が描かれている。

 

「あっ!Pretty_Holicの“アイドルプリキュア対ズキューンキッス、あなたはどっち派?”のキャンペーンで当たるやつですよね!?」

 

流石はこころと言うべきか、アイドルプリキュアの事になると情報が早い。そのまま興奮で彼女のアホ毛がハート形になるとクルクルと回った。

 

「キュアアイドルとキュアウインクのサインなんて貴重過ぎです〜!」

 

「こころ、完全にオタクモード入ったな。そんでもって回るアホ毛も可愛い……」

 

すると次の瞬間にはこころは興奮した気持ちのまま、うたへと吸い寄せられるように詰め寄る。

 

「サイン書く所見たいです!」

 

「待って待って!私サインなんて無いよ!?」

 

「……実は、私も……」

 

どうやらうたもななもアイドルプリキュアとしての自分のサインを持ってないらしい。その言葉にこころは唖然としてしまう。

 

「サインって何プリ?美味しいプリ?」

 

「食べ物じゃないからな?」

 

プリルンに至ってはサインを食べ物と勘違いする始末である。メロロンは特に何も言ってないが、恐らくこの様子だと知らないだろう。そのためこころは説明をする事にした。

 

「サインと言うのは……こういうのです!」

 

それからこころはどこからともなくマジックペンを取り出すと素早くキュアキュンキュンとしてのサインを一発で綺麗にポスターへと書いた。

 

そのサインはキュンキュンのイメージマークの雫をキュアのCで上手く表現。近くには普通の雫やハートマーク。更に心から鼓動が出るような感じでハートマークに))や((のマークも使っている。そして、名前がキュンキュンと同じ言葉を2回使うのでKyunの隣に2を書く事で二乗若しくは×2を現していた。

 

「わぁ……キラッキランラン!」

 

「サイン一つ取っても特徴が凄いわかりやすいな。しかも凄い綺麗に書けてる。もしかして練習してた?」

 

「いつか必要になると思ってカゲ先輩と一緒に作ってみました」

 

レイからの質問にこころは少し得意げな顔をしつつ答えを返す。そして、影人もサインを作ったという事で影人の方にも視線が行く。

 

「って、俺にも飛び火するのか!?」

 

「当たり前じゃん」

 

「影人君のサイン、見てみたいな〜!」

 

「お願い、書いてみて」

 

「にいたまのサイン、楽しみメロ」

 

そんな風にその場の全員から期待の眼差しを向けられた影人。ここまでされたら彼も断るわけにも行かず。自分の分のサインもポスターに書く事にした。

 

「はぁ……。わかったよ。書けば良いんだろ?」

 

影人が書いたキュアソウルのサインはCureの部分を一筆書きで書いたようなオシャレな書き方をしてからその隣にメラメラと燃えるような炎のマーク。その後、Soulと改行して書くのだが、最後のlは下から上に右斜めの形で書いた上で上半分をそのまま星のマークとして繋げる形とした。

 

「はい」

 

「「「「「おぉ……」」」」」

 

「影人、お前意外と絵心あるじゃん」

 

うた達女子組や妖精組の五人が感嘆の声を漏らす中、レイは影人へとそう軽口を言ったために影人も返した。

 

「俺は至極真っ当な絵心の持ち主だって。というか、これを考えたのも半ばこころに付き合わされた形なんだよな」

 

とは言え、影人も事前に考えていたお陰で困らずに済んだ。そんな二人に触発されたのか他のメンバーもやる気になる。

 

「はいはーい!私もサイン作る!」

 

「プリ!」

 

「ねえたまのサイン欲しいメロ!」

 

「……あ、でもサインってどうやって作るんだろ?」

 

ただ、まだ影人とこころ以外はサイン作りなんてやった事が無いのでどうするべきか色々と悩む所だ。そのため、こころが自分の経験談を話す事にした。

 

「そうですね。私達は他のアイドルのサインを参考にしました。……例えばレジェンドアイドル・響カイト!」

 

「……え?カイトさん?」

 

うたがいきなりレジェンドアイドルこと響カイトの話になったために疑問符を浮かべる。するとこころはそのままカイトの事を語り始めた。

 

「その歌声は世界中から注目され、赤ちゃんからお年寄りまで皆に愛される……正に生きるレジェンド!」

 

「確かに響カイトさんなら自分のサインくらいちゃんと持ってそうだな」

 

「ええ。今は活動休止中ですけど、どんなサインかは調べれば……え?」

 

それから早速こころは響カイトのサインを調べるべくスマホで検索をすると突如として彼女の目に驚きのニュースが映る。

 

「響カイトが……」

 

「何々?」

 

「どうしたの?」

 

「響カイトが……活動再開です!!」

 

その瞬間、その場の空気が凍りつく。突如として降って湧いた活動休止中のレジェンドアイドルこと響カイトが活動再開するという話。それを聞いた一同は当然驚く事になる。

 

「「ええっ!?」」

 

「マジかよ。活動休止中だったカイトさんが……」

 

そして、そのネットニュースを改めて調べると色々と情報は出てきた。どうやら、活動再開自体は本当にここ数日の事。何なら、ネットニュースに挙がったのも今日の朝とかだ。

 

「響カイト。海外留学を終え、今後は日本国内とニューヨークを拠点に活動するって」

 

「流石、響カイト。ネットもこの話題でいっぱいです」

 

調べれば調べる程にカイト復帰の話題による反響が次々と出てくる。勿論、その殆どが復帰を歓迎する物だった。

 

「……ただ、正直何で今なのかは気になる所だな」

 

「ああ、確かアメリカの学校って9月に学年が変わるからな」

 

「え!?そうなの!?」

 

「アメリカは日本と比べて夏休みが長いからな。もう今の段階で夏休みにはとっくに入ってるはず。だから学年の区切りって意味では丁度良いんだけど……」

 

夏休みの時期の話は日本と海外の学校の仕組みの違いだろう。どちらにせよ、アメリカの方の学校に行っていたという話なので学校のタイミング的には丁度良いという話にはなる……が。

 

「(確かカイトさん。留学期間中に何回かはなみちタウンで会ってるんだよな。わざわざアメリカと日本を行ったり来たりしてるのなら話は別だけど……)」

 

やはり影人にはカイトの留学には何かしらの意図があるように見えてならない。逆にその意図が見えれば全てのパズルのピースが埋まるようにも思えてきた。そんな中でプリルンがある事を言い出した。

 

「カイトはカッコ良いプリ!」

 

「ねえたま、知ってるのメロ?」

 

「前にうたをプリプリ助けてくれたプリ!」

 

「あ、馬鹿それ言ったら……」

 

影人はプリルンがついカイトと面識があるという事実を話してしまったのを受けて慌てた様子を見せる。そして、その意味はこころにもしっかりわかったようで。

 

「え!?グリッターに来た事あるの!?」

 

「時々来てるプリ!」

 

「おいいいっ!!」

 

「ほう?影人君、これは中々面白い情報だなぁ?」

 

そして、レイも思いっきりこの話に食いついてしまった。最早誤魔化すのは難しいくらいに。カイトと面識があるのはこの中だと初期の頃から活動をしていた影人、うた、なな、プリルンのみ。つまり、こころ、メロロン、レイは彼がグリッターに来ているという情報を知らないのだ。

 

「うわあっ!?」

 

「えっ!?本当なんですか!?」

 

こころは興味津々と言った様子になるとうたは慌ててこころへの口止めを始めた。

 

「シーッ!フライベントウだから内緒だよ!?」

 

「フライ……弁当?」

 

「プライベート……かな」

 

「そうそう、プライベート!」

 

うたは慌て過ぎていつもの言葉の言い間違いをしてしまう。そのため、なながしっかりとフォロー。そして、こころはその事情をしっかりと汲んだ。

 

「勿論ですよ。そんな事、世間に知られたら大変な事に……」

 

「レイ、お前もだぞ?変にふざけて拡散したら……」

 

「おいおい、流石にそこはしっかりするって。俺を何だと思ってるんだよ」

 

影人もしっかりとレイに釘を刺した。そうしないと彼の方から流出する危険があったからである。

 

「……まぁ、お前はうたやプリルン程口は軽く無いし信頼はできるけど」

 

そんな中、うたのスマホに着信音が鳴り響く。かけてきたのは彼女の妹のはもりだ。そのため、うたは早速その電話に出る。

 

「あ、はもりからだ。もしもーし、はもり。どうし……」

 

『お姉ちゃん大変!』

 

「……え?」

 

はもりの話を聞いたうたは驚いたような顔つきになるとそれから彼女から最低限の話だけ聞いて電話を切る。

 

「咲良さん?そんなに焦った様子でどうしたんだ?」

 

「あはは……。ちょっと急いでグリッターに帰らないといけなくなっちゃった」

 

「うたさん、私の方にも連絡が入りました。すぐに向かいましょう」

 

そこに同じくグリッターにいるであろう雇い主であるうたの両親から連絡を受け取った田中が来る。

 

「え?うたちゃん、何があったの?」

 

「お店の方に凄い行列ができちゃったらしいの」

 

うたの言葉に一同は一瞬考える時間を置いた後、その場には慌てたような叫び声がこだます事になるのであった。

 

「何で何で!?」

 

「わかんないよ!はもり、こうなった理由までは知らないらしくて」

 

「とにかく、私達も行こう!」

 

こうして、その場にいるメンバーは全員でグリッターに向けての道を大急ぎで移動するのだった。




また次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。