キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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混雑するグリッター カイトにとっての大切な時間

はもりからの緊急の電話を受けて移動した影人達。そこにいたのは彼女からの電話の内容通り。グリッターの前に並ぶ長蛇の列である。

 

「うえっ!?こんなに行列できてたの!?」

 

「普通メディアか何かに取材を受けないとここまで急には増えないぞ!?」

 

あまりの客の並びように驚く一同。そして、外でこれなら中は確実に満員状態だろう。はもりが焦るのも無理は無い。

 

「私達、サイン作ってる場合じゃ……」

 

「ええ、天城さんも今日はシフトに入ってますし。私も店内の方に行きます」

 

するとはもりが待ち侘びていた姉の帰還に気がつくとお店の入り口の方から声を上げる。

 

「お姉ちゃんも手伝って!」

 

「あ、はもり!」

 

そんな時だった。突如として店に並んでいた客の中で若い女性客三人が振り返るとうたへと詰め寄ってきた。

 

「お店の人!?」

 

「カイト君、どの席に座ってました?」

 

「お気に入りのハーブティーって?」

 

「「「私達、カイ友なんです!」」」

 

その三人は響カイトの熱心なファンのようで、団扇やペンライト、タオルケットをそれぞれが持っている。彼女達の会話から、響カイトのファンであると容易に察しが付いた。

 

「え、カイ……友?」

 

「うた先輩、響カイトのファンの事をカイ友って言うんです」

 

こころからの補足を受けてうたは納得。ただ、そのカイ友の三人からの追撃は凄まじかった。

 

「へぇ……」

 

「あの、今日はもう来ました?」

 

「え?えっと、いきなり言われても……」

 

「すみません、どうして響カイトさんの事でここに?」

 

困惑するうたに影人が助け舟を出すべく、まずは何故このような事態になったのかを聞く事にした。

 

「それはですね、この前の配信でカイト君が言ってたんですよ!」

 

「ああ、ラジオとかでの配信ですね。それで、実際の映像を見せてもらっても?」

 

「良いですよ!」

 

影人はひとまず丁寧に対応するとカイトのファンことカイ友の女性の一人から実際の配信映像を見せてもらった。

 

『活動休止中は一人で喫茶店とか行ってたよ。桜並木のある川沿いのお店で、犬がいてね!』

 

その映像を見た瞬間、影人は凍りつく。確かにグリッターの特徴は捉えている。ただ、それだけでここだと絞り込むのは凄まじいリサーチ力だと思わざるを得ない。

 

日本の中だけで見ても探せば似たようなお店なんて幾らでもあるはずだ。それなのにここに来ているという事は実際に特定されてしまったのかと考える……が、影人はそれは無いと断定した。

 

「(いや、多分これ。自分の住んでる所の近くで条件に一致する店に憶測で来てるだけだろ?響カイトの人気はこんな物じゃ無いはず。全世界で注目されてて、赤ちゃんからお年寄りまで惹きつけられる歌声と知られてる人気者の行った店の聖地巡礼。完全特定されてればもっと凄まじいはずだ)」

 

何にせよここで口を滑らせて本当に来ていたとバレれば即アウト。お店の利益的には良いかもしれないが、少なくともうたがカイトと会う機会は激減してしまう。影人はどうしてもそれを避けたかった。

 

「え、えっと。確かに桜並木の川沿いのお店で、きゅーちゃんいますけど……」

 

ただ、うたは分かりやすい程に動揺してしまっている。影人はうたの口の軽さで動揺までされたらうっかり話してバレるオチまで見えてしまった。そのためにどうにか誤魔化す事を考える。

 

「でもはもり、カイト君をお店で見た事無いよ?」

 

「「え?」」

 

「お父さんもお母さんも見てないって」

 

「「「何だ……」」」

 

「(はもりちゃん。事実を言ってるだけのつもりだろうけど、ナイスアシスト!これなら誤魔化せる!)」

 

はもりからの言葉を聞いて影人は内心でガッツポーズをする。店のスタッフである人達からの言葉なら信憑性は高いためにカイ友の三人も納得してくれた。

 

ただ、うたは何故カイトが自分の両親や妹に見つからなかったのかと気になるとある事実を思い出す。

 

「(あ、もしかして帽子と眼鏡で変装してるから?)」

 

それは彼がグリッターに来る時はいつも帽子を被り、眼鏡をかけていたからだ。あの簡易的な変装でも一発での本人特定を避けることが可能になるらしい。

 

「ひとまず、俺達も手伝える事を……」

 

「うたちゃん?」

 

影人がそう言いかけた瞬間、突如として後ろから聞こえる声がして一同は振り返ると固まる。そこにいたのは変装した状態だったが、噂されていた響カイト本人である。

 

「凄い行列だね?」

 

「(タイミングゥウ!?)」

 

影人はカイトが来るタイミングがあまりにも悪いと内心ツッコミを入れるが、声を出したら即アウトなのでどうにか内心で抑えた。するとそこにファンの子がその顔をジッと覗く。

 

「「「じーっ」」」

 

「来てください!」

 

うたはこれ以上は不味いという判断で服の袖を掴むとそのままカイトを連れて行く事になった。そして、それと同時にカイ友の三人は変装したカイトを見て呟く。

 

「ちょっと雰囲気似てたけど……」

 

「あれは別人だね」

 

「だね!」

 

「(ホッ……)」

 

影人はひとまずバレなかった事に安心感を覚える。一応あのちょっとした変装でもバレないのだと改めて知った。

 

「うたちゃん……」

 

「ひとまず、改めて俺達もお店を手伝える所を手伝おうか」

 

「わかりました!」

 

「仕方ないね。俺もやるよ」

 

影人の言葉を皮切りになな、こころ、レイの三人もお店を手伝うべく移動。まずはカイトの影響で増えてしまった店への客を捌き切るべく動くのだった。

 

そして、店の裏に移動したうたとカイトはそこで話す事になる。カイトは店の裏に着くと話のためか帽子と眼鏡を外すと響カイトとしてしっかりとうたと向き合う。

 

「ごめん、お店に迷惑かけちゃったかな?」

 

「うちは……お客さんが沢山来てくれて嬉しいですけど。……てゆうか、カイトさんはここに来ていて良いんですか?活動再開して忙しいんじゃ……」

 

うたの言葉も最もだ。活動を再開したとなればレジェンドアイドルとして色々と引っ張りだこになる可能性が高い。それなのに何故グリッターに来ているのか。うたは疑問に考えたのだ。そして、その質問に対してカイトは微笑みを浮かべながら優しい声色で答えを返した。

 

「……だからだよ。美味しいハーブティーを飲んで、ゆっくりしたい時だってある。ここなら、そういう時間が持てるから」

 

カイトは忙しいからこそ、ほんの僅かの休みでゆっくりしたい時。それができる場所で心を落ち着ければそれだけでも休みとして十分なのである。

 

「……それに、君もいるしね」

 

うたはカイトの話を彼と共にお店の中を窓から見つつ聞いていたが、カイトが自分の方へと改めて向いてそう言った事に顔を思わず赤くする。

 

「ふえっ!?」

 

「……そうだ、彼は……元気にやってる?」

 

「彼……もしかして、影人君の事ですか?」

 

「うん。……最初に出会った時、ちょっと不安だったんだ。何だかアイツみたいな感じだったから」

 

「アイツ……?」

 

うたはカイトから初めて出たその単語に首を傾げる。ただ、カイトの顔つきはそこまで深刻そうにはなってなかった。少なくとも、今の影人からはカイトの思う誰かと同じような状態にはなってないからである。

 

「いや、彼はもうきっと大丈夫だよ」

 

「え?あぁ、そうなんですね……」

 

「また来るよ」

 

カイトはその言葉を最後にうたに背を向けつつ手を振ると去っていく事になるのだった。

 

「お、お待ちしてます……」

 

うたは呆気に取られたような顔つきでそれを見送ると顔が思わず赤くなった。何しろ、カイトのあの発言はうたに興味があると言っているような物だからである。

 

「うえっ!?カイトさんの今の言葉……どういう意味!?」

 

うたは顔を真っ赤にして混乱。少しの間彼女は考え込むが、あまり店を放置するわけにはいかないためにまずは店に戻って手伝いをする事になるのだった。

 

そんな中、去っていくカイトはある事を考えていた。それは先程お店の中を見た際にチラリと見た影である。

 

「……そういえば、お店の中にいた女性の店員さん。どこかで……」

 

カイトの脳裏に浮かぶのはお店が満員な状況下で丁寧に客達に対応するとても落ち着いた雰囲気を出す女性……天城の姿である。

 

「……いや、そんなわけ無いよな。だって、あの人が突然消えてもう何十年も経ってるんだ……」

 

カイトはとある二人組のユニットを思い浮かべる。どうやら、カイトが浮かべているのは過去に存在した二人組ユニットらしい。天城はその片割れに似ているとの事だ。

 

ただ、カイトが述べている通り、彼女達が活動していたのはかなり前の事。そして、天城の今の年齢とその二人が活動していた年代で考えれば辻褄が合わなくなる。自分の考えはあり得ない。あるとすればただの他人の空似であるとそれ以上の事は多く考えないようにするのだった。

 

「ありがとうございました!」

 

その日の夕方、どうにかグリッターに並んだ長蛇の列を捌き切った影人達は疲れた様子で座っていた。特に影人はバーのカウンターに突っ伏している。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ようやく落ち着いたね」

 

「田中さん、真っ白になってます」

 

田中も田中で対応に追われた結果、負けたボクサーのように真っ白になってしまっていた。

 

「影人も相当お疲れなようだな……」

 

「当たり前だろ……何で俺が足りなくなった材料の買い出しに行ってる間、料理を捌かないといけなかったんだ……」

 

どうやら、あまりの繁盛っぷりに途中で材料の在庫が無くなりかけてしまったのだ。そのためにうたの父親である和は慌てて出て行ってしまい、料理する人が不在となってしまう。

 

そこで影人がうたに推薦される形で料理を代わりに作る事になるのだった。尚、味に関しては完全に再現していたために客からの評判を落とす事は無かったという。

 

「仕方ないだろ?材料を知ってるのは咲良さんの家の人だけなんだなら」

 

「だったら咲良さんにでも行かせれば良かっただろうが!?何で自分しか料理する人がいないのに行っちゃうんだよ!!」

 

影人が最早ヤケクソと言わんばかりの声を上げる中、そこに着替えを終えた天城が出てきた。

 

「ふぅ……あ、お疲れ様です」

 

「天城さん、お疲れ様です」

 

「ごめんね。今日体調が万全じゃ無いのにあんな……」

 

「いえ……お気遣いありがとうございます」

 

天城の姿を見た音は彼女へと心配そうな顔つきで話しかける。こころもそんな彼女が心配そうだった。

 

「そういえば、天城さんは朝からずっと働きっぱなしだったんですよね。それに、聞いた話だと朝、一度頭痛で悲鳴を上げたって」

 

「えっ!?」

 

幸いにもあれ以降頭痛は全く無かったためにどうにか最後まで働く事はできたらしい。ただ、彼女への負担も大きかっただろうと天城と仲の良い音が心配していたのだ。

 

「そういえば、お母さん。いつの間にか天城さんと仲良くなってるし……」

 

「あ、それとだけど一個気がついた。きゅーたろう、今日天城さんとずっといたのに一回も威嚇したり吠えたりしなかったな」

 

レイがそう言うときゅーたろうがレイの足元で尻尾を振っている。どうやら、きゅーたろうはレイの事も個別認識するようになったらしい。彼もちょくちょくここを訪れてるため、ようやく覚えてもらえたようだ。

 

「言われてみればそうだね。はもりもきゅーちゃんが天城さんとずっと一緒だったのに何もしなかったって」

 

多少はお店の空気を読んで吠えなかった可能性もあるが、少なくとも前だったら会った瞬間に威嚇やら吠えるやらを行っていたのでようやく天城に慣れてくれたという事だろう。流石にまだ自分から近づく事はできないらしいが、この調子ならいずれは仲良くなってくれるはずだ。

 

「ま、仲良くしてくれるに越した事は無いだろ……おかげでお店の空気も壊れなかったわけだしな」

 

すると突如として田中のスマホが鳴り響く。そのため、田中はふと我に帰るように色が戻ると電話の画面を見る。そこに出ていた名前はPretty_Holicの森こはるの名前だった。

 

「あ、もしもし。田中です」

 

「田中さん立ち直るの早っ!?」

 

田中も仕事モードに戻る時の速さは流石プロのマネージャーと言った所である。それはさておき、なながうたへと先程の事を聞いた。

 

「そうだ、うたちゃん。カイトさんとは話せた?」

 

「あ、うん」

 

「うえっ!?響カイト来てたんですか!?」

 

「いや、こころもアレに気づいてなかったんかい」

 

「ええーっ!?教えてくださいよ!」

 

こころは残念そうな顔つきをするが、あの場面でカイトがいたとバラすのはリスクが高すぎるので言えなかったのは仕方ない所だろう。

 

「そういえば、また来るとも言ってたから。その時に紹介するね」

 

うたはそう言ってこころをひとまず落ち着かせる中、カイトの言っていた言葉を思い出す。

 

「(……そういえば、やっぱりあの言葉の意味って何だろ)」

 

考えるのはカイトの“君もいる”という言葉。やはりうたの事は個別的に意識しているという事なのだろうか。すると、電話を終えた田中がうたへと話しかけた。

 

「うたさん」

 

「ふえっ!?え、えっとサイン作りですよね!?作ろう作ろう!」

 

うたがそう言って張り切る中、田中は少し困惑した顔を浮かべると要件を改めて話した。

 

「それもあるのですが、影人さんも含めてお二人にお知らせです」

 

「俺もですか?」

 

影人は田中の声色が完全に仕事モードのそれだったためにひとまず話を聞く事にした。

 

「Pretty_Holicから追加の依頼が来まして。……アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルのセンターポジションと言うべきキュアアイドルとキュアソウル。この二人にテレビ出演して欲しいと」

 

「「……え?」」

 

「田中さん、マジすかそれ?」

 

「えぇ。この事を伝えたらレイさんも社長さんの方から経験を積むために行けと言われましたね」

 

「だろうなぁ……」

 

レイは至極当然の流れだと考える。ただ、影人とうたに関してはその事実をすぐに飲み込めずに思わず叫んでしまう。

 

「「て、て、テレビ!?」」

 

いきなり舞い込んできたPretty_Holicの依頼でのテレビ出演の話。そのビッグニュースに影人とうたはただ混乱するのみであった。




また次回もお楽しみに。
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