キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
テレビ局での撮影を終えたソウルとアイドル。そんな中で二人の目の前にはレジェンドアイドルこと響カイトがいる。
「な、何で……カイトさんがここに……」
「え?」
「馬鹿!ここはテレビ局だぞ。カイトさんも何かしらの収録で来ててもおかしくないって」
「あっ、そっか……」
ソウルは慌ててアイドルへと補足説明を入れる。テレビ局にカイトが何も用事がない状態でいるはずが無い。そう考えると、彼もまた収録で来ているのだろう。
「えっと……」
そんな中、カイトは初対面なのに何気に話し慣れているような雰囲気を見せるアイドルに少し混乱している様子だった。
「あれ?カイトさ……」
「急に馴れ馴れしくしてしまいすみません!響カイトさんですよね」
ソウルはこれ以上アイドルがボロを出す前に慌てて訂正を入れる。今現在、自分達はアイドルプリキュアやズキューンキッスソウルとして来ている。となると、プリキュアとしてカイトと向き合って話すのは初めてだ。だからこそ話し方は少し変えないといけない。
そして、ソウルの訂正にアイドルも今自分がキュアアイドルとしてカイトと向き合っているのだと自覚する。
「(あっ、そっか!私今、プリキュアなんだった……)」
それからソウルとアイドルはカイトと改めて向き合う。そんな中でソウルはまずは畏まった様子で挨拶をした。
「初めまして、ズキューンキッスソウルのセンターを務めてます。キュアソウルです」
「え、え、えっと……アイドルプリキュアのセンターの……」
「そんなに堅苦しくしなくて大丈夫だよ。気軽に話してくれて良いから。それよりも、君達は何者なの?」
カイトはあまり二人に堅苦しい話し方をしてほしく無いのか、そう言うと早速二人へと問いかける。
「「え?」」
「……突如現れた謎のアイドル。ネットにアップされた歌い踊る姿だけでその正体はただ一人を除いて誰も知らない」
「へ?ただ一人?」
「君の知り合いの事だよ。活動をサポートしてくれる子」
カイトが話す中、更に奥にある廊下の曲がり角のような物陰から復活したプリルンとメロロンはそっと様子を伺う。
「……それと、キュアアイドル。君……怪物と戦ってたよね?」
その瞬間、アイドルはビクリと体を震わせる。ソウルの方は影人としてカイトと対面した際にアイドルが戦う所については見られていた事。自分はただ一人アイドルプリキュアの正体を知っていると公言していたので辻褄を合わせるために平然な気持ちを保つ。
ここで動揺なんてしたらキュアソウルがアイドルの知り合い……黒霧影人が変身した姿だと思われる危険があるからだ。
「うえっ!?な、な、何で……あっ!」
アイドルは動揺しまくる中、一度カイトに背を向けつつ頭を抑えてようやく自分達が怪物と戦う姿をカイトに見られた事を思い出す。それと同時に、影人も変身前の姿でその場にいた事も知られていたのだと納得した。
「(忘れてた!?そういえば、影人君の事も含めて見られてたんだった!?)」
「……あれからずっと気になってた。キュアアイドル……君の事を」
「(なるほど。怪物との戦闘に関しては前に断言してたのもあったし、それを知ってるから正体についてはもっと気になるよな)」
「ええっと、あれはその……撮え……」
「誤魔化さなくて良いよ。怪物の事は君の知り合いの子が話してくれたし。そこはちゃんと理解してるつもり」
「そ、そうなんですね……あはは……」
アイドルはソウルが怪物との戦いに関してはカイトに話してしまったという事をこのタイミングで認識。これ以上は誤魔化しようが無いとその部分への言及を止めることにした。
「それで、君の正体だけど……」
「あれ?カイト君久しぶり」
するとそんな時に先程ソウルとアイドルが歩いてきた廊下の曲がり角から二つの影がやってくると、その中の一人がカイトへと話しかける。
「あ、マルさん。お疲れ様です」
カイトが返事をするのを見て一同はその方向を向くとそこには茶髪で眼鏡をかけて髭を生やした男性がいた。
「えっと……」
「お疲れ様です」
ソウルはアイドルが困惑する中、まずは挨拶をする。カイトはそれから彼の紹介をした。
「デビューの頃からお世話になってる丸山プロデューサーだよ」
「初めまして、キュアアイドルです!」
「キュアソウルです。よろしくお願いします、丸山さん」
「どうも初めまして、キュアアイドルさんにキュアソウルさん。……実は、うちのスタッフがファンでね。申し訳ないけど、サインを書いていただけませんか?」
丸山の横には若い女性のスタッフがおり、彼女は緊張したような面持ちで二枚の色紙を手にしている。
「お願いします!」
「「勿論です!」」
ソウルとアイドルは彼女の要望に応えようと返事をするが、アイドルの方はふとまだ自分はサインを考えていないのだと思い出す。
「あ、サインはまだ無くて……」
「……アイドルなのに?」
「馬鹿、そこはフィーリングだとしてもどうにかするんだよ」
カイトがアイドルへとジト目を向け、ソウルは目の前にいるファンが自分達のサインを希望してるのにサインが未完成なのを理由に断るなどもってのほかと慌ててアイドルへと小声でフォローする。
「う……わぁああ、あります!サインします!」
それからアイドルは慌てて色紙を受け取る中、即興で考えを巡らせる。それと同時にソウルもその色紙を受け取った。ペンは二人同時でも大丈夫なように二本あったために同時進行で書くことになる。
「(思い出して。キュンキュンのサインは確か、英語だったような。アイドルって英語でどう書くの!?)」
アイドルは気難しい顔をしながらどうにかサインを書いていく。そんな様子を目の前で見せられてるファンのスタッフを見てソウルはひとまず声をかけた。
「あの、アイドルプリキュアやズキューンキッスソウルのファンなんですよね?」
「はい!ネットにアップされていた動画だけだった頃からのファンなんです!あと、その……キュアソウルさんの事もアイドルプリキュアだった時からずっと推しです!」
その女性は僅かに恥ずかしそうな顔つきをしながらそう言ってきた。ソウルはそんな彼女に応援されていた事を受け止めると優しいアイドルとしての笑顔を向けた。所謂アイドルスマイルである。
先程はテレビの前で、アイドルのフォローをしつつ尚且つ絶対に失敗できないというプレッシャーがあったためにできなかったそれを今度は自然に作り出した。
「そうなんですね!応援していただき、ありがとうございます!」
「………」
そんなソウルを見てカイトは少し考え込む。その目は同時に隣でまだサインを書くのに悩んだ顔つきを見せているアイドルにも一瞬向けられた。
「はい、書き終わったよ」
ソウルは彼女との会話をしながらサインを書き終わるとそれを笑顔で手渡す。勿論、ソウルはポスターの時と同様のサインを練習の甲斐もあって手際良く書き終えていた。そんなソウルからのサインに女性スタッフは嬉しそうな笑顔を見せた。
「わぁ……。ありがとうございます!」
そのタイミングでアイドルもようやく書き終わったのか、女性スタッフへと書き終わったサインを手渡す。
「できた!」
そこにあったのはソウルの物に比べると、即興で作った感が満載のカタカナ表記のキュアアイドルにニコちゃんマーク。ハートに音符の付いたサインだった。
「キュアアイドルさんもありがとうございます!」
女性スタッフはアイドルの方のサインも受け取った……のだが、やはりソウルの時と比べると反応が少し薄いようにも感じ取れる声だった。しかし、アイドルはサインを書くのに夢中だったせいでその変化に気が付かない。
「こちらこそ、ありがとうございます!」
それから丸山プロデューサーと女性スタッフの二人は仕事のためにまた廊下を歩いて去っていく。そんな二人へとアイドルが手を振り、ソウルとカイトが挨拶と同時に頭を下げた。
「良かったぁ……」
「(アイドルのサイン、即興すぎるだろあれ……。もうちょっとどうにかならなかったのか?)」
「……」
ソウルは内心苦笑いを浮かべる。アイドルが書いたサインがソウルのサインと比べると明らかに今、慌てて作りました感満載だったのだ。サインに関しては容易してこなかったので仕方ない所だが、もう少しはやりようもあっただろうとソウルは考える。
するとカイトは二人へと真剣な目つきを向けていた。それに気がついた二人は彼の方を向く。
「……カイトさん、まだ疑ってます?」
「……いや。キュアソウルとキュアアイドル。もう既にアイドルとしての格の差が出てるって感じ。そりゃ、キュアソウルもズキューンキッスソウルの方に移って当然なのかなって」
「「……え?」」
カイトから放たれたのは厳しい指摘の言葉だった。その言葉にアイドルは勿論、ソウルの方も困惑する。
「……それって、ファンの方への対応の話ですか?」
「やっぱり、ソウルはちゃんとわかってるね。キュアアイドル。君はサインを書く時、黙って下ばかり見てたでしょ?目の前にファンがいたのに、ただサインを書いていた」
「あ……」
アイドルはカイトからの指摘に唖然とした顔つきになる。今、自分はサインが無いことに気を取られ過ぎて目の前のファンへの対応が疎かになってしまったのだと。それからカイトは普段接する時のような優しい目線とはかけ離れた冷たい凍るような目をアイドルへと向けた。
「キュアソウルもそれがわかったからちゃんと途中で気がついて対応した。ファンの子のあの反応の差。気が付かなかったの?」
「それは……」
「……アイドルプリキュアのレベルだとソウルはいづらかったのかもしれないね」
カイトがそこまで言った瞬間、ソウルはカイトへと反論の言葉を返した。流石にそれは言い過ぎだと感じたからである。
「待ってください!俺がアイドルプリキュアからズキューンキッスソウルに行ったのはそんな理由じゃ無いです。それに、他のメンバーの事まで……。幾らカイトさん相手だとしても……その言葉はいただけません」
ソウルはアイドルのみならず、この場にいないななやこころの事も一緒に貶されたと考えたのである。カイトもそれを受けてもう一度自分の言葉を振り返ると間違いに気がつく。
「そっか。……ごめん、今の言葉は言い過ぎた。……ただ、さっきの対応については俺も同じようにいただけない。……ファンは君の事を好きだから、それでも喜んでくれると思うけど。一度考え直した方が良いかもね?それでも、アイドルって言えるのか」
カイトはそう言って去っていく。そんな様子をプリルンやメロロンを遠くから心配そうな様子で見つめる。アイドルは自分の失敗に気がついて落ち込むと俯いてしまう。ソウルはそんな彼女の様子を見て拳を強く握り締めた。
「(あの時アイドルを巻き込んで会話をしてたらこうはならなかったのか?……いや、多分それは無理。少なくとも、アイドルが自分からファンの人相手に話を振れなかったのだから……)」
ソウルはそうやって考えるとひとまずこのまま終わってはダメな気がしてカイトを追いかける。
「ソウル?」
「ごめん、先に戻ってて」
ソウルは急いでカイトの後を追うと彼に追いついた。カイトはソウルが来ると予測していたのか、先に声をかける。
「……やっぱり、そっくりだね」
「え?」
「キュアソウル。君はキュアアイドルが戦っている時に近くにいたあの知り合いの子に」
「ッ!?」
カイトの言葉にソウルは目を見開く。カイトがキュアソウルの正体は黒霧影人だと勘づいてしまったような気がしていたのだ。
「キュアアイドルが失敗しないようにできる限りサポートを沢山していた。……怖いんでしょ?キュアアイドルが嫌な気持ちでここでの活動を終えるのが」
カイトには完全に見抜かれていた。ソウルの思考その物が知られていると言わんばかりである。少なくとも、自分が今アイドルに向けていた不安や心配は手に取るようにわかるだろう。
「……キュアソウル、キュアアイドルを心配するのは結構だけど……そのせいで色々と詰めが甘くなったりしてるでしょ?例えば、今日の撮影とか」
またソウルは自分の事を見抜かれた。これは先程の情報番組の撮影の話を悟られた形となる。
「そう……です」
「他人の心配をするのは立派な事。だけど、自分の質を落とすくらいならその分自分に集中した方が良い。君はまだ初心者なんだから、他人を心配する余裕なんて……無いと思うけど」
その言葉を残してカイトは今度こそソウルの前から去っていく。ソウルは先程からの怒涛の指摘に何も返す事ができなかった。自分はカイトからしてみたらまだまだ未熟者であるのだと感じ取る。
「全部……お見通しって事かよ」
ソウルはやはり悔しかった。まだ自分達はこちらの世界のアイドルとして、二流……いや、三流扱いが良い所なのだと思い知らされた気分である。恐らく、世間であれだけバズりが無ければここにすら立ててないのだと。
ソウルはそんな気持ちが脳裏を過ぎると同時に、自分達はプロとしての自覚が色々と足りないのだと考えるのだった。
また次回もお楽しみに。