キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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タナカーンを休ませるためのお仕事分担

グリッターに集まった影人達。夢乃と姫野の二人の話し合いがグリッターの二階部分で行われる中、影人達中学生組とバイトのシフトに入った田中は一階で話をする事になった。ただし、田中は仕事をしながらなので会話に混ざるのは最低限だけである。

 

「ねぇねぇ、何やる?何食べる?何語る?」

 

「咲良さん最初からハイテンション過ぎるだろ」

 

「夏休みに入って嬉しい気持ちが隠せてないな、これは」

 

早速話題になったのは夏休みの中でやりたい事であった。という事でまずはななが提案をする。

 

「夏と言えば、肝試しとか?」

 

「確かに夏っぽい……」

 

「え、お化けぇ!?」

 

「私も怖いのはちょっと……」

 

レイがななの意見に好評な言葉を言ったが、それを言い切る前にまさかのうたとこころは二人共NGな雰囲気を見せる。

 

「こころは何となくそんな気がしてたけど、意外だな。咲良さんがお化けダメって」

 

影人は平然とそう話す。この様子からして、彼はお化けに関しては平気な様子だった。

 

「田中さん、夏休みは?」

 

「私ですか?……無いですね」

 

田中はそうバッサリと言い切ってしまう。その直後、女子三人組が驚くのと同時に影人とレイは呆れたような顔つきになる。流石に今回の質問は擁護できないからだ。

 

「あのな?田中さん達社会人に夏休みという概念は無いんだよ」

 

「ほら、思い出してみて。自分達の両親達に夏休みって感じな一ヶ月丸々の長期休暇とかあるか?」

 

「う、確かに言われてみれば……」

 

「お盆の時にお母さんはちょっとだけ休みがありましたけど……」

 

「私のママなんてピアノの公演とかで夏休み期間に殆ど休み無かった年もあるし」

 

今回の質問は少し無神経過ぎたとうたは反省。ただ、夏休みが無いとなれば色々と気になる所が出てくるわけで。

 

「あの、失礼ですが田中さん。それってどのくらい続いてるんですか?」

 

「そうですね、少なくとも……はなみちタウンに来てからの十数年は」

 

この様子だと影人達が生まれた時ぐらいの年には田中がこちらの世界で働いているという事になる。加えて、田中は以前妖精態を披露した際に若い頃は可愛いとよく言われたと発言していた。その事に関しても全くの嘘偽り無いという事になる。

 

「ええっ!?」

 

「十年以上も……」

 

「夏休み無し!?」

 

「……あのな?働き始めたら殆どの人が十年どころか少なくとも四十年以上は夏休みが無いんだぞ……」

 

影人は再度呆れたような事を口にする。残酷かもしれないがこれが現実なのだ。そんな原作アニメの子供の夢を壊すような影人の発言は置いておき、ひとまず田中が休み無しという事でうた達女子組はどうにかしたいという感情に駆られた。

 

「大変だ……」

 

「特に最近は“はなみちタウン”のパトロールに加えて副業としてグリッターのバイト。アイドルプリキュアのマネージャー業もありますから」

 

「うーん、やっぱりこうして見ると田中さん仕事人間って感じだなぁ」

 

「流石にどこかで休みが無いとだけど……」

 

田中の現状を聞いていく中で先程まで現実の話をしていた影人やレイも一日くらいだったら休みの日が出来ても良いのではないか。その感情が湧いてきていた。

 

「忙しいんですね……」

 

「タナカーン、お休み欲しいプリ?」

 

「まぁ、偶にはゆっくりしたくなる時もありますが……」

 

「例えば?」

 

「そうですね、温泉に行ったり……渓流釣りに行って……うーん」

 

そう言いつつ天井をボーッと見つめた彼を見て目の前にいる中学生組とプリルンは田中が仕事に追われて休めてない事に危機感を覚えた。

 

「田中さん、だいぶお疲れなようです」

 

「私達にできる事、何か無いかな?」

 

「うーん、とは言っても田中さんのやってる仕事の幾つかは田中さんにしかできない事もあるからなぁ」

 

それはその通りである。少なくとも、アイドルプリキュアのマネージャーとして外部との仕事関連の話をするのは自分達に代行するのは不可能だ。

 

「でも、このままじゃダメだよ。せめて、私達にできる分だけでも」

 

「それもそうだな。……じゃあ」

 

それから中学生組とプリルンはヒソヒソと会話をする事になった。同時に影人は二階で話している夢乃へと何かのメッセージをメールする。そんな中、メロロンも一応話の内容を把握するために会話には参加しないが話は聞いていた。

 

「田中さん!今日は私達がお仕事代わるから、田中さんはゆっくりして!」

 

うたがそう言いつつ田中がやっている皿を拭く作業を止めるように促した。

 

「え?」

 

「ほら、貸してください!」

 

「……ありがとうございます。では、今日はゆっくり……」

 

「「「「うんうん(プリプリ)!」」」」

 

これにて、田中の働き過ぎ問題は解決……するかに思えた。しかし、その考えはすぐに崩れ去る事になる。

 

「パトロールに行ってきます!」

 

「「「「「ズコーッ!?」」」」」

 

「やっぱこうなるよな……」

 

影人とレイを除く女子組とプリルン、メロロンは全員纏めてズッコケてしまう。そう、先程も説明した通り田中にはグリッター以外にも仕事が山のようにある。一つや二つ肩代わりした程度では気休めにしかならない。

 

「そっちは私と……」

 

「俺が代わります」

 

田中がやろうとしていた街のパトロールはななとレイの二人が受け持つと提案。これも一応決めていた流れだ。

 

「そうですか?なら、本当に今日は休めそうですね」

 

「「「「うんうん(プリプリ)!」」」」

 

「では、ファンの方々から皆さんに贈られてきた手紙やプレゼントの仕分け作業をしましょう」

 

「「「「ズコーッ!?」」」」

 

今度はアイドルプリキュアのマネージャーとしての仕事をやろうとする田中。勿論これも想定していたため、今度はプリルンが声を上げる。

 

「それはプリルンがやるプリ!」

 

「いや。そういうわけには行きませんよ」

 

それから田中が二階の二人の邪魔にならないように一階の空いたテーブルを利用して二つの段ボール箱を並べる。その中には先程田中が話したファンからの手紙やプレゼントが大量に入っていた。

 

「おぉ、思っていたよりも凄い量」

 

「えぇ。忙しくてなかなか手が付けられず、こんなに溜まってしまいましたから」

 

「わぁ!これ全部、私達宛てのファンレターですか!?キラッキランラン〜!」

 

「凄いです、心キュンキュンしてます!」

 

うたやこころはこんなにも自分達への手紙をファン達が贈ってくれたことが嬉しかった。ただ、この仕分けも追いつかない事から田中が多忙を極めている事がよくわかるだろう。

 

「これはキュアアイドル宛て、こっちはズキューン」

 

そのまま自然な動きで手紙の仕分けを始めた田中を見て一同はその方をジト目で見る。休んで欲しいのに働く事を止めない田中にプリルンは居ても立ってもいられずに声を上げた。

 

「プリ!プリルンがやるプリ!タナカーンはお休みするプリ!」

 

「ですが、プリルン一人では少々不安が……」

 

「グサ!プリィ!?」

 

「ぷっ……」

 

田中の最もな返しにプリルンはダメージを受けたかのような顔をし、レイは思わず吹き出してしまう。

 

「プリ!何でプリルンを信じてもらえないプリ!!」

 

「いや、今までの行動を思い出してみな?多分田中さんの意見はごく普通の反応だぞ?」

 

「もっとグサッ!プリ!?」

 

影人にも追い討ちをかけられていつぞのうたのような反応を見せるプリルン。そんな不憫な彼女を見て耐えかねたのか、メロロンが助け舟を出す。

 

「ねえたまがやるならメロロンもやるのメロ!」

 

「メロロンまで……」

 

「私と影人先輩もやります!」

 

「田中さん、俺達の事は大丈夫ですよ」

 

「だから夏休みを楽しんできてください!」

 

影人やこころも仕分けに参加するという事でこの場にいる全員が田中の仕事完全に分担。それと同時に田中へと絶対に休んで欲しいという目を全員が向けると彼もようやくその気になった。

 

「皆さん……それでは、お言葉に甘えてしばしお休みをいただく事にします」

 

田中がそう言うと全員でホッとしたような顔つきになる。それから田中がグリッターから出るとそこにはいつの間にか二階から下に降りて外に出ていた姫野がいた。

 

「姫野さん?先程まで夢乃さんと話をしてたんじゃ……」

 

「そうだったんですけど、実は……」

 

姫野は元々、夢乃とドリーム・アイとしての活動の話をもう少し長くするつもりだった。ただ、いきなり夢乃がスマホに送られたメッセージを見たかと思えば仕事の話を中断するように言ってきたのである。

 

〜回想〜

 

影人達が田中に夏休みが無いという話をしていた時、グリッターの二階のテーブルの所。夢乃と姫野が向かい合って話していると夢乃のスマホにメッセージが入る。

 

「あ、すみません。ちょっと連絡が……」

 

珍しく夢乃が予定の話をしている時にいきなりスマホを見て何かを確認した事に姫野が少し動揺した。

 

「そうだ、姫野さんってこれから時間作れますか?」

 

「え?でも、今日はこの後普通に仕事で……」

 

「あの、……田中さんと二人きりでお出かけができるって言われたらどうします?」

 

それを聞いて姫野は目を見開くと同時に顔を赤くする。しかし、仕事のプロがこんな事で動揺してはならないとすぐに仕事モードに顔を戻した。

 

「いえ、まだ話も途中ですし……それにあの仕事人間の田中さんに休みなんて……」

 

「……兄達がその仕事を分担すると話してます。それに、レイ先輩が先輩のお父さんに姫野さんを今日休みにしてもらえるように掛け合ってもらえると」

 

「……ッ、レイさんが」

 

レイと彼の父親の仲は周りから見てもあまり良いように見えない。そんな状態だと知ってるからこそ姫野はレイが自分から嫌っている父親に頼み込むなんて余程の事だと驚いていた。

 

「で、ですが……まだ夢乃さんの予定とか何も……」

 

「そんなの一日無くてもどうにかできますよ!……田中さんと同じ仕事人間の姫野さんにこんな事言ったら怒るかもしれませんけど……」

 

夢乃は最後の方は自信なさそうに声が小さくなりつつも言った。ちなみにこれをどこかの残業嫌いのギルドの受付嬢に言った場合、“一日サボったらそれだけ仕事が溜まるから残業は止めない”とか言い出しそうなものだ。

 

しかし、姫野は彼女のような社畜人間では無い。レイの父親の会社のマネージャーとして働いているため、どこかでちゃんと休みは貰える。それを頼んで数日ずらしてもらうという事だ。

 

「しかしそれではレイさんにご迷惑が」

 

「姫野さん、田中さんと二人きりで過ごせる滅多に無い機会ですよ?田中さんの事なのでこれを逃したら次に同じチャンスができるまで何年先の事になると思ってるんですか」

 

「うぅ……」

 

姫野は田中と二人きりで過ごせるという言葉に揺れつつあった。やはり仕事人間の姫野ではあるが、田中程の重症者では無いという事でもある。

 

「わ、わかりました……その、レイさんへのお礼。私自身は後程改めて言いますけど、先に一度言ってもらっても大丈夫ですか?」

 

「はい!」

 

〜現在〜

 

そんな事があって姫野も思わぬ休みを獲得する事に成功したようだ。そして、こうなった以上は姫野には今回の休みで田中と一緒の時間を過ごすために彼を誘う以外の選択肢は無くなってしまっている。

 

「あの、田中さん……折角のお休みなので……その、一緒にいかがですか?」

 

「姫野さんがご迷惑で無ければ……」

 

「ッ!ありがとうございます!」

 

こうして、二人は急遽できたお休みを使って仕事で疲れた体を休める事になるのだった。

 

二人がグリッターの前からいなくなった後、グリッター内ではそれぞれの仕事をやるための準備を始める。ななとレイは田中にパトロールの際にやる事を聞いてそれを二人で実行するべく移動を開始。

 

影人、こころ、プリルン、メロロンは四人で仕分けをするべくお店の邪魔にならないように二階のスペースを貸し切って作業をする。夢乃は同じく夏休み中で咲良家にいるうたの妹のはもりの相手をするべく咲良家の方へと移動。

 

最後にグリッターの手伝いをするために残ったうたは両親に田中が今日はいない代わりに自分がそこをフォローすると伝えた。

 

「おはようございます……」

 

そのタイミングでグリッターを訪れたのはスラッシューこと天城切音である。

 

「あれ?今日は田中さんもシフトだったはずじゃ……」

 

「天城さん!あの、実は田中さん……どうしても外せない用事ができてしまったらしくて」

 

「は、はぁ……」

 

天城は唖然としたような顔でそう返す中、きゅーたろうが彼女へと歩いていく。

 

「きゅーちゃん、また天城さんに吠えたら……」

 

そんな時、きゅーたろうはまさかの天城相手に尻尾を振り始めた。つまり、好意的な反応を示したのである。

 

「え……」

 

「よーしよ〜し。今日もよろしくね」

 

「ワン!」

 

天城はそんなきゅーたろうを撫でる。それによって彼は気持ち良さそうな顔を見せた。今まででこんな反応をした事は一度も無い。確かに少し前に天城相手に吠えなくなったのは知ってたが、まさか完全に懐いたような仕草を見せるまでになるとは思わなかったのだ。

 

「きゅーちゃんが懐いてる」

 

「あはは、やっと心を開いてくれたって感じですよね。……私も少しホッとしました」

 

そんな彼女の目は純粋で、今までよりも柔らかい視線であった。それから彼女はバイトをするべく着替えるためにロッカールームの方に向かう。

 

「……天城さん、やっぱり最初と比べて明るくなったのかな?」

 

うたが唖然とする中、当の天城ことスラッシューは移動中にまた脳へと響く痛みに必死に耐えていた。

 

「ッ……ダメ。どうしてこんな気持ちになるの。ダークイーネ様にこんなの知られたらまた……」

 

それと同時にまたダークイーネからの念押しとばかりの痛みが彼女を襲う。どうにかそれに声を出すのを最小限に抑えて耐えるスラッシュー。

 

「あううっ……ダークイーネ様……これはプリキュアの空気に溶け込めてるって事なんです……。お願いします、世界を真っ暗闇にする使命を忘れてなんかいませんから……」

 

スラッシューは弱気な声色でそう頼み込むとダークイーネはようやくその痛みを消した。ただ、彼女の額には脂汗が浮かんでいる。

 

「はぁ……はぁ……。このままじゃ不味い……。ひとまずキュアアイドルと働く以上、今バレたら確実に終わる。少なくともここにはいられない。ッ……。まずはちゃんと仕事をしないと」

 

スラッシューはどうにか乱れた心を落ち着けるとバイトのためのエプロン姿へと着替え、バイトに臨むのだった。




また次回もお楽しみに。
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