キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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心が掻き乱されていく悪役達の苦しみ

田中と姫野が仕事のためにグリッターを目指して移動を開始した頃。ななとレイに助けられた後に二人から説得を受けたものの、それを蹴って飛び出したザックリー。彼は街にある川の堤防沿いの空中を飛びながらある事を後悔していた。

 

「チッ……うっかりハンカチ……返し忘れたじゃねぇかよ」

 

ザックリーの手にはななから貰ったハンカチがあった。先程感情的になったせいでそれを持ったまま来てしまった彼はそれをなな本人に返さないといけなかったと少し後悔の念を感じてしまう。

 

「クソッ……。それに、何だよ。プリキュアとはいえアイドルのくせに、沢山の人から視線を浴びてるのに……彼氏みたいな奴連れやがって……」

 

ザックリーはレイに対しても嫉妬の感情が浮かんでしまっていた。普段から彼をあまり見ていない事もあり、余計に彼が新しくできたななの彼氏みたいな立ち位置に見えて仕方ないのである。

 

そんな中、ザックリーが下の方から声が聞こえるとその方に目を向けた。そこにあったのは田中達が入っていた温泉のある建物であり、建物から丁度風呂上がりの坊主のお爺さんが出てくる所だった。

 

「ふぅ!湯上がりのマッサージは最高だ!」

 

彼はお風呂から上がった後に田中や魁斗がやっていたマッサージチェアを使用したらしく。肩凝りが取れたかのような幸せ気分になっていた。そして、ザックリーはそれを見逃す事は無い。

 

「あ!見つけたぜ!目障りなキラキラ!コイツを消すのが、俺の癒しだ!」

 

ザックリーはキラキラを見つけるとそのままそれをターゲットにした。それはまるでムカムカした気持ちを発散するかのようである。

 

「お前のキラキラ、オーエス!」

 

「うわぁああっ!!」

 

「はい、ザックリ行くぜ!」

 

ザックリーがいつも通りにお爺さんのキラキラを引き抜き、すかさずリボンを切断。その場にクラヤミンダーを召喚した。

 

「来い!クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしやがれ!そらっ!」

 

「クラヤミンダー!」

 

そこに召喚されたのは先程お爺さんが言及していたマッサージチェアのクラヤミンダーである。椅子の底から脚が出て、マッサージするための機構が両腕となる形となってそれは具現化。

 

そして、クラヤミンダーが出たというわけでグリッターではプリルンがいつも通りにその波動を察知する。

 

「ブルっと来たプリ!?」

 

ただ、先程まで頭がパンクした状態で気絶していたためにプリルンは一瞬だけ起き上がってから力無く倒れ込む。

 

「プリィ……」

 

「プリルン、大丈夫?」

 

「どうにか大丈夫プリ……でも折角やったのに」

 

「取り敢えず、プリルンが倒れる直前くらいまでに出した分の整理は終わった。続きは帰ってからの方が良さそうだけどな」

 

「ねえたま、もう少し頑張るのメロ!」

 

「今は一緒に行きましょう!」

 

このまま街中に出てきたクラヤミンダーを無視するなんてできない。ひとまずそちらの対応をするために影人、こころ、プリルン、メロロンの四人は下にいるうたと共に移動を開始する事になる。

 

影人達が出て行った直後、グリッターの店の奥の方では気絶していた天城が目を覚ますと頭を抑えつつ起き上がった。

 

「ッ……まただわ……何かを思い出しかけて、ダークイーネ様に抑え込まれて……」

 

天城はここ最近頻発するこの現象に頭を悩ませ続けていた。このままでは自分がおかしくなってしまいそうになる。ここ最近、グリッターでの温かい時間を過ごす度に自分がおかしくなるような感覚さえあった。

 

「このままじゃ、本当にヤバいわね」

 

すると自分が起きた事に気づいたのか、うたの母親の音が心配そうな顔で入ってくる。

 

「天城さん、気がついたんですね」

 

「すみません、また私のせいで……」

 

「それは大丈夫。でも、ちょっと最近天城さんの休みが少ないし……暫くお休みにしても良いのよ?」

 

音は天城へと休みを取るように勧めた。こんなにも倒れる回数や頻度が増えれば休むように勧めるのは当然である。そんな彼女の心配に天城は胸が苦しくなってきた。

 

「……で、ですが……」

 

「天城さんはここ暫く頑張り過ぎ。お父さんも良いって言ってるし、雇い主として言います。天城さん、暫く休んでください」

 

「ッ……すみません。ご迷惑をおかけします……」

 

こうして、天城は咲良夫妻からの指示で暫くグリッターでのバイトを休む事が決定。ひとまず今日はこのまま休みになる事になり、天城は帰宅する事が決定。その際に“家まで送る”という音の提案をされて天城はそれを何とか断り、一人グリッターを出た。

 

「……何で、何でなのよ。私は闇の存在なのに、何でそんなに私を心配するのよ……」

 

そんな時、天城を見送りに来たのかきゅーたろうが尻尾を振りつつ近寄ってきた。

 

「……あなたもすっかり私に懐いたわね……。私の事嫌いだったんでしょ?あんなに闇の気配ビンビンだった私の隣にまで来るくらいにまで心を許してくれて」

 

天城は唇を噛む。苦しい、辛い。様々な負の感情ばかりが溢れ出る。目の前には自分を受け入れてくれる輝く世界があるのに自分はここにいたらいけないという気持ちが出てきてしまう。

 

「……ほんと、私がダークイーネ様の配下で、あの方に支配されてなかったら……もっと、もっと早く打ち解けられたのにね」

 

天城がしゃがんで優しく話すときゅーたろうは天城の頬を舌でペロっと一度舐める。これも最初なら絶対やってくれなかった行為だ。

 

「……ここが私にとってここにいられる限界かしら」

 

「くぅん?」

 

天城は何かを悟ったようにそう呟くときゅーたろうは首を傾げる。それから彼女はきゅーたろうの頭を優しく撫でてから小さく呟く。

 

「あの子達によろしくね……。もう私は……あそこにはいられない」

 

天城はその瞬間、一瞬にして炎を纏ってスラッシューの姿へと変身。きゅーたろうはいきなり露わになった闇の力に驚いて飛び退く。……しかしきゅーたろうは天城の変化に驚きこそしたものの、威嚇する事は無かった。

 

「……もうこうなっても威嚇すらしないのね」

 

「ワン」

 

天城改めスラッシューの言葉にきゅーたろうは寂しそうに呟く。スラッシューは一度溜め息を吐くとザックリーがクラヤミンダーを呼んだ事を示す暗い空を見た。

 

「さようならよ、きゅーたろう。元気でね」

 

スラッシューは天城のような優しい声色でそう言ってその場を後にするように飛び去っていく。そんな彼女をきゅーたろうは何も言わずに見送るのだった。再度場面は変わって川の近くにある堤防を降りた先。

 

「今日こそ世界をクラクラの真っ暗闇にしてやる!」

 

そこではクラヤミンダーを呼んだザックリーが意気込んでいた。少しして影人達グリッターにいた組が到着する。

 

「見つけた、チョッキリ団!」

 

「俺達は夏休みシーズンなんだからお前らも休んでくれても良かったんだぞ!」

 

「煩せぇ!休みが貰えるならとっくにそうしてるっつーの!」

 

影人は夏休み中にも襲ってくるチョッキリ団へと文句を言うとザックリーは自分達の過酷な労働環境に嫌気が差してるのかヤケクソ気味に答えを返す。

 

「皆!」

 

「待たせたな……って、俺がいても邪魔になりそうだなこれ」

 

そこにパトロール中で外にいたななとレイも異変に気づいてこの場に到着。ただ、レイは自分だけ非戦闘員なのでこの場にいても邪魔であると察した。するとなながザックリーへと声を上げる。

 

「ザックリーさん!キラキラを奪うのは止めてって言ったのに……」

 

「チッ……言っただろ!これが俺の仕事だって!」

 

「ッ……」

 

ななからの呼びかけにザックリーは応じる事は無く、むしろ敵対心を露わにしていた。この会話を聞いて影人達はレイも含めた三人の間で何かしらのやり取りがあったと感じ取る。

 

「……どうやら訳ありみたいですね」

 

「でも、クラヤミンダーを出しちゃった以上は……」

 

「うん……。これ以上、キラキラは奪わせない!」

 

それから六人はそれぞれのチームに分かれて変身を開始。まずはアイドルプリキュアからだ。

 

「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」

 

アイドルプリキュアの三人の名乗りが終わると続けてズキューンキッスソウルの変身へと移行。

 

「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ショータイム!YEAH♪」」」

 

「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」

 

「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」

 

「ハートをメラッと熱くする!キミと高まれ、キュアソウル!」

 

「ズキュッと!」

 

「夢中で!」

 

「熱くなる!」

 

「「「We are!ズキューンキッスソウル!」」」

 

こうしてズキューンキッスソウルの三人も変身完了。今回は最初から六人揃った状態でザックリーのクラヤミンダーと対峙する事になる。

 

「チッ……やっちまえ!クラヤミンダー!」

 

ザックリーの指示でクラヤミンダーが攻撃を仕掛けるべく突っ込んでくる。それに対して六人は同時に跳び上がるとまず一発とばかりにアイドルがブローチをタッチした。

 

「アイドルグータッチ!」

 

アイドルからの強烈なパンチが迫る中、クラヤミンダーはそれを前に出ながら回避する。

 

「クラ!」

 

「うえっ!?」

 

「捕まえろ!」

 

「クラヤミンダ!」

 

ザックリーの指示と同時にクラヤミンダーは両腕でアイドルの体を挟むようにして捕獲。アイドルは両腕を横に広げた状態で脇から膝辺りにかけてまで両側から圧迫されるように捕まった。

 

「くっ……」

 

「そんな……」

 

「アイドルを捕まえて何を……」

 

「ハッ……お前まさか!?」

 

アイドルが苦しそうな顔をする中、ウインクは動揺してキュンキュンは敵の意図を考える。ただ、外野から見ていたレイは敵がマッサージチェアが素体である点から何かに気がつく。

 

「そのまさかだぜ!クラヤミンダー!マッサージ攻撃だ!」

 

「「マッサージ攻撃!?」」

 

ズキューン、キッスのコンビが声を合わせるとクラヤミンダーは両腕に備え付けられたマッサージ機能を稼働。アイドルの全身を締め付けていく。

 

「ううっ……」

 

「「「「アイドル!?」」」」

 

「コイツ、一人ずつ俺達を消耗させ……あれ?」

 

ソウルが今回のクラヤミンダーの手強さを感じ始めたそんな時、彼はアイドルの方を見て僅かに違和感を感じた。

 

「見せてやれ、クラヤミンダー!」

 

「クラヤミンダー!」

 

「は、はぇえ……」

 

何しろクラヤミンダーに締め付けられているはずの彼女の顔が何故かリラックスしているかのようにどんどん気持ち良さそうな物に変わって行ったのだ。

 

「……なぁ、レイ。これって」

 

「ああ、文字通りクラヤミンダーがマッサージしてるんだよ」

 

何しろクラヤミンダーの素体がマッサージチェアなのだ。しかもその機能はクラヤミンダーの両腕に存在している。しかもアイドルはその腕によって全身をマッサージされているわけで。

 

「ふぇえ……気持ち良い〜」

 

「「「「……え?」」」」

 

「アイドル……お前まさか」

 

「あぁ、そこそこぉ……疲れが取れるぅ……」

 

完全に腑抜けたような顔をしたアイドルはクラヤミンダーからのマッサージがあまりにも気持ち良過ぎるせいで脱出する気持ちも無くなっていた。それどころか、更なるマッサージを求める程である。そして、こうなると流石にソウルも黙ってないわけで。

 

「おいザックリー!お前これ女児向けアニメでやる事か!?」

 

「へ?」

 

「絵面が色々とアウトなんだよ!ほら、アイドルが完全にふやけちゃってるし!てかクラヤミンダーの手つきが見る人が見たらいやらしい手つきにも見えるだろうが!触ってる所とかも含めて諸々アウトなんだよ!」

 

ソウルはクラヤミンダーのマッサージで気持ち良さそうにするアイドルの絵面へと色々とツッコミの嵐を浴びせる。そんな彼の怒号に彼以外のその場の面々は唖然としていた。

 

「ねぇ、キッス……あれ。私もやってもらいたいんだけど……」

 

「絶対にダメです、お姉様。お姉様の今の姿でアレをやられたらそれこそ色々とアウトですから!」

 

終いにはズキューンまでもが気持ち良さそうなアイドルを見て自分もやってもらいたいと言わんばかりになってしまう始末。これはキッスが全力で阻止したために実現はしなかった。

 

「キュンキュン、良い加減助けてあげて!」

 

「あっ、はい!キュンキュンレーザー!」

 

レイがキュンキュンへと声をかけるとキュンキュンはようやくブローチをタッチしてレーザーを放出。それがクラヤミンダーの顔面に命中した。

 

「クラァ!?」

 

「「アイドル!!」」

 

ようやく解放されたアイドルはウインクやキュンキュンから支えられる形になるとウインクが話しかけた。

 

「アイドル、大丈夫?」

 

「ありがとぉ……」

 

「テメェ、色々アウトな絵面にしやがって。マジ覚悟しとけよ?」

 

ソウルはふやけたアイドルを尻目にやる気になるとズキューンやキッスもそれに合わせて出ようとする。

 

しかし、そんな時だった。突如としてプリキュアとクラヤミンダーの間に炎の流星が落下する。

 

「「「「「「ッ!?」」」」」」

 

「これは……まさか」

 

プリキュア達が驚く中、ザックリーが呟くとそこにいたのは完全に戦闘態勢となったスラッシューであった。

 

「……プリキュア、今日こそ決着を着けますわ」

 

「このタイミングでお前かよ、スラッシュー!」

 

「ッ、この前はよくもお姉様を!」

 

ソウルやキッスがスラッシューへの敵対心を露わにする中、彼女は一度息を吸ってから吐くと普段以上の凄まじいプレッシャーを周囲に放出。

 

「ッ、この力!?」

 

「今まで以上の圧力ですよこれ!」

 

「そうよ、言ったでしょう?これ以上あなた達と会っていたら私も良い加減おかしくなるのよ!……だから、ここで全部終わりにしてあげるわ!」

 

スラッシューは何故か普段以上に荒れたような言い方をしてきた事にソウル達は違和感を感じる。だが、目の前に簡単には勝てないような強敵が来た事は確か。

 

「これは、かなりヤバそうだな」

 

これにより、スラッシューも参戦。プリキュア達は彼女の本気を前に激戦は必至であると確信。彼女と戦う覚悟を固めるのだった。




また次回もお楽しみに。
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