キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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見学会に向けた準備 生まれ変わる炎

ハジメとの面談終了後。影人とレイは会社の外に出る際にメロロンを抱きつつ話をしながら移動していた。

 

「もう、本当に心臓が幾つあっても足りないんだが」

 

「話を聞いてただけと実際に会うのとで大分印象違うな」

 

影人は勢いでオッケーしたものの、結果的にハジメの掌の上で転がされたのだと考える。

 

「ハジメさんっていつもあんな感じなのか?」

 

「え?……うーん、時と場合による」

 

レイは少し考えてからその結論を出し、その言葉に影人は僅かに凍りつく。つまり、相手ごとに合わせて対応方法を変えているという事だ。

 

「……そうだ。本当に良かったのかよ。影人、あの世界に戻るの嫌って言ってたのに」

 

レイの言葉に影人は考える。今回に関しては完全にハジメに乗せられた形だ。そもそも影人は芸能界に嫌な思い出しか無い。自分とこころを繋げてくれた事くらいなら感謝するかもしれないが、それ以外なんて良いことは殆どと言って良い程に無い。

 

「復帰に関してはまだ決定じゃ無いし、これから決めれば良い事だ。それにあくまで今回に関してはただの仕事の見学会。決定するのは俺自身の意思だ」

 

「そっか」

 

レイは複雑そうな顔をしていた。影人が自分の父親のせいで変に乗せられた挙げ句、そのまま努力が届かずにドン底に落とされてしまうという流れにまで行ってしまう可能性もある。だからこそレイは影人を心配していたのだ。

 

「心配なのか?レイ」

 

「当たり前だろ。……お前、あれだけ怖がってて。やる時にトラウマ思い出して踏み出せないとかあったらどうするんだよ」

 

「……多分それを確認するための明日だろ」

 

影人の言葉にレイは目を見開く。もしどうしても体が拒否してできないという話であれば明日の時点である程度わかる。その場合は夢の選択肢から完全に除外する事になるだろう。

 

そんな感じで話をしていると事務所の出口に到着した。レイとはこの後彼自身の勉強やら家での呼び出しやらがあるのでここで解散となる。

 

「レイ、明日は一回やれる事やってみるよ」

 

「ああ、無理しない程度にな」

 

レイの言葉に影人が頷くと二人はその場で別れ、影人は家までの道を歩いた。そこにメロロンが話しかける。

 

「にいたま、本当に大丈夫メロ?」

 

「ああ」

 

「……メロロンは心配なのメロ」

 

するとメロロンはレイと同じで影人の方を心配そうな目で見上げた。彼女も先程からずっと影人を心配していたのだが、事務所内で自分が無闇に動けば騒ぎになる危険もあったので大人しくしていたのである。

 

「……にいたまは怖くないのメロ?あんなに嫌がってた所に自分で行くって」

 

「怖いよ……。それでも踏み出さないといけない時は来る。それに、俺には自分の輝きが無い。ずっと皆から輝きを貰ってばかりで、それを自分の物ですなんて図々しい事……いつまでも言いたくない」

 

影人の真剣な目を見たメロロン。彼女はふと自分がキラキランドでプリキュアの力を得る前に影人に残した手紙の事を思い出す。

 

「……だったら、メロロンがそのにいたまの輝きを取り戻すのを手伝うのメロ!」

 

「え?」

 

「忘れたのメロ?メロロンがキラキランドに行く前に、にいたまと約束した事」

 

メロロンの言葉に影人もメロロンが言っている事を思い出す。それは影人のキラキラをメロロンが取り戻すというあの書き置きの事だった。

 

「メロロン、本当か?」

 

「……メロロンは初めてにいたまと会った時ににいたまに沢山助けてもらったのメロ。……メロロンだって、にいたまの事を助けたいのメロ」

 

メロロンはここまで影人に何度も助けられてきた。プリルン以外に始めてできたはなみちタウンでのメロロンの友達。それ以降も影人がいなかったらメロロンはもっと周りに馴染めていない場面が多かった。彼女はその恩を少しでも影人に返したいのだ。

 

プリキュアに変身できた際にプリルンの記憶の件があってお流れになっていたものの、やっぱり影人へ受けた恩をこのまま放置はメロロンも嫌だった。

 

「ありがと……メロロン」

 

「メロ!?」

 

すると影人はメロロンの頭を優しく撫でる。そんな影人からの手にメロロンは驚いたような声を上げた。

 

「こんな所こころに見られたらまた嫉妬されちゃうメロ。それでも良いのメロ?」

 

「大丈夫だ。こころはちゃんとわかってくれる。メロロンは俺がキラキラしている姿を見たいんだろ」

 

「メロ!」

 

「それじゃあ、頑張らないとだな」

 

影人の言葉にメロロンは嬉しそうだった。そんな中、メロロンの胸の中。心臓の鼓動のようにとある物が宇宙空間のような謎空間に存在していた。

 

それはかつてメロロンがプリキュアに変身するためにプリルンと共に使用したハートキラリロックの錠前である。その錠前は鍵を差し込む穴の中にキラキラとした光が光っていた。そして、メロロンの言葉に一瞬だけ赤い光が灯る。

 

しかし、それはすぐに消えた。ここまで大人しかったハートキラリロックが何故このタイミングで反応しかけたのか。その意味はピカリーネを除いてまだ誰も知らない。

 

その日の夜、影人は夢乃に事と次第を説明すると彼女も驚いたような声を上げた。

 

「うええっ!?お兄ちゃん、声優になるの!?」

 

「いや、まだ決めてないし。……というか、何でそんなに嬉しそうなんだよ」

 

「当たり前じゃん!……お兄ちゃん、やっと自分のやりたい事を見つけてくれて……私だって嬉しいよ」

 

そう言いつつ夢乃は感動で泣きそうになっていた。影人は大袈裟だと感じていたが、彼女の気持ちとしてはここまで頑なに自分の輝きややりたい事を封印して誰かのために頑張り続ける兄にそろそろ自分の好きな事をやって欲しいと切に願っていた夢乃。そんな彼女の前で兄が好きな事をやるような動きを見せればそれはもう嬉しいわけで。

 

「今まで私のせいでお兄ちゃんの事縛ってたけど、もう沢山好きな事して良いんだからね」

 

「……なぁ、夢乃。お前いつから俺の姉みたいな立ち位置になってんだよ」

 

「え〜?私の事がお姉ちゃん?変な事言わないでよお兄ちゃん。気持ち悪いって」

 

「グサッ!!」

 

夢乃からの毒舌に影人は心にグサリと矢印が突き刺さる。ここ最近夢乃からの毒舌の回数も増えてきていた。影人も自分が望んだ事とは言えいざ実際に妹から毒舌を言われるとかなりダメージを受ける様子である。

 

「影人はまだ全然自分の光でキラキラしてないプリ!プリルンも影人がキラキラする所見たいプリ!」

 

「ねえたま、にいたまにキラキラが無いなんてそんな事わかってても言っちゃダメなのメロ」

 

「もっとグサッ!!」

 

影人は夢乃だけでなくプリルンやメロロンにも口撃を受けて多大なダメージを受けてしまう。プリルン視点でも影人のキラキラはプリルンとメロロンの持っている白と黒の輝きしか纏えてない。辛うじてこころの持っている紫の輝きも薄らとあるが、これはプリキュアへの変身のために必要な最低限分だろう。

 

「お前ら……容赦無しかよ」

 

「そういや、夢乃。ちゃんと宿題は……」

 

「やってるし。というか、いちいち心配しなくたって私一人でもできるから。心配し過ぎ、バカゲ兄」

 

夢乃はそう言って行ってしまった。その場に残された影人、プリルン、メロロン。そんな中で影人はふと二人に質問した。

 

「そういえば、お前らアカペラ練習の方はどうなってるんだ?」

 

「やっぱりこのままで歌うとやっぱり上手く歌えないプリ」

 

「メロロンもねえたまもアカペラはプリキュアで歌った方が良いって言われたのメロ。プリキュアに変身している間は人間になれるからその方が歌も歌いやすいのメロ」

 

プリルンもメロロンも妖精態だとアカペラで歌う際に上手くできないので、ここ最近はプリキュアとしてある程度歌にバフをかけた上で歌っている。本来なら妖精態のまま成長させるのが正解なのだろうが、時間的にそれはキツいという理由もあるのだ。

 

「まぁ、ボイパとかは特に肺活量いるからな……。妖精態のままやるというのも酷だろうし、プリルンの方もプリキュア化するだけであんなに上手くなるもんな。姫野さんがリードをプリルンにやらせたがるわけだよ」

 

「影人の方はどうプリ?」

 

「そうメロ。にいたまの事も気になるメロ」

 

「……あまり良くは無い。一応ベースの音やリズムキープには慣れてきたけど……」

 

影人はあれ以降、アカペラ練習をどれだけ積んでも講師である仙石から良い印象を貰えていなかった。仙石の方もどうにか影人の良さを引き出そうとするものの、まるで影人の能力に封印がかかったかのように中々その引き出しを開けられてなかった。

 

「影人はライブの歌は上手プリ。あんな風に思いっきり歌えば良いプリ!」

 

「でもそれはリードがだろ?ベースが前に出たら……それこそダメだろ」

 

「メロ……」

 

影人はそう言って自分はあくまで裏方役なのだから主張するのはダメだと言い張る。そんな彼を見てメロロンは何か思う所があったが、それを上手く言えないという事で言えなかった。

 

その日はそのまま更けていき、夜中布団に入ると今日もいつも通り三人で隣り合わせになって寝る事になる。

 

翌日、影人はプリルンやメロロンと共にサウンドプロダクションの事務所に向かう。尚、最初は影人もプリルンをうたの所に置いて行こうと考えていた。見学中にチョロチョロ周囲を動き回られるのが怖いのと、何かの拍子で喋ってる所を見られるのもアウトだからである。

 

「プリルン、メロロン。今日は何があっても動いたり喋ったりするのは禁止だからな?昨日は二人の事情を知ってるハジメさんとの会話だけだったから良かったけど、今日はそうも行かないからな」

 

ハジメはピカリーネと直接交渉とかをしているおかげでキラキランドについて喋る内容などの制限は殆ど無かった。ただ、今回周りにいるのはそういう事を知らないただの一般人ばかり。そう考えると無理な事はさせられない。

 

「わかってるプリ!プリルン、静かにしてるプリ!」

 

「本当かな……。やっぱり凄い心配なんだが」

 

「ねえたまの事はメロロンに任せるのメロ。にいたまはやりたい事を精一杯頑張るのメロ」

 

「すまないな、メロロン」

 

そんなわけで三人はサウンドプロダクションの事務所へと到着。まずは午後の見学会に向けて事務所で声優についてのレッスンから受ける事になるのだった。

 

同時刻、チョッキリ団のアジトでは。チョッキリーヌが腕組みをしながら苛立っていた。

 

「……ザックリーはいつになったら帰ってくるんだい!」

 

あの出撃以降ザックリーは昨日一日ずっと帰って来なかったのだ。彼としては前回の戦闘でのななとのやり取りが原因でアジトに行きづらかったらしい。何しろ戻ってきたらまたチョッキリーヌにお叱りからの即出撃を命令されるからだ。

 

「アイツ、まさかサボってるんじゃないだろうね?」

 

「……だから言ったでしょう……ザックリーを大切にしないから」

 

「あ?」

 

そんな時だった。体に傷を負ったスラッシューがバーに戻ってくるとチョッキリーヌへと話しかける。

 

「はっ、誰かと思ったらスラッシューか。……その様子だとプリキュアに惨敗したみたいね。ざまぁないわ」

 

「……あなた、そんな憎まれ口言ってる場合?ザックリーがこのまま辞めたら……」

 

「そんな事有り得ないね!ザックリーが辞めるなんて事にはならない!」

 

チョッキリーヌは随分自身ある様子だった。そんな様子にスラッシューは苦しそうな顔を浮かべる。

 

「……何で、何でなの……。あなたにとってザックリーは……大切な……」

 

「はぁ?アンタこそプリキュアの側にいたせいで完全に絆されたようだねぇ。あんなに仲間は要らない要らない言ってた数ヶ月前のアンタはどこ行ったんだい?」

 

その瞬間、スラッシューは胸がドクンと高鳴ると頭を抑える。彼女はもう精神も肉体もボロボロになっていた。少なくとも、このままで出撃なんてできないだろう。

 

「あうっ……。私の事よりも……はぁ、はぁ……ザックリーの事を心配してあげなさいよ……はぁ、はぁ、あなた、上司でしょ。もっと部下に優しく……」

 

「ふん。部下なんて私にとって手駒に過ぎないわ。アンタを出し抜いて上に行くためのね!……が、ザックリーがいつまでも戻って来ないのは流石に看過できないから探しにくらいは行ってくるわよ」

 

チョッキリーヌはこれ以上スラッシューと同じ空間にいるのが嫌とばかりにバーを出て行く。つまり、彼女が珍しく自分から動く事になるのだった。

 

そして、残されたスラッシューは胸や頭の苦しみにまた再び侵されるとその場に倒れ込む。

 

「ううっ……胸が、苦しい……頭が……痛い……ダメ……このままじゃ、本当に……」

 

スラッシューはどうにか動こうとするが、もう痛みのせいでその場から一歩も動けなかった。

 

「……はぁ、ダークイーネ様一番のお気に入りだったあなたが本当に不憫ですね。スラッシュー様」

 

そこに一人のフードを被った影が現れる。その影は男性のような声色であり、顔つきはよく見えなかったもののその目はスラッシューを見下ろしていた。

 

「あなたは……」

 

「スラッシュー様と同じですよ。チョッキリ団とは別枠のダークイーネ様イチオシの新人さ」

 

その男はスラッシューへとそう話す。スラッシューはその男の足を掴んだ。

 

「……あなたなら、この苦しみ……止められる?」

 

「ほう?」

 

「……私だって、ダークイーネ様を好きで裏切ってるわけじゃない。だから、この苦しみを止めてほしい。……プリキュアにはそれができなかったから」

 

スラッシューの言葉に男は笑みを浮かべる。彼としてはあのままスラッシューがプリキュアの技に完全に飲まれていたら浄化に成功されていたので助けて正解だったと感じたのだ。

 

「そうですか。……見た所、あなたの持ってる闇は凄まじい。それに……チョッキリーヌはともかく、あなたになら忠誠を誓っても良い。あなたにはそれだけの力がある」

 

「能書きは良い……早くして……」

 

「それは失礼。では早速……っと、その前に。この術をかけたら痛みの鎮静と凄まじい力の引き換えに恐らくあなたは二度と歌えなくなる。それでも、この力を受ける覚悟はあるかな?」

 

その宣告にスラッシューは僅かに迷う。もう二度と歌えない……それは、自分の歌姫としての力を放棄する事になる。

 

「……構わない……これ以上歌に触れたら……私はまたきっと……」

 

「そうですか、その覚悟を聞けただけで十分ですよ」

 

そう言って男はスラッシューの持っているある物を取り出した。それは彼女が前に使っていたものの、ここ最近全く使用していなかった丸い水晶のような物体だった。

 

「では行きますよ。……光の中にも闇はある。君の闇を……見せてごらん」

 

男がそう言うとスラッシューの胸から黒いリボンが生成。それと同時に彼女はその痛みに叫んだ。

 

「きゃあああっ!」

 

「綺麗だね……呑まれると良い」

 

その瞬間、スラッシューは先程から自身の持っていた水晶の中に吸い込まれていくとその直後。凄まじい闇のエネルギーと共に水晶が砕け散る。その中から一人の女性が姿を現した。言うまでも無くスラッシューである。

 

「……ッ、痛みが……消えた」

 

スラッシューはそれから自分を苦しめた痛みが全て消え去った感覚を感じ取ると同時に体に闇の力が満ちてきた。

 

「おはようございます、スラッシュー様」

 

「……助かったわ。えっと……」

 

「ボクですか?……ボクの名前はジョギ。これからよろしく、スラッシュー様」

 

こうして、スラッシューはジョギと名乗った男の手によって生まれ変わる。……大切な物(自分の歌)を失って。




また次回もお楽しみに。
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