キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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グリッターでの朝ご飯

新入生の歓迎会が終わって数日の時が経った。今現在、影人はこころの朝のダンス練習に付き合っている所である。

 

「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)」

 

こころはキュアアイドルの歌である笑顔のユニゾンの歌詞を口ずさみながらダンス練に精を出している。今やっているのはキュアアイドルのライブシーンの動きだ。そんな彼女の動きを見つつ影人はアドバイスをする場面を探していた。それから一通り終わるとこころは少し荒くなった息を整えている所である。

 

「お疲れ様。こころ」

 

「ありがとうございます!影人先輩」

 

こころは影人からペットボトルの水を受け取るとまた影人にアドバイスを言ってもらって頷いており、彼女も影人のアドバイスをちゃんと真摯に受け止めていた。

 

「こころ、また上手くなったんじゃないか?」

 

「はい!先輩のおかげです」

 

「そうか?俺がいなくてもこころならきっと上手くなれてたぞ?」

 

「確かにそうかもしれません。でも、先輩についてもらってからレベルアップが早くなった気がします」

 

こころは影人に付き合ってもらえて幸せそうな顔つきである。影人も一生懸命に頑張り、少しでも上手くなろうとするこころの向上心に尊敬の念すら感じていた。

 

「やっぱりこころは頑張り屋さんだな」

 

「えへへ……。影人先輩に褒められるともっとやる気が出ますよ!」

 

こころは影人に褒められて嬉しそうに笑う。こころは基本的には割とストイックで硬派な所があるが、影人には可愛らしい声色で甘えてくる時がある。

 

「……うう」

 

「こころ?何か我慢してるのか?」

 

「いえ、やっぱり影人先輩の事をカゲ君ってまた言いたくて。でも、前にも言った通りそれは先輩に対して失礼な事になっちゃうので」

 

こころはその言い回しをするにできる事ならもっと影人に甘えたいという事だろう。だが、それはできないと彼女は半ば諦めていた。そんな事をすれば先輩に対して失礼を働く事になってしまうのに加えて、今のような自分に厳しいストイックな自分でいられなくなってしまうと。

 

「別に俺は気にしないよ。むしろ、こころの気持ちを尊重したいかな」

 

「ですが……」

 

こころはまだ悩んでいる感じであった。彼女の中でも甘えたい気持ちと自分に厳しくしないといけないという二つの気持ちの中で揺れているのだろう。

 

「……そんなに難しく考えるなよ。厳しい自分と甘えたい自分。その切り替えさえしっかりできれば良いんじゃないか?俺もこころの気持ちを受け止めるぐらいはできるからな」

 

「はい。ですが、もう少しだけお時間をください。私もちゃんと気持ちを整理しないといけなさそうなので」

 

「お、おう……。そんなに整理に時間がかかる事なのか……?まぁ良っか」

 

「……そういう所ですよ……先輩」

 

こころは小声で顔を僅かに赤くしながら影人へと呟く。影人はまるで意味がわからない様子だった。それはさておき。影人は家族との用事があるのでこころの練習も終わったために解散する事に。

 

「また明日もよろしくお願いします!先輩!」

 

「ああ。また連絡する」

 

ちなみに二人はLINEも交換していつでも連絡が取り合える状態にはなっていた。これは影人が毎日練習に付き合うのは厳しいかもしれないという事でもし参加不能な日があったら伝えるというのを建前に二人で交換したのである。尚、二人共もっと相手とお話しする機会を増やしたいという気持ちもあってこそだが。

 

「ただいま」

 

「遅いよ!お兄ちゃん、今日はモーニング食べに行くって言ったじゃん!」

 

「ごめんごめん。すぐに準備する」

 

今日はようやく家族のタイミングが揃ったのでうたの家族が経営する“喫茶グリッター”に行く事になったのだ。

 

「影人があんなにも気に入るお店だもの。一度行ってみたかったのよね」

 

「ああ。影人が美味しいって言ったんだから本物だよな」

 

「父さん、母さん、俺の味覚に対する信頼性が異常すぎないか?」

 

今まで揃わなかったのは両親が割と土日も忙しい日が多く。片方は揃ってももう片方が仕事やら買い物やらでなかなかタイミングが揃わなかったために行けていなかったのだ。それから影人、夢乃、そして父親の魁斗、母親の理沙の四人は既にオープンしていたグリッターの扉を開ける。

 

「いらっしゃい」

 

「あっ、影人君……って事はご家族の方ですか?」

 

「はい。いつも影人や夢乃がお世話になってます。それにこの前の歓迎会では夢乃の面倒を見ていただきありがとうございました」

 

「いえいえ、こちらこそうたやはもりと仲良くしてもらってありがとうございます」

 

そんな風にうたの両親である和や音と魁斗、理沙の二人は挨拶を交わす。そして、そのタイミングではもりが出てくると夢乃の元へと駆け寄った。

 

「夢乃ちゃん。おはよう!」

 

「うん。今日はやっと家族の都合がついたから来ちゃった」

 

「ねぇ、お父さん、お母さん。はもりが料理出しても良い?」

 

「はもりはまだダメだよ。危ないし、料理を置けないでしょ」

 

「むぅーっ!折角夢乃ちゃんが来てくれたのに!!」

 

はもりはどうしてもやりたいと駄々をこねるが、彼女はまだ幼い。料理を何人分もトレイに乗せて運ぶのは厳しいし、そもそも身長が低いために机に料理を並べるのさえもできるか怪しい。それをうたに指摘されるとはもりは膨れてしまった。

 

「じゃあ、はもりちゃん。一緒にピアノ弾こ!」

 

「うん!」

 

「あ、ちょっとはもり!……すみません、うちのはもりが」

 

「あはは……夢乃の奴。やっぱりはもりちゃんと仲良すぎだろ……」

 

夢乃とはもりは料理が出てくるまでの間だけでもピアノを弾こうという話になったために二人でグリッターのカフェエリアから続いている二階の階段の隣にあるピアノに座ってお話をしながらピアノを弾き始める。

 

それから影人と両親は夢乃の分も含めてモーニングを注文。それを受けてうたの両親が料理を作り始める。うたは料理ができるまでの間、影人と話していて良いと言われてうたは影人を連れ出すと空いているカウンター席で話す事に。

 

「ねぇ、そういえばこの前のマックランダーを相手にした時、よくノイズキャンセルなんて裏技みたいな方法を思いついたよね」

 

「ああ。あれか。……実は諸事情があって俺はそういう音関連の機械には詳しいんだ。だからかな?」

 

「ふーん。やっぱり影人君って自分一人で輝くっていうよりは他の人の心を動かしたりとか、他の人を輝かせるって意味で見たら凄いキラキラしてるよ」

 

「……別に。逆に言えば俺は尖った何かで他人よりも一際輝くことができないって事だろ。俺にとっては誇れる何かじゃねーよ」

 

影人の不貞腐れたような言い方にうたはやっぱり頭を悩ませる。うたとしてはもっと影人には輝ける力があるのに自分からそれを否定して殺しているのだから勿体無いとさえ思っていた。

 

「……それとさ。さっきから夢乃ちゃんを見てて気になっているんだけどね」

 

「何?言っておくけど、プライバシーに関わる事なら答えないぞ?」

 

「違うって!あのさ。夢乃ちゃんのあの瞳。どこかで見たような気がして。なんか夢乃ちゃんを見てると思わず引き込まれてしまいそうな感じがして……」

 

「……気のせいじゃないか?誰かと見間違えたんだろ」

 

影人が素っ気なくそう返す。恐らく、うたは夢乃がドリーム・アイだと薄らと気づき始めている。ただ、自分からバラして面倒な事になりたくないとはぐらかした。

 

「ええ〜?でもなんか見間違えにしては凄く何か見覚えがあると思うんだけどな〜」

 

「はぁ。ま、思い出したらで良いからまた言ってくれ」

 

「なんかはぐらかされた気がするけど……ま、良っか!」

 

そんな風に勝手に納得してくれた彼女を見て影人はホッとした顔つきになる。そして、正直危なさも感じていた。夢乃を見ただけでドリーム・アイの面影を感じるようになった人がいる。それだけ彼女が周囲に認知されている事になるが、逆に言えば夢乃が危険な目に遭うリスクも少しずつ上がりつつあるという事だ。

 

夢乃にはドリーム・アイの活動はまだ誰にも正体を明かさない事も含めて了承してもらっている。だからこそ姿からの身バレが一番怖い。……社会は怖い。変に炎上させてしまえば取り返しがつかない事になりかねないし、そうなった時今の夢乃は恐らく耐えきれないだろうからだ。

 

「うた!モーニングセット出来たわよ!」

 

それからうたはモーニングセットを取りに行くとそれに合わせて影人やはもりと遊んでいた夢乃も戻ってくると料理が並べられる。

 

「お待たせしました。モーニングセットです!」

 

それから四人が揃ったので早速影人一家は出されたモーニングセットをいただく事に。

 

「いただきます……美味しい!」

 

「クリームソーダも美味いな!」

 

「影人が美味しいって言うだけある!」

 

「いや、だから俺の舌がグルメみたいな言い方すんなよ」

 

四人が美味しくモーニングセットを食べている所を見てうた達は微笑ましい物を見ているようだった。自分達の料理のおかげで影人達が幸せそうにしているとやっぱり嬉しいのだ。

 

「ごちそうさまでした!」

 

それから四人は食べ終わると初めて来る三人は満足したような顔つきだった。

 

「美味しかったです!」

 

「またこれからも時間があったら来たいな」

 

「あ、そういえばうたちゃんだっけ?このお店の看板娘って」

 

「え?あ、はい!」

 

「今って歌を歌ってもらえるかな?」

 

「わかりました!でしたらリクエストにお応えしましょう!」

 

うたはリクエストに応えるように歌を歌い始める。その綺麗な人を惹きつける声に三人は引き込まれていた。そして、歌が終わると三人は拍手。影人も一応流れに乗って拍手はした。

 

「うたちゃんの歌を聞くと気持ちがスッキリするな」

 

「まるでキュアアイドルみたいね」

 

「ギクッ……」

 

うたはキュアアイドルという単語を聞いて僅かに慌てる。まだ断定されてバレたわけでは無いが、それでも身バレのリスクに焦りもするだろう。

 

「キュアアイドル、可愛いよね。最初は私、少し嫉妬してたけど今はもうファンになるぐらいハマってるんだ」

 

ただし夢乃のハマるは厄介なオタクとかでは無く、常識の範疇でのハマるなので割と安全ではある。

 

「それじゃあ、あまり長くいるのも悪いしそろそろ行きましょうか」

 

「ええー!?もっとはもりちゃんと……」

 

「夢乃はこの後俺達と買い物に行くんだろ」

 

夢乃ははもりと一緒にいたい気持ちでいっぱいだったが、今日はこの後夢乃の買い物が控えているので帰らないといけない。

 

「あ、影人君。この後ななちゃんが来てくれるからこのままここに残ってほしいな」

 

「あれ?」

 

「影人君の方は借りても大丈夫ですか?」

 

「そうだな。影人、残ってあげなさい」

 

「はぁ!?何でだよ!」

 

「良いじゃない。あなたも新しいお友達ができたんだから仲良くしなきゃ」

 

影人は完全に両親に残るように促されて逃げ道が無かった。そのため、彼も彼とてここに残る事になってしまったのだ。

 

「マジかよ……」

 

「それじゃあごちそうさまでした」

 

「また来ますね!」

 

「はもりちゃん、バイバーイ!」

 

それから三人はこの後の用事のために帰っていく事に。取り残された影人は唖然とした様子であるが、両親に言われた手前無理に帰るという選択肢は完全に消えてしまった。

 

「クソ……結局こうなるのか……」

 

影人が手を頭に乗せて呆れる。その頃、外に出た夢乃達と入れ替わるようにうたが呼んでいたなながやってきた。

 

「……!!」

 

ななはタイミング良くドリーム・アイの正体と思われる夢乃と近づけた事を見て目を見開く。

 

「あ、おはようございます、ななさん!」

 

「え!?」

 

「お兄ちゃんやはもりちゃんから話は聞いています。ピアノ、とっても綺麗でした」

 

「ありがとう。えっと、お二人はご両親で大丈夫ですか?」

 

「ええ」

 

「蒼風さんも影人と仲良くしてくれてありがとう」

 

「い、いえ……」

 

夢乃は僅かに緊張していた。推しのVtuberの正体と思われる夢乃に認知されていた事に驚きがあったからである。

 

「え、えっと……夢乃ちゃん」

 

「何?ななさん」

 

「あの……これからも頑張ってください!応援してます!」

 

「……え?」

 

「……内緒、なんですよね?」

 

ななは敢えて名前を出さずに夢乃へと応援の言葉をかけた。……人違いで恥ずかしい目に遭うというリスクがあったはずだがななには確信があったのだ。夢乃は間違いなくドリーム・アイであると。だからこそ夢乃に迷惑がかからない範囲で応援しようと思ったのである。

 

「はい。ありがとうございます!」

 

それから夢乃はドリーム・アイの時によくしているファンサービスである両手をピースにして指と指の間が目の少し上に来るような猫耳ポーズを見せつつ少しだけ舌を左側から出した。更に今回はサービスと言わんばかりに右目で可愛らしくウインクする。

 

「……ッ!」

 

ななはその夢乃のポーズに心を思わず撃ち抜かれる。何しろ推しが自分の元気が出るおまじないのウインクを狙ってやったのかはわからないがしてくれたのだ。

 

「ど、どうしてウインクを?」

 

「ふふっ、今日朝起きたら新しく出てたアイドルプリキュアの動画を見て。……キュアウインクのウインクって言葉。私も好きです。ウインクをすると元気出ますよね!あ、いけない。あんまりリアルでのこういうサービスのやり過ぎはダメだった……。とにかく、ななさんもお兄ちゃんの事、これからもよろしくお願いします」

 

それから夢乃達三人はお出かけのために去っていく。その様子をななはボーッと見送った。ウインクの正体がななであると知ってるわけでは無い。それでも夢乃がしてくれたファンサービスにななは完全に心を撃ち抜かれた。そして、夢乃とのやり取りをしてこれだけは確実に言える。彼女が、彼女こそが自分が推しているVtuber、ドリーム・アイ本人であると。




また次回もお楽しみに。
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