キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
クラヤミンダーを浄化したソウル達。ひとまずは気絶した茅原の無事を確認するべく三人共変身解除。それから彼女の元に駆け寄った。
「茅原さん!」
尚、プリルンとメロロンは人形のフリをして影人に抱えられる形を取る。万が一にも茅原にバレるのはリスクが高いからだ。
「ん……ううっ」
茅原は影人達が駆け寄ると割とすぐに息はある反応を示してくれたお陰で早い段階で影人達は安心する事ができた。それから少しして。彼女は無事に目を覚ます事になる。
「あれ……私、黒霧君を呼びに来て……」
「大丈夫ですか?」
影人は茅原が目を覚ますと彼女を覗くように無事を確認。彼女は驚いたような顔をした。
「影人……君?」
「急に倒れたので心配しましたよ」
「え?ああ、ごめん……。心配かけちゃったね」
そんな中、茅原は僅かに夢見心地のような顔になるとふと脳内に残っていた記憶を口にする。
「……何だか、ホクジョルにそっくりな歌声が聴こえて……。そうしたら、夢の中でズキューンキッスが私達の歌を」
「ホクジョル……もしかして」
「うん、私の大切な友達で声優としての先輩。北條愛乃さんの事」
「あー……」
影人は僅かに顔が凍りつく。何しろ先程ズキューンの歌声はその北條の歌によく似ている。そんな状況下で二人のユニゾン曲をご本人の前で見せたのだ。意識が僅かに残ってて聴かれているのならそう言われるのも仕方ない。
「それと、夢だけどキュアソウルのライブも観れたの。……何だかあの子、前々から黒霧君にそっくりだと思ってたんだけど……」
「……他人の空似ですよ。ただの気のせいです」
影人はそう言って茅原を誤魔化す。それから少しの間彼女は影人の事を見ていたが、それから微笑んで影人の持つ妖精達を見た。
「そっか……。あ、そういえばそのお人形さん達は?」
「俺が気持ちを落ち着けるために側に置いておいたんですよ。流石にアフレコ練習の際には出せなかったので片付けてましたが……」
「ふーん」
茅原はそれからプリルンの方をジッと見ると彼女の雰囲気から何かを感じ取った様子で、影人へと問いかけた。
「ねぇ、黒霧君」
「何ですか?」
「この白い子……少し抱いても良い?」
「え?別に良いですけど……」
それから茅原は人形を抱くとその頭を撫でる。すると何故か無性に安心感を覚えた。
「やっぱり……。影人君」
「え?」
「ありがとう」
「別に俺は何も……」
「倒れた私を看病してくれたお礼だよ」
茅原はやはりプリルンから何かを感じたようで。何故か気に入ったように彼女を愛でていた。そんな中、プリルンはお気に入りの茅原に撫でられて幸せ気分なようで顔が崩れてしまっていた。
「プリィ……」
「(いっ!?)」
加えてあまりの撫でられた時の気持ち良さに我慢できなかったのか、プリルンは思わず顔だけで無く耳まで緩み切ってしまうと少しだけ声を上げてしまった。ただ、茅原は気づいていない様子なのか平然とする。
そして、プリルンの事をいつまでも愛でている茅原。そんな彼女へと内心で嫉妬の炎を燃やすメロロンがいた。
「(メラメラメロ!ねえたまをこんなにも愛でて。それをやって良いのはメロロンだけなのメロ!)」
影人はそんなメロロンが怒りの炎を燃やした事で抱く際に彼女の体温の上昇を感じ取る。そのためどうにか彼女に気持ちを抑えるように小さく話しかけた。
「メロロン落ち着けって……。もう少し我慢してくれ」
「……黒霧君、その子達もアフレコブースの中にあげて良いよ」
「え、でも流石に……」
そんな中、茅原はいきなりプリルンとメロロンをブースの中に入れて良いと言う。影人としては連れて行くことは良いと言ったものの、流石にアフレコ練習のブースの中に入れるつもりは無かった。そういう私物の持ち込みは基本的に厳禁だからである。
「最悪生徒達に言われたら私の私物だって言うから。この子達が黒霧君の悩みを解決したのなら……余計にね」
「え?……茅原さんが良いのでしたら良いですけど……」
影人は何となく察してしまった。もう茅原相手に誤魔化しても無駄だという事実に。彼女にはプリルンとメロロンがただの人形では無いという事を知られてしまったのだと。
「うん。じゃあ、皆を待たせてるし。行こ」
それからそこそこ時間を空けてしまったが、二人で練習場に戻る事になる。そのままの流れで茅原はプリルンとメロロンを一時的に影人から預かり、講師の立場を使ってアフレコブースの中。厳密には茅原が操作している機材のある部屋の窓際に置いておく事にした。ここからならアフレコを聴くことができるからである。
「それじゃあ、シーン4。始めるね」
「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」
この後影人はアフレコの演技をする事になったのだが、彼は自分でどんな風に演じたか覚えていなかった。そのくらい演技に良い意味で夢中になったからである。
影人がふと自分の意識を戻した頃には声優体験は終わりを迎えていた。一応茅原からのアドバイスは全員分聞いてメモは取っていたものの、終わりの挨拶をするそのタイミングまで夢中になり過ぎるくらい没頭していたのだ。
「あれ……もう……終わり?」
「お疲れ様、黒霧君」
「は、はい!茅原さ……」
「……良かったよ。黒霧君の演技」
「え?」
茅原からいきなり言われたのは褒めの言葉だった。それから先程影人が演技していた場面を彼女は思い返す。
「黒霧君の演技って、やっぱり人と人を繋げるのが上手いって言えば良いのかな」
「そうですかね……」
「他のチームを全部見てきた中で黒霧君のチームが一番纏まりが良かったと言えば良いのかな。私も上手く言い表せないんだけどね」
茅原自身も上手く話せてない様子だったが、彼女の中で影人の演技はそのままだとバラバラになりそうな演技をしっかり繋げて全体的に良い方に傾けてくれる。そんな演技をしているらしい。
「今回は役柄的にあくまで場面の補助役だったけど……メイン役をやった時にどんな演技をしてくれるか、今から楽しみになる演技だった。……あ、でもまだやるかは決めてないんだよね」
茅原がそこまで言った所で影人は何かを考えていた。そして、彼の考えが纏まったのか唐突に話を始める。
「……はぁ、後から俺の演技を自分で思い出すと……一回目の演技は傲慢過ぎたと思いますよ」
茅原は影人が話し始めたのを見て、その中身が自分の演技への反省だとわかるとそれに反応した。
「それはどうして?」
「自分は演技初心者で。声優のアフレコなんてやった事無いくせに……全体の演技を崩したらダメとか。周りのフォローばかりしようも考えて。そのせいで色々空回りしてたんですよね」
「そっか。……私としてはその答えが聞けただけで十分かな。黒霧君、二回目の演技してる時凄い楽しそうだったし」
茅原は自分の出した課題をちゃんと影人がクリアしてくれた事を微笑みながら褒める。それからふと茅原はある事を思い出すとアフレコブースに置いていた二つの人形……いや、妖精達を手にする。
「あ、そうだ。皆いなくなったし、忘れない内に返しておくね」
影人が周りを見渡すと二人で会話している間に他の生徒達はいなくなっており、部屋の中には影人と茅原の二人。加えて人形化したプリルン、メロロンだけだった。そのため、茅原は間違えて連れ帰らないようにプリルンとメロロンの二人を返す。
「茅原さん。今日はありがとうございました」
「良いのよ。影人君には声優を好きになってもらいたくて色々指導したんだから」
すると影人はふとある事を思い出すと茅原へと一言断ってから何かを取りに行く。
「茅原さん、すみません。少し待っててもらって良いですか?」
「良いけど……」
それから影人が自分の鞄を持ってくるとその中から八枚程ある何も書いてない色紙と黒いサインペンを出して茅原へと見せると。
「その……すみません。今日指導してもらえた記念にサインをお願いしてもよろしいでしょうか……。すみません、もう既に色々もらった後なのに」
「ふふっ。そのくらい良いよ。私の方こそあの時助けてもらったんだから」
茅原は慣れた手つきで八枚ある色紙に全てサインを書いていく。そんな事をやっているといつの間にかレイの父親であるハジメがやってきていた。
「やぁ、お疲れ様」
「お疲れ様です」
「社長、どうされたんですか?」
「折角体験が終わったのだから影人君に感想を聞きに来てね」
表向きはこんな事を言っているのだが、まず間違いなく改めての勧誘だろう。ハジメとしてはここで畳み掛けるつもりらしい。
「……ハジメさん。わざわざ聞かなくても答えはもう決まってますよ」
「ほう?では聞かせてもらおうか。君の答えを」
「俺は……もう一度目指します。声優として、あの場所を」
その言葉にハジメは笑みを浮かべる。期待通りの答えを返してくれたと。それならばとハジメは話をしようとする。
「そうか。君がやる気になってくれて……」
「ただ、養成所に入るのはもう少し待って貰いたいです」
「それはどうして?」
「俺は今回の体験でもう一度あの世界を目指したいと。もう一度頑張りたいって思えました。でも、それは周りで自分を後押ししてくれた人達がいるから。それを声優になるのを決めたからと言ってこのまま慌ててすぐ入るというのは……俺は嫌です」
影人は自分を助けて支えてくれる友達達との時間をこんな形で急に終わらせたくなかった。だからこそ猶予が欲しいと。声優の練習で自分の首が回らなくなる前に少しでも友達との時間を過ごしたいのだ。
「遅くても高校を卒業するタイミングには養成所への入所のためのオーディションを受けに来ます。なので、せめて今だけは……皆と繋がれたこの手を離したくありません」
その言葉にハジメは少し面食らった様子だったが、影人の顔を見ると微笑みを浮かべた。
「なるほど、確かに君の主張も最もだ。……それに、私も無理に今すぐ受けろとは言わない。そもそもうちの事務所に入る際の年齢の下限は中学卒業以降だからね」
「……え?」
「ただ、君がその気になってくれるのならうちにとって嬉しい事だ。いつでも待っているよ」
ハジメはそう言い残して去って行こうとする。それから数歩進んだ所で振り返った。
「……そうだ。君には二つ程お礼を言わないとだね」
「お礼……?」
「うちの茅原を救ってくれた事、それと……レイと仲良くしてくれてありがとう。これからもレイの事……よろしく頼むよ」
改めて彼はそう言ってその場から去って行く。影人はその様子を唖然としたまま見送る事になった。
「ハジメさん、やっぱり変わったなぁ」
唖然としていた影人の隣でサインを書いていた茅原が呟くように話を始める。
「昔は違ったんですか?」
「……うん。もっと余裕が無かったって言えば良いのかな。自分の目的のためだったら平気で他人の気持ちとかを理解せずに自分の意見を押し通そうとする人だったし。それで何人もの有望な人を逃してて」
「そう……なんですね。茅原さんは何でそんなハジメさんの元に着いて行ったんですか?」
「……それは、私があの人の言葉に救われたから……かしらね」
茅原からの言葉には重さがあった。つまり、この言葉は実際に茅原が体験した事なのだろう。
「それから、はい。書き終わったよ」
「すみません。こんなにも沢山書いてもらって」
「いえいえ。これ、お友達達に渡す分だよね?」
「はい」
影人は茅原に書いてもらった八枚のサイン入りの色紙とサインペンを返してもらうと長々と話すのは迷惑だろうと考え、影人は帰り支度をしようとする。
「黒霧君」
「ッ、はい」
しかし、そんな影人へとまだ言い残した事があると言わんばかりに茅原から声がかかった。それから茅原は影人と向き合う。
「改めて言うけど、声優として頑張るのは大変だよ。まず養成所の時点で生き残れない人もいるし、仮にデビューする事ができたとして声優業だけで生活する事自体難しいし、そもそも仕事が貰えない時もある」
「はい」
「黒霧君はそれにぶつかる覚悟……ある?」
茅原からの目は真っ直ぐ影人を見つめており、改めて影人の決意を問うものであった。
「あります。……その上で、俺は……茅原さん達と肩を並べられるようになりたい」
「ふふっ、私達の所に来る……か。わかった。黒霧君が来てくれるの、楽しみに待ってるよ」
影人は茅原と一つ約束した。それは絶対に彼女のいる場所に行く……と。茅原もその影人の覚悟を見て嬉しそうな顔を向けた。
「茅原さん、今日はご指導ありがとうございました」
「うん」
それから影人は茅原と別れると帰る事になる。そんな彼を見届けた茅原はこれからも自分が声優業界に残り続ける楽しみができたかのように嬉しそうな顔だった。
「頑張れ……黒霧君」
茅原は去って行く影人を見て、デビュー前に必死に努力をしていたあの頃の自分を重ねると彼から視線を外して自分の片付けを始める事になる。
そんな中、事務所の廊下で影人はレイと出会った。彼も見送りのためにわざわざ待ってくれていたらしい。
「レイ……」
「やっと夢が見つかったな。影人」
「聞いてたのかよ……」
「悪いな。でも、今の影人はとても楽しそうな顔をしてる」
「そうか?」
「そうそう……。影人、俺からも応援してるからな」
「プリルンも影人の事、応援するプリ!」
「にいたまなら絶対にできるのメロ!」
影人はプリルン、メロロン、レイからの応援を受けてますますこれから声優になるための準備を頑張ろうと考えるのだった。
今回で一応声優関連回は最後となります。と言うわけで茅原のCVについて、最後に発表しますね。まぁ、ここまでの声優関連回を見てたらバレバレではありますけど。
茅原愛衣……CV:茅野愛衣さん
次回からはアニメ25話の話に戻ります。それではまた次回もお楽しみに。