キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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いざひまわり畑へ バス内での話

影人達がななの家でお出かけを約束し、とうとうその当日。今現在、集合場所であるバス停には影人、こころ、レイ、夢乃の四人がいた。

 

前の約束のタイミングでは夢乃はいなかったものの、家に帰った影人がお出かけの話をした際に彼女もついて行きたいと言い出す事に。結局影人が夢乃もついてくる事を話した所、許可が出たので彼女も来たのである。そんな夢乃はいつも以上に嬉しそうな顔をしていた。

 

「夢乃ちゃん、凄い嬉しそうな顔をしてますけどどうしたんですか?」

 

「はい!お兄ちゃんがようやくやりたい事を見つけてくれて……ほんと……嬉しくて……」

 

こころに問われた夢乃は答える中で段々と涙が出てくるとそのまま嬉しさで泣き始めてしまう。それを見てこころは慌て始めた。

 

「夢乃ちゃん!?」

 

「あー、実は俺が声優を目指すって話をした時からずっとこうなんだ。その話をする度にこうやって泣いてる」

 

どうやら夢乃は影人が声優体験をして帰ってきた際にその旨を報告したらまさかのそれだけで嬉し泣きしてしまったそうで。その話をする度に毎回涙脆くなってしまうらしい。

 

「夢乃。お前今からそんな調子だとこの先にこれ以上の嬉しい出来事があった時に保たないぞ?」

 

「ぐすっ、うっさい……心配かけすぎなのよ……バカゲ兄……」

 

「ちょっ、そのバカゲ兄って言葉が幾ら語呂が良いからって多用すんなよ!」

 

影人は夢乃からの泣きながらの罵倒にツッコミを入れる。ただ、同時に影人がやる事を見つけてくれた事は夢乃にとって切実な願いが叶った事でもあるので感極まってしまったのだ。そのため、影人も言い返しつつも夢乃へとそれ以上強く言うことは無かった。

 

「お待たせ、皆」

 

「「なな先輩、おはようございます!」」

 

「蒼風さんも来たか」

 

そんな話をしているとななも到着。夢乃は慌てて涙を拭くとこころと共に彼女へと挨拶をする。それからななは真っ先にレイへと話しかけた。

 

「レイ君、忙しいのにごめんね」

 

「その事なら大丈夫だ。本当に偶々時間が空いて、来れる状態だったから来ただけだし」

 

レイもここ数日は度々家の事で呼び出しがあったものの、今日は時間が一日丸々空いたためにお出かけに参加可能となったのだ。

 

「ひまわり畑とかそういうお花畑って普段あまり行かないから凄い楽しみだな」

 

レイも出かけ先に関しては彼も同様に楽しみにしているため、ななもあまり興味の無い所に連れ出すという事態にならずに安堵の顔を浮かべた。

 

「レイ君も楽しみにしてくれて良かった……」

 

そんな時、夢乃はななの様子を見て何かを思ったのか隣にいた影人やこころへと小声で話しかける。

 

「あれ?なな先輩ってレイ先輩相手にこんなに話しかける人でしたっけ?」

 

「そういえば、ここ最近はその頻度が増えた気もするな……」

 

「なるほど……そういう事ですね」

 

するとこころは何かに納得が行ったかのように好奇心旺盛な笑みを浮かべた。それはまるで弄りがいのある面白そうな物を見つけた小悪魔のような顔である。

 

「……ああ、俺も何となくわかった」

 

「お兄ちゃんも理解するの早っ!?」

 

夢乃は二人の理解までのスピードの速さに唖然とし、そんな中でこころは夢乃へと状況を小声のまま解説した。

 

「恐らくなんですけど、なな先輩はレイ先輩に恋をしてるんです。カゲ先輩とお付き合いしている私の目に狂いはありません」

 

「あー……」

 

こころからの解説を聞いた夢乃も何となく納得の顔つきになる。少し前までは遠かった二人の距離感が近付いていて、それがななからの接近となると彼女がレイに片想いの気持ちを向けているという話にまで持っていく事ができるのだ。

 

そして、こころが妙に察しが早かったのも彼女自身の実体験を元に予想を立てられたからだろう。

 

「こころ、一応言っておくけど……」

 

「わかってますよ。あくまで私達はなな先輩の事を見守る……ですよね?」

 

「ああ。これは蒼風さんの恋だ。余計な手出しをするのは野暮だからな」

 

「お兄ちゃんがまともな事言ってる……」

 

「俺はいつでもまともだろ!?」

 

影人達がそう話をしているとななとレイの二人は三人でコソコソ話をしているのを見て気になってしまう。

 

「なぁ、お前らさっきから何の話してるんだ?」

 

「いえ、何でも無いですよ〜」

 

「本当に?」

 

「はい。私とこころ先輩で近況報告をして、お兄ちゃんにはそれに付き合ってもらってました」

 

レイはその言葉に首を傾げる。察しの良い彼は何か引っかかるようで、それだけの話なら別にヒソヒソとやる必要は無いのではと考えたのだ。

 

「なぁ、ただそれだけの話で……」

 

「そんな事よりも、あと三分で乗り込む予定のバスが来るんだけど……咲良さん知らないか?」

 

「「「「え?」」」」

 

レイが余計に気になって聞こうとすると影人はそれを遮ぎる形で重要な事を言い出した。時計の時刻は8時11分。バスでの移動時間を考えて集合時間を8時丁度くらいに設定した上で8時14分のバスに乗るつもりだった影人達。ただ、集合時間が過ぎてしまったのにまだ来ないうた。このままでは乗る予定のバスに乗り損ねてしまう。

 

「アイツまさかまた……」

 

影人がそう言った瞬間、どこからか慌てたような声と猛スピードで走ってくる何かが見える。

 

「うわぁああっ!遅刻遅刻ぅううっ!」

 

「うた先輩おはようござ……え?」

 

「ちょっ、うた先輩そのまま突っ込んだら」

 

こころや夢乃が慌てる中、走ってきたのは噂のうたであった。ただ、彼女はかなりのスピードが出ておりこのままではこの場所で止まる事はできないだろう。

 

「止〜め〜てぇええっ!」

 

「仕方ねぇなぁ。ほら、影人。肉壁になってこい!」

 

「は!?おまっ……ぶっ!?」

 

うたの叫びにレイはやれやれと言わんばかりに影人を無理矢理押し出してうたの走る直線上に飛ばすとうたは影人と正面から激突。それによってようやくうたは止まる事になるのだった。尚、影人はうたとの激突で吹き飛ばされて地面に仰向けに倒れて背中を打った模様。

 

「良かったぁあ……やっと止まれた……」

 

「まったく、夏休みだからって朝起きなさ過ぎるのメロ」

 

どうやら今回の遅刻はいつもの如く朝起きれなかった事による寝坊だった。そのせいで急いで準備して慌てて走った所、先程のように止まれなくなったようである。

 

「うた先輩、時間ギリギリですよ」

 

「えへへ、ごめんごめん……」

 

「うた先輩の時間ギリギリは相変わらずですね」

 

「あはは……」

 

こころと夢乃の後輩二人組がうたに対して指摘をする中、そのタイミングで影人達が乗る予定だったバスが到着する事になる。

 

「あ、乗る予定のバスが来たよ」

 

「それじゃあ、ひまわり畑にレッツゴープリ!」

 

「ねえたまやにいたまと一緒に綺麗なひまわり畑を見に行くのメロ〜」

 

ななの言葉にプリルンやメロロンは興奮気味な声を上げ、一同は乗り込んでいった。

 

「……何で倒れた俺に対して誰も触れないんだぁああっ!」

 

影人は完全にうたからのタックルの被害に遭ったのに誰も自分に触れてくれない現状を叫び、慌てて起き上がると急いでバスに乗る事になる。

 

それから少しして、バス停内部での事。影人達は合計6人で来たために一番後ろの席五つと後ろから見て右側の一つ前の二人座席を使用して座っていた。

 

後ろ五つには進行方向を正面にして右の窓側からなな、レイ、うた、こころの四人に真ん中の座席一つを使ってプリルン、メロロンの入ったポシェットを配置。右側の席には窓際から夢乃、影人の順で座っている。

 

バスは前日の雨の跡として水溜まりが残る山の中へと向かう道を走っていく。そんな中でプリルンが小声でうたへと喋った。

 

「お出かけワクワクプリ」

 

ただ、メロロンは自分が隣にいるのにプリルンがうたの方を向いているために嫉妬。不機嫌そうな顔になると一度気を取り直して話しかけた。

 

「メロ……。ねえたま、あーんメロ」

 

メロロンはプリルンに話しかける際にその手に飴玉を持っており、プリルンはそれを口の中に入れる。

 

「あーん!ん〜!甘いプリ!」

 

「メロロンも。あーむっ!ねえたまと一緒に食べようと持ってきたメロ」

 

それからメロロンも自分の分の飴玉を食べると彼女の口の中も甘い味でいっぱいとなった。二人揃って幸せそうな顔を見せる中でうたはそんな二人を微笑ましい目で見つめる。

 

「仲良しだね〜」

 

「見ないでメロ!」

 

ただ、やっぱりメロロンはうたへと敵対心を持ってるのかジロジロ見られるのは嫌なようで。

 

「やれやれ。メロロンは相変わらず咲良さんが嫌いって所か」

 

「えぇ〜……」

 

レイの言葉にうたが唖然としていると、レイは先程からずっと窓の外を見ているななが気になって声をかけた。

 

「蒼風さん」

 

「へ?」

 

するといきなり声をかけられてビックリしたのかななはレイやうた達の方を向く。

 

「さっきからずっと外を見てるけどどうしたの?」

 

「うんうん!」

 

レイからの質問にうたも同じ事が言いたいと言わんばかりに頷く。すると彼女は俯いた視線で話を始めた。

 

「……少し前からずっと、ザックリーさんの事を考えてたんだ」

 

「あ、この間の事?」

 

「そうなのじゃないのかなと思ってました」

 

「一昨日に蒼風さんの家で集まった時もちょくちょく話に集中できてない時とかもあったしな」

 

レイとの事もあるが、今のななの一番の悩みはやはりザックリーの事である。

 

「“嫌い”って言われてショックだった。でもね、ザックリーさんは私に“ありがとう”って言ってくれたの」

 

「“ありがとう”!?」

 

「蒼風さんの話は本当だよ。ザックリーがそれを蒼風さんに向けて言った所を俺も聞いた」

 

なながそれを言われた際に同じくその場にいたレイはななを擁護するように付け加える。ただ、影人達はザックリーのイメージ的にそういう言葉をかけるのは意外だったようだ。

 

「そんな事言うんですね。ビックリです」

 

「確かに意外だな。アイツも言おうと思ったらちゃんと感謝の気持ちとかも言えるんだ」

 

「私もビックリした。……もしかしたら、酷い事をするだけの人じゃ無いのかなって。それで、私に何かできないかなって考えてたんだ」

 

ななはこの前会った際に彼が苦しんでいるのを何となく察した。その上で彼女はお礼を言ってきたザックリーに対して彼の事を助けられるかもと感じたのである。

 

「何か……ですか」

 

「うん。……私、ザックリーさんとちゃんと話してみたいのかも。……そう簡単じゃ無いかもだけど」

 

ななの言う通り、ザックリーはチョッキリ団の一員でプリキュアの敵だ。そのため、正面から向き合って話し合うのは難しいだろう。ただ、それでもななは彼を助けるためにはその話し合いが必要であると感じたのだ。

 

「……良いんじゃない?」

 

「え……」

 

すると、ななの隣でレイはふと自分の意見を言い始める。それはななを後押しする内容だった。

 

「蒼風さんにとってそれが正解だと思ったんだろ?だったらまずはそれをやってみるべきだ」

 

「私も今のななちゃんの意見を聞いて、凄っごくななちゃんだって思った!」

 

「はい、思いやりのあるなな先輩らしいです!」

 

「なな先輩の優しさ、凄く伝わってきました!」

 

レイの意見に更に上乗せするようにうた達も賛同の声を上げる。そんな意見を聞いてななは嬉しそうに頬を僅かに赤らめる。

 

「それは、うたちゃんやこころちゃん。影人君にレイ君。プリルン、メロロン、夢乃ちゃん……皆に会えたから。そして、プリキュアになれたからだと思う」

 

ななはそう言いつつ、プリキュアになれてから自分は沢山変わる事ができたのだと考えると同時に昔の自分を思い出す。

 

「……昔の私ならザックリーさんの事、考えるだけで何かできるかもってきっと思えなかった。皆と出会えて、一歩踏み出す勇気を沢山もらったから……話してみようって思ったんだ。それにね、カッティーさんもキラキラを奪うのを止めてくれたでしょ?」

 

かつて、チョッキリ団に所属していたザックリーの同僚。カッティーはカッティンダーから浄化された事で悪事を止めてキラキラした性格になってくれた。彼ができたのならザックリーも同じように変われるかもしれない……。ななはそう信じたのである。

 

「うん、キラッキランランになってくれたよね!」

 

「ですね!」

 

「カッティーの時と同じように、ザックリーの心を浄化できれば……可能性は十分あるな」

 

先程から言及されている通り、カッティーの前例があるためにななの心は余計に前向きであった。

 

「だから、ザックリーさんもカッティーさんみたいに……」

 

「……光と闇は溶け合わない……。あんな人、放っておけば良いのメロ」

 

その場の全員が前向きな意見を話すそんな時だった。突如としてメロロンは気に入らないようにそう割って入ると突き放すように告げる。

 

「メロちゃん、流石に今のは……」

 

「いや、今のは多分メロロンだからこその意見だ。それに浄化するとは言っても具体的な手立ては特に決まってない。まずはそれを考えないとだな」

 

メロロンの言葉で空気が悪くなりかけるとすかさず影人がフォロー。どうにか話を前向きに戻す事になった。

 

「俺達も蒼風さんの考えをどうにか実現できるようにサポートする。だから、今はひまわり畑を楽しもう。そうしないと折角のお出かけが勿体無いからな」

 

「うん……」

 

レイからの言葉にひとまずこの話は終わりにしようという事になり、今はひまわり畑へのお出かけの方を楽しむ事に集中すべきだと話す。こうして、一時的にザックリーの話は終わる事になるのだった。




モチベーションが上がるのでお気に入り、感想、評価をもらえると嬉しいです。それではまた次回もお楽しみに。
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