キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ザックリーの話が一通り終わってから暫くして。影人達一行は目的のひまわり畑にまで辿り着いていた。
「「「「わぁああ……」」」」
女子組の四人が感激の声を上げる中、目の前に広がっていたのは一面のひまわり畑である。その中には枝分かれした道もあり、その道の端にはここに来るまでの道路と同じように所々水溜まりも存在していた。
「キラッキランラン〜!」
「ちょっ!?うた先輩!?」
「プリ〜!」
真っ先に興奮して駆け出すうたに驚く夢乃。その直後にうたのポシェットから出ていたプリルンとメロロンも空中に浮かんでおり、プリルンがその後を追う。
「やっぱり咲良さんとプリルンはそうなると思った」
「まぁ良いんじゃないか?」
「待ってください!」
「ふふっ!レイ君達も行こ!」
「メロ……」
影人達五人も後から先に飛び出した二人を追う事になり、早速一面のひまわり畑を堪能していった。
「夏だひまわり綺麗だね♪お日様キラキラ♪」
「プリプリプリプリ〜!」
うたはいつものように歌いながらクルクルと回転しつつ全身でひまわり畑にいる幸せを表現しており、プリルンも空中を飛びながらその後を追いかけていく。するとカメラを構えたメロロンがプリルンへと追いついた。
「プリ!」
「ねえたま〜!」
メロロンは早速ひまわりを背景にプリルンを撮り始めた。まずはひまわりの花の蜜を吸っている蝶達と共に一枚。更にひまわりをビーチチェアにしてバカンスをしているかのようなサングラス姿で寝転んだプリルンで一枚撮った。
プリルンの近くにはブルーハワイのジュースも置かれており、海で無いのに海でくつろいでいるような絵になっている。
「ねえたまとひまわり最高メロ〜!」
メロロンがプリルンを被写体にして写真を撮りまくる中、近くに来た影人と夢乃はそれを微笑ましい目で見ていた。
「メロちゃん、プリちゃんを撮ってご機嫌だね」
「ああ。ここもいつも通りだな」
「あ、にいたまと夢乃も一緒に撮るのメロ〜!」
「はいはい。じゃあ俺がカメラを自撮りで持つから画角に入ってくれ」
メロロンからの誘いに影人は乗ると自分がカメラを自撮り棒で持つ形となり、影人、夢乃、プリルン、メロロンの四人で撮る。尚、先程うたにプリルンとの時間を見られるのは拒否したメロロン。それなのに夢乃には心を許している所からやはりメロロンはうたの事を個別で嫌がっている様子であった。
「うたちゃん〜!」
「どこですか〜!」
「まぁ流石にひまわり畑のどっかにはいるだろ」
そんな中でななとこころはうたと離れて彼女を探しており、レイはその状態でもあまり気にしていない様子を見せていた。するといきなりガサっと音が鳴ると同時にうたがひまわりの生えている畑から飛び出してくる。
「ここだよ〜!」
「「うわあっ!?」」
うたからのいきなりの声にななとこころは思わず驚いてしまう。ただ、やはりレイには予測済みだったのか平然とした顔のままである。
「ビックリしました……」
「えへへ……」
「咲良さん、一応言っておくけど公共の場とは言えひまわり畑の中は私有地の可能性が高い。あまり変にひまわり畑の中に隠れるのは管理人さんに迷惑だからな」
「ごめんごめん……」
レイが自分達を驚かしてきたうたへと指摘をすると彼女は苦笑いする。そこに写真を撮り終えたであろうメロロンが幸せそうな顔をしていた。
「ねえたまの写真いっぱい撮れたメロ!」
「次は皆で撮るプリ!」
「うん!」
そんなわけで次は全員での記念撮影だ。配置は低身長組のうた、こころ、夢乃の三人が前列で中腰。高身長組の影人、なな、レイが後列で立つ形となる。そして妖精組のプリルンとメロロンは後列中央で立つレイに抱かれる事になった。
「行くよ〜!」
そして、前列中央に行く予定のうたがひまわり畑の中にあった休憩所の木製の机を台にしてプリルンのトイカメラで五秒タイマーをセット。後は時間内にポジションの場所に入るだけである。
「早くプリ!」
「うん!」
ひとまずうたが戻るまでの間に影人達はそれぞれのポーズを取って笑顔を作った。そこにうたが入れれば完璧……だったのだが。
「あれ?うわぁああっ!?」
「「へ?」」
「「「うたちゃん(先輩)!?」」」
「プリ!?」
まさかの肝心なカメラタイマーをセットして戻ってくる予定だったうたが戻ってくる最中で転んでしまう事態に。そして、転んでしまったうたは打ちつけたおでこが少し赤くなる中で声を上げる。
「うわぁあああっ!」
「撮りましょうか?」
するとそこに声が聞こえると一同がその方向を向く。そこには大量の草を乗せた農業用一輪車を押したここの管理人とも思えるような女性が歩いてきていた。どうやら先程のうたの声を聞いて自分が写真を撮る役をやるとの事だ。
「ぬいぐるみのフリプリ!」
「メロ!」
プリルンとメロロンは一般人に動いている所を見られるのはアウトなために二人揃ってぬいぐるみのフリをするべく動きを止めた。そして、うたは先程までの怪我はどこへやらと言わんばかりの元気さでトイカメラを差し出す。
「お願いします!」
「それじゃあ行くよ〜。はい!」
そのままの流れで無事に納得の行く写真を女性から撮ってもらえると一同は女性へのお礼を言う事になる。
「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」
その後、全員でカメラに収められた写真を見る。それにより、写真がブレ無くしっかり撮れている事を確認した。すると女性が影人達の向けた良い笑顔について言及する。
「皆良い笑顔!」
「だって、こ〜んなに素敵なひまわりだから!」
「これだけの数のひまわりがしっかりと成長して綺麗に咲き誇って。毎日丁寧なお世話をしないとここまでのひまわり畑にはならないでしょうしね」
「ふふっ、ありがとう!」
うたや影人がひまわり畑について褒めると女性は嬉しそうにお礼を言う。そんな彼女の反応に一同が疑問を浮かべると彼女は改めて自己紹介をした。
「私、夏野はなえ。ここは、ウチの畑なの!」
「え!?じゃあ、このひまわり畑は……はなえさんが育てたんですか!?」
「そう!」
どうやら先程農業用一輪車を押しつつやってきたという点で予想した通り、彼女はここのひまわりの管理人やっているらしい。それにしてもここのひまわり畑はそこそこ広さがあり、その範囲内のひまわりが元気に育っている所を見ると彼女がひまわり畑を維持するために行っている努力が窺い知る事ができた。
「この畑のひまわり全部って……」
「凄いです!」
「しかも、ひまわりがかなり育っている所を見ると途中で枯れた花もあまり無いんだろうな」
「こんなに沢山のひまわりの世話……きっと大変ですよね?」
「そうだね。暑いし、雨の日も風の日もあるし……大変な仕事かな」
植物は天候や周りの環境にかなり左右されやすい。現にここ最近は暑い日が異常なまでに多かったり、雨も強い雨が短時間に振るという事もある。更にこの時期は台風とかの心配も必要だろう。そのため、この畑を綺麗に維持するのはかなりの労力を必要とする。
「……それでも、こうやって太陽に向かってパーって咲いているひまわりが私、大好きなんだ!」
「ほんと、皆お日様に向かって笑ってるみたい」
「確かひまわりって、花が咲く前は太陽のある方角を花がずっと向き続けるようにしてるんだよな」
「それで花が咲いた後は動きを固定させて、東から登った太陽の光を浴びる。それによって虫とかが寄りやすくなってるんだよな」
影人とレイはうたの表現はあながち間違ってないという事を知識を交えつつ話す。ひまわりは英語でサンフラワーと呼ぶ。その名前の通り、太陽と縁の深い生態をしているという事だろう。
「まるでひまわりの花が毎日お日様とニッコリってしてる感じだね!」
「でしょ?……それに、ひまわりを見に来てくれる人達も皆楽しそうに笑ってくれる。それを見てると私も笑顔になっちゃう!……だから、この仕事が大好きなんだ!」
夏野からの言葉を最後まで聞いてななは少し考え込むような仕草を見せる。その脳裏にはやはりザックリーの事が浮かんだ。少し前、街でパトロールをしている際に出会った彼は“キラキラを奪うのが俺の仕事”という趣旨の話をした。
しかし、そんな彼の言葉は今目の前にいる夏野の言葉に比べるとやはりやっていて良い気持ち……なようには見えなかった。少なくとも、迷いがあるのは確かだろう。
「(ザックリーさんは……お仕事、大好きなのかな?)」
「……またザックリーの事?」
「え?……う、うん」
するとななはまたザックリーの事を考えてる所を見られたのか、レイから小声で話しかけられた。ななは驚きつつ彼へと頷くとレイは更に話す。
「……少なくとも俺は、夏野さんのようにやりがいをもって仕事をやれているようには見えなかったな。今のアイツは色々と複雑な心境を抱えているようにも思える」
「ッ……やっぱり、レイ君もそう思うの?」
「ああ。……ただ、それを無理矢理聞くのは難しいだろうな」
レイはどうにかザックリーに本音を曝け出させる何かが欲しいと考えていた。ザックリーの場合、自分のプライドが邪魔をして本心を中々言えないタイプ。そのため、まずは彼と本音で話し合える関係にならないといけないと考えていた。
「レイ君は何か考えはありそう?」
「……まだわからないな。もしかすると何回か話している間に気心が知れて、お互いに打ち解けられる可能性もあるけど……。その場合は時間がかかり過ぎるしな……」
レイの中にはある予感があった。ザックリーの説得に時間をかけて、彼を長い間チョッキリ団に置いておくと今度はそれがチョッキリーヌやスラッシュー等の上司格……若しくはダークイーネに直接洗脳しにかかるのではないのか……と。
実際、今の所はカッティーがチョッキリ団を辞めようとした事態に陥っているのでザックリーの説得に時間をかけるとカッティーと同じように迷っている心につけ込まれてしまう可能性は高い。
「とにかく、私はザックリーさんを助けるよ,」
「……ああ。蒼風さんならそう言うと思ってた」
レイはそう言ってななの意思を尊重。あくまでザックリーは助けるという方向性で動く事になる。
「それじゃあ、君達の時間を邪魔するのも悪いし。私にも仕事があるからそろそろ行くね」
「はい!写真を撮っていただきありがとうございました」
ななとレイの二人が小声で話をしていた間にも影人達の会話は進んでおり、それが終わったためにお礼を言って彼女と別れる事になるのだった。
「夏野さん、凄い人でしたね」
「はい。夏野さんのひまわりへの愛が伝わる話でした!」
「そうだ。プリルン、メロロン。もう大丈夫だぞ」
影人がぬいぐるみのフリをしていたプリルンやメロロンへと声をかけると二人はすぐに動き出す。彼女達にしては珍しく今回は自分から勝手に動くことは無かった。
「プリ!夏野さんも凄っごくキラキラしていたプリ!」
「よ〜し、それじゃあ私達も折角ひまわり畑を見に来たんだからもっとこの畑を堪能するぞ〜!」
うたは元気いっぱい、気合い十分と言わんばかりの声色でひまわり畑を見て回ろうとする。……そんな時だった。突如としてうたのお腹の虫か“ご飯を寄越せ”と言わんばかりに鳴り響く。
「……あっ」
うたが鳴らしたお腹の音に一同はすぐに気がつくとその方向を向く。うたは一斉に視線を注がれた事で苦笑いした。
「えへへ……お腹空いちゃったみたい」
「うた先輩……」
更に追加と言わんばかりにプリルンのお腹の虫も鳴ってしまった。本当に似たり寄ったりな二人である。
「プリルンもお腹空いちゃったプリ」
「仕方ないな。時間的にもそろそろお昼だし……ご飯にするか」
こうして、影人達はひまわり畑から出るとご飯を食べれそうなスペースを探しに行く事になるのだった。
同時刻、チョッキリ団のアジトにて。そこではザックリーが虚ろな目を向けていた。理由は当然昨日のスラッシューの対応である。
「スラッシュー様……どうしちまったんだよ」
あんなにも自分を助けようと優しくしてくれたスラッシューが昨日は完全に自分を切り捨てようとしていた。そのため、彼女のその豹変ぶりについて行けなかったのである。
「はぁ……アイツの事もあるし」
ザックリーはスラッシューの事から切り替えると手にしたななのハンカチを見る。あの日、返し忘れて以降。彼はずっと持っていたのだが、それを洗う事自体は前日戻ってから一応やってはいた。
「くーっ!……何でアイツの事考えると胸の辺りが変になるんだ!」
ザックリーの心は揺れ動いている状態で、このままではまともに仕事ができないと考える。するとそこに彼にとって一番来てほしくない人物が現れた。
「一人でズル休みしてサボっていたくせにな〜に真面目くさった顔してんだい?」
それはいつの間にかザックリーの帰還を聞いたチョッキリーヌである。彼女は一度ザックリーにサボりをされたため、自分が行かざるを得ない事態になった事を根に持っていた。
「あ、ザックリそんな事ねえっすよ……」
「早く行きな!アンタがサボってた分とカッティーがいない分、仕事が溜まりに溜まってるんだよ!」
「……う、少しくらいチョッキリーヌ様が連勤でも良いじゃないっすか。ずっとサボってたんだし」
ザックリーはあまりの酷い仕打ちに思わずその言葉がボソッと漏れてしまう。そしてチョッキリーヌはそれを聞き逃さないわけで。
「はぁ?何を言ってるんだい?」
「ひぃいっ!?い、いやぁ。この前俺、一度フラッフラで倒れそうになっちまったんすよ。休まないとマジでヤベェっつーか」
ザックリーはあまりの剣幕に尻込みしてしまうが、それでもここで反論しないと強制出勤のためにどうにか休みを勝ち取ろうと抵抗する。
「甘えてた事言ってるんじゃないよ!世界をクラクラの真っ暗闇にするまで、アンタに休みなんて無いんだからね!」
しかし、どうにもチョッキリーヌはザックリーがいかないと納得がいかないのか。ザックリーへと怒りをぶつけるかのように詰め寄っていく。このままではお手上げと言った時……彼の脳裏にななからの言葉が浮かんだ。
『誰にだって休息は必要です。偶には、自分を癒さないとダメですよ』
「……」
ザックリーがその言葉に顔を赤くしているとチョッキリーヌは中々首を縦に振らないザックリーへと苛立ち。顔を両手で挟むと無理矢理行くように投げ飛ばす。
「ほぅ……ら!さっさと行っておいで!それがアンタの仕事だろ!」
「うわぁああっ!イェスボォス!」
流石にここまでされるとザックリーはどうする事もできず……こうして、ザックリーは抵抗虚しく無理矢理にも出勤させられる事になるのだった。
「はぁ……ザックリーにも困ったものね……。ジョギ」
「はいはい」
そんな様子を物陰から見ていたスラッシューはザックリーが行かない現状に溜め息を吐くとジョギを呼ぶ。
「ザックリーの見張り。任せても良いかしら?」
「へぇ?それは何で?」
「……今のままでは確実にアイツはここを去る。もしそう思ったら容赦無く闇を注いで欲しいからよ。私へとそうしたようにね」
「良いでしょう。お任せください」
ジョギは笑みを浮かべるとスラッシューからの指示に従い、ザックリーを追って早速出て行くことになるのだった。
モチベーションが上がるのでお気に入り、感想、評価をもらえると嬉しいです。それではまた次回もお楽しみに。