キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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ひまわり畑での休息 ザックリと揺れ動く心

チョッキリーヌに無理矢理出撃を命令されたザックリー。彼はいつも通り空中……では無く、珍しく地上を歩いて移動していた。

 

「(俺はチョッキリ団。キラキラを奪うのが仕事……)」

 

ザックリーはここ最近おかしくなってしまった自分の思考回路をどうにか正すために改めて自分のやるべき事を考える。……しかし、その考えが逆に気に入らなかったようでザックリーは首をブンブンと横に振った。

 

「(って、何真面目な事言ってんだ!らしくねぇ!)」

 

ザックリーはそれから改めてななから渡されたハンカチを見つめる。そして、それを見るという事はななの事を意識するわけで。

 

「(……アイツ、俺の事を心配してくれたな。……なのに)」

 

ザックリーは改めてななことキュアウインクに自分が別れ際に何を言ったのかを思い出す。

 

『くっ……俺に優しくするな……。アイドルのくせに彼氏まで作って……お前なんか、嫌いだ!』

 

当時彼は色々と脳内が混乱していた。加えて、更にななに優しくしてもらった影響で恥ずかしくなるとそのまま彼女を罵倒してしまう。しかも、彼氏に関しては完全なザックリーの誤解だ。

 

「だーっ!もう!クソ!何であんな事言っちまったんだ。……アイツに会ったら、ザックリどうすりゃ良いんだよ……」

 

ザックリーの思考はななの事ばかり。これから仕事をしようとすれば、遅かれ早かれななことキュアウインクと会ってしまう。この前の発言が無ければもっとやりやすかったのだろうが……今更言ってもどうしようもないのは確かであった。

 

「どうするマジで……。せめて、アイツがいなさそうな所でやらないと……」

 

ザックリーはななと接触してしまえば仕事がやりにくいため、今回は敢えてはなみちタウンの街中……では無くその街外れへと向かって行く。影人達プリキュアの拠点から離れる事で極力彼らと会わないようにしようと考えたのだ。そんな彼が向かった先は皮肉にも影人達の今来ているひまわり畑の方だったが、それをザックリーが知る由も無かった。

 

そんな中でトボトボと歩いて行くザックリーを空中に浮かびつつ上から見つめる影が現れる。それはスラッシューからついて行くように指示されたジョギであった。

 

「……スラッシュー様からの命令で観に来たけど、やっぱりあの人の予想された通り。……君がそんなんじゃ、ダークイーネ様にご迷惑だよ?」

 

ジョギはフードの中から笑みを浮かべつつザックリーを見張る。ザックリーの様子を見ると彼の精神は不安定であり、このまま行けば自分が介入する必要がありそうだと思っていた。

 

「それにしても、スラッシュー様の心の矯正も上手く行って少し安心ですよ。ダークイーネ様が何故スラッシュー様を特別視するかは知らないけどね」

 

そう言いつつジョギは一旦ザックリーを追いつつ一旦その場から姿を消す事になる。

 

場面は変わってひまわり畑。そこではお昼休憩にするべく木々が生い茂るその下で影人達がレジャーシートを広げていた。

 

「お弁当〜♪お弁当〜♪」

 

「咲良さん、ノリノリだね」

 

「うん!山登りの時は色々あって楽しめなかった所はあったけど、今は皆で楽しく食べられるのが嬉しいんだ」

 

「あー……。そう言えばそうだったなぁ」

 

山登りの際はプリルンが記憶喪失であった事もあり、楽しむより思い出してもらうに比重を置かざるを得なかった。そんな事情も含めて純粋に外でこうしてご飯を楽しく食べられるのは今回が初となる。

 

それから早速それぞれのお弁当が広げられるとまずはプリルンがその中身を見て興奮したような声を上げた。

 

「タコさんウインナープリ!」

 

彼女は早速うたの弁当に入っていたタコさんウインナーに目を奪われていたのだ。

 

「プリルン大好きだもんね!」

 

「ほんと、こっちの世界に来てから記憶喪失の時期を除いて一貫して好きだからなぁ」

 

「プリちゃんがタコさんウインナーが大好きなのは……やっぱりうた先輩のお陰だって事を改めて思い知った気分です」

 

するとそんなプリルンへとメロロンからの声がかかる。今回はメロロンも家でお弁当を作ってきたのだ。

 

「ねえたま、メロロンも持ってきたのメロ」

 

「プリ?」

 

「メロ!」

 

プリルンがメロロンからの言葉を聞いてその方向を向くと彼女は“ジャーン”と言わんばかりにそのお弁当を見せる。そこにあったのは中央に一際大きなタコさんウインナーをデカデカと置いて、その周囲に小さなタコさんウインナーを敷き詰めた正しくタコさんウインナーが主役のお弁当であった。……とは言っても全部タコさんウインナーというわけでは無いのか、ブロッコリーやカリフラワーと言った細々とした野菜も入っている。

 

「うわっ!?」

 

「「タコさんウインナーが……」」

 

「大きいプリ!」

 

この弁当を見たうたは驚き、ななとこころは口を揃えて呟くとプリルンはタコさんウインナーが見た事無いくらいの大きさであったので口から思わず涎が出てしまうくらいに食べたそうな顔をしていた。

 

「はっ、はっ、はっ、は〜プリ!」

 

プリルンがまるで大好物を目の前に出されて興奮した犬のような反応を見せる中、プリルンの注意を独り占めにできたためかメロロンはうたへとドヤ顔を見せる。

 

「メロ!」

 

「あはは……」

 

「流石にこれはメロロンの勝ちだな……」

 

「ふふっ、メロロン。一生懸命準備したんだろうね」

 

うたがメロロンの行為に苦笑いを浮かべ、レイは完全にメロロンがプリルン争奪戦を制したと言わんばかりにコメントを残す。ななはプリルンのために頑張ったメロロンを微笑ましい顔で見ていると影人と夢乃は未だに唖然としていた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。アレ……どうやって作ったんだろ?」

 

「ああ。タコさんウインナー……と言うよりはまずウインナーの話になるが、そもそもこのタコさんウインナーはサイズがデカいからそれを作らないとだけど……」

 

普通、こんなにデカいウインナーを作ろうと思ったらそれなりの準備が必要なのだが……メロロンの事である。前にお料理対決をした時のような錬金術にも近い料理方法を使ったのだろう。また、それをやるという事でそれなりの量の食材を消費したはず。影人はここにはいない田中へと思わず同情の気持ちになってしまうのだった。

 

「あ、そうだ。メロちゃん」

 

「メロ?」

 

「頑張ったメロちゃんにご褒美の……はい。カニさんウインナーだよ」

 

夢乃が差し出したのは影人と夢乃の弁当に入っていたカニさんウインナーである。

 

「メロ!!良いのメロ?」

 

「うん!あとここだけの話……これ作ったのお兄ちゃんだから」

 

「メロ〜!にいたま、ありがとなのメロ!」

 

メロロンはプリルンがメロロン作の巨大タコさんウインナーを頭から頬張るプリルンの隣で影人が作ったカニさんウインナーを美味しく頂く事になった。

 

「は〜むっ!にいたまのカニさんウインナーは格別なのメロ〜!」

 

「それは良かった」

 

「メロ?ねえたま、付いてるメロ」

 

「ありがとプリ!」

 

メロロンは自分で夢乃から貰ったカニさんウインナーを食べるとその味に思わず舌鼓を打ち、それからふとプリルンの方を向く。するとプリルンは自分の頬にタコさんウインナーの細かい食べカスが付いており、それを見つけたメロロンは手にしたハンカチで拭いてあげるのだった。

 

「さてと。こころ」

 

「何ですか?カゲ先ぱ……」

 

「はい、あーん」

 

「……ふぇ?」

 

こころは影人に呼ばれると最初、その理由がわからなかったために振り向きつつ疑問符を浮かべる。しかし、それと同時にこころの目の前に差し出されたハンバーグの欠片。こころはまさか真っ先に自分へと“あーん”をして貰えるとは思わなかったので唖然としてしまった。

 

「か、か、カゲ先輩!?これって……食べて良いんですか?」

 

「ん?何言ってるんだよ。食べて良いに決まってるだろ」

 

「で、でもこれって……あっ」

 

こころは最初、ハンバーグを丸ごとでは無く一口分出されたために間接キスを連想すると慌ててしまう。ただ、こころが改めて影人の弁当を見るとそこにはこころに出された分だけ欠けたハンバーグがあった。つまり、影人はまだハンバーグを一口も食べていない。

 

そのため、心配していた間接キスにはならないのだ。……ただし、影人が使っている箸は既に影人が自分で少し弁当を食べるのに使ったので……という事である。

 

「じゃあ、いただきます……はむっ」

 

こころはそんな初歩的な所に気づく事なく影人から差し出されたハンバーグを口にした。

 

「……美味しいです。カゲ先輩!もしかしてこれも……」

 

「ああ。俺が作った」

 

「そうなんですね……。やっぱりカゲ先輩料理上手過ぎ……自信無くしちゃいますよ」

 

こころは影人の作った料理の美味しさに感嘆し、同時にこのままでは仮に将来的なお付き合いがあっても自分の出る幕が無くなってしまいそうで危機感を覚える事になる。

 

「影人って本当に何でもできるよなぁ……正直羨ましい」

 

「え?レイ君って私達の中では結構何でもできるイメージだけど……」

 

「確かにできる事は多い方だよ。……けど、多分二人で面と向かって対決したら完成度が高いのは影人の方だからさ」

 

「私は、そんなの気にしないけどなぁ……」

 

なながそう呟く中、楽しいご飯の時間はあっという間に過ぎていく。それから少しして。全員が食べ終わるとプリルンは大きなタコさんウインナーを食べた影響か、お腹がかなり膨らむとメロロンの体を枕にして寝転んでいた。

 

「お腹いっぱいプリ……」

 

「メロ〜」

 

メロロンはプリルンに寝転んで貰えて彼女も彼女で幸せそうな顔をしている状態であり、うた、こころ、夢乃の三人もレジャーシートの上で寝転ぶと沢山ご飯を食べられて気持ち良さそうな顔を浮かべていた。

 

「食べたね〜」

 

「ひと休みです……」

 

「美味しかった〜」

 

「お前らなぁ……」

 

影人はあまり食後の直後に寝るのは良く無いという事でご飯後に襲ってきた少しの眠気を我慢している状態である。

 

「皆ひまわり畑に来て羽目を外していたからな。仕方ないだろ」

 

「それはそうなんだけどな……」

 

影人は“やれやれ”と言わんばかりの顔つきになるとその近くでななが立ち上がるのを視界に入れた。

 

「……あれ?蒼風さん、どこかに行くのか?」

 

「え?ああ、うん。ザックリお散歩にね」

 

「なるほど、ザックリお散歩……あれ?」

 

影人はななの口から出てきたザックリという言葉に耳を疑うとその言葉が聞き間違えじゃないと言わんばかりに寝転んでいたはずの女子組の三人と妖精二人が声を上げる。

 

「「「「「ザックリ!?」」」」」

 

ななが移動のためにレジャーシートの外に置いていた靴を履くとそのタイミングでレイも彼女へと声をかける。

 

「あ、蒼風さん。俺も一緒に行くよ」

 

「うん、一緒に行こっか」

 

レイも行くという事で彼も立ち上がって靴を履くとそのまま二人でまたひまわり畑の中へと入って行くことになるのだった。

 

そして、ひまわり畑を二人で歩くななとレイ。中でもななの方は歩きながらキュアウインクとしての持ち曲である“まばたきの五線譜”を口ずさむ。

 

「きらめきへ踏み出そう〜♪受け取った勇気つないで♪」

 

「珍しいね。蒼風さんがそうやって歌を口ずさむの」

 

「うん……。こうしてお日様に向かって咲いているひまわりを見ているとね、このひまわり達がキラキラ輝いているように見えるの」

 

ななはそれから片手で直射日光を避けつつお日様に向かって花を咲かせるひまわりを見つめていた。

 

「……そう言う蒼風さんも凄い煌めいてるよ」

 

「えっ!?」

 

ななはレイから褒められると胸の辺りにいつも以上の暖かさを感じる。すると胸に手を当てると少しだけ心臓の鼓動がいつもより早くなっていた。

 

「ッ……」

 

「前と比べて蒼風さん、一歩踏み出せるようになったから……余計にそう感じるのかもな」

 

「レイ君……」

 

レイの言葉にななはほんのり顔を赤らめる。そして、同時に彼女は感じ取った。今の自分はレイとの時間を他の誰かと過ごすよりも特別な時間として過ごせている……と。

 

「そういうレイ君も……輝いてるよ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「ううん。何でも無いよ」

 

レイはタイミング悪くななからの言葉を聞いていなかった。そのため、ななへの質問ははぐらかされてしまう。その後、二人はひまわり畑の中を歩いて行くのだった。

 

同時刻、ザックリーもなな達のいるひまわり畑に来るとひまわり畑に広がるひまわり達がキラキラしている事に顔を顰める。

 

「くーっ、たくっ。目障りなキラキラだぜ。だが、ここならアイツらはいないはず」

 

しかし、ザックリーの予想通りならここにプリキュアは現れないはずだ。それでも万が一はあるために彼は一応最悪の事態を想定した動きも練る事にした。

 

「……もし、ザックリ会っちまったら……。さっさと謝って、コイツを返して……」

 

ザックリーは何だかんだ言いつつも、結果はななの事を考えてしまう。少なくとも、彼女の持ち物であるハンカチを返さないといけないという思考が頭から離れない。そう考えるとやはり彼の根は真面目なのだろう。

 

ただ、運命というのは残酷であった。ザックリーがひまわり畑の曲がり角を曲がると彼は正面を見て慌てる事になる。

 

「んなっ!?お、お前ら……」

 

「えっ!?ザックリーさん!?」

 

「まさか、お出かけ先のここで会うとはな」

 

ザックリーの視線の先にいたのはひまわり畑を歩いていたななとレイであった。流石にこのタイミングでのエンカウントはザックリーも想定外であり、そしてそれはなな達も同じである。

 

こうして、ザックリーは心の準備が完全に整う前にまさかの脳裏に浮かんでばかりだったななとレイがいる状態で出会ってしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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