キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ひまわり畑を歩いていたななとレイ。二人とバッタリ出くわしたザックリーはそんな二人を見て思わず慌ててしまう。
「なっ……お前ら、何でここにいるんだよ」
「……ただの夏の想い出作りだよ。悪いか?」
「いや、悪いとは言わねぇよ……」
ザックリーの質問にレイは平然としたまま答えを返す。ザックリーはそんな彼に少し動揺の色を見せると思わずある事を口走った。
「……やっぱりお前ら、仲良いんだな」
「えっ……」
ザックリーから漏れ出したその言葉にななは目を見開く。それから彼女が振り向くと割と近くにレイがいた。ななはこの状況に僅かに気恥ずかしさを覚えたのかザックリーへと謝る。
「ご、ごめんなさい!」
「べ、別に謝ってほしいわけじゃねーよ。……それに、この前はその……誤解して言い過ぎたわけだし」
二人はまたザックリーから関係性について問われると思っていたために身構えていたが、まさかの謝罪の言葉を聞いて思わず顔を見合わせた。
「あの時は二人が近くて妬いちまっただけだ……。今度は同じ誤解はしねーよ」
「そうか。今はそうしてくれると助かる」
レイからの言葉にザックリーは納得する。ちなみにレイの“今は”という言葉はあくまで二人が現時点で付き合ってないのに付き合っていると誤解される事に対しての表現だ。
「あ、それでザックリーさんはどうしてここに?」
「え!?えっとそれは……」
ザックリーは逆にななから問われてしどろもどろになってしまう。そんな中でも彼はどうにか勇気を振り絞ると手にしたななのハンカチを見せた。
「それって……」
「ああ、ザックリこれを返しに……」
ザックリーがそう言いかけた瞬間。差し出したななのハンカチはフワリと風によって彼の手からずり落ちてしまう。
「え!?あ、ヤベェ!」
そのままハンカチは三人の間にあった水溜まりの中に入ってしまうと白く綺麗だったそれは泥の色に染まってしまう。
「あっ!!」
「ッ!」
「あっ!なんてなった!折角洗濯したってのに」
レイはザックリーがハンカチを落としてしまった事に何かを言おうとするが、彼は慌ててしゃがむとそのハンカチを拾って必死に泥を落とそうとしていた。しかも彼の口振りを見るに、ハンカチはちゃんと洗濯をした上で返そうとしていたらしい。
「……ザックリー、お前」
レイの目には今のザックリーはキラキラと輝きが発せられているように見えていた。そのくらい、今の彼は輝いて見えたのだ。そして、そんな彼をななもしっかり見ていたようで。ななの視点からもザックリーのキラキラは見えていた。
「きらめきへ踏み出そう〜♪」
「蒼風さん」
ななはそんなザックリーの暖かさが嬉しくなると歌いながら彼へと歩いていく。そんな彼女をレイは見つめる中、ザックリーはどうにか汚れたハンカチをどうにかしようとしつつ声を上げる。
「何で俺は……ザックリいつもこうなんだよ!」
ザックリーが自分のやってしまった事を後悔していると彼の正面。丁度レイの近くの上空。そこに一人の男が姿を現す。それはザックリーを見張りに来ていたジョギであった。
「あーあ。結局スラッシュー様の言った通りか。……だけど、丁度良い」
するとジョギは左手でチョキを作るとそれを右眼へと持っていき、そのチョキを通す形でザックリーを見る。チョキが何かのフィルターの役割を果たすとジョギはザックリーから立ち上る真っ暗闇を視認した。
「アイツは真っ暗闇を持ってるみたいだし、良い機会だ。……スラッシュー様にかけた封印とは別の力も試してみよう」
ジョギは今回のなな達との会話で完全にザックリーがチョッキリ団から離れる道を選択したと判断。スラッシューからの言いつけ通り、彼へと闇を注ぎ込む事にした。
そんな時、下でハンカチの汚れを落とそうとしたザックリーは水溜まりの水面に映る自分の知らないメンバーであるジョギを確認。思わず上を見上げて声を上げる。
「え?誰だお前!?」
「ッ!?」
「ザックリーのこの反応……まさか!」
ザックリーの急な声にななは驚くと同時にレイも上を見上げた。何となくだが、そこにザックリーの言葉の元凶がいると察したのである。しかしもう遅い。ザックリーは完全にターゲットにされてしまった。
「光の中にも闇がある。君の闇を……見せてごらん」
ジョギが指を鳴らすと同時にスラッシューの時と同様でザックリーの胸から漆黒のリボンが飛び出す。
「うわぁああっ!?」
「綺麗だね……呑まれると良い」
ジョギがそう告げると結ばれていたリボンは解かれていき、彼の体がリボンから発生した闇のエネルギーで包まれるとジョギがそれを左手に構える。もう片手にはいつもの水晶では無く、更に刺々しい形をした新たな赤い色の水晶を手にしていた。
「さぁ、おいで!」
ジョギはそこからはいつものチョッキリ団がマックランダー及びクラヤミンダーを召喚する時と同じように両手を合わせるとそのまま地面へと叩きつける。
同時にザックリーのその体は変化。以前カッティーがダークイーネによってカッティンダーと化してしまった時と同じようなロボットのような姿の怪物として降り立ってしまう。
「ザックリンダー!」
カッティンダーの場合、当初は胸にある赤い鋏が少し丸みを帯びた形であった。しかし、ザックリンダーの場合は最初から胸の赤い鋏が鋭利になっている。この事から今のザックリンダーは強カッティンダーと同じような力を持った状態であると察せられた。
「ザックリンダー!?」
「カッティーの時と同じか……こっちもあの時より強くなってるとはいえ……嫌な敵が出てきたな」
レイはザックリンダーの登場に苦い顔を浮かべる。それは、以前強化されたカッティンダーを相手に打ちのめされてしまったプリキュア達の姿であった。あの時の再来になってしまわないか、レイはそこが不安なのである。
「嫌いだ!嫌いだーっ!俺なんて、自分嫌いだー!」
ザックリンダーはそう叫びながらひまわり畑を踏み潰して荒らしていく。そんな中、ひまわり畑にいた他の一般人達は突如とした怪物の登場に慌てて逃げ惑う事になる。
「蒼風さん!」
そんな大暴れのザックリンダーに対して呆然と見ているだけしかできなかったなな。そこに休んでいた影人、うた、こころの三人とプリルン、メロロンが合流。
「夢乃ちゃんは……」
「先に避難するように伝えた。余程の事が無ければもう安全だと思う」
ななは夢乃がちゃんと避難したという事実を聞いてホッとした顔になる。それからうたが声をかけた。
「ななちゃん!アレって……」
「アレは……ザックリーさんが……」
「アレ、ザックリーなんですか!?」
こころが驚きの声を上げるとザックリンダーは右腕でひまわり畑を薙ぎ払い、メチャクチャにしていく。流石にここまで暴れられるとこれ以上の放置はできなかった。
「ザックリーさんを止めなきゃ……」
「レイ君は急いで避難を」
「ああ。そうしないとヤバそうだしな」
「行こう!」
レイはうたに促されてその場から離れていく。そして、残された六人は早速プリキュアへと変身する事になった。
「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!YEAH♪」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」
まずはアイドルプリキュアの三人が変身してチーム名を名乗る。その後、ズキューンキッスソウルへと移行した。
「「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ショータイム!YEAH♪」」」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「ハートをメラッと熱くする!キミと高まれ、キュアソウル!」
「ズキュッと!」
「夢中で!」
「熱くなる!」
「「「We are!ズキューンキッスソウル!」」」
こうして、プリキュアが六人揃うと目の前に立ち塞がるザックリンダーと対峙。構えを取るとまずはザックリンダーが先制する。
「ザックリービーム!」
「くっ!?キッスの力、ソウル……」
ソウルはザックリンダーから放たれるビームに対して咄嗟にソウルディフェンダーを使おうとした。しかし、そのビームの向かう先はまさかのひまわり畑である。
「はぁ!?お前俺達は眼中に無しかよ!」
「ザックリーさん、止めて!」
ウインクがどうにか説得しようとするものの、やはりザックリンダーには届かない。そのため容赦無く彼は攻撃を継続した。
「ザックリーパンチ!」
今度はザックリンダーの左腕がロケットパンチのように肘の辺りで分離して射出。それが地面ごとひまわり畑を抉っていく。その後、戻ってきたザックリンダーの左腕は彼の腕に合体。そのままもう一度構える。
「ザックリもう一発!」
「ザックリーさん!」
「キラキラなひまわり畑をメチャクチャにしないで!キッス!」
「はい、お姉様!」
自分達を無視してまでひまわり畑を破壊しにかかるザックリンダーにズキューンとキッスは黙っていられずに飛び出すとまずはキッスが彼の動きを止めにかかる。
「チュッ!キッスショック!」
キッスから放たれたハート型のエネルギーはザックリンダーへと向かっていく。これを受けて怯んだ相手をズキューンバズーカーで吹き飛ばすのが王道パターンだ。
「ザックリーアーム!」
「えっ!?」
しかしその瞬間、突如ととしてザックリンダーが右腕を後ろに向かって伸ばすとそのまま伸びた腕を利用してキッスショックを思いっきり引っ叩く。
「ッ!?ヤバい!」
跳ね返されたキッスショックは地上にいるアイドル達の方に向かう中、ソウルが今度こそ召喚したソウルディフェンダーを使用。電撃を放って空中で爆発させた。味方とは言え、あの技に直接触れるのは色々と危険だからである。
「ッ、だったら!ズキューンバズーカー!」
今度はズキューンがバズーカーを放つ。キッスショックによる牽制が無いが、今はそんな事言ってられない。
「ザックリーバースト!」
しかし、今度は胸の赤い鋏の部分からエネルギー砲を放ち、そのパワーでズキューンバズーカーを相殺。止めてしまう。
「嘘、これでもダメ!?」
「ザックリンダー!」
するとザックリンダーは動揺したズキューンとその近くに着地したキッスへとダブルスレッジハンマーを落とそうと構える。それに対して飛び出したのはアイドルだ。
「任せて!アイドルグータッチ!」
アイドルが踏み込むと攻撃を繰り出すために両腕を上に上げたため、ガラ空きとなったザックリンダーの胴体部分へと拳が命中。
「ザックリ!?」
「チャンスです!キュンキュンレーザー!」
そこにダメ押しを加えるべくキュンキュンからのレーザーが放たれる。しかし、流石は幹部の変身した敵と言うべきか。すぐに立て直してきた。
「ザックリービーム!」
ザックリンダーがバランスを崩してもすぐに放てる技である目からのビームでキュンキュンレーザーを迎撃。すかさず二度程追加で放つとプリキュア達を牽制した。
「ビーム!ビーム!」
「ザックリーさん……もうやめて……」
ザックリンダーがまた周りを壊そうとする中、ウインクは苦しみながらも暴れるザックリンダーに止まってほしいと考える。
「ッ……中々手強い」
「カッティンダーの時程絶望感は無いけど、それでもいつものクラヤミンダーよりはかなり強いな」
キッスやソウルがザックリンダーの強さに呟いているとそれでもここで退くわけにはいかないとアイドル、キュンキュン、ズキューンが飛び出していく。
「隙ができるとすぐひまわり畑を狙いますね!」
「私達でどうにか気を引こう!」
「うん!」
「仕方ない。やるか!」
それからソウルも三人に加勢するべく先に行くとそのタイミングでウインクはキッスへと声をかける。
「ねぇ、キッス」
「?」
「さっき、光と闇は溶け合わないって言ってたでしょ?」
「ッ、えぇ……」
「そうかもしれない。でも、私はザックリーさんとちゃんと話をしたいの!」
「ッ……でも、そんな事……」
キッスは今のザックリー相手に説得が通じるとは思えなかった。それなら先程バスの中でレイが言った通り問答無用で強力な浄化技をぶつけた方がまだマシだと考えているくらいだ。
「「「きゃああっ!?」」」
そんな時、ザックリンダーにやられたせいか、アイドル、キュンキュン、ズキューンが撃墜されるのが見えてしまう。
「アイドル、キュンキュン!」
「そんな、お姉様も……」
「野郎!ズキューンの力、ソウルインパクト!」
ソウルはその体に白いエネルギーを纏うとザックリンダーへと突進。ザックリンダーもそれに対して赤いエネルギーを纏うと同じく突進してきた。
「ザックリーブレイク!」
二つのエネルギーはぶつかり合うとそのまま爆発。その中からソウルが飛ばされるとどうにか着地。しかし、ザックリンダーはまだまだやれる様子だった。
「くっ、強い……」
ソウルの力でもザックリンダー相手に有効打にならない。このままではプリキュア達に勝ち目は薄い。そんな時だった。
「おい、ザックリー!」
その声を聞いて一同は慌ててその方を向く。そこにいたのは避難したはずのレイが生身の状態でザックリンダーの前に立っていた。
「レイ君!?何で……」
「……ったく。お前、いつまで後悔してんだこのアホ!自分が嫌いだ?ふざけんな。そんな事言ってる暇があったらお前の事を心配している人の事を考えてやれよ!ウインクは……お前の苦しみをどうにかしたいって考えてるんだぞ!」
レイはザックリンダー相手に正面から叫ぶ。周りから見たらそれは命知らずと思われても仕方ない状況であった。
「煩い……お前なんかに何がわかるんだよ。キュアウインクに一番近いのはお前のくせに……。結局アイツが見てるのはお前の方だ。そんな奴が、キュアウインクが俺の心配をしてくれてるとか抜かすんじゃねぇ!」
ザックリンダーは腕にエネルギーを高めるとレイを剛腕の一撃で叩き潰そうと振りかぶった。レイは自分がやられるとわかってながらもその攻撃を両腕を広げて受け入れようとする。
「レイ先輩逃げてください!」
「止めろザックリー!」
「消えろ!」
キュンキュンやソウルが叫ぶも既に遅い。ザックリンダーからの拳が目の前にいるレイにめがけて振り下ろされてしまうのだった。
また次回もお楽しみに。