キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ザックリーが変身した怪物。ザックリンダーの暴走に対して彼へと声をかけたレイ。しかし、そこにザックリンダーからの拳が迫った。そんな時である。
「そんな事……させない!ウインクバリア!」
そこに動き出していたウインクが割って入るとブローチをタッチ。ウインクバリアを展開する事によって攻撃を防いだ。
「ッ……ウインク!?」
「大丈夫?」
「やっぱりそうだ。……お前はいつもその男を取る。口でどれだけ俺の事を救うって言ったって……結局俺はそいつの二番煎じでしか無いんだよ!」
するとザックリンダーはレイを真っ先に庇ったウインクへの怒りを高めると少しずつウインクバリアにヒビを入れる。このままではバリアが突破されてしまう。
「それは違う!ザックリー。確かにこうなったら俺は庇われる側でしか無い。だから優先順位は先になる。……けど、ザックリーだって一度感じたんだろ?ウインクは……蒼風さんはお前の事を心配してくれたって」
「そんなの、口では何とでも……」
「口だけじゃ無い!ウインクは……目に見える形でお前を助けようとしただろ!」
レイからの言葉にザックリンダーはハッとする。それは彼女から渡されたハンカチであった。それは彼がちゃんと目に見える形でななからの助けようという気持ちを受け取った事を意味する。
「ッ……そんなはずは……そんなはずは!!」
ザックリンダーは脳内の思考がスパークすると感情のままにバリアを押し切ろうとした。そのタイミングでキッスからの声が聞こえる。
「キッスショック!」
「ザックリンダー!?」
キッスから放たれたキッスショックはザックリンダーに命中。そのまま電撃によるダメージを与えると叫び声を上げた。
「キッス!ありがとう!」
「ッ……別に。アイツが言うことを聞かなさすぎるから止めただけよ」
キッスは僅かに照れながらウインクへと言葉を返すとそこに散らばっていた四人も戻ってくる。
「レイ先輩、なんて無茶をするんですか」
「そうだよ、何で……」
「悪いな……。俺もちゃんと逃げるつもりだったんだけどさ。一言伝え忘れたなって」
「え?」
レイはそれから改めてウインクの方を向くとウインクは彼と真正面から向かい合う。
「ウインク、助けてくれてありがとう。俺はウインクの優しさに前一度救われた」
「え?でも私、レイ君の事は……」
「俺の悩みとか色々聞いてくれただろ?……些細な事かもしれないけど俺はあの時ウインクに助けてもらった。ウインクには誰かを優しく包み込める力がある。だから、ザックリーにだって届けられるはずだ。……後はウインクが自分の足で踏み出すだけだよ」
レイはウインクを全力で後押しするつもりだった。彼が逃げたのに戻ってきてしまったのは彼女を助けるためでもある。そんなレイからの言葉はウインクに元気を分け与えた。
「そっか……。ありがとう、レイ君。私、ザックリーさんとちゃんと話してみる。今度は、口だけじゃ無くて……行動で示すよ」
「今のウインク、キラキラしてる!」
「キラッキランランだね!」
「はい!」
「だったら行ってこい。ウインクの気持ちならきっと届く」
ウインクは他のプリキュア達に後押しされる形で踏み出すとザックリンダーはまたビームを放ちながら周囲へと被害を与えている真っ最中であった。
「ザックリーさん!」
「ッ……懲りずにまた来やがって。ザックリービーム!」
するとザックリンダーは再度目からビームを放つと走ってきたウインクを倒そうとする。そのタイミングで彼女は再度バリアを展開した。
「ウインクバリア!」
ウインクはザックリンダーからのビームのパワーに少しだけ押し戻されるが、それでも負けずに声をかける。
「ザックリーさんはどうして、チョッキリ団にいるんですか?」
「煩ぇ!それは今関係無いだろ!」
ザックリンダーはウインクからの言葉をそう言って切って捨ててしまうと更にビームを強める。
「教えてください!」
「ッ、何でだよ!」
「知りたいんです!ザックリじゃ無くて本当の事!」
ザックリンダーは尚も自分を気遣おうとするウインクに動揺の色を隠せない。そんな彼女からの真っ直ぐな目線を受けて彼は更に声を荒げる。
「何で……何でだよ!お前にとっての一番はアイツじゃないのか!」
「一番だとか、そうで無いとか関係ない!私はあなたを助けたい……。だから手を伸ばすんです!」
「はぁ!?」
ウインクは少しずつザックリンダーからの攻撃を凌いで前進していく。それにザックリンダーはパワーを強めた。
「私……ザックリーさんとちゃんと話をしたい!」
「はっ……」
ザックリンダーはその瞬間、ビームをキャンセルするとウインクへの攻撃を一時停止。ウインクもそれを受けてバリアを解除した。
「……ザックリ初めてだ。そんな事言うやつ」
「私も……こんな事言ったのは初めてです」
「……俺は昔っからザックリしてたよ。相手の気持ちを考えられない。それで何人も傷つけちまった」
ザックリンダーはそう言って過去を振り返る。彼にとっては思い出したく無い過去なのだろうが、それをきちんとウインクに向けて話してくれた。
「この前、お前に嫌いだって言ったみたいに……。こんな自分嫌いだ!俺には世界をクラクラの真っ暗闇にするチョッキリ団がお似合いだ!俺にキラキラは似合わないんだよ!」
ザックリンダーは悲痛な叫びを上げる。それは、彼が本当は光のある方に行きたいのに自分の悪い性格が足枷になって行くことができないと言わんばかりだった。
「そんな事無い!あなたにはちゃんとキラキラがある!さっきだって、私のハンカチを返そうとして汚した時……その汚れをどうにかしようとしていたでしょ!」
「ザックリねぇよ!」
「そこはザックリしないで!……あなたには、ちゃんとキラキラがある」
ウインクはちゃんと見ていた。先程のザックリーの行動を。ザックリーの中にはキラキラが存在しているのだと。そのキラキラを信じているのである。そして、それはザックリーにも届いていた。
「俺の事、そんな風に言ってくれるのか……」
ザックリーはウインクからの言葉を受けて暗闇の中で再び意識を取り戻す。同時に彼の戦意は消えると後は浄化するだけ……そのはずだった。
「俺は……そっちに行っても……」
その瞬間、プリキュア達の元に行こうとしたザックリーの目の前にいきなりダークイーネの目が光る。同時に彼に更なる闇のオーラが発生するとその痛みに頭を抱えた。
「がぁあああっ!?ダークイーネ……様、何を……」
「ッ!?ザックリーさん!」
「嘘、折角ザックリーも説得できたと思ったのに!」
「多分、カッティーやスラッシューの時と同じ。無理矢理苦しめられてるんだ」
ザックリンダーは頭を抱える中、ダークイーネからの侵食が彼を包んでしまうと彼は赤い目を発光させ、今まで以上の凄まじいエネルギーが胸に集約されていく。
「凄いパワー……」
「あんなの、ウインクで止められるの……」
「ザックリ……マキシマムバースト!」
その直後、ザックリンダーがポーズを取ると共に先程使った時よりも威力が段違いの赤いエネルギー波が射出される。
「ウインク!させるか!」
エネルギー波は近くにいるウインクをターゲットにしていたが、それが命中するより早くソウルが飛び出すとその手にソウルディフェンダーを展開。真正面からエネルギー波を受け止める。
「ソウル!!」
「ぐぅ……嘘だろ……ソウルディフェンダーでも……止めきれないのか……」
「えっ!?」
ソウルの言葉にアイドルが疑問符を浮かべる中、ソウルの持っていたソウルディフェンダーにヒビが入っていく嫌な音が聞こえた。
「そんな……このままじゃ……」
「はぁああっ!」
ソウルはそれでもどうにか持ち堪えるべくディフェンダーから電撃を放出。少しでもエネルギー波を抑え込もうとする。しかし、それでも完全に抑えるのは無理なのかヒビは更に深くなっていく。
「ウインク、せめてお前だけでも離れろ!」
ソウルはウインクに避難するように伝える。それは彼女が離れればどうにか対応する手があるような言い回しだ。だが、ウインクはそれをしたく無った。
「……離れないよ」
「は?」
「私はザックリーさんを助けたい。折角伸ばした手を……引っ込めたく無い!」
「ウインク……」
ウインクの決意は固く、彼女は逃げる様子を見せなかった。しかしこのままでは突破されるのは目に見えている。……そんな時、突如としてソウルの体からまた前のように銀色のオーラが出てきた。
「えっ!?ソウルが銀色に光ってますよ!?」
「確かアレってこの前の!」
アイドル達三人は初見だったが、ズキューンやキッス。この前の戦闘に参加した面々はその時に発生した光であると覚えていた。するとソウルの体から出てきた銀色のオーラはウインクへとリボンの紐のように伸び、彼女の体に巻き付くとウインクが青く光り輝く。
「ソウルに釣られてウインクも光り出した!?」
それと同時にソウルメガホンが飛び出すとそのダイヤルが青に合わせられる。すると謎の空間内に存在すると思われるペンライトのような形状の何のある場所に移動。ペンライトのような物には三本の鎖が巻き付いていたのだが、その中の一つが青い光と共に鎖にヒビが入って砕かれる。
ペンライトの鎖が一つ砕かれると同時に消えていたソウルメガホンの青いダイヤルが再度発光。それと同時に使えなくなっていたソウルアブゾーブが発動した。
「ウインクの力が……戻った!」
「……封じられた力……青い輝きを得てその鎖が解き放たれた……。キュアウインクがお兄様の力を戻したんだわ」
ウインクの力が戻った事によって発動するソウルアブゾーブ。それによってザックリンダーからのエネルギー波をボロボロになったソウルディフェンダーの代わりに防いでいた。
「たす……けて、くれぇ……」
「ッ、ザックリーさん!?」
「キュアウインク……頼む。もうこれ以上、戦いたく無いんだ……」
するとその場にはザックリーからの言葉が響く。それは今の苦しい現状から救われたいザックリーからの想いである。
「ソウル、私が決めても良い?」
「……ああ。今のウインクにならやれるよ」
ソウルはウインクからの提案に最初不安こそあったが、彼女を信じる事にした。するとソウルアブゾーブに変化が起きた。
ザックリンダーの攻撃をソウルアブゾーブが吸収する所までは同じなのだが、そのエネルギーがソウルの中へと流れ込むとそれが彼を包んでいた銀色のオーラごとウインクの色である青いオーラへと変換されていく。そのまま青いオーラは本来の持ち主であるウインクに流れ込む。
「これは……力が湧いてくる!」
「マジか。ソウルアブゾーブにこんな使い方があったのか……」
そして、その様子を見ていたアイドルは自分達もウインクにしてあげられる事があると声を上げた。
「頑張れ!ウインク!」
「あ、頑張れと言えば……これだよね!」
するとズキューンもアイドルの言葉に続くようにキラキライトを五つ取り出すとそれをアイドル達に配る。勿論レイにもだ。
「「「「ウインク、頑張れ〜!」」」」
アイドル達四人は青く光らせたキラキライトを振り、その声をウインクへと届けていく。ただしキッスはキラキライトを受け取ったものの、性に合わないのか声には出さずにそれを振るだけだった。
「……皆、ありがとう」
ソウルからの青い光。更にアイドル達の応援を受けたウインクは体中に迸った光の力を纏い、ザックリーに歌を届けるべくその一歩を踏み出す。
「一歩、踏み出す……Win-Winウインク!」
ウインクがまばたきをしながら跳び上がるとザックリンダーはそれを見て微かに残ったザックリーの意思を働かせてエネルギー波を中断。彼女を受け入れようとする。それに応えるかのようにウインクは片目を閉じたためにもう片方の瞳で彼を見つめ、同時に技を発動した。
「クライマックスは私。聴いてください!」
すると領域が展開されてウインクの頭にインカムが装着。その直後にザックリンダーはダークイーネの力で多少抵抗はあったものの、ソウル達が上乗せした力を持って抑え込み強制着席に成功。そのままウインクは弾いていたピアノの椅子から立ち上がり、歌う。
♪決め歌 まばたきの五線譜♪
「きらめきへ踏み出そう〜♪受け取った勇気つないで♪まばたきの数だけ〜♪五線譜に焼きつけていく♪出会えたキミへと奏でたい♪いつまでも鳴り止まないメロディー〜♪……プリキュア!ウインククレッシェンド!」
ソウルアブゾーブでザックリンダーの攻撃を吸収し、それをソウルの中にあったエネルギーと共にウインクに合わせた光に転換。その力も乗せたウインクの強化版ウインククレッシェンドが命中するとザックリンダーは浄化されていく。
「キラッキラッタ〜」
そのままザックリンダーの姿がザックリーに戻ると浄化技を使ったという事でウインクがキラルンリボンを手にする。そしてひまわり畑も元に戻るとそれを見ていたジョギが笑みを浮かべた。
「ふっ……。面白いね」
ジョギはそのまま悟られる事無く撤退。プリキュア達は変身解除すると倒れていたザックリーの方に駆け寄った。
「ザックリーさん……」
「ッ……悪い。もう大丈夫だ」
するとななはザックリーの前に片膝を付く形でしゃがむ。ザックリーの顔は浄化された時のカッティーと同様に目元にあったアイシャドウが消えており、完全にダークイーネの支配下から解放された事を意味していた。
「目元のアイシャドウが消えてる……って事は」
「ああ。完全な浄化に成功したみたいだな」
影人とレイがそうやり取りをする中、当のザックリーはその手に汚れたななのハンカチを持っていた。
「……これ、汚しちまって悪かったな」
「ううん……大丈夫ですよ」
ザックリーが謝罪しつつハンカチを返すとななはそれを受け取って立ち上がる。それを一同は見ていた。それから彼女は近くにあった水道を使ってハンカチを洗い、真っ白な状態に戻す。
「これで綺麗になった!……お天気良いから、すぐに乾くと思います!」
なながそう言ってザックリーへと笑顔を見せるとザックリーの心は救われたように爽やかになっていた。そして、レイがそんな様子を見て呟く。
「ななさんの優しさは……本当に届いたな」
「レイ?」
「何でもねーよ」
影人はレイがななを名前呼びにした事に僅かに気になって声をかけるが、彼は特に触れる事無くいつも通りの調子に戻った。
そんな中、全てが元通りになって一面綺麗に咲き誇るひまわり畑をザックリーは見つめる。観光客や夏野達も無事だった様子で何事も無かったように畑を観光していた。
「ザックリーさん」
それからななが近づくと彼はななの方を向く。そして、ななは改めてハンカチをザックリーに手渡した。
「これ、持っていてください!」
「あーあ……こうなったら新しい仕事を探すしかねぇな。ザックリダルい。……けど、これからはウインク推しになってやるよ」
「へ?」
ザックリーは照れくさそうに首辺りを触りながらもななの事を……キュアウインクを押すと本人の前で宣言。それにななは驚く。
「なな先輩のファンになったって事ですね!」
「ななちゃんの勇気、ザックリーに届いたんだね!」
「プリ〜!」
「……あ」
ザックリーの宣言を聞いてうたやこころは興奮したように声を上げ、ザックリーは唖然とする。どうやら影人達がいる事をザックリーはすっかり忘れていたようで。彼は唖然としてしまう。そんな中でメロロンは呟いた。
「闇が光に……凄いメロ」
「ふふっ、ありがとう!」
そして、ななも自分を推してくれる事への嬉しさからかウインクをしつつ彼へとお礼を言う。それを受けたザックリーはと言うと……自分の宣言を周りから指摘された事で恥ずかしさのあまり思いっきり顔が真っ赤に染まっていく。
「ば、バッカ野郎お前!お前なんか、お前なんか……嫌いだーっ!」
ザックリーはそう言いながら後退り、そのままその場から逃走。その様子を一同は唖然としつつ見ていた。
「ザックリーって……」
「本当は好きなくせに素直じゃ無いですね……」
「あれ?戻ってきたぞ」
するとザックリーは一度逃げたのにまたわざわざ戻ってくると言い残した事があると言わんばかりに声を上げる。
「そうだ、そこのお前!レイだったか?」
「俺か?何だよ」
「……その、キュアウインクの事……悲しませやがったら許さないからな!!」
「はぁ……。お前じゃ無いんだからそんな心配すんなって。それと、わざわざ戻ってきてまた弄られたいのか?」
「煩せぇ!……これだからお前の事も嫌いなんだよ!じゃあな!」
レイへとわざわざ一言を残したザックリー。その言葉を最後に今度こそ走って逃げ去るとレイはやれやれと言わんばかりの顔をする。それから元気になったザックリーを見ていたななはその場で微笑むのだった。
こうして、ひまわり畑に来た影人達はザックリーを正気に戻す事に成功。二人目の幹部を救う事になる。そんな中、ななはふとレイへと声をかけた。
「そうだ、レイ君」
「ん?」
「明後日に迫ったアレ。予定は大丈夫そう?」
「ああ。約束通り、その時間は空けておいたよ」
「「「アレ?」」」
「プリ?」
「メロ?」
すると影人達他の面々はそれを知らないために首を傾げる。それからななは一同にその事を報告することになった。
「明後日に迫ったはなみちタウンでの夏祭り……私とレイ君、二人で行く事にしたの!」
「へぇ、夏祭りかぁ。そう言えばもうすぐだったよね」
「それで、レイ先輩と二人きりで回る……」
「ちょっと待て、レイ。今の話は本当か?」
「何当たり前の事言ってるんだよ。わざわざここで嘘吐かないって」
「「「……え?……ええええっ!?」」」
レイからも事実と言われて三人は意味を理解して凍りつく。そして、三人は耐え切れずに思わず同時に叫んでしまうのだった。
今回、話の中にあった通りズキューンキッス登場以降封印されていたウインクの力が解禁されました。加えてウインクがザックリンダーを単独技で浄化した理由は言及した通り、ソウルの中に溜め込まれた力をウインクの力に変換して彼女へと流し込んだ事による一時的なブースト込みの力です。
加えて今回でこの小説も200話目に到達した形となります。まだアニメの中身で見ると折り返し地点ですが、これからもよろしくお願いします。
次回以降はまたオリジナル回……本編では無かった夏の風物詩、夏祭りの回です。それではまた次回も楽しみにしてください。