キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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夏祭りデート開幕 見守る者達のハプニング

影人達がザックリーを助け出してから二日が経過し、ここは音崎家。今現在、レイは急いでお出かけ用の服への着替えをしていた。何しろ、今日は前々から話をしていたななとの夏祭りへのお出かけの日なのである。

 

「あの馬鹿親父……。前々から今日のこの時間は夏祭りに行くって言ってたのに……俺への研修とか言って仕事手伝わせて……」

 

普段なら準備が早く、余裕のある時間で家も出られていた。しかし、まさかのレイの父親のハジメがギリギリまでレイに仕事の手伝いをやらせたのだ。

 

「っと、あと十分で集合時間だし……。もう、遅れたら蒼風さんになんて言って謝れば良いんだよ」

 

レイはどうにか出かける用の服装に着替えると身だしなみを短時間でチェックする。

 

「良し、時間も押し気味だし……さっさと行くか」

 

そう呟いた彼はさっさと集合場所へと急ぐのだった。それから暫くして。はなみちタウンの夏祭りが行われている場所へと移動を開始する。

 

「蒼風さん、もう待たせてるのかな」

 

レイは僅かに不安そうな声を出す。既に周囲には街に住んでいる人々が夏祭り会場に向かって歩いている。その人数も数分前から少しずつ増え出していた。このままではななが集合場所に来ても見分けるので一苦労になってしまう。

 

「っと、やっと着いた」

 

レイがやってきたのは前にはなみちタウンに伝わる伝説のハートキラリロックの伝説が伝わるオブジェクトの存在する誓いの広場やハートの木が生えている高台のある山……それの麓付近だった。

 

「はぁ……はぁ……。時間は……」

 

レイがスマホを確認するとそこには17時58分という文字。集合時間は18時である。そのため、時間はギリギリセーフだ。その後、急いでななを探そうとした。何しろ、この場所に来たらそれで終わりでは無い。ここから人がそれなりに溜まっている付近の中からななを探さないといけないのだ。

 

「レイ君!」

 

しかし、その心配は杞憂で済んだ。逆にななの方が自分を見つけて声をかけると寄ってきたのである。

 

「蒼風さん……お待たせ。悪い……こんなにも待たせて」

 

「ううん、私はそんなに待ってないから大丈夫だよ」

 

ななはそう言ってレイを気遣う。ななとしてもこんなにギリギリになるまで家の仕事に付き合わされた事は話として聞いていた。なので、彼の到着時間がギリギリになるのも予想済みである。

 

「そうか……ふぅ」

 

レイはひとまず呼吸を整えるとななはそんな彼を文句一つ言わずに待ってくれた。そんな彼女にレイは感謝すると改めて向き合う。

 

ななは水色をベースに花の模様が入った浴衣を着た姿をしており、髪は珍しく下側で結ってポニーテールとした状態だった。

 

「蒼風さん、この髪型……」

 

「うん。折角の夏祭りだし、イメチェンしてみちゃった。……ダメだった?」

 

「いや、その浴衣も髪型も似合ってるよ」

 

「ふふっ。ありがと」

 

レイに褒めてもらって嬉しそうにするなな。そんなやり取りが終わると早速二人は夏祭りの屋台が連なる山道を登り始めた。目指すはハートの桜の木がある高台の地点である。

 

「確か花火の時間は……」

 

「19時30分からだな。そのくらいの時点でハートの木がある高台にいよう」

 

レイ達の目的はこの夏祭りの目玉である花火だ。はなみちタウンで開かれる夏祭りでは毎年恒例で花火が上がる。その際にこの街に伝わるハートキラリロックの伝説にちなんで度々ハート型の花火が打ち上がるのだ。その幻想的な景色を目的にこの夏祭りに来る人も多い。

 

「もし歩くのキツかったら言って良いからな。時間はまだまだあるし」

 

「うん。レイ君も強がらなくて良いからね」

 

「いや、俺は蒼風さんとは違って普通の靴だから大丈夫だよ」

 

ななは浴衣を着ている関係で靴もそれに合わせてサンダルを履いていた。ただ、これから山道を登ると考えると履き慣れないサンダルでは脚を痛める危険もある。そのため、レイは予め無理をしないようにとななに伝えたのだ。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

「うん!」

 

そのままななとレイの二人は隣同士。腕こそ組んで無いが近い距離で山を登るための道を歩き始める。そんな中で二人の後をコッソリ付けようとする影が三人程いた。

 

「ななちゃんとレイ君の夏祭りデート。キラッキランランだね」

 

「はい。お二人がデートを無事に楽しめるかどうか。私達で見届けましょう」

 

「純情のデート。メロロンも勉強するのメロ〜」

 

「プリルンも夏祭り楽しみたいプリ〜!」

 

「……」

 

そこには尾行する気満々のうたとこころがおり、その近くには影人が呆れたような顔をしながら見ている。

 

「なぁ、俺達がわざわざこんな事して良いのか?あと約一名言ってる事が他と違うんだけど」

 

影人はこんな尾行するような真似をして大丈夫なのかと不安になっていた。この場にいない夢乃はうたの妹のはもりと夏祭りに参加しており、今はもう祭り会場のどこかにはいるだろう。

 

「いえ!これはなな先輩とレイ先輩のためなんです!」

 

「そうだよ!」

 

「ふーん。どこが二人のためか説明してくれ」

 

「良いでしょう。お二人はこういうデートをするのは初めてです。ですよね?うた先輩」

 

「そうだね。ななちゃんやレイ君が夏祭りで二人きりでデートする……って所は見かけないかな」

 

ななもレイもこの手のお出かけの噂には殆ど挙がる事が無く、あまり慣れては無いだろうという情報をこころはうた経由で知っている。

 

「初めてのデートとはとにかくトラブルが付きものです。通行人にぶつかりそうになったなな先輩をレイ先輩がそっと抱き寄せたり、屋台でのゲームがなかなか上手くいかない時にすぐ隣で良いやり方を教えてもらって……。履いているサンダルの靴擦れで歩けなくなったなな先輩をレイ先輩が背負って移動。二人の距離感はどんどん近くなっていくんです」

 

「おおおっ!」

 

「メロメロ!」

 

こころがまるで恋愛漫画とかの夏祭りでありそうなイチャラブ展開を語り始めるとうたやメロロンは興味津々な顔をしており、影人は何となくオチが見えてきたような顔をしていた。

 

「そして最後。仲が最高に深まった二人が花火や夜景を見る中でやる事と言えば一つです!美しい花火を背景に二人の唇は近づいて……」

 

「はわわ〜!」

 

「ロマンチックメロ〜」

 

「おい、お前ら。その心配の中の何割かに私欲入ってないか?」

 

影人からの指摘にプリルン以外の三人はハッとして固まる。どうやら影人の指摘は的確だったらしい。

 

「べっ、別に違いますよ……。カゲ先輩がこうしてくれたら良いな〜みたいな展開なんて全然考えてません!」

 

「顔が真っ赤になってる時点で説得力無いんだけどな……」

 

この反応を見るにこころが今話したシュチュエーションにはやはり自分の願望が相当盛り込まれているらしい。

 

「こころ。心配しなくても俺にエスコートしてほしいみたいな事を言ってくれたらちゃんとやるんだぞ?」

 

「……そんな事言ったってカゲ先輩ここ最近ずっと他の人とばかりじゃないですか……。偶には私にも構ってほしいですよ……」

 

こころは少し不満そうな様子であった。何しろ彼女の言う通りここ最近は影人が忙しかったのと彼自身が他の女の人とのイベント(主にメロロン)ばかりのせいで全然自分の方を向いてくれてないと考えてしまったのだ。

 

そのため、今日の浴衣姿も割と気合いを入れて着こなしている。髪型だってツインテールでは無くお団子で可愛く仕上げたし、一応それは影人に会った時に褒めてもらえた。ただ、それだけでは今のこころの気持ちを満たせてなんかいない。まるで反動が来たかのように影人に甘えたい気持ちばかりなのだ。

 

「あはは。こころ、もしかして結構根に持ってる感じなのかな」

 

流石のうたもこれには苦笑いしてしまう。こころも何だかんだで影人に構ってもらえないと寂しいのだろう。

 

「だったら、尾行するのは止めてこっちはこっちで夏祭りを楽しむ?」

 

「うっ……じゃあ……それでも……」

 

今回の尾行を提案したのはこころだが、折角こうして影人から行こうと誘われている現状を見て冷静に考える。その結果、こころはやっぱり影人との時間を過ごす事を優先。恥ずかしがりながらもその言葉に了承しようとしたその時だった。

 

「あれ?そう言えばプリルンは?」

 

「「「……え?」」」

 

うたが一言そう言うとその瞬間、その場の空気が凍りつく。三人は慌てて周囲を見渡すと確かにプリルンの姿がその場には無かった。そして、それが意味する事は一つ。

 

「おい……アイツまさか……」

 

「絶対一人で行っちゃったよね!?」

 

「ねえたまの事メロ、きっと興味のある場所にフラって行っちゃったのメロ」

 

「おいおい……。夏祭りで浮かれるのはわかるが、こんな時にいなくなるなよ!?この中から探すのかなり大変だろ!」

 

「とにかく探しましょう!話はそれからです!」

 

こうして、影人達はななとレイの尾行及び自分達で楽しむという予定をキャンセルせざるを得ず。慌ててプリルンを探しに夏祭り会場に入っていくのだった。

 

プリルンがいなくなったせいで大慌ての影人達をさておき、場面はチョッキリ団アジト。そこではスラッシューが珍しくチョッキリーヌがいつもやっているビリヤードを楽しんでいた。

 

「……これ、思ってたより楽しいわね」

 

どうやらスラッシューはビリヤードを気に入った様子で次々とボールを穴に沈めていく。そこにチョッキリーヌが着た。

 

「何してるのよスラッシュー。アンタ、ここ最近バーにずっといるね」

 

「?何か悪いかしら?」

 

「別に。少し前までプリキュアに積極的に絡みに行っていたお前が人が変わったみたいに出かけなくなったなと思っただけだよ」

 

チョッキリーヌもスラッシューの内面の変化には薄々気がついた様子であったが、彼女の中では特に支障が無いために敢えて放置している。

 

「……それもそうね。でも、あなたにとってはそれで良いのでしょう?」

 

「ふん。それもそうか。ザックリー!今のうちに世界中を真っ暗闇にしてくるんだよ!」

 

チョッキリーヌはスラッシューがのんびりしている今が絶好の大チャンスと言わんばかりにザックリーへと出撃を命令……するのだが、ザックリーは既にプリキュアに浄化されたために何も反応は無い。

 

「……ん?おい、ザックリー!何をサボってるんだい!返事くらいしたらどうだい!」

 

しかし、当然ながら彼からの返事は無い。チョッキリーヌは流石に焦れて来たのかスラッシューへと問い詰めた。

 

「スラッシュー、これはどういう事だい?まさか、アンタが引き抜いたりしてないでしょうね?」

 

「まさか……。私がわざわざそんな事をするとでも?」

 

スラッシューはチョッキリーヌを見下したような目線を向けるとチョッキリーヌは苛立つ。

 

「ッ……また前みたいなサボりをして……。今度という今度は許さないよ!」

 

「許さない……ねぇ」

 

チョッキリーヌが烈火の如く声を荒げる中、スラッシューはそんな彼女を嘲笑う。

 

「散々ザックリーを使い潰した結果がこのザマよ。言ったわよね?もっと部下の扱いには気をつけた方が良いと」

 

スラッシューの顔はまるでザックリーがどうなったのかを知っているような物であり、チョッキリーヌはそんなスラッシューが余計に気に入らない様子だった。

 

「きーっ!本当にムカつく奴!雰囲気が変わってからより一層そう感じるね!だったら、もう一度私が連れ戻すまでよ!」

 

チョッキリーヌは憤慨するとさっさと出撃して行ってしまう。そんな彼女を馬鹿にするような目線をスラッシューが向ける中、そこにジョギが現れた。

 

「あーあ。また怒らせて。スラッシュー様がその気になったらチョッキリーヌ先輩くらい黙らせられるでしょ」

 

「まぁ、そうね。……確かにそろそろ立場の差を見せた方が良いのかしら」

 

スラッシューはそう言ってチョッキリーヌをどう扱うか考える事になる。するとスラッシューはその前にジョギへと問いかけた。

 

「そういえばジョギ」

 

「はい?」

 

「あなたはこれからどうするつもりなの?」

 

「……まぁ、少しの間は様子見しますよ。チョッキリーヌ先輩のお手並みを拝見しつつ勉強しようかなと。あくまで俺は新人ですし」

 

「言っておくけど悪い見本にしかならないよ?チョッキリーヌは」

 

「反面教師にするってだけですよ。あの人はその程度の力しかありませんし」

 

ジョギは新人の時点でそう言う辺り、完全にチョッキリーヌを下に見ている様子である。スラッシューは彼の意見を肯定した。

 

「そうか。なら、少しの間ジョギは研修会をしていると良い。それに、チョッキリーヌにも色々と罰を与える良い機会だからね」

 

スラッシューはそう言って笑みを浮かべる。果たして、何故スラッシューがチョッキリーヌに罰を与えると言ったのか。それが明らかになる日は近い。

 

〜おまけ 夏祭りの裏側。キラキランドの出張所にて〜

 

はなみちタウンの人々が夏祭りを楽しんでいる頃、キラキランドの出張所では生粋の仕事人である田中と姫野が色々と用意を進めていた。

 

「田中さん、業者さんから連絡が来ました。予定通り行けそうです」

 

「ありがとうございます。後は従業員の確保と商品が来てくれるかですね……」

 

どうやら二人はアイドルプリキュアに関する何かを始めるようであり、その準備を内々に進めているようだった。

 

「それにしても田中さんも頑張りますね。このまま行くと本当に首が回らなくなりますよ?」

 

姫野は田中を心配している様子である。姫野もここ最近は可能な限り田中を手伝うようになったのだが、それでも田中の負担が大きいと気にしていた。

 

「確かにそうかもしれません。……ですが、アイドルプリキュアの手伝いができる。それだけで私は頑張れる気がするんです」

 

「ふふっ。……そうやって楽しみながら仕事をしている田中さん、私は好きですよ」

 

こうして、田中と姫野は夏休み明けを目安にあるプロジェクトを進めていくのだが……。それが明らかになるのはもう少し先になるのだった。




本格的な夏祭りデートは次回から描く事になると思います。それではまた次回もお楽しみに。
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