キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ハートガーデンが展開されてプリキュア達が戦いに入った頃。山の頂上にあるハートの木付近では、ななとレイが無事に到着していた。
「蒼風さん、大丈夫?」
「うん。レイ君がエスコートしてくれたおかげでちゃんと登れたよ」
レイがこまめにななの足を休ませる形でゆっくり登山を進めたために彼女は特に足を痛めてしまうという事も無く。レイも一安心と言った所であった。
「そろそろ花火も上がるかな?」
「ああ。時間的にはもうそろそろだけど……」
時刻は19時33分。もうそろそろ花火が上がっても良い頃合いである。すると、その瞬間だった。
「わぁ……」
どこからか花火が上がるお馴染みの音が聞こえてくるとななやレイ。他にも周囲にいる人達の視線の先には夜空に挙がる一番最初の花火の花が大きく咲いた。
「ちゃんと始まったか」
この直前。クラヤミンダーの登場によって花火師の方も実際に打ち上げをやるかは迷ったそうだが、怪物の姿は割とすぐに消えたという事もあって特に大きな問題にはならず。判断のタイミングの問題で定刻よりも少しだけ遅れてにはなったが、無事に開催する事はできたのだ。
「綺麗……」
ななは美しい花火の景色にうっとりとした顔をしていた。そんな中、レイはそんな彼女の顔を見ていると彼女はその視線に気がついてレイへと話しかける。
「ねぇ、レイ君……」
「何?蒼風さん」
「……この景色を見せてくれてありがと」
「そんな事俺に言う?」
「うん!多分だけど、私一人じゃ見れなかった景色。そんな気がするから」
レイの言葉にななは嬉しそうに微笑む。花火自体が去年から大きな変動したわけじゃない。それは彼女自身もよくわかっていた。……だからこそ、隣でレイが見てくれる。その事実自体が嬉しかったのだ。
「そうだな……。俺も蒼風さんと一緒に見れて嬉しいよ。正直、ななさんがいてくれると心が温かくなる」
それを聞いてななの頬は僅かに赤くなる。するとななは胸の辺りに手を当てた。……彼女の心臓の音は、いつもより少し早く。激しくなっているのを感じたのである。
「ッ……。やっぱり……私……」
ななは胸の中のある感情に気がついた。そしてそれは前々から薄々感じていた物でもあり、なかなか自覚する事ができなかった感情でもある。
「あ、あの。レイ君……」
「何?蒼風さん」
ななが改めて隣にいるレイへと声をかけると彼はこちらを向いてくれた。その時の彼の挙動に……ななは心を打たれると見惚れてしまい、その場に静寂の時間が流れる事になる。
同時刻。ななとレイが花火を楽しむ中、二体のクラヤミンダーに対して向かっていくソウル達四人。それを見たチョッキリーヌが声を上げる。
「むっ、また出たね。プリキュア!」
「「クラヤミンダー!」」
すると先制攻撃とばかりにひまわりのクラヤミンダーが漆黒に染まった花びらを射出。ミサイルとして斉射してきた。
「ッ!ひまわりの花をそんな事に使わないで!」
四人はそれぞれ回避しつつ接近。そんな中でソウルが他の三人に声をかける。
「相手は二体だ。上手く分散させて各個撃破する!」
「ふん!そんな事ができると思ってるのかい?クラヤミンダー!」
チョッキリーヌはそうはさせまいと言わんばかりに指示を出すと金魚袋のクラヤミンダーが走ってくると手から水を射出。その水圧で足止めしようとした。
「そんなの、当たりませんよ!」
キュンキュンが水圧攻撃を回避しつつ金魚袋のクラヤミンダーに近づこうとした瞬間、ソウルが慌てて声を上げる。
「キュンキュン、焦るな!」
「え?きゃああっ!」
ソウルはキュンキュンが金魚袋のクラヤミンダーに視線を集めた瞬間を狙って放たれたひまわりのクラヤミンダーからのタネによるマシンガン攻撃に当たってしまったのだ。
「厄介な奴ね!」
キッスが苦い顔をするとそれでも負けじとアイドルが金魚袋のクラヤミンダーへと飛び出す。それに合わせる形でソウルとキッスがひまわりのクラヤミンダーへと左右から息の合った同時キックを叩き込む。
「「はあっ!」」
「クラァ!?」
ひまわりのクラヤミンダーがダブルキックで怯んだ時。今なら他のクラヤミンダーからの邪魔は無いと言わんばかりにアイドルが飛び出すとブローチをタッチする。
「今だよ!アイドルグータッチ!」
アイドルが拳に必殺の力を込めて踏み込むとパンチを叩きつけようとする。しかしその瞬間、金魚袋のクラヤミンダーの上で縛ってあった金魚の袋が開かれた。
「えっ!?」
「クラヤミンダー!」
その光景にアイドルが困惑しているといきなり袋の中からクラヤミンダーが飛び出してきた。まさかのクラヤミンダーからの反撃にアイドルは対応できず。彼女は体当たりを喰らって吹き飛ばされてしまう。
「きゃああっ!」
「嘘だろ!?」
「本体は金魚の方なの!?」
ソウルとキッスもまさかの展開に混乱。そのタイミングを突くかのようにいきなり残された金魚袋の方がソウル達の方を向くと両手を突き出しつつ同時に激流を放出。二人はそれに巻き込まれて押し流されてしまう。
「「うわぁああっ!」」
三人が同時に倒れる中、キュンキュンがどうにか立ち上がると金魚のクラヤミンダーへと飛び出そうとする。
「これ以上は、やらせません!」
「おっと、一体に気を取られすぎだよ!」
するとチョッキリーヌの言葉と同時に残っていたひまわりのクラヤミンダーが花びら弾を発射。キュンキュンはそれをどうにか回避するものの、チョッキリーヌは笑みを浮かべる。
「えっ!?」
するといきなり花びらの弾丸はカーブしてキュンキュンを追尾。流石にこれには避けきれずにキュンキュンに命中……する時だった。
「ズキューンバズーカー!」
そのタイミングでキュンキュンに命中しそうだった弾丸は横から飛んできたエネルギー砲によって纏めて掻き消される。
「皆、お待たせ!」
「お姉様!」
「ズキューン!」
ズキューンがニッコリ笑う中、ソウルも援軍として駆けつけてきたズキューンを見て歓迎……する前に彼の怒鳴り声が響いた。
「お前さっきまでどこほっつき歩いてたんだよ!」
「うわあっ!?ソウル、何でそんなに怒ってるの?」
ズキューンはソウルからいきなり怒鳴られた事に唖然とする中、ソウルは彼女へと詰め寄ると更に問い詰める。
「あのな?お前が一人で出歩くとこっちも心配するんだよ!特に夏祭り会場みたいな人混みが当たり前の場所でフラフラいなくなるなって!夢乃が一回保護したらしいけど、その前も焼きそばを無銭飲食しようとしたってな?」
「むせんいんしょくって……何?」
ズキューンはまるで意味がわからないと言わんばかりに天然の反応を示す。ソウルはそんなズキューンに唖然とすると頭に手を当てる。
「無銭飲食知らないって嘘だろ……」
「まぁまぁ、ソウル。折角ズキューンが来たんだから一回落ちつこ?」
「そうですよ。仲間割れしてる時じゃありませんって」
「お姉様、無銭飲食というのは……」
ソウルが先程以上の剣幕でズキューンを叱ろうとするとアイドルとキュンキュンがそんな彼を止め、キッスがその間にズキューンへと無銭飲食の意味を教えていた。そして、そうなれば完全な隙となり得るわけで。
「何をやってるかわからないけど、今がチャンスだよ!クラヤミンダー!」
すると金魚のクラヤミンダーはまた袋の中へと戻ると一体化。ひまわりのクラヤミンダーと同時に並ぶと二人で生成した漆黒のエネルギー波を構える。
「「クラヤミン……ダー!」」
「ッ!ウインクの力、ソウルアブゾーブ!」
その瞬間、ソウルが飛び出すと少し前に復活したばかりのウインクの力で防御。すかさずダイヤルを合わせて反撃する。
「二人の力、ソウルスクリュー!」
ソウルから放たれた白と黒のエネルギー波が混ざり合うとそれがクラヤミンダーへと向かっていく。
「「クラヤミンダー!」」
二体のクラヤミンダーはそれを真正面から受け止める……が、そのパワーを前に押し切られると吹き飛ばされてしまった。
「「クラァ!?」」
「やった!」
「反撃開始です!」
ソウルの攻撃を皮切りにアイドルとズキューンが飛び出す中、二体のクラヤミンダーは立ち上がるとチョッキリーヌは指示を出す。
「クラヤミンダー、そいつらを近づけるんじゃ無いよ!」
「クラヤミンダー!」
するとまずはひまわりのクラヤミンダーがタネのエネルギー弾を高速で射出。マシンガンの如く連射した。それに対してキュンキュンがブローチをタッチする。
「キュンキュンレーザー!」
キュンキュンが放ったレーザーは飛んできたエネルギー弾を全て撃墜。相殺してしまう。更にレーザーの中の数歩はクラヤミンダーへと直接命中して怯ませた。
「ンダァ!?」
「クラヤミンダー!」
エネルギー弾で止まらなかったと言うわけで今度は金魚のクラヤミンダーがまた自身の本体を射出して二人を止めようとする。
「金魚はちゃんと水の中に入ってて!チュッ、キッスショック!」
ただ、こちらはキッスがキッスショックを放つとハートのエネルギーがクラヤミンダーに命中。水の中から発射される前に電撃を喰らったクラヤミンダーはその体を痺れさせてしまう。
「クラララァ!?」
二体のクラヤミンダーの動きが止まったその瞬間を前衛の二人は見逃さない。
「「プリキュア、ダブルグータッチ!」」
アイドルとズキューンは二人同時のグータッチという名のパンチを命中させるとクラヤミンダーは呆気なく吹き飛ばされる。
「え!?ちょっ!?あわわっ!?」
二体のクラヤミンダーが吹き飛ばされるその先にいたのはチョッキリーヌであり、彼女は慌ててその場から退避。同時に二体のクラヤミンダーは折り重なる形で叩きつけられると目を回していた。
「このまま一気に決めるよ!」
「あ、でも私達は……」
「ウインク無しじゃ、技が使えませんね……」
ズキューンがライブ技を提案する中、アイドルとキュンキュンは自分達ではどうしようもできないと感じ取る。何しろ今の二人が使える技は個人技のみ。
前みたいにソウルがどちらかの力をブーストできるならやりようはあったが、残念ながらまだアイドルとキュンキュンの力をソウルは取り戻してないのでそれは厳しい話だろう。
「えーっ、折角キュアアイドル達の歌を聴けるのに……」
「あまり長々と伸ばすとリスクが大きいです。お姉様、ここは我慢して片方はお兄様に任せましょう」
ズキューンは残念そうにする中でキッスはこのまま行けば自分達の独壇場になるからか、異様にこのままライブ技を勧めていた。
「いや、やりようはあるよ?」
「お兄様!?」
「アイドル、キュンキュン。ウインクはいないけど、二人とした約束……今果たすよ」
その瞬間、ソウルの手にしたソウルメガホンのダイヤルを青に合わせると同時にウインクと同じ青いオーラを纏う。
「あっ、もしかして!」
「そのまさかだ。行くよ!」
ソウルの行動にアイドルが何かを思い出すとキュンキュンがそれを問う間も無く技を発動させる。
♪決め歌 Trio Dreams♪
「「「ウー、レッツゴー!Try, try, trio dreams♪」」」
『Let's sing, let's swing, let's dance, let's bound,Let's smile, let's fly』
「「「ハート上げてくよ!」」」
ソウルは以前、ズキューンやキッスの代わりにライブ技の中に入った事があった。今回は前に入る際に拒絶されてしまったアイドル、ウインク、キュンキュンの曲の中に入る事に成功。
この事から前回は本来の発動者のアイドル、ウインク、キュンキュンが揃っていたために技に関係無いソウルが部外者としてステージ上から弾かれてしまった。今回はアイドル、キュンキュンはいるがウインク不在のために代打としてソウルがウインクの力を纏ったために参加できたという方式が成立する。
それはさておき、三人のプリキュアは領域を展開しつつインカムを装着。同時にクラヤミンダーは技の効果で席に強制着席させられる。そのまま歌が始まった。
「「「Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪みんな、キラッキラン!♪瞳水晶にいつだって〜♪笑顔映し合おう〜promise!♪キミがいるからパワー、生まれるよ、今日も〜♪Try, try, trio dreams♪……プリキュア!ハイエモーション!」」」
ソウルは本来はウインクのポジションである正面から見た際のアイドルの右側で歌い、三人が力を合わせる事で発生した虹のエネルギーを放つ。そしてその光はクラヤミンダーへと降り注いでその体を浄化。勿論技名はハイエモーションのままだ。
これにより、ひまわりのクラヤミンダーが浄化。この光景に唖然としていたキッスと興奮したように三本のキラキライトを振るズキューンである。
「皆の歌、最高!」
「嘘、お兄様が……アイドルプリキュアと」
「良いじゃん、キッス。私達も行こ!」
「え、えぇ……」
キッスはかなり困惑した顔つきだったが、ひとまずは自分達も浄化技を使うべきという事で技を発動した。
「「二人の誓い!今、輝け!」」
二人は掛け声と共にクラヤミンダーを強制着席させると浄化のための歌を歌う。
♪決め歌 Awakening Harmony♪
「「取り戻したい〜♪光の世界〜♪」」
「その笑顔♪」
「勇気♪」
「涙♪」
「夢♪」
「「希望の兆し♪キミと明日を〜願うチカラで♪生まれる〜私たちのハーモニー♪響け〜♪……プリキュア!ズキューンキッスディスティニー!」」
ズキューンとキッスが放った白と黒の光の一撃が金魚のクラヤミンダーへと降り注ぐとその体を浄化していく。そのため、先程浄化されたクラヤミンダーと合わせていつもの台詞を言い、共に消滅した。
「「「「キラッキラッタ〜」」」」
クラヤミンダーの浄化でキラルンリボンが生成。ただし今回は一つの水晶で二体のクラヤミンダーを呼んだからか、生成されたリボンは一つだけであった。それをズキューンが手にしてこの場をシメる事となる。
「くっ。一人足りないはずなのに、何だいこの強さは!」
そのままチョッキリーヌは撤退。それと同時にハートガーデンは解除されてまた元の夏祭り会場に戻ってきたソウル達。五人は変身解除すると夜空に上がる花火を見た。
「花火……そっか、もうこんな時間か」
「取り敢えず、今から登る?間に合うかどうかはわからないけど」
「そうですね。折角なら最後に花火くらいは見たいですし」
「そうだな……取り敢えず、お前への問い詰めも終わってないし」
「プリ!?チョッキリ団がいないのにブルッと来ちゃったプリ!」
プリルンは影人からの視線に寒気を感じるとチョッキリ団がいないのに体が震えてしまう。
「ねえたま、流石に今回は擁護できないのメロ」
「メロロン!?」
プリルンが唖然とする中、うた達は苦笑いする事になる。それから暫く歩くと影人達は頂上付近に到着。影人達も花火には間に合うと最後に少しだけ打ち上がるのを見る事ができた。
「綺麗……」
「心キュンキュンしてます!」
「ハートの花火もあるメロ」
「綺麗プリ!写真撮るプリ〜」
影人達は僅かながらも夜空に打ち上がる花火を楽しむ事になる。その後、無事に花火も終了。人々が山道を降り始める中、影人達は先に見ていたななやレイと合流する事になった。
「あ、いたいた!ななちゃーん!」
「うたちゃん、皆!」
ななとレイの二人は手を繋いで歩いてくる中、影人達は二人が無事に花火を見る事ができたという事実に安堵の顔を浮かべる。
「レイ、ありがとな」
「いや、お礼を言うのは俺の方だ。おかげで良い時間を過ごせたよ」
そんな中でこころはある事に気がつく。それは、ななとレイが先程から手を繋いでいた事であった。
「あれ?そういえば、なな先輩。さっきからレイ先輩と手を繋いでますけど……もしかして?」
「あはは。こころちゃんには丸わかりかぁ……」
そう言ってななは恥ずかしそうに赤い顔をする。それを見てプリルン以外のその場の面々はある事実が頭に過ぎって顔を見合わせた。
「えっ……まさかと思うけど……」
「レイ、本当か?」
「そうだよ。……俺となな。付き合う事になったから」
「「「「えぇーっ!?」」」」
「……プリ?」
プリルンが首を傾げる中、影人達は予感こそしていたが、改めてその事実を知って声を上げる。……この日、ななとレイは恋人としてのお付き合いをする事になるのであった。
今回で一応夏祭り回は終わりとなり、次回からまたアニメ26話の話として再開します。ななとレイがお付き合いする事になった際のやり取りに関してはまたその時に描きますね。それではまた次回もお楽しみに。