キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
はなみちタウンでの夏祭りも終え、月も八月へと突入。そんなある日の朝。紫雨家ではこころが目を覚ます。
「ふぁああ……」
欠伸をするこころはベッドから起きるといつも通り、父親の遺影やお手製のアクスタを見る。そこにはいつの間にか増えたキュアズキューンやキュアキッスの物も並んでいた。勿論キュアソウルの物もある。
「……カゲ君。折角の夏休みなんだからもっと長く一緒にいたいな……」
こころはここ最近、影人との時間が短い事を気にしていた。勿論、声優を目指す事を決めてから影人ができる範囲で入所試験に備えた練習で普段以上に忙しくなっている事は知っている。だが、そうは言っても我慢し続ければその内爆発してしまう。
「はぁ……」
こころは溜め息を吐くと朝食を食べるために食卓に行くとそこで母親の紫雨愛と出会う。
「おはよう、こころ」
「おはよう、お母さん」
愛は仕事のスーツ姿であり、急いで準備を進めていた。こころは夏休みだが、愛はいつも通り平日の仕事である。そのため、彼女は忙しい様子で準備を進めていた。ただ、こころが少し元気が無さそうな様子にはちゃんと気がつくわけで。
「こころ、元気が無さそうだけど……どうしたの?」
「うえっ……えっと……」
「あ、もしかして影人君と上手く行ってないとか?」
「……お付き合い自体は順調だよ。カゲ君に嫌われてるってわけじゃないし。でも……」
こころは愛が相手だとしてもやはり影人の事を考えて落ち込んでしまう。影人と長い時間一緒にいたいという自分の気持ちと、そんな事をしてしまえば影人に迷惑がかかるために自重しないといけないという思いが交差しているのだ。
「じゃあ、影人君に一回お願いしてみたら?もっと長い時間一緒にいたいって」
「うえっ!?お母さん何言ってるの!?そんな事したらカゲ君に迷惑が……」
「そりゃあ、何回も聞いたら迷惑だと思うわよ?でも、最初の一回を聞くだけなら大丈夫だと思うわ」
愛は自分の娘が彼氏である影人に甘えたいのだと一瞬で見抜くと一度聞くだけ聞いてみる事を提案。影人との時間を長く過ごすにしてもまずは聞かないとどうにもならないと愛は娘であるこころに促しているのだ。
「でも、カゲ君はなんて言うかな……」
「多分、悪い風には捉えないんじゃない?少なくとも最初の一回聞くだけならさ」
愛に勧められてこころは悩む。どうしても考えが煮詰まらない。そこに愛から更に追撃が入る。
「……こころは幼い頃から我慢してばかりなんだから、こういう時は影人君に甘えても良いと思うけどなぁ」
「うぅ……もう、お母さんってば!お仕事あるんでしょ!早くしないと遅れちゃうよ!」
「あー、また我慢したな〜。なんて……こころ」
「何?」
「こころ、辛いって思ったら影人君に甘えて良いんだからね。甘えたいって思ったらすぐに甘えないと。折角隣にいてくれるんだから、後で後悔しないためにも……ね」
愛の言葉には説得力があった。それはもう彼女の隣には夫である紫雨信二がいないという形で示されてしまっている。つまり、甘えられる時にできる限りやっておくべきだと。……大切な人が目の前からいなくなってからでは何もかもが遅いのであると伝えたいのだ。
それからこころは愛を見送ると彼女は仕事に出掛けて行った。そのまま彼女は朝食を食べ終わると今日もまた集まる約束があるという事でグリッターへと移動する事になる。
「お母さんにああ言われたものの……カゲ君、良いって言ってくれるかな」
こころの中にはまだ迷いがあったのに加えてもう一つ悩みの種があった。それは、仮に影人が良いと言ってくれたとして。どこまでなら許容してくれるのかという問題だ。
「……正直、私にはカゲ君としたい事があるけど……。こんな事お願いしても良いのかな」
こころは僅かに顔を赤くしていた。それは彼女の中の恥ずかしさに多少触れる事になるのだろう。
「……そうだ。折角なら夢乃ちゃんにも一言相談を入れないと……」
こころが早速スマホを取り出すと夢乃へとメッセージアプリを使って個別でメッセージを送る。その直後、タイミングが良かったのか割とすぐに既読になると返事が返ってきた。
「早っ!?えっと……」
そこにあったのは“了解しました!それがこころ先輩の願いならその時の根回しは任せてください!お父さんとお母さんにも一応話は通しておきますね”という物だった。こころは夢乃のやる気に慌てて補足で付け加える。
「夢乃ちゃん。応援してくれるのは嬉しいけど、まずはカゲ君に言わないとだし……」
こころはどうやって影人相手に今回の件を切り出せば良いかわからずに色々とやり方を考えながら歩いているとどこからともなく声が聞こえてくる。
「私、キュアアイドル!」
「私、キュアウインク!」
「私、キュアキュンキュン!」
それは幼い女の子達が話す声だった。こころが声に気がついてその方向を向くと視線の先には公園の遊具の広いスペースで三人が横に並び、手にキラキライトを持ってアイドルプリキュアを真似して踊りながら歌う様子であった。
「「「Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪みんな、キラッキラン!♪」」」
それは彼女達がアイドルプリキュアのファンで、かつての自分のようにその背中を憧れの視線で追いかけているようなそんな親近感がこころの中に湧いてきた。
「わぁ……。あの子達、心キュンキュンしてます。素敵だなぁ……」
「「「瞳水晶にいつだって〜♪笑顔映し合おう〜promise!♪キミがいるからパワー、生まれるよ、今日も〜♪」」」
こころは笑顔で歌や踊りをしてアイドルプリキュアに純粋に憧れる彼女達を見ていると先程までの悩みなんてどうでも良いくらいに心の中が温かくなる感覚を感じた。
「もっと心キュンキュンがいっぱいになったら良いのにな。……あ、そうだ!」
こころは何かを思い付くと同時にその場から駆け出す。早くこの考えを影人達に言いたい。そう思うといてもたってもいられなくなったのだ。そんな風にこころの気持ちが昂る中、少し時間を遡って喫茶グリッター。そこでは影人とうたがある事を問い詰めていた。
「二人共、付き合い始めてから距離感が更に縮まったね」
「ああ。レイの方は呼び方も変わったしな」
「うん、私がそうして欲しいって言ったんだ。折角恋人になったんだし……彼氏からちょっと呼び捨てにされるのが憧れちゃって」
「俺の方はまだななって呼ぶのは慣れないけど、その内ちゃんと身につくと思う」
夏祭りのあの日以降、レイはななの事を名前の呼び捨てにするようになっていた。これは彼女であるななからの要望である。
「そうだ、この前は聞けなかったけど……二人が付き合うようになったやり取りとか教えて!」
「プリルンも知りたいプリ〜!」
「あ。でも折角話すならこころちゃんも……」
「こころに聞かれたら俺が後から話しておく。それで大丈夫か?」
「お、そう言うってことは影人も意外と知りたいんだな?」
「うっせ」
うたは付き合うようになったキッカケの二人のやり取りが気になる様子で、彼女は目をキラキラさせた上で興味津々だった。
「じゃあ、話すぞ」
それから二人は夏祭りのあの日。花火が打ち上がる中でどんなやり取りをしたのかを話し始める。
〜回想〜
夏祭りのあの日、なながレイに呼びかけた後にレイが答えると少しの間二人の間に無言の時間が流れた。ななはレイにジッと見られて恥ずかしい気持ちが湧き上がる。
それでも、ななは勇気を振り絞らないといけない。そうしないと自分の言いたい事は言えないのだ。ななはウインクをして少しでも足りない勇気を補填する。
「……蒼風さん」
「は、はいっ!」
しかし、ななが話そうとする前にレイが先に声をかけた。ななは彼に不意打ちで話しかけられてしまった影響で変な声が出てしまう。そんな中、レイはななへと話し始める。
「ここ最近、蒼風さんと過ごしていると……何だか落ち着くんだ」
「え?」
「父さんのやり方に納得できなくて、冷静じゃない状態の俺相手でも蒼風さんはちゃんと話を聞いてくれて。さっきも父さんとの大切な想い出を思い出させてくれた。思い返せば蒼風さんに助けられてばかりだ」
そんな風にななとの時間を話すレイの様子はとてもリラックスしており、普段以上に肩の力が抜けていた。そして、彼はそのままある事を言う。
「……蒼風さん。俺は蒼風さんと過ごす時間が大切で……その、蒼風さんともっと話したいんだ」
レイは普段誰にも見せないような気恥ずかしそうな顔つきになるとななの方を向く。そして、レイは少しの前置きを置いたものの……とうとうななへと今の気持ちを口にした。
「蒼風さん、俺は蒼風さんの事が気になってる。一緒にいる時間が特別に思えるんだ。……だから、俺と恋人としてお付き合いしてもらえませんか?」
レイはななへと自分の抱えている彼女への気持ちを伝えた。ななはレイからの告白を受けて顔が赤く染まっていく。完全に自分の言いたい事を先に言われてしまったという気持ちが大きかったが、それでもななの気持ちは変わらない。
伝えたい事があるのは自分も同じであると言わんばかりにななはもう一度改めてウインクをしてからレイへと気持ちを伝える。
「……そっか。レイ君もなんだね……。私も同じ気持ちだよ、レイ君。だから……これからよろしくお願いします」
ななはそう言ってレイへと微笑みかけた。二人はお互いの気持ちが一つであると確認するとそのままの流れで顔を近づけていく。
身長はレイよりもななの方が低いため、ななはほんの少しだけレイへと背伸び。レイもそんな彼女に合わせる形で少しだけ顔の位置を低くするようにする。そして、そのまま二つの唇が重なると同時にカップル成立を密かに祝福するかのように夜空にはハートの花火が打ち上がるのであった。
〜現在〜
「キラッキランラン……!そんな素敵な時間を過ごしたんだね!」
「花火が打ち上がる中での誓いのキス……。二人は立派な恋人メロ……」
「何にせよ、俺達は二人への祝福をしないとだな。おめでとう」
影人達は二人が結ばれたのを心から喜び、歓迎していた。それだけ二人が結ばれて嬉しいのである。
「そうだ、プリルン。話は変わるんだけど、俺達が集めないといけないキラルンリボンって、今どのくらい集まってるんだ?」
「プリ!今出すプリ」
話題は変わって影人達が集めているキラルンリボンの話になる。影人に促されてプリルンはポシェットの中に入ったピンクのリボンケースを開く。そこにはそれなりに沢山溜まったキラルンリボンが全て収納されていた。
「またいっぱい集まってきたプリ!」
「メロ〜!」
「本当だね!」
「おぉ、もうギッシリ入ってるんだな。この様子だと10個はあるかな?」
プリルン達が一度キラキランドに行った際に手持ちにあったキラルンリボン。それらの全てがビッグキラキラリボンへと戻されたために所持数はリセットされていたのだが、それでももう10個を超える総数が集まっている。
「前にプリルン達がキラキランドに行った時にその時点で持ってたリボンは全部ビッグキラキラリボン?だっけ。それに返したんだよね」
「そうプリ」
「この調子でもっともっと集めたいね!」
「集めれば集める程にキラキランド復活に近づく。この調子でどんどん行かないとだな」
「ねえたま、久しぶりにねえたまのファンサが見たいメロ」
「プリ!」
するとメロロンからの要望を受けたプリルンキラルンリボンを胸に装着すると久しぶりの妖精態でのファンサを行う。
「プリルンの事、もっと見て見て〜プリ!」
「メロ〜!見るメロ!見るメロ!」
プリルンのファンサに一発で心を撃ち抜かれたメロロンは目にハートマークを浮かべるとエフェクトとして沢山のハートを出しながら白く光るキラキライトを振る。
「プリルンのファンサでメロロンが一発で撃ち抜かれたな」
「ああ、やっぱりメロロンにとってプリルンがどれだけ大きな存在かがよくわかる」
影人とレイが話しているとうたやななもそんな二人のやり取りを見て微笑ましい様子を浮かべていた。
「もっとも〜っと集まればキラキランドのビッグキラキラリボンが元に戻るプリ!」
「そういえば、こころは?」
「まだ来ないけど、何してるん……」
うたやなながまだ来ないこころの事を話し始めたその時。いきなりグリッターの扉がバァンと音を立てて開けられるとそこに噂のこころが入ってくる。
「皆さん!突然ですが、提案があります!」
「「「「「「ん?」」」」」」
唐突にやってきてこころからの唐突な提案にその場の一同は首を傾げる。そんな一同をさておき、こころは提案内容を話した。
「ファンクラブを作りませんか?」
「「「「「「ファンクラブ(プリ)(メロ)?」」」」」」
その場のこころ以外の六人はまた首を傾げる中、こころの熱意は更に凄まじく燃えるとファンクラブの題名を発表する。
「はい!題して、アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルの……オフィシャルファンクラブです!」
「オフィシャル……つまり公式のファンクラブって所か」
「本当に唐突な提案だなぁ……」
影人とレイはこころからの提案を直ぐに理解すると呟く。こうして、こころが提案するアイドルプリキュアとズキューンキッスソウルのオフィシャルファンクラブプロジェクトが始動する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。