キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
グリッターでの話し合いをしてある程度話が纏まった頃。影人達はグリッターから場所を移動。その先はキラキランドのはなみちタウン出張所である。影人達が到着すると少しして、出張所の表札に色々と新しい情報が追加された。
「あの……何で私の家がファンクラブ事務局に?」
田中が何故か自分の家の表札が更に増えた事に疑問符を浮かべる。ちなみに今日は姫野の方はいつも通りのサウンドプロダクションでの仕事があるためにここにはいない。
そんな中で、元々田中の家と兼ねていただけの出張所。そこに少し前に追加されたプリルン、メロロンの家という表記に加えてアイドルプリキュア、ズキューンキッスソウル事務局とオフィシャルファンクラブ事務局という文言まで追加されてしまっていた。
「すみません、勝手に……」
「ここはねえたまとメロロンの家でもあるのメロ!」
「自由な人達だ……」
田中は唖然とした様子で半ばこの状況に諦めたかのように呟く。ここまで来ると田中が本当に気の毒になってくる。出張所という場所が兼ねる役割が多すぎてそろそろパンクしてしまうかもしれない。
それはさておき、何故影人達がここに来たのか……という話になるが、それはここには色々と設備があるからだ。そして、その設備を使用してやる事というのはファンクラブの会員証にするための写真撮影のためである。
「ほんと、流石に用意良すぎるだろ。田中さんも色々準備お疲れ様って感じだな」
「でも、おかげで施設やらを借りる必要無くここで写真を撮れるんだ。総合的に見たらこっちの方がお得だろ」
影人とレイが二人で話し合っているとそこに興奮した様子のこころがカメラを手に声をかけた。
「ポーズをお願いしまーす!」
「キラッキ〜ランラン!」
「それ頂きます!」
「プリ〜!」
それから会員証作成のための写真を順番に撮影していく。今回はプリキュア達個人個人が何パターンかポーズを取って撮影をしてもらうとその中で使えそうな写真を選定していく形を取っている。そんな感じで暫く経ち、六人が個人個人の写真を撮り終えた。
「沢山撮ったね!」
「この写真を使って、六種類の会員証を作るのはどうでしょう?」
「つまり、私達六人だから」
「六種類から選べるって事だね!」
「……うーん。でもさ。その場合誰か一人に推しを絞らないといけないよな?」
うたやななの言葉に影人が指摘する。個人個人が写っている六種類のカードの中から選ぶ場合、二人以上を推している人はその中から誰か一人を選ばないといけなくなる。
「確かに、個人個人の分だけだと箱推しの人が困っちゃいますね……」
「「箱推し(プリ)(メロ)?」」
プリルンとメロロンは箱推しという言葉を知らないために疑問符を浮かべた。そこに田中やレイが補足する。
「グループ全員を推す事かと」
「ああ。アイドルオタクの中には個人個人を推すよりもチーム全体を推す事を優先する人もいるからな。今のままだとその箱推しの人達が困ってしまうんだ」
「ならメロロンはねえたまやにいたまと三人組メロ」
そんな中メロロンはフワフワと浮かぶと影人の手を片手で繋ぎ、そのまま戻ってくるともう片方の手をプリルンと握る。メロロンとしては大好きなプリルンや影人との三人組を所望しているらしい。するとうた達が声をかけた。
「ねえねえメロロン!」
「メロ?」
メロロンがプリルンと共にその方を向くとうたやその近くにいるなな、こころが次々と顔面を近づけると上目遣いで頼み込むような仕草で目を潤ませつつメロロンへと聞く。
「六人じゃダメ?」
「ダメメロ」
「ダメかな?」
「ダメメロ」
「ダメですか?」
「ダメメロ!」
「プリプリ……」
うた、なな、こころからの相次ぐ懇願をメロロンは全て蹴ってしまうと最後に隣のプリルンまでもがメロロンへと潤んだ目を向ける。そのため、メロロンはそんなプリルンの可愛らしい顔に顔を赤くすると少しだけ迷う。
「(可愛いメロ……)」
しかし、プリルンからのお願いでもダメな物はダメらしく。メロロンは苦渋の決断と言わんばかりの声色で拒否してしまう。
「ねえたまの頼みでも……メロロンはねえたまやにいたまとの三人組メロ!」
「「「そっかぁ……」」」
「……いや、何だこの時間は」
影人は先程から続くこのやり取りに呆れたような顔を浮かべ、田中は話がこれ以上進まなくなってしまうために今のやり取りを総括した。
「取り敢えず、アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルの二パターンを作りましょう」
その後、六人は再度変身する事になると今度はチームでの写真撮影タイムを挟む事になる。その撮影も終わり、今度は試しで会員証の見本を作る時間だ。
「くるりん、くるりん!」
「あ、後は会報も作らないとですね!」
「会報って?」
こころからの話にうたがまた首を傾げる中、言い出しっぺのこころが再度の説明を開始する。
「会報とは!私達のとびきりのとっておき情報とか、普段は見せないようなすっごくレアなミニ雑誌のような物です!」
「じゃあ、皆が喜んでくれる情報を集めないとだね!」
「突撃!50の質問とかは?」
「面白そうプリ!」
「50の質問か。ただ、それをやるなら質問も色々考えないとだな」
50の質問をやるにしてもその肝心の質問が無いと企画にならない。ただ、その点に関しては特に問題は出なさそうだった。その理由というのが……。
「その点はご安心を。質問ならファンレターで沢山きてますよ」
「わぁ!いっぱいだ!」
「また随分と増えたなぁ」
田中が持ってきたのは大量のファンレターの入ったダンボールである。その隣にはレイが同じようにファンレター入りのダンボールを持ってきていた。
「こっちにもファンレターはあるぜ」
「まさかの二箱目!?」
「凄くいっぱい!」
「嬉しい!」
影人達が大量のファンレターを見て驚きや嬉しさを露わにする中、田中がその中の一枚を手に取るとまず試しと言わんばかりに一つ読み上げる。
「例えば、苦手な食べ物はありますか?」
「「「「「「無いです(プリ)(メロ)!」」」」」」
「私達!」
「「「「「「何でも食べまーす(プリ)(メロ)!」」」」」」
最初の田中が読み上げた質問に対して笑顔を浮かべながら満場一致で答える影人達。次はレイが読み上げる。
「好きなことわざは何ですか?」
「うーん、“石橋を叩いて壊す”?」
うたがそう答えた瞬間、思わず影人がズッコケてしまう。それはことわざとして微妙に違ったからだ。
「おい!?壊してどうするんだよ!」
「へ?どゆ事?」
「どゆ事?はこっちの台詞だ!」
「あのね、うたちゃん。違うよ?石橋を叩いて壊しちゃダメだよ」
「あっ……」
「正しくは“石橋を叩いて渡る”」
なながどうにかうたのミスをフォロー。正しいことわざを教える。うたは自分の考えていたことわざが間違ってきたという事ですぐに代わりのことわざを出す。
「じゃあこれだ!“猫にご飯”!」
「それも違うって!」
「それを言うなら“猫に小判”だね」
「あはは、ことわざって難しいね……」
「咲良さんの場合は知らなさ過ぎだけどな?」
うたの壊滅的な頭の悪さは前回の数学のテストでも明らかにされていたが、この調子だと音楽や体育の実技以外の全教科がうたにとっての苦手科目と取れてしまうかもしれない。
「“私は好きこそ物の上手なれ”です」
「どういう意味プリ?」
「好きな事は幾らでも頑張って集中できるからどんどん上達できるって事になるな」
今度はこころが自分の好きなことわざを話すとその意味がわからないプリルンにレイが教える。
「はい、昔お父さんに言われたんです。カゲ先輩と出会う前……スクールで習ったダンスを何度も練習してた時……」
〜回想〜
こころが幼い頃。彼女達が住んでいた家の一室にて、こころはダンスを練習していた。しかし、最後のターンだけ上手く行かずにどうしても転んでしまう。
「ッ!?うわぁあっ!……もう一度……」
こころはどうにか成功させようとするが、何度も失敗しては転んでしまう。ただ、彼女は諦めずに倒れる度に立ち上がって成功させようと努力した。そんなこころを近くで見ていた父親の信二は頑張る彼女へとエールを送る。
「頑張れ!こころ!」
そんな時、母親の愛が二人へとご飯が出来たという事で声をかける。ただ、信二はそんな愛へと視線を送った。
「こころ、お父さん。ご飯……あっ」
愛も今はこころの練習が良い所だと察すると微笑んだ。そんな中でこころはできなかったターンを成功させる。
「えいっ!……ッ!回れた!」
「凄いぞこころ!」
「お父さんできた!回れた回れた!」
「“好きこそ物の上手なれ”だな、こころは」
こころは出来ていなかったターンを成功させた事に喜び、信二はそんなこころを見て好きな物を夢中でやり続けてどんどん上達していく。そんな事を感じたらしい。そして、こころはその言葉がずっと忘れられなかった。
〜現在〜
「……お父さんからの言葉が凄く心に残ってて……。それから、カゲ先輩と出会ってダンスももっと好きになったんです」
「本当に“好きこそ物の上手なれ”だね」
「はい!」
こころの話を聞いて影人達は彼女が好きなことわざがそれだというのに納得が行った。こころはこの点においても今は亡き父親から大切な事を教わっていたのだという事だろう。
話もひと段落した所で影人達はファンクラブに入ってくれる人達のためにグッズ制作を開始する事になる。主に作るのは缶バッジ、団扇、そして会員証だ。田中も忙しく動いている。彼も彼でネットでのファンクラブ開設のためのホームページを作らないといけないからだ。影人達が暫く制作に勤しんだ所で一旦作業を止めて休憩の時間となる。
「ふぅ〜」
「一旦休憩しよっか」
「こうして実際にやってみると大変な物だな。というか、手作業でするには多分限界あるぞ?これ」
レイはそんな風に話す。会員証の件もそうだが、幾らファンのためとは言っても全てを手作業でやるには少し無理がある。
「ご安心を。一応途中からは業者の方にも手伝ってもらえるように手回ししますので」
「流石田中さん、仕事が早い」
するとうたが休み時間になったタイミングで取りに行っていたある物を鞄から取り出して器の中に入れて置く。
「じゃ〜ん!おやつ持ってきました!グリッター特製、きゅーたろうクッキー!」
「お、いつかの時にあったきゅーたろうのクッキーか」
そこにはグリッターでも販売しているきゅーたろうクッキーである。今回はお店で出す分とは別で作った物なので問題は無い。
「皆で頑張りながら食べるおやつは最高だよ!」
「プリ〜!」
「メロ」
プリルンもおやつと聞いて嬉しそうにする中でこころは未だにグッズ制作を頑張っていた。そのため、ななが声をかける。
「こころちゃんも休もう!」
「あと少し!……どうしてもこれだけは仕上げたいんです」
こころはグッズを作るのが楽しそうな顔つきでそう返し、うたやなな、レイは微笑ましい顔になった。また、影人はそんなこころの隣に座る。
「うえっ!?カゲ先輩!?」
「……だったら俺も手伝うよ。こころが頑張ってるのを見たら俺もやりたくなったから」
「カゲ先輩……。ありがとうございます!」
影人は頑張るこころに触発されて彼も一緒に少しだけ作るのを手伝った。二人の距離感は近く、こころも影人が近くに来て手伝ってくれるのが嬉しいようで。そのためやる気が溢れてくると作業効率が少しだけ良くなるのだった。
「そっか!じゃあ二人の分のおやつ置いておくね!」
「……どこまでも頑張って、何故お二人はそこまでできるんでしょうね」
ふと紅茶を淹れたと思われる田中がカップを乗せたお盆を片手で持ってくるとそう呟く。そんなやる気に満ちた影人とこころはグッズ制作に没頭する事になる。
「……やっぱり、にいたまの隣が似合うのは、こころなのメロね……」
メロロンは二人の様子を見て何か思う様子だった。それは影人の隣……一番近い場所は自分よりもこころの方が良い。あくまで自分は影人の妹分に収まるのが精一杯であるのだと感じ取るのだった。
その日の夕方。影人達はこの日の作業を終えるとそれぞれ家に帰る事になった。
「それじゃあお疲れ様!」
「明日はアカペラ練習だね」
「それと言い忘れてたけど、姫野さんや講師の皆さんにも少し手伝ってもらえるらしいから。業者の方の準備ができるまでの一時的な物だけど」
影人達は出張所に住んでいるプリルン、メロロン、田中の三人と別れると街に向かって伸びる道を歩いていく。先程も言及があったが、流石に今の人数であの作業を手作業するにはキツすぎるのである程度経ったら業者の方に生産をシフトしてもらう事になる。
するとこころは歩きながらソワソワとしていた。その直後、こころのスマホが鳴るとそこには夢乃からのメッセージが出てくる。
「ッ……!」
そこにあったのはたった一言。“根回し完了”というだけだった。ただ、こころにとってはその一言だけで十分だった。そして、彼女は自分の前を歩く影人へと声をかける。
「……あの!カゲ君!」
それは、先輩としてでは無く恋人としての呼び方だった。影人はそんなこころからの声かけを聞いて思わず振り向く。
「こころ?どうしたんだ?」
「え、えと……」
こころは立ち止まると言いづらそうに顔を赤くしながら言いたい事をどうやって言おうか迷っている様子だった。
「こころ?」
影人は思わず再度こころの名前を呼ぶ。そのタイミングで彼女は覚悟が固まった様子で。……こころは影人へとあるお誘いをする事になった。
「あの、カゲ君……。折角だから……今日の夜私の家に来てください!」
「……へ?」
それはこころからのお泊まりのお誘いである。まさかの提案に影人は僅かに硬直するとその意味をどうにか飲み込む。
「お泊まり……?こころの家……?」
影人はこころからの突然の頼みを聞いて少し混乱する。しかし、彼女が勇気を振り絞って頼んでくれたお誘いだ。ここで断るのはマナー違反だろう。そのため、影人は頷く事になるのだった。
また次回もお楽しみに。