キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
こころに家に来るように誘われた影人。彼はひとまず泊まるための準備をするべく自分の家に帰ると荷物を揃える。
「……まさか急にこころに泊まってほしいって言われるとはな」
〜回想〜
少し前、こころにお泊まり会を誘われて彼女と分かれる前に色々とお泊まりに対しての話をしようとした。
「一応大丈夫だとは思うけど、泊まってくること伝えないとだから。父さん母さんには連絡するね」
「……いえ、その必要はありません。夢乃ちゃん経由で許可はもう取ってます」
「……ん?今何て?」
影人は既に自分の両親に許可を貰っているとこころに言われた。そのような事態は想定していない。
「カゲ君のご両親にはもう了承は貰ってます。勿論、私の家族にも」
「……用意良すぎない?もしかして最初から俺に断る選択肢が無いなんてオチは無いよな?」
影人はまさかの事態に唖然とする。自分からの話が行く前に両親には夢乃の方から話が行ってしまってる現状。加えて、急に言い出した割に自分の家の都合も揃っていると来た。
「と、とにかくです!……偶にはカゲ君と一夜を明かしたい……なんて」
こころはモジモジと顔を赤くすると影人へとそう伝える。それは彼女にとってとても勇気のいる話だった。そして、影人はそれを受け入れた。そうなったらこれ以上とやかく言う必要なんて無いだろう。
「……わかった。こころ、よろしくな」
「ッ、はい!」
〜現在〜
影人は黒霧家で準備を終えると荷物を持って行こうとすると偶々夢乃と鉢合わせる。
「あ、お兄ちゃん」
「夢乃も知ってると思うけど、今日はこころの家に泊まってくる」
「ん。こころ先輩によろしく伝えておいて。それと、お父さんお母さんには私から話は入れてるから。二人共お兄ちゃんが泊まってくるの凄い嬉しそうな顔して送り出してたよ」
夢乃はそんな風に両親からの返事を伝えると影人はやはり話がちゃんと通っている……否、通り過ぎていると思った。やはり最初から今日はこころの家で泊まるという事が両家の間で確定していたのだろうと。あくまでこころが直接お願いしてきたのは自分の彼女としての筋を通すためなのだと感じ取った。
「わかった。それじゃあ行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい。……あ、そうだ……」
「何だ?ゆめ……」
「こころ先輩と付き合い始めてもう数ヶ月で、部屋では二人きりなんでしょ……?そろそろ……その、するの?」
夢乃は顔を赤らめつつそう聞く。そこまで話したら影人は彼女の意図が一つしかない事を感じる。
「するって……。アレ?……大丈夫だ。まだこころに手を出すつもりは無いよ。こころだってこんなに早い年齢でするなんて言ったら迷惑だろうし。そこはちゃんと抑える。それに……まだ今の年齢からするなんて早すぎるしな」
「良かった……。その、お兄ちゃん。こころ先輩にもう手を出しちゃうのかなって」
「いやいや、ちゃんと理性が仕事をする内はそんな事にはならないって」
夢乃はあっちの知識に関しても同年代の女子よりも豊富なのは前々から説明済みのためこれ以上は重複しない。ただ、その影響もあって兄が勢いでしてしまわないか少し不安だった。影人もそんな夢乃の心配に特に動揺する事無く彼女を安心させるような話し方だったため、夢乃は一安心である。
「じゃあ、あまり待たせるのも申し訳ないし、行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
影人はこころに見送られる形で紫雨家へと移動していく。時刻はもう日が殆ど沈みかけた時間になってしまったが、もう今なら準備ができてるだろう。そのため紫雨家のインターホンを押す。
「はーい」
それから玄関のドアが開くとこころが出てくれた。影人を出迎えた彼女の顔は嬉しそうである。
「カゲ君、ようこそです」
「うん。こころ、今日はよろしく」
「じゃあ、外で待たせるのも申し訳ないし。中にどうぞ」
「お邪魔します」
影人はこころに促されるままに家に上がった。そして、まずは家にいたこころの祖父祖母へと挨拶する。
「あら、ここちゃんから来るとは聞いてたけど。今日はよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。誠さん、恵子さん」
「そんなに他人行儀な呼び方じゃ無くても、お爺ちゃん、お婆ちゃんでも良いのよ?」
恵子はもう既に影人とこころが将来結婚しても何も問題無いと言わんばかりにそう話すのを見て内心苦笑いする。
「いえ、その話はまた手順を追ってします。今日は他人行儀な呼び方になりますが、将来的にはって事で」
「もう、お婆ちゃんもカゲ君も……気が早いよ……」
こころは恥ずかしいのか顔を赤くしつつそう話す。そんな中、影人の視線は台所の方を向く。そこには料理中と言わんばかりの光景が広がっていた。近くにはこころの物と思われるエプロンもある。
「あれ?こころ、もしかして料理中だった?」
「え?あぁ、はい。お母さんが今日も遅いという事で、夏休みの間は偶に私が作るんです」
「そっか……。じゃあ、俺も手伝って良いか?」
「うえっ!?そんなのダメですよ。……カゲ君にはゆっくりしてもらいたいです」
「いや、俺だってせっかく泊まらせて貰うんだ。少しくらい手伝いたい。……頼む」
「う……。わかりました。その、お願いします」
こうして、影人はこころと一緒に料理をする事になった。今日の料理は青椒肉絲やサラダと言った割と簡単にできるような物だ。
「こころ、ピーマン大好きだもんな」
「はい。ピーマン料理なら幾らでも食べられますよ」
それから二人で料理を進めているとこころは影人に肩を寄せて寄りかかってきた。
「こころ?」
「……カゲ君、やっぱり温かいです」
「全く。そういうのは料理中にはやらない物だよ?」
こころはよっぽど影人と触れ合いたかったらしい。それだけここ最近のこころが気持ちを溜め込んでいたのだと感じ取る。
「わかってますよ。でも、何だかカゲ君が隣にいるだけで安心できるんです」
影人とこころは少しずつ会話を挟みながら料理を完了させた。そのタイミングでこころの母親である紫雨愛が帰宅する。
「ただいま!ごめんね、こころ。大事な日にまた……」
愛は申し訳なさそうな顔つきであった。折角こころの彼氏である影人が家に来てくれているのに早く帰れなかった事が申し訳なかったのだ。
「お帰りなさい、お母さん。遅くなった事は大丈夫だよ。それに、カゲ君がご飯作るの手伝ってくれて」
「本当!?影人君、私の方からもありがとう。今日はゆっくりして行ってね」
「はい、愛さん。今日はよろしくお願いします」
「もう、愛さんだなんて。お養母さんで良いのよ?」
「恵子さんと全く同じやり取りしないでくださいよ。というか、前もしましたよね?」
愛としては影人がこころの夫になってくれるなら亡くなった自分の夫も認めてくれるだろうと考えており、これだけこころの事を幸せにしてくれてるのだから受け入れる準備はとっくに万端だと伝えたいのだ。
「影人君、私達はいつでも歓迎するから」
「お母さんってば、カゲ君にプレッシャーを与えないでよ」
「いえ、大丈夫ですよ。少なくとも母の日のあの時よりはこころと一緒になる覚悟はできてますし。流石に報告はまだできませんけど……」
「ふわぁっ!?」
こころはまさかの影人からの宣言に完全に変な声が出てしまうと顔が真っ赤に染まる。そんなわけで影人は紫雨家の四人と食卓を囲む事になるのだった。
「「「「「いただきます」」」」」
早速並べられたご飯を食べる一同。そんな中で愛は早速感嘆の声を漏らす。
「ッ……美味しい」
影人の作った料理は同年代の男子達が作るよりも美味しい。加えて、今回はこころの愛情も込もっているために愛が感激するのも仕方なかった。
「影人君、本当に男子?凄く美味しいよ」
「ありがとうございます。ただ、今回はこころにもお礼を言ってあげてください。今日のこころ、いつもより気合い入れて作ってたので」
「うええっ!?カゲ君がいたから美味しいんだよ。どうして……」
「それはそうかもだけどさ。俺が入ったのは途中からだし。それに、こころも愛さんのために気持ちを込めて作ったんだからさ」
影人にまた褒められて赤くなるこころ。そんな彼女達のやり取りを愛達大人三人は微笑ましい顔つきで見ていた。同時に愛は内心である事を考える。
「(本当に影人君と一緒にいるこころは活き活きとしてるわね。……それに影人君って色々高スペックだから、こころも幸せ者だわ……)」
そんな愛の内心はさておき、それから紫雨家の食卓を囲んでの食事は進む。その間学校での事や二人の馴れ初めに付き合ってからの話。とにかく話題は尽きなかった。
ご飯を食べ終わり少し経過して。影人はこころの部屋に案内されるとそこで先程までやっていたファンクラブ用のグッズの仕込みをしながら待機していた。その理由は簡単で、こころがお風呂に入っているからだ。
「……全く。愛さんも変な事を……。何で冗談だとしても入浴中のこころの所に行けとかそういう趣旨の話を言うかな」
影人は先程言われた愛からの誘惑に多少戸惑ったものの、どうにか理性で抑え込んでいた。何しろ、愛は影人へと“今ならこころの体を覗けるわよ”という冗談を言うような口調で話したのだ。
「そんな事してこころに嫌われたく無いっての……」
正直影人も思春期の男子。そういう事に全く興味が無いわけではない。……ただし、それはあくまで相手が嫌がらない事を前提としている。この前お風呂場から出てきたこころと鉢合わせてしまった事もあって入浴中は絶対に風呂場付近に行かないと決めたのだ。
そしてこころの体を覗きたいという気持ち自体もこうやってグッズ制作をする事で抑えつけて止めている。
「それにしても、こころもあんなに熱心にやって。余程アイドルプリキュアの活動が大好きなんだろうな」
影人はこころの大好きな物に対する過剰なまでの熱意や集中力が少し羨ましかった。影人としてはかつては自分も持っていたはずのその心が今は失われている。だからこそこころは幼い頃からその気持ちが持続しているため、そんな彼女が影人は羨ましいのだ。
「さてと、それはさておき一つ完成だな」
影人が作業を一つ終えると部屋がノックされ、こころが風呂上がりで髪を下ろした状態で入ってくる。
「失礼しますね……」
「こころ、ここはこころの部屋なんだからノックの必要なんて無いだろ?」
「そうですけど、カゲ君が取り込み中だったら困るかなって……」
こころは風呂上がりの熱で頬を赤くしつつ呟く。そんな中で影人は風呂上がりのこころを改めて見ると新鮮さを感じていた。
「やっぱりツインテールじゃ無いこころも可愛いな……」
「か、カゲ君!?」
唐突の影人からの言葉にこころは思わず顔を更に赤くする。そんな中、こころは少し考えると影人に質問した。
「その……カゲ君はツインテールよりもこっちの方が好きなんですか?」
それはこころが影人の反応からして、今の下ろした髪型の方が好評なのではないのかという考えが過ったからである。影人はそんなこころの質問の意図に気づくと返事を返した。
「……俺はいつも通りのこころの髪が良いかな。今の言葉は髪を下ろしたこころも可愛いって感じたから言った事だし。やっぱり、一番はいつものあのツインテールの方だよ」
「そ、そうなんですね。わかりました。じゃあ、明日からもいつも通りにします」
こころも少しホッとしたような顔つきだった。いつもの髪型が影人の好みに合ってないのではないかと不安に感じてしまったのである。
「カゲ君、それとお風呂空いたから……どうぞ」
「うん。じゃあ入ってくる」
影人はこころと入れ替わる形でお風呂場へと向かっていく。そんな中、こころは影人と一緒の家にいられる時間が幸せだった。
「……カゲ君、同じ屋根の下にいるだけでこんなにも嬉しくて。結婚したら毎日こんな気持ちになれるのかな」
こころは影人と一つ屋根の下にいられる事が嬉しすぎたのか、何故か気が早まったこころは将来の事に関して想像を始めてしまう。
「カゲ君と屋根の下でえへへ……」
こころの顔は今現在、影人に見せられないくらいに緩んでいると色々と妄想も捗ってしまう。するとこころの視界に影人が進めていたグッズ制作の物が入る。
「ッ!いけない……。考えが変な方に行っちゃってた。カゲ君が風呂から上がってくるまでの間だけでも仕上げていかないと……」
こころは自分のやるべきグッズ制作の物があったお陰でどうにか正気に戻ると制作を続けていく。それから時間が経過し、こころがグッズ制作に熱中しているとそこに母親である愛が入ってきた。
「こころ。影人君が来てるから少しくらいなら良いけど、夏休みだからって夜更かしは……」
愛がそう言った所でこころが熱心に作業を進めている事に気がつく。そして、こころはそんな愛へと振り返って話し始めた。
「お母さん!私ね、アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルのファンクラブを作るお手伝いをする事になったの!もう凄っごく楽しくて!」
「ふふっ、そう。……無理しない程度にね。あと、折角影人君来てくれてるんだから。彼がお風呂から上がったらちゃんと相手してあげてよ?」
「うん!」
こころは愛からの言葉に頷くと再び作業に集中。そんな彼女に愛は微笑みを向けていた。
「(楽しい事や大好きな事を見つけて集中できる。それがこの子の才能ね。……それに、隣にはそんなこころを支えてくれる頼もしい彼氏さん。こころの将来は大丈夫そうね)」
愛は現状に安心感を覚えるとそのままこころの部屋を去っていく。自分の娘を預けられる彼氏……影人がいる事が愛にとっても大きな支えになっていた。それから少しして。ゆっくりとお湯に浸かった影人がお風呂から上がって戻る事になる。
また次回もお楽しみに。