キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人がお風呂から上がると彼もパジャマに着替えた上で早速こころの部屋へと移動。コンコンと扉をノックする。
「こころ、俺もお風呂から上がったぞ」
「はーい。私も髪を乾かしたし大丈夫。入っても良いよ」
影人が中に入るとこころの髪は完全に乾いており、彼女はファンクラブのグッズ制作に勤しんでいた。
「こんな時間までグッズ制作か」
「え〜?カゲ君がそれ言います?私がお風呂に入ってた時してたじゃないですか」
影人とこころはここからは折角の二人での時間なのでグッズ制作は一度キリの良い所で止める事に。
「カゲ君、こっち来てください」
するとこころは自分のいつも寝ているベッドに腰掛けるとトントンと手で自分のすぐ隣の布団を軽く叩く。ここに来てほしい。こころのそんな意思が垣間見える仕草だ。それに影人は少しだけ遠慮する。
「良いのか?こころのベッドだろ?それに俺は多分床で布団を敷く事に……」
影人がそう言いかけた時だった。こころは立ち上がると影人の元に歩いていくと頬をほんのり赤らめた状態で影人へと上目遣いを向けた。
「……嫌です。折角来てくれたのに、どうしてバラバラで寝るんですか……」
影人はこころからの宣告に唖然とする。まさかこころの方から一緒の布団に入る誘いをしてくるとは思わなかったからだ。そして、こころも自分が何を言ってしまっているのか自分で改めて理解する。
「あっ……か、カゲ君!?こ、これはその……そうです!カゲ君がどんな風な体つきをしているかの研究でその……」
「こころ、それならこの前観察したんじゃないのか?」
「うっ……」
影人は鋭い指摘をこころへと返すと彼女は図星を突かれて口籠もる。こころは以前、うたの家のお泊まり会をした際に寝ている影人の体をベタベタと触った時がある。そんな事があったのでこころの今の言い訳が完全に苦し紛れであると影人は一発で理解した。
「その、カゲ君……私。折角ならカゲ君と寝たいんです。私の欲が丸出しかもしれませんけど……」
こころは恥ずかしそうな様子である。その頬は赤く、かなり恥ずかしさを我慢していた。
「こころ……」
「ダメ……ですか?私と寝るのは、カゲ君は嫌ですか?」
こころはもう一度上目遣いを影人へと向けると一緒に寝てほしい。そうじゃ無かったら泣くと言わんばかりである。
「……わかった。寝るだけなら良いよ」
「はい。よろしくお願いします」
こころがペコリと頭を下げると微笑ましい顔で影人の手を取ると二人でベッドに腰掛けた。
「……私、アイドルプリキュアに関われて。カゲ君と一緒にいられて幸せです」
「ほんと、ここ数ヶ月でお互いに状況が激変したよな」
何しろ影人は数ヶ月前まで他人を誰も受け入れていなかった。もしはなみちタウンに来てなかったら今もそのままだった可能性が高いだろう。そして、こころも同じだ。影人がこの街に来ず、アイドルプリキュアがこの街に誕生していなかったら……。
こころの進む道は大きく変わっていただろうし、その場合上級生であるうた達との絡みも皆無になると思われる。
「カゲ君とアイドルプリキュアは私を変えてくれたかけがえのない人達です。そのせいで少し挫折はしましたけど……カゲ君がいててくれたから乗り越えられたんです」
こころは隣に座る影人の手を優しく握ると影人はそれを優しく受け入れる。彼女の心は水晶のように澄んでおり、あどけない純粋な微笑みが影人の方に向けられた。
「カゲ君。折角なのでもっと恋人らしい事をしたいです」
「恋人らしい事……」
影人はある言葉が脳裏に駆け巡る。それは夢乃に来る前に話していた事であり、影人が今日は絶対しないと決めていた行為。そのため影人は動揺しつつもこころを宥めようとする。
「こころ!?本気で言ってるのか?」
「私だってここ最近、少し溜まってるんですよ……?カゲ君に構ってもらえ無くて……嫌なんです」
こころはそう言いながら影人へと体を預けてきた。影人は夢乃に色々と吹き込まれたせいでこころにはその気があるのではないか。どうしてもそう思えてならなかった。
「待て、落ち着け。まだ俺達がそんな行為をするのは早過ぎる。まだ中学生だぞ!?」
「早過ぎるって何ですか……ちょっと甘えるくらいなんて事無いですよ。私はカゲ君の彼女なんですから少し甘えるくらい大丈夫ですよ」
こころは顔を赤くして興奮した様子である。ちなみに誤解の無いように話しておくが、彼女の中での甘えるというのは決してR18に指定されるような行為のつもりでは無い。ただただ、影人に密着して恋人らしい事。つまり、抱いてもらったりキスしてもらうという事を指している。
「ほら、私がこんなに無防備な姿を晒してるんですよ……?カゲ君はこんな状態の私をそのまま放っておくんですか……」
こころはまるで来てくれないと許さない。そんな趣旨の言葉を言っているようにも思えた。
「こ、こころ。俺にだって覚悟が無いとできない。……それに、まだこんなベッドの上でするような……アレを俺達の年齢でするのは」
「……?アレって何の事ですか?」
こころはここで疑問符を浮かべる。つまり、このタイミングで自分と影人の話している事に相違があると感じたのだ。
「カゲ君、何か勘違いしてませんか?」
「はぇ?」
「私はただ……カゲ君に抱いてほしいんですよ」
影人はこころからの言葉に余計に混乱する。抱いてほしい……その言葉はあっちの意味でも通用してしまう。そのため影人はまた誤解してしまうわけで。
「ちょっ、ちょっ、こころ?本当に意味わかってる?抱いてほしいって……」
「だからそのままの意味です……うーっ……もう我慢できません!」
こころは先程から煮え切らない影人に我慢できなくなったのか、影人へと飛び付くようにして自分から抱きつく。
「うわっ!?」
そのまま二人はベッドの上に倒れると二人揃って寝転ぶ。その視線はこころが抱きついているためにかなり近い。本当に目と鼻の先だ。
「……カゲ君、好きです……。愛してます」
「俺もだよ。こころ」
こころはトロンとした目を影人に向けると影人の中に電流が駆け巡るような気持ちになる。このままキスできてしまうのではないか。そして、そのまま勢いに任せる手段も使えてしまう。
しかし、だからってそんな事をして万が一取り返しのつかない事態になってしまえば……他人からの自分への信用は地に落ちる。そのまま自分への信用は勢い余って地面にめり込んでから奈落にまで墜落してしまうだろう。そのくらい事前の確認が大事な事なのだ。
「……カゲ君、恋人がこうして来てくれたんですよ……。少しくらいしてくれても良いんですよ?」
こころは誘惑するような甘い声色を影人に向ける。影人は流石に顔が真っ赤でどうにかこの状況から何も行為をせずに終わる方法を探す。少なくともこのままでは勢い余ってR18コースだ。
「こころ、こんな事したら……その。戻れなくなるぞ?責任だって色々……」
「責任……?何の事ですか。恋人としてこのくらい当たり前じゃないですか。ちょっとするくらい……」
その言葉に影人の脳は破壊されかけてしまう。男女のするはちょっとでは絶対済まない。ただ、こころにとってのするはハグやキスだけの範囲の話。決してあっちの行為では無いのだ。
加えてこころはまだそういう行為に関しては学校の授業で習い始めたばかりで全く知識が無い。小学生でわかっている夢乃が異常過ぎるのだ。だから仮に影人がやり出しても今のこころには何もできないどころか脚を引っ張ってしまうだろう。
「……むう、カゲ君。何で来てくれないんですか。じゃあ……この方が良いですか?」
こころは少しだけ体を離すと仰向けになって目を閉じ、キスを待つような姿勢を見せる。影人はそんなこころに胸がドクンドクンと早鐘を打つ。こころはやる気なのだと。彼女の意思は尊重しないといけない。わかっていても影人には抵抗感がどうしても残ってしまう。
「こころ。本当に良いんだよな……」
「……そんな許可いるんですか?大袈裟過ぎますよカゲ君」
「いや、どう見ても大袈裟な事だからな?……その、こころのやりたい事は」
しかし、こころは先程からずっとキスを待っている。影人はこれ以上彼女を待たせるのは申し訳ないし、彼氏として最低だと感じるとひとまずキスだけしてすぐには行為をせずに少し間を置こうと考えた。
「……じゃあ、するよ?」
「はい……。お願いします」
それから影人は仰向けになってるこころにキスするためにその上に跨る形で被さると彼女の真上に入る。その様子は完全にやるときのそれなのだが、こころは目を閉じてるためそれに気がついてない。勿論影人にだってそのつもりは無い。ただキスというこころの願いを叶えてすぐに離れるだけのつもりだ。
こころは興奮のせいか息が少し荒くなっており、影人はそんなこころに多少興奮感を覚える。このままでは少し危険だとわかっているが、こころの願いを叶えるにはこうするしか無いと首を横に振って煩悩を抑え込む。
「ふぅ……」
影人は覚悟を決めるとこころへとキスするために顔を近づける。そのまま彼は近づいていき、あと10センチ程で二人の唇が触れ合う……そんな瞬間だった。
「こころ、影人君。明日の朝なんだけど……」
いきなりガチャリとこころの部屋の扉が開くと同時にこころの母親である紫雨愛が入ってきてしまう。そして、それは二人が今しようとしていた行為を目の当たりにするわけで。
「……えっ?」
「「……あっ」」
同時に影人とこころも愛の乱入に気がつくと唖然とする。今の自分達は完全にベッドの上に倒れ込んだ恋人みたいな雰囲気が出ている。加えて、大人で尚且つこころを産むために経験済みの愛からして見れば今からあっちの行為を始めようとしていると映ってしまうわけで。
「へぇ……影人君はてっきりそういう行為に対しては慎重だと思ってたけど。羽目が外れちゃったのか随分と大胆ね」
そんな風に怒りはしてないが、ニマニマとした顔になる愛。そんな彼女に言われてこころは今、自分がどういう態勢なのかをよくよく考えると思い至る。
「大胆……あっ……」
影人は同時にこころとの間で考えの相違があったとやっと理解すると慌てて飛び退く。もし自分がこのままこころの意思に反して近づけば彼女から嫌われるのは明白だからだ。
「ふふっ。夜だからお楽しみなのはわかるけど、夜更かしはダメだからね」
「「そこは色々と気にしてください!」」
影人とこころは思わず愛相手に敬語で叫んでしまう。愛は娘の節操が影人に侵されたというのに特に気にしていない様子だった。恐らく、彼女の中では二人が同意した上で行為に及ぼうとしたのだと感じたのである。ただ、それでも中学生がそう淫らな行為をしようとしていることは親として注意すべきなのだろうが……。
「影人君。こころとやるからにはちゃんと責任は取ってよ?」
「「だからまだしませんって!」」
二人はまた息ピッタリの反応を示すと愛はまだ二人がそういう事をしないとわかってて揶揄ったのか、特に二人がやっていた行為をそれ以上は咎めなかった。
「はぁ……調子狂った……」
「……その、カゲ君」
影人が愛に振り回されて溜め息を吐く中、こころは恥ずかしそうな顔つきで影人へと視線を向けていた。
「カゲ君、もしかして……私とする気だった……?」
「ち、違う!今すぐするつもりなんて無かった……。だからあれだけ聞き返したんだ。……その、こころの気持ちをちゃんと理解してあげられなくてごめん」
「いえ、だとしたら私にも悪い所があるんです。……その、誤解を招くような言い方をしてたって今ならわかりますから」
こころも自分が言ってきた言葉の数々があっちの方でも通用してしまう言葉だった事を思い出すと気まずさを浮かべている。
「「………」」
それから二人は少しの間黙ってしまう。その間静寂が続いたが、どうしても次の言葉を言い出す事ができないため仕方ないのだ。
「カゲ君……」
「何?」
「あの、改めて……私の事抱きしめてもらって良いかな……。その、折角来てもらって時間もあるから」
「ああ……。えっと前か後ろかどっちからが良いとかは?」
「じゃあ、後ろからで……」
こころがそう言うと影人は一度ベッドの上に上がるとそっとこころの後ろに回って後ろから優しく抱きしめる。
「ッ……」
すると影人はこころの心臓の鼓動を感じ取る事ができた。彼女もかなり緊張してるのか、バクバクと鼓動が強くなっている。
「……カゲ君、さっきの事。気にしないでほしい。私、嫌な気持ちはしなかったから」
「そっか……良かった」
影人もそう言ってもらえてホッとした様子を見せた。下手したら先程の行為のせいでこころに嫌われたりする可能性もあったので、影人も少し怖かったのである。
「こころ。今度から誤解しないように、あの話をする時はちゃんと話し合いの場を作ってからにしよ。それまではあの話はしない。それでも良いかな」
「……うん。私も、こんな事で誤解してカゲ君の事を嫌いになりたく無い。ちゃんと話し合った上で……その時が来るまでは節度あるお付き合いにする」
二人は今回の事でお互いに非があると感じて反省。話し合いをするまでの間はお互いにそういう行為をしないという結論で決着した。
「じゃあ、今日は普通に一緒に寝よう」
「うん。カゲ君の隣で寝られるの……楽しみ」
影人とこころはそれから二人で雑話をする事になる。クラスであった事を細かく話したり、うた達の前ではあまりしないような会話もした。その話の中で前にアイドルプリキュアとキュアソウルのマスコットを作ったのだが、それと同じようにキュアズキューンとキュアキッスのマスコットも少しずつ製作を開始した事も伝えた。
二人が夜の雑談に花を咲かせている間にあっという間に時間が過ぎると就寝時間となってしまう。
「そろそろ寝ましょうか」
「ああ。あまり遅く起きてると愛さんに心配かけるしな」
影人は部屋の電気を消すとこころを壁側にして二人で布団に入った。これは、万が一こころがベッドから落ちてしまわないようにするための措置である。
「カゲ君、また手を繋いで寝ても良いですか?」
「勿論だよ」
「ありがとうございます」
こころは嬉しそうな顔で二人は揃って目を閉じた。その後、お互いに寝る際の言葉をかける。
「……おやすみ、こころ」
「はい。おやすみなさい」
こうして影人とこころは就寝し、お泊まり会の夜は更けていく。この日の夜、二人は揃って良い夢を見る事ができたそうだ。
また次回もお楽しみに。