キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
キュアチューブでの本格活動を開始するという事が決定したアイドルプリキュア・ズキューンキッスソウルの六人。そんなわけでまずは挨拶動画から……とその前に。ここでも一悶着が発生していた。
「メロロン、お願い!六人でやろうよ!」
「嫌メロ!キュアチューブはやるとは言ったけど、何で六人で括るのメロ」
メロロンはあくまでのチャンネルはズキューンキッスソウルとしてアイドルプリキュアとは別のチャンネルでやりたいらしい。
「やっぱりメロロンはバラバラが良いって言うと思った……」
「メロロンとねえたま、にいたまの三人が協力すればねえたまとにいたまの人気は鰻登りメロ」
「いや、そこにメロロンは入らないんだね……」
メロロンの言い分に最早何のために三人で組むのかわからない状態になってしまっていた。
「それだったら六人で行った方がキュアズキューンもキュアソウルも見てもらえると思うよ?」
「プリルンは皆と一緒が良いプリ!メロロン、一緒にやるプリ」
うたとプリルンは二人で揃ってメロロンへと六人でやる事をお勧めする。メロロンはそれでも首を縦に振ってくれない。
「で、でもそれじゃあねえたまやにいたまの魅力が薄れちゃうのメロ!」
「あ、メロロンはそういう心配してたんだな」
「え?どういう事?」
レイはメロロンの言い分に何となくだが察しが付いた。それは、六人チームにしてしまうと、どんなに良い動画だったとしても六人に人気や注目が分散してしまう。そうなるとキュアソウルやキュアズキューンへの人気の集客がメロロンの思ってる程行かなくなってしまうと考えたのだ。
「メロロン、プリルンや影人君のために色々考えたんだね」
「当たり前メロ!」
メロロンがそう言う中、影人はプリルンを抱くとメロロンの前に向き合う。それから影人がメロロンへと頼み込む形を取った。
「メロロン、頼む。俺もプリルンも六人でやりたいんだ。それに、三人でやるって時にメロロンだけ人気が出ないっていう考えなら尚更了承できない。そうなるくらいなら俺は六人でやりたいかな」
「メロ!?」
そう。先程言っていたメロロン言い分だと一つ致命的な点がある。それは、メロロン自身の人気を鑑みていないという事だ。彼女の中ではキュアチューブに元々そこまで思い入れが無かったために人気に関してはあまり気にしていなかった。
しかし、影人はそう思っていない。折角やるなら全員のファンを獲得したいと思っていたのだ。
「メロロンはいつも推す側の人だからあまりわからないかもだけど、推される側の人の気持ちを知ってみたら考えが変わるかもしれないんだ。だから頼む!」
「プリ!折角ならメロロンと一緒に楽しく動画撮りたいプリ!」
ダメ押しとばかりにプリルンも純粋な声色でメロロンへと声をかける。影人、プリルンという推しの二段構え。これでダメならもう打つ手は無い。メロロンの返事はというと……。
「に、にいたまとねえたまがそこまで言うなら……六人でやってあげるのメロ……」
「やった!」
「ありがと、メロロン」
「べ、別に!にいたまとねえたまがお願いしたからなのメロ!」
兎に角。メロロンがキュアチューブをやる上で少し揉めたために時間がかかったが、ようやく本題に……最初の動画を撮影する事になったのだった。
最初の動画撮影の翌日。影人達はまた出張所に集まると早速アップロードされた最初の動画を視聴者側の視点で観ることになった。
『やっほー!キュアアイドルだよ!今日からキュアチューブで、キミにアイドルプリキュアとズキューンキッスソウルの事を教えちゃうよ!』
『沢山動画をアップしていくから、お楽しみに!』
『私達と一緒に、キミも心キュンキュンしちゃおう!』
撮影場所は勿論、出張所のある場所付近である。出張所であればキラキランドの関係者以外はその存在を知る者は殆どいない。だからこそ周りから特定されにくいという利点があった。
そんなわけで、最初の動画を視聴者視点で観終わった影人達。その後、まず話を切り出したのは田中だ。
「というわけで、アイドルプリキュア・ズキューンキッスソウルの初の動画をキュアチューブにアップしました」
「キラッキランラン〜!」
「心キュンキュンしてます!」
「もう観てもらえてるね!」
そして今までであればこのタイミングで速攻モッサモサの刑に処されるはずなのだが、公式としてアップロードしているからか何も起きる事は無かった。
「撮ったのはプリルンプリ!」
「途中からレイに交代してもらったけどな?」
「ズキューンが出てるシーンは流石にプリルンに任せるのは無理だからね」
「それにしても、公式パワーって凄いな。プリルンやメロロンが毎度モッサモサになるのが無断アップロードだったからって事がよくわかる」
影人は公式での投稿になったお陰で今までなら何か投稿する度にモッサモサになっていた行動が、条件付きで大丈夫になったという事を実感する。
「感激ッティン!キラッキラッティン!」
「男泣きリン」
すると動画がアップロードされたという事でカッティンは大粒の感激の涙を流していた。そんな相方にザックリンは唖然としつつも呟く事になる。
そして肝心のチャンネルの方だが、最初の動画から滑り出しは順調な様子であるのか早速チャンネル登録者は爆発的に増え始めていた。
この辺りは元々アイドルプリキュアやズキューンキッスソウルがライブの切り抜き動画を無断とはいえアップロードしており、その効果で認知度が高かったからと思われる。
「さてさて、他にどんな動画を撮ろっか?」
「色んなジャンルの動画があったら、楽しくなりそうだよね」
「確かにです!今までネットで見られたのはステージの動画だけですもんね」
折角キュアチューブを本格的にやるのであれば、アイドルとしての本業である歌や踊り関連以外の動画もやるべきだろう。
「だったら、まずは試しに個人個人が最初に一番やりたいと思った動画にするか?それぞれ動画の主役みたいにしてさ」
「個人のピックアップ動画か。ファンの皆に俺達を知ってもらうには丁度良いかも」
「プリルン、美味しいアレの動画が良いプリ!」
「ねえたま、にいたま、メロロンの三人での動画も欲しいメロ!」
「キラッキランラン〜!夏休みだし、撮りたい物を全部やってみよう!」
うたがハイテンションでそう言う中、影人はある事が気になったためレイに小声で聞く。
「そういえば、キュアチューブを本格的にやるのは良いけど……。ファンクラブの方のグッズとか会員証の方は業者の方に委託できたの?」
「ああ。田中さんと姫野さんが上手い事見つけて引き継いでくれた。ひとまずそこの負担は考えなくても良い」
「流石、敏腕マネージャーズだな……」
影人の心配事も解決したという事で個人個人のピックアップ動画。トップバッターはプリルンことキュアズキューンである。
ズキューンの動画を撮るために移動した先は台所。そして変身前のプリルンの先程のあの発言から、彼女がやりたい動画というのはお料理動画であった。
「は〜い!私はタコさんウインナーをお料理するよ」
ズキューンは子供のような無邪気な笑顔でテーブルの上に並べられたタコさんウインナーの元へと移動。そんなズキューンの動画を撮るのは勿論メロロンである。影人達はその様子を遠くから見守る事になった。
「こういう動画、あるよね!」
「色んなアレンジを教えてもらえちゃうんですよね!」
ななとこころはズキューンの作るタコさんウインナーでのアレンジ料理にワクワクとした様子である。一方で影人は終始苦い顔つきをしており、うたに早速指摘された。
「あれ?影人君、顔色が良く無いけど大丈夫?」
「いや……な?普段からプリルンに出してる料理を作ってるメロロンなら安心できるんだけどさ。プリルン、こういう時にまず料理ができるのかなって」
「いやいや、流石に自分で料理動画にするって言ってたし。そこは大丈夫なはずじゃ……」
うたが心配している影人へと安心させるように話している中、ズキューンは並べられたタコさんウインナーを早速フォークで刺す。
「まずは、そのまま!」
その瞬間、ズキューンは躊躇なくタコさんウインナーを何も調理せずに食べ始めてしまう。
「……美味しい!」
「「……あれ?」」
ズキューンが普通に美味しそうにタコさんウインナーを食べるのを見てななとこころも嫌な予感が脳裏を過ぎる。すると今度はズキューンが両手に何かを持っていた。
「次はこれ!ふふっ、ケチャップもマヨネーズも両方美味しい!」
ズキューンはまさかの手にしたケチャップとマヨネーズをタコさんウインナーにかけてまたそれを食してしまう。流石にここまで来るとななもこころも、そして先程までズキューンを擁護していたうたも唖然とするわけで。
「待って待って!」
「それで良いんですか!?」
「味付け変えてるだけじゃん!?」
「ほら……言わんこっちゃないんだよ……」
影人はもうこうなる事が最初から読めていたと言わんばかりの顔つきで手を頭に置いて呆れ果ててしまう。そんな中でもズキューンの姿をしたプリルンの暴走は止まらない。
「勿論これだけじゃ無いよ!タコさんウインナーは!頭から食べても、足から食べても、どっちも……美味しい!」
「「「ズコーッ!?」」」
ズキューンが満面の笑みを浮かべつつ、幸せそうに両腕を上に広げてタコさんウインナーの食べ方の魅力について語り始めた。最早これでは料理動画のはずなのに完全に崩壊してしまっている。それと同時に影人はプリルンは姿がキュアズキューンになって言葉遣いが大人へと発達したとしても、心は幼いプリルンのままである事に変わらないのだと痛感する。
「嘘でしょ!?」
「まさかの食べ方!!」
「これってもう……お料理動画じゃなくて……」
「タコさんウインナーを食べてるだけの動画だね」
女子三人組が困惑する中でも平然とした様子のレイ。すると田中が横から出てきてメチャクチャになってしまった料理動画についてのフォローを入れる。
「大丈夫です。編集で何とかします」
「これ、何とかなるのかな……」
ななが心配そうな声色を見せるとズキューンはまたタコさんウインナーを頬張っていた。
「ん〜美味しい!」
「開始早々に躓いた気分だぞこれ……」
結局、今回の動画に関してはまずタイトルを“キュアズキューンのお料理動画タコさんウインナーの魅力を語りたい!”という形で変更。動画の趣旨を変える事で最悪ずっとタコさんウインナーを語り続けてもどうにか動画として成立するようにして対策する事になった。
「それじゃあ、最後に掛け声を言おうと思いまーす!」
「……ん?ズキューンにそんな掛け声あったか?」
「あ、いつものズッキュンとかじゃないんですか?」
ズキューンが最後に掛け声をやると言い出して影人は疑問符を浮かべ、こころがフォローする。その間にズキューンがその概要を説明したらしく。早速やる事になった。
「じゃあ行くよ!賢い、可愛い!キュアズキューン!」
「……は?」
影人はズキューンがその口上を言った瞬間、凍りつく。その間にも少しだけ無言の時間が続いてからズキューンがお礼を言いつつ動画をシメる事になるのだった。
「ハラショー!それじゃあ、皆。まったね〜!」
こうして動画自体は終わる事になった……のだが、流石に影人はこれには看過できず慌てて詰め寄って声を荒げてしまう。
「ちょっ、ズキューン。お前待て待て、流石にそれはアウトだからな?何で他人様の作品のネタをキュアチューブにアップする動画で使っちゃうんだよ!?」
「え?アレダメだったの!?」
「知らずにやったのか……。というか、何でズキューンはあのネタをやろうって思ったんだ?」
「ん?えっとね……。私がキュアチューブに動画をアップした時に偶々気になる動画があって、それを再生したら……」
「結局他作品の動画を観た上でやったんじゃねーか!?どうしよ……そうだ茅原さん!茅原さんを通じて北條さんに連絡を繋げれば……」
影人は慌ててこの前連絡先を交換した茅原相手にメッセージを送る。すると偶々タイミングバッチリだったのか、割とすぐに返事が返ってきた。
「カゲ先輩もしかして……」
「ああ、この前声優体験をした時に交換してもらえたんだよ。普段はダメだけど、俺相手にだったら交換しても良いって」
「随分と気に入られたんだな。茅原さんに」
「……正直俺もビックリだよ」
影人はレイからの言葉に呟くように返すと本当にタイミングが良かったのか。茅原は今丁度目的の人である北條愛乃と一緒にいるらしく。影人からのお願いは通ったらしい。
「“ズキューンにその台詞をパロディしてもらえるなら私の方は全然大丈夫だよ。制作会社とかそっちの方にも話を通しておくから心配はしないで”……か。ホッ……」
影人はどうにかご本人からの許可は得られたのでひとまず胸を撫で下ろした。
「田中さん、使ってもオッケーだそうです。あ、ただ。制作会社さんの方に断りを入れるそうなので、動画のアップロードの方はもう一回連絡が来てからって事でお願いします」
「わかりました」
影人が何故ここまで気にしているかと言うと、他作品のパロディネタをネット等で無断で広めてしまうと色々と法律上アウトな危険性がある。そのため、安全を確保するために自分が取れる最短のルートでの話を通して申請をする事にしたのだ。
「俺の方からも一応制作会社に話を通せるようにはしておく」
「すまんレイ……ありがと」
「……皆は何でこんなに慌ててるの?」
「お前の動画での不用意なパロディ発言のせいだよ!!」
未だに状況を理解できていない様子のズキューンに影人は思わずキツめのツッコミをズキューンに入れてしまう事になるのだった。
ひとまず、ズキューンの動画の方は後日アップロードされる事になる。その際に世間からの反応としては、“ズキューンの外観年齢で子供みたいな無邪気な反応をされると脳がやられる”や“ズキューンのイメージとのギャップが凄い”、“歌っている時のあの透き通った声を出してる人と同一人物とは思えない”と言ったギャップ系統の話題で持ちきりになるのだった。
また次回もお楽しみに。