キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ズキューンの分の撮影が終わり、この調子で影人達は個人のピックアップ動画の撮影をどんどん続けようという流れになった。次はウインクを撮影する番である。
「私は、綺麗に動画を撮るコツを紹介するよ!」
「ほうほう!」
「そういう動画も人気ですよね!」
ウインクがやりたい事というのが、動画撮影の際に使うと便利って思えるような道具の解説動画という事で。まず最初に彼女が持ってきたのは二台のライトである。
「まずはこちらのライト!美白ライトって言って。使うと綺麗に映るんだ!」
「へぇ!」
ウインクが見せているのはテレビの撮影とかで使いそうな大きめなライトである。少なくとも、家庭にあるようなタイプのライトでは無い。
「確かにそれの効果は凄いけど、何か大事な事を忘れているような……」
影人はズキューンの時に続き、僅かに嫌な予感を感じていた。ウインクの説明、そしてライトの向いている先がウインクでは無く見ている自分達という所で影人はその何かに気がつく。
「それじゃあ、スイッチオン!」
「ちょっ、待っ……」
影人が危険な状況に気がついてどうにか止めようとするが、もう遅かった。ウインクの言葉と同時にライトが発光してしまうとその眩い光によってその場どころか、何故か宇宙空間からも視認できるくらいの世界の一部が白く輝くかのようなエフェクトに包まれてしまう。
そして、そうなれば至近距離でその光を見てしまった影人達に光が容赦無く襲いかかるわけで。
「ふえっ!?」
「「あっ!!」」
「うっ!?」
「「プリ(メロ)!?」」
「「ッティン(リン)!?」」
その光が無くなると凄まじい光に照らされた影響か、その場にいた影人達は全員目をやられて倒れ伏していた。そんな中でレイと田中は二人だけサングラスを持っており、しっかりとそれをかける事で光を遮断。加えて、ウインクの方はライトの向く先が自分の正面だった事もあって無事だった。
「ふぅ……。やり過ぎです」
「エフェクトとは言えあそこまでの光量になるか?普通……」
「ごめんね……!」
レイも対処できたとはいえ、まさかの高出力に驚いていた様子である。そんな中で影人が目がやられた状態のままアドバイスとばかりに声を上げた。
「ウインク、それは被写体以外の人に向ける物じゃ無いんだ……。効果を示すならビフォーアフターみたいに自分のカメラ映りの良さを比べた方が良いかもしれない」
「う、うん……それと影人君。大丈夫?」
「完全に目がやられたから復帰に時間はかかるけど大丈夫だ」
ウインクは目を閉じたまま話す影人を心配するが、彼はひとまず大丈夫そうである。
「田中さん、今回のこれはどうします?」
「ふむ。折角なので上手い事利用しましょう。今回は解説動画ですし、注意点を示す上で言い見本になるかと」
「わかりました。ウインクもそれで大丈夫そう?」
「うん。すみません、田中さん」
「あまり気にすんなよ。ウインクだってそれ使うの初めてなんだし」
話し合いの結果、今回の件はそのまま動画の流れとして組み込む事にした。つまり、光量や光を向ける方向等での注意点も動画内で解説する流れにして対応したのである。
尚、今回のウインクが美白ライトを使う際に周囲に被害を出した件については一応編集で光量が凄まじく出てしまったという事を挿絵を使って演出。加えてウインクが慌てる所も入れたので、ウインクが視聴者へとウッカリのドジをして可愛いみたいな印象を与える事に。
加えて、ウインクにポンコツ成分があるという事でウインクファンにも彼女のお茶目な部分を魅せるという意味で活かす方法にするのだった。
「ウインクの動画はそういう方向性にするとして、レイ的には大丈夫なのか?」
「俺は大丈夫だぞ。むしろ、ウインクってほら。偶に見せるポンコツ行動があるだろ?別に無理して作ってるキャラじゃ無いなら良いんじゃないかな」
そこにようやく目が復活した影人。彼はレイから言われた言葉に納得。ななには以前見せた七不思議の際のあの奇怪な行動があるので別にポンコツ成分が無いわけではない。むしろ、普段のライブでの真面目でクールな彼女が見せるからこそ良いのだ。ただ、先程のズキューンと被り気味な感じになってしまったのは少し勿体無い気はするが。
そんなわけでズキューンに続きウインクの動画も好評で順調に登録者を増やしていく事になる。
それはさておき、次はキッスの番だ。彼女の撮影をするために場所を移動。今回は前にこころがアイドルプリキュアになる前にアイドルやウインクと邂逅した展望スポットから海を見る事ができる場所である。
「……お姉様やお兄様からお願いされたから了承はしたけど……。私個人でやりたい事なんて特に無いのに」
メロロンはキュアキッスへと変身した状態で展望スポットの先に広がる海を見ながら黄昏たような様子であった。ちなみに、キッスの変身には影人に一時的にキュアソウルに変身してもらうと彼だけ変身解除する形でキッスのみが残る状態を作り出している。
「そんな事もあろうかと、トークテーマを考えてきました」
「トークテーマ?」
こころはキッスをやる気の無い状態で動画撮影させるわけにはいかないという事で、今回の動画のためのトークテーマを用意してきた。
「ズバリ、チームメイトであるキュアズキューンやキュアソウルへの想いです!」
今回のキュアキッスの動画はチームメイトへと普段は言わないような内に秘めた気持ちを引き出す記者との一対一の座談会みたいなイメージである。ただし座談会とは言ってもキッスは座ってるわけでは無いし、記者がいるわけでは無い。あくまでキッス個人が一人で淡々と二人の事を語る動画にしようというわけである。
「……ふふっ。中々良いテーマじゃない」
「おお!キッスがやる気に!」
「流石こころちゃん!」
「えへへ……」
こころの用意したトークテーマにキッスは一発で食いつくと早速彼女は海の方を一人語りを始める事にした。
「かつて、宇宙は真っ暗な闇だった。しかし、ほんの僅かな塵がやがて星となり……」
「「「うんうん!」」」
キッスの言葉に興味深そうに頷くうた達。プリルンやカッティン、ザックリンと言った妖精組、更に田中も同調していると、またもや影人は嫌な予感が脳裏に浮かんでいた。
「……レイ、初っ端から宇宙の誕生みたいな話から始まってるんだが……。これ、ズキューンの事にちゃんと繋がるんだよな?」
「そうだと思うけど……まぁ、安心しな。俺も同じように嫌な予感はしてるから」
影人とレイは三度目の嫌な予感を感じつつキッスの話を聞く事になる……のだが、お昼に撮影を開始してからはや数時間。日が傾いて夕日が出始めている状態にも関わらず、未だにキッスの話は終わらなかった。
「静かに流れる川のせせらぎ。森に遊ぶ様々な生き物達の声……」
「おい、レイ。これ今何分かかってるんだ?」
「さぁな。ただ、カメラの電池とかもあるからどうにか予備のトイカメラ使って対応はしてるけど……」
うた達はキッスの話を長々と聞く内に疲れてきてしまったのか、完全に疲弊し切った様子であった。影人は撮影係のプリルンへと視線を向けると彼女も疲れたような顔つきのため、そっと声をかける。
「プリルン、流石に疲れただろ。交代するから休んでて良いぞ」
「プリ、ありがとプリ……」
影人はプリルンと交代するとトイカメラを使ってキッスへの撮影を継続。プリルンはかなり疲れた様子であった。するとこころも流石に長いと感じたためにキッスへと声をかける。
「あの、そろそろ……」
「……これから良い所なの」
しかし、キッスは一言でこころからのストップを振り切ってしまうと更にポエムを継続。そのまま日が沈んで夜中に入ってしまった。
レイはひとまず親達には友達の家に泊まる事をそれぞれ連絡するように言い、家族が心配しないようにする策を取った。尚、撮影にかかりきりの影人の方の連絡はこころから夢乃経由で伝える形となる。
「その声は私の心をそっと包み込む極上の毛布だったのです……」
ちなみに今はもう周囲が真っ暗になる中、月明かりだけがこの場所を照らしている状況である。キッスはポエムを継続しており、うた達女子組とプリルン達妖精組は完全に睡魔でノックアウト。田中も立ったままウトウトしている状況で、レイは眠そうな声色で撮影者の影人へと話しかける。
「影人、まだ起きれるのか?」
「……キッスがずっと語ってるのに全員寝てましたなんてオチは御免だ。それに俺が寝たら撮影する奴がいなくなる。どうにか頑張ってこの話を最後まで聞き届けるよ」
影人にも眠気は相当来ているだろうに、動画の撮影者という事でどうにかウトウトとしつつも頑張って起きている。そんな中、こころが入れ替わる形で起きると丁度キッスの話もキリが良いと思ったのか了承を出そうとした。
「あ、やっと終わった……お、おっ……」
「その毛布の温もりこそが……」
「「「え、まだ!?」」」
「何でお前ら……息ピッタリなんだよ……」
キッスはまだ話を終えるつもりなど無く、話を継続。まさかの終了時間の延長にうた達は思いっきり指摘。影人は一人だけ睡眠不足で思考が回らないためにうた達が目を閉じながらどうにか起きていたという事がわからずに弱々しくツッコミを入れる。
「というか、この感じだと恐らく……」
影人は何となくキッスの話の終わりの時が察せられた。そんな中でキッスの話はこの後数時間に及ぶと朝となり日が登り始める。
「……とまぁ、短く纏めるとこんな所」
キッスが振り返るとそう言って締める中、こころはようやく終わったキッスの話に震えながらも手を上げつつ了承を示した。
「は、はいぃ……お、オッケーです……」
そのタイミングでこころと田中の方も何だかんだ意識だけは残していたためにそのタイミングで力尽きる。
「お疲れ様……キッス」
すると影人は寝不足で目にクマを作りながらもどうにか一人だけ立っており、他のメンバーは夜通しのキッスの耐久動画に全員寝てしまっていた。
「編集……どれだけかかるのでしょうか」
「……もういっそのこと、耐久動画としてフルで流しましょう。逆に最後まで通しで聴けたら凄いって事で」
「……ねぇ、お兄様。体……大丈夫?」
するとキッスが影人の心配をし始めた。どうやら彼女が心配してしまうくらい、今の影人はフラフラになってしまっているらしい。
「ああ……。どうにかな……」
影人はフラフラと歩きつつ前日の昼から夜通し話を続けたキッスへと答えを返す。
「というか、キッスは何で夜通し話をしても平気なんだ?」
「そんなの、お姉様とお兄様への愛以外に考えられません。お二人という煌々と私を照らす明るい道標のためなら……私はあなた達の元、どこまでも歩けます」
「なるほど……ただ、ごめん。ちょっと寝ても良いか」
「?え、えぇ……」
影人はもう無理と言わんばかりにそのまま倒れ掛かるとキッスはそんな影人を抱き止める。
「……!」
「すぅ……すぅ……」
「ふふっ……。お休みなさい。影人」
キッスはそっとそう声をかける。ただ、そんな中でキッスは珍しく影人の事を兄としてでは無く名前として呼んだ。その後、キッスはこころの隣に影人を寝かせると少し寂しそうにする。
「……お兄様はこころの物。私が下手に介入したらダメ」
キッスは自分にそう言い聞かせるように呟くと自分も変身解除して、プリルンの隣で眠ってしまう事になるのだった。
そして肝心のキッスの動画の方だが、視聴者達の中ではまさかの超耐久動画という事で逆に最初から最後までぶっ通しで聴けるかどうかの話でも盛り上がる始末だった。更に、ズキューンへの想いのはずなのに地球が生まれてから今に至るまでの話も混ざっているという壮大なポエムについても触れる人が多く。
何だかんだ言っても動画自体は受け入れられる事になる。また、相当話が長いのと、キッスの言葉が囁くような優しい話し方をしていたというのもあって勉強中のASMRとして重宝する人まで出た。
こうして、キッスの動画も撮り終われたのだが……まさかのこの日は約半日程寝不足を解消するために影人達はその場で寝てしまうのだった。ちなみに幸運な事にその間、妖精達は全く動かなかった事もあって道ゆく人々からはただのぬいぐるみとして認知された模様。
数日後、チョッキリ団アジトにて。そこではチョッキリーヌがアイドルプリキュアの動画が上がっている事を見つける。
「はぁ!?アイツら、ファンクラブだけに飽き足らず……キュアチューブまで!しかも何だいこの人気は!」
チョッキリーヌが声を荒げる中、そこにスラッシューが溜め息を吐きつつ話しかけた。
「はぁ……。今度は何に怒ってるの?あまり怒り過ぎるのは良くないわよ?」
「く……。兎に角、アイツらまた調子に乗って!」
「そんな事言ったって仕方ないでしょう?それとも、あなたはまた気に入らないから潰しに行ってくれると?」
それを聞いてチョッキリーヌは苛立ちつつもすぐには気持ちが乗らない。理由は単純、ここ最近の連勤である。ザックリーがいなくなって以降、何故かスラッシューが全く出なくなったせいでチョッキリーヌが自分から何度も出張らないとならず。
だからこそチョッキリーヌも少しずつ連勤体制に嫌気が出始めたのだ。そのため、スラッシューへと話しかける。
「こ、今回は遠慮してあげる。だからスラッシュー……」
「はぁ。……あなた、そう言って休もうとしたザックリーを何回働かせたのかしら?」
「うっ……」
ここに来てチョッキリーヌは過去の自らの行いが首を絞めてしまった。それを好機と言わんばかりにスラッシューからの指摘は続く。
「それと、私が行ったら出世できないわよ?私に負けっぱなしで良いと言いたいわけ」
「ふ、ふん!お前の手助けなんて借りなくても私がどうにかしてやる!」
スラッシューはまたチョッキリーヌの心を弄ぶと彼女を行かせる事に成功させた。するとスラッシューは立ち上がる。
「ん?アンタはどこ行くんだい?」
「いつもの日課のトレーニングよ。この体を維持するためにもトレーニングを欠かさない。当たり前の事だから」
「ッ……」
スラッシューはそう言って自主トレーニングを初めてしまう事になった。彼女の強さの秘訣はこういう地道な努力にあるのかもしれない。そんな事はさておき、チョッキリーヌはアイドルプリキュアのキュアチューブを止めるにはどうすれば良いか考える事になるのだった。
また次回もお楽しみに。