キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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うたからのお誘い きゅーたろうの心

登校日及びキュアチューブの撮影が進み、夏休みも半分を過ぎた頃。もうすぐお盆に差し掛かる。そんな時、影人達は出張所である事をしていた。

 

「〜完全な愛♪」

 

今現在、出張所の一室ではアカペラの歌を歌う影人とその指導者である仙石が向き合っている。そんな中で丁度影人が歌い終わった所だ。

 

「……やっぱり良くなってる」

 

「本当ですか?」

 

「うん。……前まで自分がベースだから他人を支える気持ちで歌ってたせいで自分の主張が全然ダメだった」

 

仙石は影人がある意味遠慮しながら歌を歌っていた事には気づいており、それをどうにかしようとしてきた。しかし、つい最近まではその方法を上手く掴めず。苦労していた所、影人が声優を目指すと決意したあの日を境にいきなり影人は仙石の求めていた自分の主張を歌の中でするという事ができるようになったのだ。

 

「何か心の変化が起きる事でもあった?」

 

「え?あぁ……。それは多分声優の件ですね」

 

「声優……。そっか」

 

仙石は少し悔しそうだった。折角なら自分の手で影人の自信を取り戻させたかったらしい。何にせよこれで影人もようやくベースとして本格的に合わせられる領域に達した。

 

「そういえば、今日はまだやる事があるんでしたっけ?」

 

「うん。……影人君の声が合わせられる領域になったから……」

 

仙石が目配せするとその視線の先には南とキュアキッスとなったメロロンが立っている。

 

「お、やってるね。仙石さん」

 

「南さん。……早速やりましょうか」

 

「やるというのは?」

 

「ボイパとベースの合わせだよ。アカペラではこの二つが上手く噛み合わないとちゃんとした歌にならないからね」

 

「わかりました。よろしく、キッス」

 

「えぇ」

 

この日からアカペラ練習においてリズム隊である二人は合同で合わせ練習を始める事になるのだった。

 

それはさておき、その日の帰り道。影人は練習出張所で一緒に練習をしていたうた、なな、こころ、プリルン、メロロン、夢乃の六人と共に帰り道を歩いているとその道の先から一人の少女と犬が歩いてきた。

 

「あっ、お姉ちゃん達だ!」

 

「ワン!」

 

「はもり、きゅーちゃん!」

 

そこにいたのはうたの妹であるはもりと咲良家で飼っている飼い犬のきゅーたろうである。

 

「はもりちゃん、こんにちは」

 

「こんにちは!」

 

はもりが影人からの挨拶に返事を返すと次の瞬間、突如として影人へと正面から飛びかかる影があった。

 

「へ?ちょっ!?」

 

「ワン!」

 

それははもりが散歩で連れてきていたきゅーたろうである。彼は影人へと飛びつくとペロペロと頬を舐め始めた。

 

「きゅーたろう!?あはっ、くすぐったいって!」

 

「きゅーちゃん、影人君を見ると偶にこうなるもんね」

 

「カゲ先輩といると安心するのでしょうか……?」

 

きゅーたろうは影人を個別認識するようになって以降、影人と会うと時折こうやって押し倒して顔を舐めることがある。今回はそうしたい気分だったのだろう。

 

「そうだ、お姉ちゃん。あの事って皆には言ったの?」

 

「「「「あの事?」」」」

 

はもりがうたへと聞いたあの事の内容に影人達は心当たりは無い。そのためうたに視線を集めると彼女は苦笑いしつつ話す事に。

 

「あはは、言い忘れてた……。あのね、今度私達。お爺ちゃんの住んでいる家に行くんだけど……皆も一緒に行かない?」

 

「それってうたちゃんのお爺さんの家にお泊まりするって事?」

 

「そう!」

 

それから影人達は顔を見合わせる中、こころは確認のためにある事を聞く。

 

「えっと、それはお爺さんの方に確認は取ってるんですか?私達全員ってなると……」

 

そう、影人達全員が泊まると仮定するとその家に普段行っているうたとその家族の人数と比べて倍以上の人数が一度に泊まる事になる。

 

そうなるも色々と準備が大変だろうし、そもそも旅館でも無いただの家にそれだけの人数が泊まる事ができるのかという話になってしまう。

 

「うーん、お爺ちゃんとしては10人くらいまでならって感じだったかな」

 

「いや、どれだけその家広いんだよ……それもう家と言うよりお屋敷じゃね?」

 

「ふっふーん、私のお爺ちゃんの家は結構広いよ!だから大丈夫だって!」

 

うたが自慢げに話す中、きゅーたろうはジーッと影人の方を下から見上げつつ尻尾を振っていた。

 

「くぅん……?」

 

「きゅーたろう?」

 

するときゅーたろうは影人への目線をつぶらな瞳へと変えるとまるで“来てくれないの?”と言わんばかりの顔つきで訴えていた。

 

「いや、できるなら行きたいんだよ?でもな……」

 

影人は流石に自分達が全員で押しかけるという事をして良いのか迷ってしまう。これが一人や二人ならまだしも、本来の人数の倍以上となれば話は別だ。

 

「カゲ先輩、私は皆で行きたいです。勿論、お母さんから許可を貰ってからにしますけど」

 

「私も行きたいかな折角うたちゃんが誘ってくれたし」

 

ななとこころが次々と参加したい旨を話すと影人は腕を組んで考え込む。そこに夢乃も詰め寄ってくるとお願いしてきた。

 

「お兄ちゃんがダメでも私一人だけでも行きたいな……」

 

「ちょっ、夢乃……」

 

「良いじゃん!お兄ちゃんはいつもお泊まりしてるのに私だけ除け者で!」

 

「う、それを言われるとな……」

 

夢乃は久しぶりの影人への甘えによる泣き落としモードを見せていた。加えて彼女は他の家へのお泊まりの時にいつも除け者にされてしまっているので余計に不満そうな顔つきである。

 

「うぅ……」

 

影人が唸りながら考えているとプリルンやメロロンの方は小声で自分達も行きたい旨の話をしていた。

 

「プリ、うたのお爺ちゃんの家に行きたいプリ」

 

「ねえたまが行きたいって言うならメロロンも行きたいメロ」

 

「(お前らもかよ……)」

 

そんな二人に影人が一瞬ジト目を送るが、すると今度はきゅーたろうがまた視線を送ってくる。

 

「ワン!」

 

するとその瞬間だった。何故かそのきゅーたろうが鳴き声を発する際に不思議な声も聞こえてくる。

 

『影人とお泊まりできるならボク、凄く嬉しい。だから来て、影人!』

 

「……ん?」

 

影人はその謎の声に唖然とした顔つきになった。その声色はまるでカッコ良い叔父さんのような声……所謂イケオジの声である。そのため影人はそれに該当する人物をキョロキョロと探すがどこにもいない。該当するとすればそれは目の前のきゅーたろうだけだ。

 

「なぁ、今イケオジの声が聞こえなかったか?」

 

「イケオジの声?そんなの聞こえないよ?」

 

「お兄ちゃん、まさかと思うけどお泊まりが嫌すぎて幻聴が聞こえたりしてないよね?」

 

「いやいやいや、俺はお泊まりが嫌ってわけじゃねーんだよ!」

 

「じゃあ、問題無いですよね!」

 

すると影人の逃げ道を無くすと言わんばかりにこころがガッチリと腕へと抱きついてホールドする。

 

「あ……」

 

「それじゃあ、全員参加って事でオッケーだね!」

 

「うたちゃん、日にちはいつになりそう?」

 

「えっとね……」

 

それからなな達がうたから詳しい日付を聞く中で影人は改めてきゅーたろうの方を向く。

 

「まさかと思うけど、さっきのは……きゅーたろうの声なのか?」

 

「ワン!」

 

きゅーたろうが影人の問いへと答えを返すが、今度はその声が人間語になる事は無く。結局真実は闇の中だ。それでもきゅーたろうの反応が嬉しそうな所を見ると、少なくとも悪い方向の回答では無い……と影人は思う事にした。

 

「さて、咲良さんのお爺さんの家に泊まるために色々準備しないとな……」

 

こうして、影人も最終的に全面的に参加を表明。お盆休みの辺りの予定が埋まった所で日にちはその当日まで飛ぶ事になる。

 

場面は変わり、はなみちタウンから離れた自然溢れる田舎の町。そのはずれの方に広い敷地を構えたうたの祖父の家があった。

 

「着いた〜!」

 

「ワン!」

 

うたが嬉しそうな声を上げる中、きゅーたろうも同じく嬉しそうに鳴き声を上げる。

 

「着いて早々嬉しそうだな、咲良さん」

 

「そうですね!それにしても……ここがうた先輩のお爺さんのお家ですか」

 

「風が気持ち良いね!」

 

「ですね!」

 

ななやこころがそう話していると珍しくななが持っていたプリルンとメロロンの入ったポシェットの中で二人も話す。

 

「空気が美味しいメロ」

 

「プリ?美味しいプリ?あーむっ!」

 

「プリちゃん、美味しいってそう言う意味じゃなくて空気が澄んでいるって事だよ」

 

尚、プリルンはいつも通りな調子のため夢乃がそのフォローをする事になった。普段であればうたが持っているこのポシェット。ただ、今回に関してはプリルンとメロロンの正体バレを防ぐためにプリキュア関連の人が固まっている咲良家とは別の車の方に乗っていたなな達が預かっていたのだ。

 

「それはそうと、田中さん。運転の方をありがとうございます」

 

「そうですね、わざわざすみません」

 

影人とこころが今回車を運転してもらった田中へとお礼を言うと彼は眼鏡に手を当ててから自慢げにある事を言い出す。

 

「こんな事もあろうかと……免許を取っておいて良かったです!」

 

「「「おお……」」」

 

田中はそう言って免許証を見せる中、影人はそれに苦笑いを浮かべていた。

 

「元が妖精でも免許って取れるんだ……」

 

「あはは、不思議な事もあるものだね……」

 

今回咲良家以外でここに来たメンバーは話をした際にその場にいた影人、なな、こころ、夢乃。そして妖精のプリルン、メロロンに引率者として田中が来ていた。一応レイ達にも声をかけたのだが、レイはまたもや家の方に引っ張られて参加する事ができず。

 

姫野やカッティンとザックリンは田中がいない間出張所が完全な留守になるという事で向こうに残る事になった。

 

「ななちゃん、こころ!それに影人君に夢乃ちゃん、田中さんまで一緒に来てくれて。改めてありがとう!これはいつもよりもっと忙しくなる予感!」

 

うたはそう言いつつななやこころを抱きしめる中、そこにうたの家族である咲良和、咲良音、はもりもやってくる。

 

「あれ?忙しくなるってどういう意味?」

 

「うん!採れたて野菜丸齧り!冷やしたスイカを食べまくり!裏山にはリスだっているし!何から何までキラッキランラン〜!」

 

「……咲良さんが食い意地がかなり張ってるっていうことはわかったわ。それと食べ過ぎには気をつけろよ……」

 

影人は話題の内容が食の事が多めだったため、流石にうたへと心配の言葉をかけているときゅーたろうもここに来て嬉しいのかまた鳴き声を上げていた。

 

「ワワンワン……うー?」

 

するときゅーたろうは何かの気配を感じ取るとその視線を向ける。そこには元気そうな老人の男性がおり、恐らく彼がうたの祖父なのだろう。

 

「皆、よく来たね……」

 

「ワン!」

 

うたの祖父……咲良平治を見た瞬間、きゅーたろうは大好きな人と会えて嬉しいと言わんばかりに駆け出すと彼の側にいった。

 

「おお、きゅーたろう!よしよし」

 

きゅーたろうが平治に対して尻尾を振ると彼はそんなきゅーたろうを撫でる。それから改めて影人達はうたの家族と共に挨拶をする事に。

 

「父さん、ただいま」

 

「お爺ちゃん久しぶり!」

 

「お爺ちゃん!」

 

「おお!うた、はもり!一年でまた大きくなったな」

 

はもりもきゅーたろう同様に大好きなお爺ちゃんと会えて嬉しいのか、早速駆け出す。また、余談にはなるが和からの言葉を汲むと咲良平治はうたとはもりにとって父方の祖父という事になる。

 

「うん、はもりまた大きくなったよ!」

 

「うたもはもりも毎年こちらに来るのを凄く楽しみにしてて」

 

「そうかそうか!皆さんの事も聞いてるよ!どうぞ、寛いで下さい」

 

「突然お邪魔してすみません、お世話になります」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

影人達の方も平治へと挨拶を終えると影人は先程からきゅーたろうがずっと平治の隣にいるのを見て理由が気になった。

 

「そういえば、さっきからきゅーたろうが咲良さんのお爺さんにベッタリだけど……」

 

「ああ、実はね。きゅーちゃんは元々お爺ちゃん家の子だったの」

 

「へぇ……」

 

「そうだったんだ」

 

「ワンワン!」

 

ななやこころがきゅーたろうについての新事実に興味深そうにすると突然きゅーたろうがまた何かを言いたそうに鳴く。それにこころが反応した。

 

「きゅーちゃん、お喋りしてるみたいです」

 

「お喋りきゅーちゃんは何て言ったのかな?」

 

「ワン?ワンワン!」

 

「……わんわん……ですね」

 

田中がそう言うとまたきゅーたろうの内心と言わんばかりにイケオジの声が影人の方へと何故か聞こえてきた。

 

『……全然違う。ふふん、こう言ったんだ。今年もここで、いっぱい遊ぶぞ!』

 

「……あの。何で俺の脳内にだけきゅーたろうの声の訳みたいな物が聞こえるんだ?しかも無駄にイケオジの声だし」

 

「うーん、きゅーちゃんがお兄ちゃんの事も大好きだからじゃない?」

 

「それだったら咲良さんとかにも聞こえるはずだろ……」

 

影人はこの謎現象が気になったものの、あまり難しく考え過ぎるのも疲れるのであまり触れない事にした。*1

 

「ひとまず、荷物を運ぶか。どうせ力仕事は任されるんだろうし」

 

「ええ、色々運びますので影人君には余計に手伝ってもらいますよ」

 

こうして、影人達は荷物を運ぶと共にうたの祖父の家での時間が始まるのだった。

*1
メタ的な事を言うときゅーたろうの気持ちをわかりやすくするための今回限りの訳である。そのため特に深い理由は無い




今回、影人がきゅーたろうの気持ちが聞こえているみたいな描写がありますが、脚注にある通りそこまで深い意味はありません。あくまできゅーたろうの気持ちを入れやすくするための一時的な措置だと思ってください。

それではまた次回もお楽しみに。
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