キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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祖父の家での楽しい時間

影人達はうたの祖父の家に入るとまずは荷物を置き、それから一同揃って仏壇の方に向かう。そこには既に故人となってしまったうたの祖母の遺影が存在していた。

 

「おばあちゃん、ただいま。キラッキランラン〜」

 

うたはお供物の饅頭を祖母の遺影の前に置くと全員で黙祷し、祈りを捧げる。それから咲良家の思い出のアルバムを見るとそこには幼いうたとその祖母、更にきゅーたろうと思わしき子犬がいた。

 

「あ、これって……うたちゃんとおばあさん?」

 

「隣にいるのはきゅーたろうかな?この頃は可愛い子犬だったんだな」

 

影人達中学生組がアルバムを見る中、その近くにはうたの祖父である平治に見守られながらはもり・夢乃の小学生コンビはゴロンと気持ち良さそうに寝転がったきゅーたろうと遊んでいる所だ。

 

「……私ね、小さい頃からお婆ちゃん大好きなんだ」

 

「うた先輩、お婆ちゃん子だったんですね」

 

「うん!ずっと好き、大好き!」

 

うたは嬉しそうな笑顔になると影人達も釣られて笑顔になる。それから改めてきゅーたろうについて触れる事にした。

 

「影人君も言ってたけど、この子犬ってきゅーちゃんなんだよね」

 

「うた先輩もなんですけど、きゅーちゃんも可愛いくて心キュンキュンしてます!」

 

それを見て影人は改めてきゅーたろうの方を向く。そして同時に彼がかなり前からうたと一緒にいたという事。更にその事実から今きゅーたろうの年齢は既にそこそこ行ってるのだろうと察せられた。

 

「ワン!」

 

すると、きゅーたろうは自分の方を見る影人に何か言いたいのか声を上げると同時に影人の脳内に言葉が聞こえてくる。

 

『影人、心配しなくても僕はまだまだ元気だから。まだ暫くはうたと一緒にいるよ』

 

「……何で俺の思考がきゅーたろうには筒抜けなんだよ。あと、きゅーたろうの内心の音声ガイドもわざわざ入れなくたって……」

 

「カゲ先輩?」

 

「いや、何でもない。俺にだけ聞こえる心の声ってやつだから」

 

「……ん?」

 

こころが影人からの言葉に首を傾げる一方で影人は最早きゅーたろうから話しかけられる件について特に気にしていなかった。それからふと自分の変身アイテムであるアイドルキラキラブローチを手にする。

 

「……もしかするとこれがお盆限定できゅーたろうと俺の心を繋いでくれてるのかもな」

 

そんな影人のささやかな予想はさておき、そこに平治が歩いてくると話しかけた。

 

「今丁度しているのがきゅーたろうの話かな?……元々きゅーたろうはお婆ちゃんが貰ってきた犬でね」

 

「ビックリしたよ。遊びに来たら可愛いわんちゃんがいたんだもん!」

 

「六年前、お婆ちゃんが亡くなったのをキッカケにうたの家の子になったんだ」

 

「……六年前。こころがお父さんを亡くしたのとそんなに大差ない年頃くらいか」

 

影人はうたもこころと同様に身近な人の死という概念はもう既に体験済みであった事を知ると少し考え込む。ななはきゅーたろうの話を聞いて興味深そうな顔をしていた。

 

「きゅーちゃんにそんな歴史があったんですね」

 

「ワン!」

 

『犬に歴史有り!』

 

きゅーたろうが鳴きつつまたイケオジボイスでの言葉が影人の脳に響いているとはもりが話す。

 

「ねぇ、早く遊びに行こうよ!」

 

「だね!キラッキランランが待ってるぞ〜!」

 

そんなわけで。早速影人達はこの辺りの地理をある程度知っているうたやはもりを案内役として近くで遊ぶ事になった。出かけるのは影人、うた、なな、こころ、夢乃、はもり、きゅーたろうである。尚、プリルンやメロロンも人形のフリをする約束をした上で連れて行く事にした。

 

「わぁ!大きなスイカ!」

 

「こんなにも貰っちゃって……本当に良いんですか?」

 

今現在、影人達は平治がいつも世話になっている近所の農家の人からお裾分けの野菜やスイカを貰っている所だ。

 

「良いよ。平治さんとはご近所としてよくしてもらってるからね」

 

「本当にすみません……」

 

うた達が嬉しそうにする中で影人は自分達のためにわざわざ野菜をお裾分けしてもらった農家へと頭を下げる。

 

「良いの良いの」

 

「この野菜、改めて見ると凄く瑞々しくて美味しそうですね」

 

「ああ。今年は暑い日が続いてたけど、上手く育てる事ができた物もあるからね」

 

それを聞いて影人は尚更申し訳ない気持ちになる。農家の人の言い回しだとダメだった物もそこそこ出ている中で貴重な成功した物を貰えると言われているのだから。

 

「カゲ先輩、こういう時はご好意を素直に受け取る物ですよ」

 

「それは……わかってるんだけどな……」

 

流石に心配し過ぎたせいか、こころから小声で指摘されてしまった影人。それを聞いて影人はあまり心配しているとまた前みたいな事になるとこれ以上は考えない事にする。

 

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

 

「ワン!」

 

影人達六人は野菜等をくれたのうかの人に頭を下げると再度移動を開始。その道中で森の中にある小川を見かけた。

 

「おぉ、森の中に小川が……」

 

「はもり、川の中を歩きたい!」

 

「へ?」

 

するとはもりは靴を脱ぐと足首くらいまでだが水に浸かる。それを見て夢乃も川に入る事にした。

 

「わぁ!冷たくて気持ち良い!」

 

「ここは森の中だから太陽の日差しを遮断してくれるし、近くの小川で涼む事もできる。絶好の休憩スポットというわけか」

 

「……って、あれ?はもりちゃんに夢乃ちゃん?」

 

「待ってよはもり!」

 

「早く来ないとスイカ持ってっちゃうよ〜!」

 

「いぇ〜い!」

 

いつの間にやら先に小川に入った夢乃とはもりの小学生コンビが興奮した様子でスイカを持ったままさっさと移動してしまう。そのため、まだ小川に入る前の影人達も慌てて彼女達二人を追いかける事になるのだった。

 

それから場面は変わり、小川の場所から移動した影人達は草原が広がる小高い丘の上に来るとそこでひと息入れつつ先程お裾分けしてもらった野菜を生のまま齧っていた。

 

「あ〜むっ!う〜ん!生野菜、美味し過ぎてキラッキランラン〜!」

 

「これ、農家さんが言ってた通り凄い瑞々しくて美味しいね」

 

「ああ、普段よりも甘みのあるトマトで余計にそう感じる」

 

尚、トマトを食べているのは影人、うた、ななできゅうりを食べているのはこころ、夢乃、はもりだ。連れて来ていたプリルンとメロロンも食べたそうな顔を向けたため、影人は仕方ないと言いつつ半分に折る形できゅうりをそれぞれに手渡す事になる。

 

「普段のきゅうりよりも新鮮で美味しいプリ」

 

「口の中に味が広がる度に、きゅうりの中にギュギュッとされた美味しさが弾けていくメロ」

 

六人と妖精組が野菜を齧っていると自然の恵みと言わんばかりのそよ風が吹いて彼等の体をそっと涼ませて行く。

 

「それにしてもそよ風が吹いてる分、他の場所よりも涼しい」

 

「今年の夏はまた一段と暑いからね……。うた先輩とかはもりちゃんの元気さを見てると私も頑張らなきゃって思えるけど……それでもやっぱり暑さには勝てないよ」

 

夢乃は苦笑いしつつ咲良家姉妹の元気さが羨ましいと言わんばかりの言葉を言う。

 

「ワンワン!」

 

『影人、折角だから僕と駆けっこしようよ!』

 

そんな中、きゅーたろうが影人の元に寄ってくると尻尾を振りながら駆けっこを催促してくる。影人はその言葉に唖然としつつも一度溜め息を吐きつつ立ち上がった。

 

「……やれやれ、仕方ないな」

 

「ん?カゲ先輩どうしたんですか?」

 

「きゅーたろうが走りたいって言わんばかりの目を向けてくるから付き合うんだよ」

 

「はもりも駆けっこやる!」

 

影人はうた達にきゅーたろうの心を聞く事ができると言うのは流石に混乱の元になってしまう。なので一旦その話はせず、普通に駆けっこを自分からやると言い出す形で自然な見せ方にした。

 

「夢乃も頼む」

 

「え〜っ……まぁ、はもりちゃんがやるなら良いか。あ、でも……その場合駆けっこじゃなくて鬼ごっこね?勿論鬼はお兄ちゃんだから」

 

「……は?」

 

「でしたら私もやりたいです。カゲ先輩、お願いしますね?」

 

「ちょっ、こころも俺が鬼である事に賛成かよ!?」

 

影人は内容が駆けっこから鬼ごっこにされた事に視線をきゅーたろうへとやると彼は特に問題なさそうなのか、影人へと改めて声をかける。

 

『鬼ごっこかぁ!やるのは初めてだし、影人が追いかけてくれるならいつも以上に頑張っちゃうぞ!』

 

「うっ……はぁ……。はいはい、わかったよ。じゃあ行くからな」

 

「よーし、皆でカゲ鬼から逃げちゃうよ!」

 

「そう呼んだら今からやるのが影鬼みたいになるだろうが!やるのは俺にタッチされたらアウトの普通の鬼ごっこだからな?」

 

こうして、影人達は草原の上で駆け回り鬼ごっこをする事になった。尚、ななは一人プリルンやメロロンを抱えて微笑ましい顔でその様子を見ている。

 

「ふふっ、皆楽しそうだね」

 

「プリ!プリルンもやりたいプリ」

 

「ねえたま、今はダメなのメロ」

 

プリルンはやりたいと言い出すが、今出てしまうと一般人のはもりの前で盛大に動く事になってしまうので自粛せざるを得なかった。

 

「プリ……折角ならプリルンもやりたかったプリ」

 

「……ねえたま、もし今度があったら。その時はにいたまに頼んでメロロン達と一緒にやってもらえるようにするのメロ。にいたまならきっと受け入れてくれるメロ!」

 

「メロロン……ありがとプリ!」

 

プリルンの言葉にメロロンが微笑みかける。そんなわけで影人達の方に視線を向けると影人はちゃんと歳下であるこころ達や女子であるうた相手には手加減しており、犬であるきゅーたろうの場合は彼のスピードを見ながらそれに合わせて良い勝負になるように走っていた。

 

とは言え、流石の影人でもなな以外の四人と犬であるきゅーたろうを全員同時に相手にするのはキツいのだが。

 

「ほらほら、影人君。こっちだよ〜!」

 

「カゲ先輩、捕まえてみてください!」

 

「お兄ちゃん、チョロいよ〜!」

 

「はもりはこっち!」

 

「ワンワン!」

 

『僕の事ももっと追いかけて!』

 

こころや夢乃辺りは影人の手加減には気がついていたものの、ひとまず手加減してくれるならとここぞとばかりに声を上げる。

 

「お前ら……そんな余裕だと全員捕まえちゃうぞ!」

 

それから暫くして。鬼ごっこを終えた影人達一行は咲良家に戻ってくると鬼ごっこで一汗かいたという事でそれをある程度持ってきていたタオルで拭く。

 

「そうだ、皆。折角だから水浴びしようよ」

 

「……は?」

 

「水浴びって……プールは無いですし流石にカゲ先輩の前では……」

 

影人はうたからの提案に困惑。こころも二人きりなら兎も角、全員が揃った状態で影人に裸を見られるのはと気が引けていた。

 

「うーん、多分うた先輩の水浴びはお兄ちゃんやこころ先輩のそれとは意味が違うと思いますよ?」

 

「お姉ちゃん、はいこれ!」

 

夢乃が二人へのフォローを入れているとはもりが水道の方に接続したシャワータイプのホースをうたへと渡す。

 

「うたちゃん、これって……」

 

「うん!こうするんだよ!」

 

うたがホースを通じて水を周囲に撒く。それによって発生した水飛沫が影人達にかかるとそれだけで暑さが少しずつ和らいでいった。

 

「冷たっ!?」

 

「でも気持ち良いです!」

 

「それだけじゃ無いよ!」

 

うたがそう言うと打ち水として撒いている水の方を見るとそこには光の屈折で虹が浮かんでいた。

 

「わぁ……綺麗!」

 

「はもり、このお庭で見る虹が大好きなんだ!」

 

「そっか、普段の家じゃ中々できないもんね」

 

「虹、綺麗プリ〜」

 

「光に照らされて輝く虹。それはまるであなたと私の間にかかる奇跡の橋……」

 

プリルンやメロロンも虹の光景に美しさを感じており、メロロンに至ってはいつものポエムまで口にする程だ。

 

こうして、楽しい時間を過ごした影人達は家の中に入ると一度休憩する事になる。

 

「ふぅ……」

 

『沢山遊んじゃった!』

 

「最高です」

 

「でしょでしょ!」

 

「はもりちゃん、疲れて寝ちゃったね」

 

「余程楽しかったんだろ」

 

影人達が今いるのは咲良家の広い居間であり、そこでテーブルを囲んで座っていた。近くには田中も座っており、テーブル中央には先程貰ったスイカが切られている。

 

「早速満喫しているようですね」

 

するとテーブルの端の方にいたプリルンは中央にあるスイカをジーッと食べたそうな目で見ていた。そのためうたが気がつくと声をかける。

 

「プリィ……。プリ〜」

 

「ん?どうぞ!」

 

「プリ!?あーん!……ん〜、スイカ美味しいプリ!」

 

プリルンはうたから貰ったスイカをあっという間に食べるとその美味しさに彼女の周囲を飛び回る。

 

「あははっ、プリルン幸せそうですね!」

 

「……あれ?きゅーたろう。その口に咥えてる物は?」

 

こころがプリルンへと視線を向けているとその近くで影人がきゅーたろうが口に何かを咥えている事に気がつく。

 

「ホントですね。きゅーちゃんは何をモグモグしてるんですか?」

 

「あ、お婆ちゃんのスリッパだ!」

 

「スリッパ?」

 

「えっと、うた先輩のお婆さんが使っていた物ですか?」

 

夢乃からの質問にうたは嬉しそうな顔つきでスリッパの件について語り始めた。

 

「うん!きゅーちゃんの小さい頃からのお気に入りなの!まだあったんだ!」

 

『この噛み心地、やっぱり最高だなぁ』

 

影人はそれを見てきゅーたろうにとってのお気に入りの骨の玩具みたいな物なのだと感じ取っているとそこに平治がやってくる。

 

「うた、ちょっと良いかい?」

 

「お爺ちゃん、どうしたの?」

 

「お婆ちゃんの持ち物で何か欲しい物はあるか?」

 

うたは祖父からの言葉に困惑。何故今そんなことを聞くのか……と。そして、平治は更に告げた。

 

「えっ?」

 

「わしももう歳だ。元気な内にお婆ちゃんの部屋を片付けようと思ってな」

 

それを聞いた途端、うたの顔から先程まであった笑顔が消えてしまう。それは、どうしても向き合わないといけない問題ながらも……うたは受け入れられない話であった。

 

「……そんな事言っちゃ、嫌だ……」

 

その直後、うたはその事実から目を逸らすように逃げてしまう。それをきゅーたろうは慌てて追いかけていく。

 

『うた!』

 

「………」

 

そんなうたときゅーたろうを影人達はただ見ているだけしかできず。その場には気まずい空気感が流れてしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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