キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
クラヤミンダーと向かい合うプリキュア達。その中でソウルはスラッシューへの警戒を向けていた。例え彼女が纏う雰囲気が変わったとしても戦闘能力の高さは変わらないと感じているからである。
「皆、スラッシューの事は俺が止める」
「ッ、でもソウルが……」
「スラッシューの事なら俺を狙ってくるはず。それに、クラヤミンダーだけなら最悪アイドル無しでもどうにかできるだろ?」
ソウルはこの場の最高戦力である自分がスラッシューを少しでも足止めする間に残る四人でクラヤミンダーを浄化。その後向こうがまだやる気であるなら五人がかりで相手すれば良いと考えて提案した。
「……だったら私も……」
「キッス、お前はクラヤミンダーの相手だ。俺抜きだと安定してクラヤミンダーを浄化できる技がズキューンとキッスの技しか無いし、そこは外せない」
キッスは少しでもソウルの負担を減らそうと自分が行こうとする。しかしソウルはクラヤミンダーの浄化を手早くやる事を優先しているからか、それを拒否してしまう。
何しろ、今のメンバーだとアイドルがいないためウインク、キュンキュンとの合体技は使用不可能。加えて、ウインクとキュンキュンの個人技は前の時みたいにソウルのサポートと周りからの応援。どちらかが欠けた場合浄化できるかわからないため、安易に使えない。そのためソウルは安定してクラヤミンダーを浄化できるズキューンとキッスの合体技を優先したのである。
「ッ……」
「いつまでごちゃごちゃ話すつもり?来ないなら私から行くよ!」
キッスがソウルからの言葉に葛藤した顔を見せているとそれを隙ありと見たスラッシューはいつまでも来ない事に痺れを切らし、一人で突撃してきた。そのままソウルへと炎を纏わせた右腕の拳を繰り出す。
「はあっ!」
それに対してソウルが同じく右腕の拳で返すと二人の攻撃がぶつかり合って衝撃波が起きる。
「……ッ、やはり強い」
スラッシューからの拳の重さに思わずソウルは唸るが、それでもソウルは持ち堪えた。スラッシューはそれを見てすかさず後ろに下がってから手を振って炎の斬撃波を飛ばす。
「ッ!来るよ!」
横に薙ぎ払うように放たれたそれを五人のプリキュアは回避。そんな中、ソウルは違和感を感じる。先程の拳は確かに重かった。それなのに何かが足りない。そう思ってしまう自分がいた。
「やっぱり俺一人で止める。今のスラッシューは不気味すぎるからな」
「わかりました!」
「クラヤミンダーは任せて!」
ソウルの言葉にウインク、キュンキュンは直ぐに了承。しかし、キッスはやはり納得がいかない。
「ダメですよ。お兄様、私は……」
「キッス、ソウルの事を信じて」
「お姉様……」
キッスはズキューンから言われてようやく納得すると四人はクラヤミンダーの相手をするために離脱。同時にスラッシューが手を真上に掲げると炎の剣が大量に生成。それが降り注いでくる。
「!?まただ……」
ソウルはやはり何かが足りない。そう感じながら降り注ぐ剣を走って回避していく。
「逃げてばかりで勝てるとでも思ってるのかしら?」
スラッシューはそう言いつつ接近して手にした鞭を振るう。ソウルはそれの直撃を横に跳んで回避してからすかさずソウルメガホンを使う。
「キュンキュンの力、ソウルバレット!」
ソウルが距離を取りつつソウルバレットでスラッシューを牽制。彼女はそれに対して手にした鞭を一瞬で剣に変えるとそれを突くと同時に火炎の龍が生成。ソウルバレットとぶつかると爆発した。
「ズキューンの力、ソウルインパクト!」
その爆炎を利用する形でソウルは白いエネルギーを纏って突進。スラッシューはそれを受け止めると二人は腕を組み合った状態で押し合っていた。
「……く、やっぱりお前……何で歌わない?」
ソウルはこのタイミングでスラッシューから感じていた違和感の正体に確信が付く。それは普段なら自分相手に戦う際は大体歌いながら攻撃を仕掛けているのに、今回はそれを全くしようとしてない事だ。
「歌……何の事かしら?」
「は?……お前、それ本気で言ってるのか!?」
ソウルはスラッシューの言葉に唖然とする。それから二人は距離を取って離れるとソウルは未だに動揺した様子で問いかけた。
「お前、前に言ってたんじゃないのか?歌を自分のために歌ってるって……」
「だから、何の話?そんなくだらない物……私には必要無いのよ」
その返しにソウルは前までのスラッシューと今のスラッシューは何があったかわからないが、根本的に考え方その物が違うという事。加えて以前まで時折り何かを思い出してはその記憶の影響で苦しむという事も今回は見られない。
「……スラッシュー、まさか……歌を失ったせいで大切な記憶が全部封印されたのか」
「はぁ?だから、何言ってるの?あまり私の事を馬鹿にしてると……」
スラッシューの手には炎が再び生成。それを火炎弾としてソウルへと不意打ちで放った。ソウルはそれを回避するが、火炎弾は地面に着弾して爆発。
「ッ……。記憶が封印されたからか、性格もだいぶ変わってるなこれ。前はまだ優しさがあった感じだけど、今はもう……相手を蹂躙する事しか頭に無い」
「他ごとを考えるなんて随分と余裕ね!」
スラッシューはまた接近してくると両腕に炎を宿し、接近戦を仕掛けてきた。
「あなたの強みはソウルメガホンによる多彩な技。でも、逆に言えば距離を詰めた上で使う暇を封じ込められる!」
スラッシューはここまでのソウルとの対戦で彼の強みがソウルメガホンにあると見切っており、そのためソウルメガホンを徹底的に使わせないようにするため接近して肉弾戦に持ち込む。
「ッ、確かにソウルメガホンが使えないのは厳しい。でも!」
するとソウルはスラッシューからの拳を受け流しつつすかさず腹へとカウンターの肘打ちをぶつける。
「ぐっ……」
「歌の無いお前からは怖さを感じない!」
その言葉にスラッシューは舌打ちする。ソウルもスラッシューの強みが歌によるブーストだと理解していた。確かに全体的な能力は前よりも強くなっているのは感じていたものの、それでも瞬間能力で見たら歌によってブーストされていた時の方が脅威だったのだ。
「チッ、確かにあなたも前に戦った時よりも更に強くなってるわね」
何より、最後にスラッシューとまともに対戦した時はソウルに内包された力はズキューンとキッスの力だけたったのに対して今はウインクとキュンキュンの力を取り戻している。少なくとも、前よりは強いのは確実なのだ。
「だとしたら私も更に力を発揮するだけよ。はぁあっ!」
するとスラッシューはその体に更なる闇の力を高めるとソウルの胸の奥でドクンと何かが高鳴る。
「……?何だ……今の」
「はあっ!」
スラッシューはソウルへとすかさず炎の斬撃波を飛ばしてきた。それはいつもの荒々しいスラッシューの戦い方である。
「ッ、今はそんな事考える場合じゃ無いか」
ソウルとスラッシューは一対一での戦闘を継続。互角の勝負となっていく。
同時刻。ソウルとスラッシューが戦闘をしつつ場所を少しずつ移動していく中でも残りの面々とクラヤミンダーの戦闘は相変わらず続いていた。
「クラヤミンダー!」
クラヤミンダーはその場にいた四人を踏み潰そうと脚を振り上げるが、すかさず四人は反応して回避。
「アイドルやソウルがいない分、頑張っちゃうよ!」
ズキューンはやる気十分と言わんばかりに声を上げるとウインク、キュンキュンと共に三方向にバラけるようにして散開。クラヤミンダーはそれについて行けずに慌てるような仕草を見せる。
「クラ!?ヤミ!?」
「はぁああっ!」
まずはクラヤミンダーの正面で空中へと跳び上がっていたズキューンが拳を繰り出す。クラヤミンダーはそれに対して地面に倒れた状態から跳ね起きるかのように地面に両手を置くと地面を押す事で勢いを付けてキックを放って迎え撃つ。
「ッ!」
ズキューンが一旦攻撃が防がれたので弾かれた勢いのまま後ろに戻るとそのタイミングでキュンキュンがクラヤミンダーへと後ろから接近する。
「今がチャンスです!」
「クラ?クゥウウラ!」
しかし、クラヤミンダーはすぐにキュンキュンに気がつくと彼女に背中を向けたまま跳び上がり、背中でキュンキュンを押し潰そうとする。
「え!?うわぁああっ!」
キュンキュンは慌てて後ろに跳んで回避するとまたクラヤミンダーは跳ね起きて立ち上がった。そこにウインクがすかさず追撃する。
「はぁああっ!」
ウインクからの回し蹴りがクラヤミンダーの左顔面に直撃するとクラヤミンダーはその場に倒れ込む。しかし、クラヤミンダーはタフなのかすぐに起き上がった。
「ヤミヤミ!」
「ソウルのためにも、あなたはすぐに倒す!」
そこにキッスが出てくると後ろから左腕による拳の一撃が命中し、クラヤミンダーは吹き飛ばされて地面を何度もバウンドしながら転がる。
「ダ!?ダ!?ダ……」
流石にこれだけやったらクラヤミンダーもひとたまりもないはずだ。そう思った四人がクラヤミンダーへと視線を向けるとチョッキリーヌがダウンしたクラヤミンダーへと声を上げる。
「クラヤミンダー、休んでる暇は無いよ!」
チョッキリーヌはやられてしまった部下へと喝を入れるかのように声を上げるとクラヤミンダーはサムズアップして対応。
「う……随分とタフなクラヤミンダーですね」
「もしかすると、きゅーちゃんのクラヤミンダーだから単純に動きが機敏なのかも」
ウインクがそう予想を立てているとチョッキリーヌはクラヤミンダーへとある指示を出した。
「クラヤミンダー、あの手を使うんだよ!」
「あの手?」
ズキューンが首を傾げていると突如としてクラヤミンダーはその体を半分に分裂。まさかの事態に四人は困惑した。
「嘘、何あれ!?」
そのまま四人が困惑しているとスリッパの裏面が地面に向くとその姿が一瞬で犬のように四足歩行になるとスリッパの甲の部分にそれぞれ緑のサングラスが生成。手のパーツは後ろに移動するとまるで尻尾のように生えた。
「さぁ、行くんだよ!」
「「クラヤミンダー!」」
まさかの増えたクラヤミンダーに四人は混乱したままだが、それでも倒さないといけないことに変わりは無いのでウインク、キッスペア。キュンキュン、ズキューンペアで一体ずつ相手にする事になる。
「早くソウルを助けないとなのに……」
「キッス、慌てたらダメ!」
ウインクがそう指摘する中、キッスはクラヤミンダーへと一気に接近して拳を繰り出そうとする。しかし、クラヤミンダーは自身の体を回転させながらドリルの如く突進。
「ッ!?」
「ウインクバリア!」
咄嗟にウインクはバリアを展開して攻撃を防ぐ。ただ、クラヤミンダーからの攻撃が強かったためにバリアは壊されてしまう。幸いにも二人共直撃は避けたが、そのままクラヤミンダーに苦戦してしまうのだった。
一方でキュンキュンとズキューンの方は二人で息を合わせるとキュンキュンが跳び上がってからブローチをタッチ。
「キュンキュンレーザー!」
「クラヤミンダー!」
キュンキュンからのレーザービームに対してクラヤミンダーは尻尾代わりにしていた合体時の手を伸ばすとキュンキュンレーザーを全て止めてしまった。
「下がガラ空きだよ!」
ただ、それは二人が予め用意していた動き。キュンキュンが上に注意を引く事でズキューンはクラヤミンダーの足元に入るとスリッパの底に当たる部分を見上げる。
「はあっ!」
ズキューンがすかさず下からクラヤミンダーを蹴り上げるとクラヤミンダーは真上に吹き飛ばされる……が、今度は空中に浮かんだクラヤミンダーは四本の脚を引っ込めるとウインクとキッスの方のクラヤミンダーと同じように回転しながら二人へと突っ込んできた。
「クラララッ!」
「「ええっ!?うわぁああっ!」」
まさかのクラヤミンダーからの反撃に二人は慌ててそれと鬼ごっこと言わんばかりの追いかけっこを始めてしまう。そのままウインクやキッスの置かれている状況と同じになった。
「ッ、きゃあっ!?」
「うわあっ!」
「ああっ!?」
それから四人は空中で回転しながら突っ込んでくるスリッパのクラヤミンダーに手も足も出ずにタックルをされては地面に叩きつけられてしまう。
「くぅ……強い」
「空中を飛びながらしつこく追いかけてきて……」
その直後、クラヤミンダーは再度合体して一体の人型のクラヤミンダーへと戻る。
「クラヤミンダー!」
四人がクラヤミンダーに対して構える中、ソウルもスラッシューとの戦闘で吹き飛ばされたために四人の近くに着地した。
「ソウル、大丈夫?」
「ああ。まだそんなに大きなダメージは無い。けど、スラッシューの強さは健在って所。しかもどうやったのかわからないけど、前の時に見せていた弱い心が完全に消えてる」
スラッシューは未だにやる気を見せているソウルに対して気に入らないような視線を向ける。
「……ほんと、さっきから何なの?まるで私が優しい心を持ってたみたいな事ばかり。しかも私が歌を歌わなくなったって……」
「えっ!?スラッシュー、歌を歌ってないんですか!?」
スラッシューの言葉に四人は目を見開く。四人も彼女は戦う際に歌うと思っていたために余計に困惑する。
「俺にもよくわからないんだよ。何故か歌を歌わなくなったんだ」
五人が話しているとそこにチョッキリーヌが声を上げる。自分の方はプリキュア相手に有利に立ち回れているため、このままのペースを維持したいのだろう。
「クラヤミンダー。このまま一気に……」
「まだだよ!」
チョッキリーヌから指示が飛んだ直後。どこからか声が聞こえると同時に何かが走ってくるとクラヤミンダーへと突っ込んできた。
「アイドルグータッチ!」
そしてその影は勢いをそのままに拳をクラヤミンダーへと不意打ちで叩き込む。
「クラァ!?」
「お待たせ、皆!」
「「「「アイドル!」」」」
そこに現れたのは一人だけ来ていなかったキュアアイドルである。彼女の登場にキッス以外の四人が歓喜の声を上げた。
「夢乃ちゃんから話は聞いたよ、ここからは私もやる!」
「ああ、頼むぞアイドル」
こうして、アイドルも加わりフルメンバーとなったアイドルプリキュアとスラッシュー、チョッキリーヌ連合軍の戦いは続く事になる。
また次回もお楽しみに。