キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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温子の遺したうたの宝物

アイドルは自分の祖母が宝物として埋めた箱を手にすると早速それを開けた。

 

「……ッ!」

 

そこに入っていたのは飴玉等のお菓子の袋達とそのど真ん中にあったのはうたがグリッター等で愛用しているリボンの巻かれたスプーン。……つまり、スプーンマイクである。

 

「これ、もしかしてアイドルが今も歌う時に使ってるスプーンマイクですかね」

 

「うん。リボンの色は違うけど、きっとそうだよ」

 

アイドルと共に箱を開ける際に一緒にいたウインクやキュンキュンが呟くとアイドルはそれを見てすぐに何かを思い出す。

 

「……思い出した。あの後にあった事」

 

アイドルがそう言うと自身の脳裏に、温子との出来事が浮かんできた。失われてしまっていた彼女の記憶である。

 

〜回想〜

 

場面はうたが最後に思い出していた温子に慰められていたあの時の事。温からの言葉にうたは彼女へと問い返す。

 

「……本当に?」

 

「本当よ。だからそんな顔しないで。そんなショボッボボンボンな顔」

 

温子はそれから場所を移動するとうたの前にある物を出した。それは彼女を元気づけるためのプリンである。

 

「ほら。一緒に食べよ?」

 

「!!……ありがとう、お婆ちゃん!」

 

うたは温子からスプーンを渡されると嬉しそうに微笑む。それから彼女へとお礼を言うと早速プリンを食べる事に。

 

「いただきます!」

 

うたはそれからプリンを美味しそうな顔をして食べ始めるとそのプリンはあっという間に無くなった。

 

「ごちそうさまでした!」

 

「お粗末様」

 

「お婆ちゃん、プリンとっても美味しかった!」

 

「ふふっ、うたは笑顔が可愛いよ」

 

うたが笑顔になってくれて温子も嬉しかったのか彼女はその頭を撫でる。するとうたは何かを思いつくと温子へとその考えを話す。

 

「お婆ちゃん!リボン頂戴!」

 

「リボン?」

 

温子はうたの言われるままにキョトンとしつつもリボンを手渡す。それを受け取ったうたは早速スプーンへと結ぶとスプーンマイクが完成。これがうたの使う初めてのスプーンマイクだった。

 

「出来た!うた、お婆ちゃんに歌います!」

 

うたは早速そのスプーンマイクを使って歌い始める。それは彼女が温子へと向けた感謝の気持ちその物であった。

 

「いつもおばあちゃんありがとう♪一緒にキラキラ♪ばあちゃん!♪」

 

「ばあちゃん」

 

「一緒!♪」

 

「一緒」

 

スプーンマイクの誕生と同時に今も続くうたの即席ソングの方も初めて誕生していたのだ。しかし、新しく生まれたのはこれだけに留まらない。

 

「おばあちゃん、歌うとショボッボボンボンな気持ちがキラキラ……じゃなくて!もっと……そうだ!キラッキランランになるんだね!」

 

「ふふっ、それは大発見、お友達と仲直りできそう?」

 

「うん!」

 

うたがよく口ずさんでいるキラッキランランという言葉もこの時初めて使用。つまり、今のうたのルーツになっているのはこの時の温子との想い出が殆どと言える。

 

「そうだ!これはおばあちゃん持ってて!おばあちゃんがショボッボボンボンになったら、うたがいつでもキラッキランランにするから!」

 

うたはそう言って温子へと初めてのスプーンマイクをプレゼントすると温子はそれを嬉しそうに受け取ってくれた。

 

それ以降温子はこのスプーンマイクを宝物として大切に持っており、暫くして自分の最期が近いと悟った彼女はまだ動ける間にこの三本杉の麓に宝物であるこのスプーンマイクを埋めて未来に残しておく選択を取ったのである。

 

〜現在〜

 

そして、そのスプーンマイクはうたの手元に帰ってきた。同時にうたは、アイドルは自分の祖母との想い出や彼女が亡くなってしまった時の事を鮮明に思い浮かべる。

 

「お婆ちゃん……きゅーちゃん」

 

アイドルが自分の記憶を思い出したタイミングでソウルもスラッシューと共にその場に転がってくると二人はまた向かい合う。

 

「ソウル……」

 

「アイドル、お婆ちゃんの宝物の中身……見れたんだな」

 

「うん……」

 

「そうか」

 

そんな中でスラッシューがその手に炎の剣を召喚すると笑みを浮かべて話す。

 

「ふふっ。何故か最初からこの場にあった箱だったから少し気になってはいたけれど、蓋を開けみればただのスプーンか。……そんな物で何が変わる?」

 

スラッシューはそんな風にアイドルの想い出を踏み躙るような事を言い出してしまう。ソウルはその言葉に目を見開くと静かな様子で声を荒げた。

 

「……おい、今の言葉……どういう意味だ?」

 

「どういう意味って……そのまま、その言葉通りよ。キュアアイドルにとってそのスプーンがどれだけ大切かは知らないけど、所詮……ただのスプーンでしか無いわ」

 

スラッシューの言葉にソウルは息を吐くと胸の奥から熱い想いが湧き上がってくる。

 

「お前、記憶を失ってるからって踏んで良いラインくらいは見極めろよ……。何でアイドルの大切な想い出を……そんなアッサリと踏み躙れるんだよ。……前のスラッシューだったら、きっとそんな事はしなかったはずなのに!あんなに優しかった天城さんなら……」

 

ソウルがスラッシューへと呟きながらジリジリと近寄っていく。その気迫の凄まじさにスラッシューは笑みを浮かべたままだった。すると、そこでアイドルが声を上げる。

 

「ソウル待って!」

 

ソウルはその言葉に一度歩みを止めるとアイドルが代わりにスラッシューへと話しかけた。

 

「……確かに、あなたにとってはこのスプーンは何でもないただのスプーン。でも、私にとってこれは大切な人との……お婆ちゃんとの想い出が沢山詰まった大事な物なの」

 

「あらそう?けど、だからと言ってそれがちっぽけな物でしか無いことに変わりはないわ」

 

「……ねぇ、スラッシュー。あなたにもそういう大切な物は無いの?」

 

「は?」

 

アイドルは先程からスプーンマイクの事を馬鹿にするスラッシューへと問いかける。スラッシューにはアイドルで言う所のスプーンマイクに該当する何かは無いのかと。

 

「そんな物に頼る程、私はもう弱くなんか無いわ」

 

「違うよ……。スラッシューはきっと忘れちゃってるだけ。……心のどこかに……そういう大切な物はあるはずだから!」

 

その瞬間、アイドルは覚悟を持った顔でスラッシューを見つめた。それを見たスラッシューは苛立つ。先程から自分にそんな物は無いと突き放しているはずなのにアイドルから色々と言われるのはしつこいと感じたのだろう。

 

「煩いわね……そんな物は無いって言ってるでしょ!」

 

スラッシューは手にした炎の剣を持ったままアイドルへと向かっていく。その顔つきは怒りに染まっており、彼女が感情的になっているのを示していた。

 

そして、それに合わせる形でアイドルも走っていくとブローチをタッチ。スラッシューへと技を放つ。

 

「アイドル……グータッチ!」

 

その拳はスラッシューから繰り出された炎の剣による突きと正面からぶつかるとパワーで押し合う。

 

「はぁあああっ!」

 

そのぶつかり合いにアイドルは打ち勝つとそのまま拳はスラッシューの顔面に突き刺さった。

 

「ぐ……うぁああっ!」

 

スラッシューはそのまま吹き飛ばされると近くの木に激突。彼女の瞳は倒されても尚、アイドルの方を向いていた。

 

「な、何だ……この、この強さは……」

 

スラッシューは動揺した顔を浮かべており、アイドルの方を向くとスラッシューはその胸のどこかに何か懐かしい物を見たような感じがほんの一瞬だけしてしまう。

 

「ッ……」

 

「キーッ!これ以上アイツらを好きにさせないよ!クラヤミンダー!」

 

スラッシューの心が僅かに動揺する中でチョッキリーヌはクラヤミンダーへと攻撃を指示。彼女としてはこれ以上プリキュア達に好き放題されないためにも何としてでも止めたい気持ちだった。しかし、そこにソウルが立ち塞がる。

 

「邪魔だよ!」

 

「「クラヤミンダー!」」

 

立ち塞がるソウルを見てチョッキリーヌが叫ぶとクラヤミンダーは二体に分裂。一気にソウルを叩き潰そうとする。しかし、彼の体からはいつの間にか銀色のオーラが飛び出していた。

 

「今、アイドルは大切な人からの贈り物を受け取って良い所なんだよ……。そんな彼女の邪魔をするな!」

 

その直後。ソウルの体から伸びたリボンの紐がアイドルに結びつくと同時にアイドルの体からピンク色のオーラが溢れ出し、それがソウルへと流れ込むと彼のオーラがピンク色へ。

 

加えてソウルメガホンが飛び出すとそのダイヤルがピンクに合わせられる。すると謎の空間内に存在すると思われるペンライトのような形状の何のある場所に移動。ペンライトのような物に巻き付いた最後の鎖がピンク光と共にヒビが入って砕かれる。

 

ペンライトの鎖が全て無くなるとそれを覆っている白と黒の二重のバリアのような物が残ってはいたが、同時に消えていたソウルメガホンのピンクのダイヤルが再度発光。

 

「アイドルの力、ソウルソリッド!」

 

ソウルメガホンから放たれたエネルギーは二体に分裂したクラヤミンダーの周囲にリングのような物を発生させるとそれを引き絞らせる形でクラヤミンダーを無理矢理一箇所に纏めてしまう。

 

同時にクラヤミンダーが一体の人型に戻るとソウルソリッドの効果でクラヤミンダーその物を捉える枷として具現化した。

 

「なっ!?」

 

「アイドルの力も取り戻した……」

 

「これでソウルに私達の力、全部戻ってきましたね!」

 

「アイドル、最後はお前が決めろ!」

 

ソウルがそう言うと同時にその手から自身に高められたピンクの光をアイドルへと全て移行。彼女に自分の力を上乗せする。

 

同時にズキューンの方ではその手にもうピンクのキラキライトを準備しており、ウインクやキュンキュンもそれを振っていた。

 

「「「頑張れー!キュアアイドル!」」」

 

そんな中、キッスだけはやはり周りの流れについて行けず。一人だけ孤立したような様子だった。

 

「………」

 

一方で、アイドルは周りからの応援を受け取るとやる気十分と言った様子で目の前のクラヤミンダー相手に向き合う事になる。

 

「皆、ありがとう!……私、ショボッボボンボンをキラッキランにする!うた、歌います!」

 

アイドルはその言葉と同時に単独での浄化技を発動。前回はクラヤミンダー相手に通用しなかったこの技だが、今回はソウルから力のブーストをかけられた事もあってしっかり拘束に成功していた。

 

「クライマックスは私!盛り上がって行くよー!」

 

アイドルがインカムを装着するとクラヤミンダーは着席から動けない様子で、そんなクラヤミンダーを浄化するべくアイドルが音楽に合わせて歌い始める。

 

♪決め歌 笑顔のユニゾン♪

 

「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪……プリキュア!アイドルスマイリング!」

 

「「キラッキラッタ〜」」

 

クラヤミンダーは自身に命中したハートによって浄化されるとキラルンリボンが生成。今回はアイドルが技を使ったので彼女がリボンを手にするのだった。

 

そして、クラヤミンダーが浄化された事で空が元に戻る中でチョッキリーヌは悔しそうな顔を浮かべる。

 

「くぅう……。スラッシューがいたのに勝てなかった……。それにしても……」

 

チョッキリーヌが悔しい気持ちをそこそこにふとソウル達の方を見るとある事を考え込む。

 

「……いつもお仲間で、楽しそうなこったね。……私もスラッシューとあんな風になれていたら……」

 

チョッキリーヌはソウル達が仲間内で楽しくやっているのを見て思わずそんな声が漏れてしまう。

 

「ッ……私は何で今そんな事を……」

 

チョッキリーヌは自分でそんな事を口走ったために困惑したような顔になるとそのままその場から去っていく。

 

「チッ……今回は負けか」

 

そして、チョッキリーヌがいなくなってもその場にいたスラッシューにソウル達は向き合う。するとアイドルが声をかけた。

 

「スラッシューさん、私達……信じてますから!」

 

「は?何の事よ」

 

「あなたが前に見せたあの顔ですよ。……あんなにも辛そうな顔をして、助けてほしいって」

 

そこにソウルがアイドルの言葉を引き継ぐ。スラッシューは記憶を辿るが、やはりそんな記憶なんて無い。

 

「……はぁ、あなた達もしつこいわね?」

 

「スラッシュー……もしかしてこの前のプリルンみたいに」

 

「うん、きっと過去の記憶が無くなってる」

 

このやり取りからウインクやキュンキュン、更にキッスも彼女の状況を察する。ズキューンだけはまだ理解が追いついていない様子だが、ソウル達がスラッシューを助けようとしているのはちゃんとわかっていた。

 

「なるほど、あなた達はそうやって私の心配をしてるのね?……けど、私からも忠告よ。キュアソウル」

 

「……?」

 

「あなた、どんどん周りの光を吸収して強くなってるけど……その光は諸刃の剣よ。周り頼みのその光は常に不安定さが付き纏う」

 

スラッシューが謎にそういう話を言うとソウルの胸の中でまた何かがドクンと高鳴る。

 

「ッ……」

 

「ソウル?」

 

「ふふっ、あなたがいつまでそれを光の力として扱えるか……見ものね」

 

スラッシューはそう謎に言い残すと撤退。その場からいなくなってしまうのだった。

 

「何だったんだろ……」

 

「ソウルの力が闇に堕ちる……そんな言い方でしたよね」

 

「でも、ソウルならきっと大丈夫だよね!」

 

「……ああ。ひとまず解決できたし、きゅーたろうを連れて家に帰ろうか」

 

ソウル達はスラッシューの言ったことが気になるが、わからない事をこれ以上考えても仕方ないという事でクラヤミンダーを浄化して助け出したきゅーたろうを連れて帰る事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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