キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達はきゅーたろうが素体にされたクラヤミンダーを浄化すると気を失ったきゅーたろうを連れてうたの祖父の家に連れて帰った。時間は日はすっかり落ちかけて夕焼けが見える頃になっている。
ちなみにその際は気絶したきゅーたろうを運ばなければならず、影人達が生身で長時間抱えるのは厳しかった。そのため、ソウルが人が住んでいるギリギリの所まで変身を維持してきゅーたろうを抱えていくと変身解除した後は影人が背中に背負う形でどうにか家にまで運んだ形となる。
「ふぅ……。流石に大型犬を抱えたり背負ったりしてこの距離を歩くとキツいな」
「カゲ先輩すみません……」
「体力の方は大丈夫?」
「ああ。少し休めば問題ない」
きゅーたろうを運ぶ事を影人に一任せざるを得なかったうた達はそんな彼を心配するが、問題無さそうに彼は答えを返す。
「きゅーちゃん、あれだけ沢山動いたから疲れちゃったんだよね」
ふとうたは自分の傍で気持ち良さそうに寝ているきゅーたろうをそっと優しく撫でる。その顔はかなり気持ち良さそうだった。
「まぁ、他の人達と似たような状態って思えばな」
きゅーたろうの件について影人達が話していると改めてうたの祖父である平治がやってきて話しかける。
「うた、お帰りなさい」
「あっ、ただいま!お爺ちゃん!」
「もう大丈夫かい?」
「うん!きゅーちゃんと皆が頑張ってくれたから……。もう私も悲しい気持ちじゃいられないよ!」
それから影人達はクラヤミンダーの事だけ上手く誤魔化す形で平治に事の顛末を話す事にした。うたが落ち込んだという事で平治も不安になっただろうし、ちゃんとうたが元気になったという話は一通りするべきだと思ったからだ。
「皆さん、うたを助けていただきありがとうございます」
「いえ、友達として当然の事ですよ」
「あ、そういえば。うたちゃんのお婆さんはなんで大切な物を埋めたりしたの?」
ふと、ななは気になったため質問する。宝物として取っておくなら別に必ず埋める必要は無いはずだ。それなのに何故埋める事にしたのか、彼女は気になったのである。
「タイムカプセルだったの。私が大きくなったら掘り返そうって、二人で埋めたんだ。お婆ちゃんは何を埋めたか教えてくれなかったんだけど……これだったんだね」
タイムカプセル……それは昔の想い出を未来に残すための一つの手段だ。温子は普通に取っておく事もできたかもしれないが、タイムカプセルとして予めうたに伝えておく事で彼女が記憶に残しやすくしたのだろう。
「お婆ちゃんはそれをとても大事にしてたんだ。それと同時に、自分は長く無い事もわかっていた」
うたとは未来で一緒に掘り返す約束をしたものの、今の自分にそれができるだけの時間が無い事は既に悟っていた温子。だからこそ、この宝物は絶対に未来のうたに託しておきたかったのだろう。
「お婆ちゃんがこれを埋める決意をした時、こう言ってたんだ。“ショボッボボンボンをキラッキランランに……”。このスプーンマイクにならそれができると。……いつか、うた自身がそれを必要とする時が来ると思ったのだろうな」
「そっか、流石お婆ちゃん!」
影人達はうたが完全に元気になったという事で彼女を微笑ましい顔つきで見ていたが、そんな時に影人はある声に気がつく。
『んんっ……』
「きゅーたろう?」
『ここは?お爺ちゃん家?』
ここで眠っていたきゅーたろうが目を覚ますと起き上がる。すると、きゅーたろうのすぐ隣に座っていたうたはそんな彼の顔を優しく触った。
「あ、きゅーちゃん起きた!」
『確か宝物を探して……どうなったんだっけ?』
「タイムカプセル、きゅーちゃんが見つけてくれたんだよね。ありがとう!」
うたはきゅーたろうへの感謝を伝えると共にその顔をきゅーたろうへと摺り寄せた。そして、うたが元気になったという事できゅーたろうも嬉しさでいっぱいになる。
『良かった!うた、キラッキランランになった!』
「……ありがと、きゅーたろう」
影人がボソッとそう言った直後、はもりが隣の部屋に続く襖を開けるとその間から顔を見せる。
「お姉ちゃん、皆!始まるよ!」
「ん?何が?」
はもりからの言葉にその場にいる影人達は首を傾げる。それと同時に襖が完全に開けられるとそこには上の方に“第58回 咲良家カラオケ大会”という文字が書かれた横断幕があった。更にその真下ぐらいでパーティーで使うようなパーティーハットを被った和、音、はもりの三人プラス田中が“ジャジャーン”と言わんばかりのポーズを取っている状態である。
「……ん?」
「第58回!」
「咲良家カラオケ大会!」
「わぁっ!」
影人が急な展開に凍りつく中、そのタイトル名を言った咲良家夫婦。その話にうたは嬉しそうな声を上げた。
「カラオケ大会ですか?」
「あそこにカラオケの機械がありそうだし、多分そのままの意味だよね」
「あはは、私も先に家へと戻ってきたらこんな感じでビックリしました」
ななとこころが話をしているとそこにクラヤミンダーの登場の影響で先行して家に帰っていた夢乃がおり、彼女が解説する。
「あれ?そういえば……58回?年一でそんなに回数ができるほどうたや和さんは……まさか」
「ふふっ、昔から続く我が家の恒例行事だ!」
「まさかの発祥はお爺さん世代!?」
どうやら毎年この家を訪れる際……つまり、年に一回。お盆の時期にカラオケ大会をするのが咲良家がやってきた行事らしい。一応表向きは歌を歌う事でお盆にやってくる亡くなった人たちを歌で楽しませるため……との事だが、こんな事をやるのは本当に咲良家だけだろう。
「さぁ、うた!今日は皆で思いっきり歌いましょう!」
「一番手、どうぞ」
さも当然のようにカラオケ大会での一番手を任されるうた。彼女が歌う事でこのカラオケ大会が始まるというのは最早咲良家の中では当たり前の事らしい。
「うた、歌います!」
それから早速うたは前に出ると祖母の遺影とスプーンマイクを手に取るとカラオケ機械……では無く、いつもの即席ソングで今回のカラオケは幕を開ける事になるのだった。
「いつもお婆ちゃんありがとう♪一緒にキラキラ♪婆ちゃん!♪」
それ以降はカラオケ機械を使用しつつ、その場の一同が順番に歌を歌う事になる。その光景に影人は微笑んでいた。
「もう、咲良さんには毎度毎度振り回されっぱなしだけど……やっぱり、彼女はそこにいてくれるだけでこの空間を明るくしてくれるな」
影人がそうしみじみと考えているとそこにこころがマイクを持ってやってくる。それは先程まで彼女の番だったのだが、次は影人だと言わんばかりの様子を見せていた。
「ほら、カゲ先輩も歌ってください!」
「結局俺も歌うのか……」
「当たり前ですよ。自分の好きな物で良いんで歌ってください!」
「わかったからそんなに押すなって」
こうして、影人もその歌に参加。そこにはその場の誰もが幸せそうに笑う空間ができていた。平治はその様子を見てうたときゅーたろうの関係に微笑ましさを感じる。
「(やはりきゅーたろうをうたの元に行かせて良かった。あの時、きゅーたろうはずっと寄り添ってくれた。うたときゅーたろうは親友と言うのだろう。……なぁ、お婆ちゃん)」
そして、うたときゅーたろうが仲良くしているのを見ると机の下で大人しくしていたプリルンが微笑んで小さく声を上げる。
「うたときゅーちゃんはとっても良いお友達プリ!プリルンもお友達プリ〜!」
「メロ!?……メロロンにはにいたまやねえたましかいないメロ……。それなのに、どうしてあの時」
プリルンはそう言って思わずうた達の元に走って飛び出すとメロロンはそんな彼女を見て小声で呟く。
「(メロロンがにいたまのキラキラをもっと信じてたら……。にいたまもねえたまと対立なんてしたく無かったのに……)」
メロロンは戦いの中で影人の事をしんじられなかったのを酷く後悔した様子だった。加えて、影人やプリルンには他にも友達が沢山いる。その事実を改めて認識したメロロンは一人孤独感を感じてしまった。
自分には影人やプリルンしかいない。だからこそ二人とは対立なんてしたく無かったという事だろう。
それから時間が経ち、翌日の昼過ぎ。影人達はもうはなみちタウンの方に帰る時が来てしまっていた。そのため、影人達は帰り支度をすると平治に挨拶をする事になる。
「どうも、お世話になりました」
「二日間、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
影人達もこの家でお世話になったため、平治にしっかりとお礼を言った。それに対して彼も笑顔で答えを返す。
「いえいえ、とんでもない。また来てください」
「お爺ちゃん元気でね!」
「さぁ、行こうか」
それから影人達は和の言葉と共に車の中に乗り始める。そんな時、うたはまだ平治の前から動かず。きゅーたろうは思わず彼女を見上げた。
『……うた?』
「あのさ、お婆ちゃんの部屋を片付ける時。いつでも呼んでね!私……手伝いたいから!」
「ッ……うた!」
「きゅーちゃんと一緒に……ね!」
「ワン!」
うたはもう温子の部屋を片付ける事に迷いは無かった。いつかは向き合わないといけない彼女の事に、この二日間で気がつくとそれと向き合う事ができるようになったのだ。そのため、平治は彼女の心が成長したのだと感じ取る。
「本当に……大きくなったな」
加えて、きゅーたろうも嬉しそうに尻尾を振ると嬉しそうに吠えた。こうして、うた達も車に乗り込むと祖父の家を後にする事に。平治はそんなうた達を車が見えなくなるまで見送ってくれた。
「きゅーちゃん♪」
「ワンワン!」
「一緒!♪」
「一緒!」
うたはいつも通りに歌を歌い、きゅーたろうがそれに合いの手を入れているとうたの耳にほんの一瞬。最後の合いの手の際にきゅーたろうの声……つまり、イケオジの声が聞こえる。
「うん!一緒!……って、えっ?今の声きゅーちゃん!?」
『えっ!?もしかして通じた!?』
うたに自分の声が通じた事にきゅーたろうは嬉しそうな顔になるとまた自分の気持ちを伝えるためにきゅーたろうは再度うたへと話しかける。
『じゃあ今晩は鶏肉をオーブンでカリッと焼いたのが食べたい!』
「……何々?うたと僕はずっと友達?……勿論!」
しかし、残念ながら通じたのはほんの一瞬の奇跡に過ぎなかったようで。きゅーたろうは調子を狂わされると唖然としてしまう。
『あ、あれ?まぁいっか!』
「……ワン!」
それでもうたからされた解釈はきゅーたろうにとってそこまで悪い事では無かったので頷くように彼は声を上げる事になる。
その頃、田中の車の方では影人が少し考えていた。するとこころが話しかける。
「カゲ先輩、どうかしましたか?」
「ん?……昨日スラッシューに言われた事が気になってさ」
「それって……カゲ先輩の力の事ですか?」
「ああ。……俺さ、少し嫌な予感もしてて」
影人のその言葉にこころは目を見開く。昨日の感じだと影人はそこまで気にして無さそうにも見えた。また、仮に不安だったとしても誰にも言わなさそうな彼が話してくれたのだ。これは恐らく、影人が周りを頼るようになった証拠だろう。
「嫌な予感ですか?」
「……俺の力って、周りの事に影響を受けやすい。そんな不安定な力。今までも皆からの力を受け取って強くなったんだけどさ」
それは実際そうだ。影人は自分自身の固有の輝きを持っておらず、その力を使うにはうた達アイドルプリキュアの力が無ければならない。前にも言及したが、キュアソウルがバイオレットカラー。つまり、紫に近い色になったのはあくまでこころの色を取り込んだだけに過ぎない。
そこにアイドル達五人の力が絡み合う事で完成しているのが今のキュアソウルの力の実態だ。だからこそ、ある仮説も立てられる。
「……もしさ、ここに凄まじく強い闇の力……が入ってしまったらどうなるか」
「あっ……」
「多分スラッシューが言いたいのはそういうことな気がするんだ」
ソウルの力は不安定。そして、力というのは光が全てじゃ無い。闇の力が強ければ当然のように容易くその性質はひっくり返る。そして、その言葉を聞いたメロロンは夢乃の持っているポシェットの中で思わず目を見開く。
「そんな事にはさせませんよ。……カゲ先輩を闇に落とすなんて……私は二度と嫌ですから」
するとこころは影人の手を取ると彼を安心させようと声をかける。影人はそんなこころが近くにいるだけで安心感を覚えると嬉しそうに微笑んだ。
「……そっか。ありがと、こころ。俺も闇に落ちるなんて御免だ。だから、蒼風さんも、プリルンも、メロロンも……頼む」
「うん、任せて!」
「プリルン、影人にはクラクラじゃなくてキラキラしてほしいプリ!」
「私もできる事はするよ、お兄ちゃん」
影人の頼みになな達も快く了承。影人はそんな仲間達からの言葉に嬉しそうに微笑んだ。そんな中でメロロンは一人考える。どうすれば影人が闇に堕ちずに済むのか……と。
「(メロ……にいたまを闇に堕とさない方法。きっとだけど……。にいたまが自分だけのキラキラを見つける事だと思うメロ。にいたまの事を信じられなかった分……。それに、影人と交わしたあの約束……メロロンが守るメロ)」
それはメロロンがプリルンと共にキラキランドへと行く際に影人への残した手紙に書いた約束。……影人のキラキラをメロロンが取り戻すという物だ。
こうして、メロロンは影人との約束を果たすために頑張る事を決意するのだった。それが、影人を信じられなかった自分の犯した過ちへの償いだと信じて。
今回でアニメ28話部分が終わりました。次回からアニメ29話……という事ですが、原作ではいよいよ……って感じです。それではまた次回もお楽しみに。