キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
お盆にあったうたの祖父の家への訪問を終えてまた時間が経過。夏休みがもうすぐ終わりになる中で、アイドルプリキュア達は今現在……とある施設にやってきている。
その施設の入り口にはアイドルプリキュアVSズキューンキッスソウルのトークショーという文字と二つのチームの画像が隣り合わせで並ぶ形でデカデカと存在していた。
そしてそれは二つのチームが対決をしている……と言わんばかりのタイトルとなっている。
「イェーイ!まだまだ行くよ〜!アイドルプリキュアVSズキューンキッスソウルのトークショー!」
アイドルがそんな風にその場を仕切っていく。プリキュアの六人の前には沢山の“はなみちタウンに住んでいると思われる中学生以下の子供達が嬉しそうな顔つきでいた。勿論その手にはキラッキライトが握られており、それぞれの推しプリキュアの色を発光させている。
「………」
ただ、プリキュア達が笑顔でその子供達と向き合っている中でただ一人。笑顔どころか僅かに気まずそうな顔つきで立っている者がいた。……キュアキッスである。
「(……どうしてこんな事を)」
キッスが内心でそう思いつつ苦い顔を浮かべる。こうなった理由は約二日程前に遡る事に。
〜回想〜
二日程前の夜の時間。キラキランドの出張所にあるメロロンの部屋では彼女が本に囲まれており、色々と調べていた。
「メロ……メロロンが、メロロンがにいたまのキラキラを取り戻してあげるのメロ」
「メロロン、前みたいに本ばかりでどうしたのプリ?」
そこにプリルンがやってくると不思議そうな顔をしつつ問いかける。彼女はメロロンが何故本の山に囲まれている状態なのかわからないため、当然の疑問だ。
「メロ……。ねえたま、ねえたまがにいたまを見て最近キラキラしてるとは無いのメロ?」
「プリ?影人は最近偶にキラキラはしてるプリ。凄く眩しい輝きが出てたプリ」
「それ、本当メロ!?」
メロロンはプリルンからの返事に食いつくように彼女の両肩を掴む。メロロンにとって、その言葉だけでも影人を救う鍵になるのなら幾らでも欲しい所だった。
「プリ!」
「……どんな時にそうなってるかわかるメロ?」
「プリ?プリ〜……。わかんないプリ」
「そうメロ……」
メロロンは少し愕然としたような顔つきをしてしまう。どんな時に影人がその状態なのかわかるだけで恐らく打開策を思いつくには大きな進歩となり得る。ただ、プリルンはメロロンの気持ちを共有しているわけでは無いのと普段から彼女が人を見る時はどんな時にキラキラしているか。そこまでは見てない事が多いのでわからないのはある意味仕方ない所だ。
「……メロロンは、影人が大好きプリ?」
「メロ!?……そうメロ」
「それじゃあ、プリルンやきゅーちゃんと一緒プリ!友達の影人のために沢山頑張ってるプリ!」
「メロ!?に、にいたまとは友達じゃなくて……」
「……プリ?」
メロロンは影人とは友達では無い……そう言った時点でプリルンは首を傾げる。正直プリルンはきゅーたろうがうたを助けたようなあの時の事のようにメロロンと影人は友達だから助けるのだと思っていた。しかし、メロロン本人からは友達では無い……そうハッキリと聞いて疑問符を浮かべざるを得なかったのである。
「影人と友達じゃなかったら影人はメロロンの何プリ?」
「メロ……そ、それは……」
メロロンはそう聞いて困惑する。影人とは友達じゃない。……だからと言って恋人は絶対に違うし、それを言ってはいけない事はわかっている。
「影人はメロロンにとって……家族!家族みたいな物メロ!あとねえたまや夢乃も一緒メロ!」
「プリ?メロロンは影人の家族……プリ?」
プリルンはあまりよくわかってない様子だった。何しろ自分達は妖精で尚且つ影人は人間だ。自分にとってうたは友達扱いだし、メロロンが何故わざわざ友達では無く家族という言い回しがプリルンには理解が追いつかない。
「(……つい勢いで家族って言っちゃったメロ……。でも、こう言わないと……メロロンは、メロロンは……)」
ただ、誤解の無いように補足しておくが……メロロンには影人や夢乃の事を家族であると定義せざるを得ない事情があった。その理由についてはまた後程話すとして、プリルンとメロロンのいる部屋に田中がノックすると声をかける。
「プリルン、メロロン。お二人にお話が」
「「アイドルプリキュアVSズキューンキッスソウルのトークショー(プリ)(メロ)?」」
田中の元に持ち込まれたのはPretty_Holicのはなみちタウンのお店の担当者である森こはる考案のトークショーであった。
「二日後、Pretty_Holicの方から用意してもらった施設でトークショーを開く事にしようという話になって。この話についてうたさん、ななさん、こころさん、影人君の四人は既に了承済み。レイさん通じでサウンドプロダクションの方にも話は通りました」
「トークショー!楽しそうプリ!やるプリ!」
「……にいたまやねえたまがやるのなら……やるメロ」
すると田中はメロロンが何故か普段なら影人やプリルンがやると言い出した際にあまり断る事は無いのに今回は消極的なメロロンに疑問符を抱く。
「メロロン、どうしてもダメなら断る事も……」
「メロロンはやるのメロ!にいたまやねえたまの意見がメロロンの意見メロ。それは変わらないメロ」
「……わかりました。それでは、こはるさんの方にも伝えておきましょう」
田中はメロロンの意見に押される形で最終的には提案を受ける旨を森へと返す事に。
「……メロ」
メロロンは僅かに溜め息と言わんばかりの言葉を発するとトークショーをやらざるを得ない事に頭を悩ませてしまう事になってしまうのだった。
〜現在〜
正直、メロロンはこのトークショー自体にはあまり興味が無い。ただ、トークショーは目の前にお客もいるという事実を失念していたせいか余計にメロロンは頭を抱えたい状況になってしまっていた。
何しろ自分達目当てで来ている沢山のお客さんの前で質問に対して下手に対応するわけにもいかない。そのため彼女はできる限り沈黙を保ち、質問に対しては必要最低限だけ答える形を取っていた。
「(こんなトークショーなんてやってる場合じゃ無いのに……。いつ闇に堕ちてもおかしくないお兄様を助けるために、少しでも考える時間が欲しいこんな時に……)」
キッスは内心焦っていた。ソウルが闇に堕ちてしまう。スラッシューにその可能性を示唆されたあの時から彼女の思考はソウルを助ける事へとシフトしつつあった。勿論お姉様ことプリルンとの関係性も大事だからそこは最低限確保はしている。それ以外はソウルに使う辺り、彼女は何としてでも影人を助けたい様子だった。
「(でも、お兄様もお姉様もトークショーが楽しそうで……。私は、どうするべきなの……)」
ただ、キッスも現状ではどうすればソウルを……影人を助けられるのかはわからない。そのためどうする事もできずに時間だけが過ぎていく。加えて、キッスは楽しそうに話をしているソウル達が羨ましい気持ちになりつつあった。
そんな風に彼女が悩んでいる時。キッスの胸の奥……特殊な空間内では錠前の形をしたハートキラリロックが心臓の鼓動のように“ドクンドクン”と音を鳴らしている。そして、まるでキッス本人を監視するかのようであった。
「次は、キュアウインクに質問がある人!」
そんなキッスの心境はさておき、トークショーは進行し続けている。今度はウインクへの質問らしい。すると目の前にいる子供達は元気に手を上げて自分の意見を主張する。そんな時、一番後ろの方。引っ込み思案で自分から強く主張できず、勇気を振り絞って手を上げたかのような顔つきの女の子をアイドルは見つける。
「それじゃあ……ッ!……ウインク」
アイドルはそれを見てウインクに視線を一瞬だけ移すとウインクは小さく頷く。どうやら彼女もアイドルと同じでその子に当てたい様子だった。
「一番後ろのキミ!」
アイドルがそう言うとその子はいきなり当てられてビックリしたかのように顔が赤くなると恥ずかしそうにする。
「え、えっとぉ……」
少女が上手く話せずに緊張しているとウインクはそれに気がついて歩み寄っていく。そして、彼女の前にまでやってきた。
「大丈夫。ゆっくりで良いよ」
ウインクはそう言いつつ、少女に向けて優しくウインクをする。これにより、彼女の緊張していた心は勇気づけられた。それどころか、アイドルプリキュアを目の前にして目がキラキラマークになると共に嬉しさがいっぱいになる。
「あんな風に寄り添ってもらえたら一生の想い出になっちゃいます!」
「ウインク、素敵だね!」
「え、えっとぉ……。アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルって仲良し?」
その質問を聞いてウインクは彼女が勇気を出してくれたと感じるとその勇気に応えるべきだということでしっかりと答えを返す。
「質問、ありがとうね。……うん、皆仲良しだよ。ね?」
ウインクがそうステージにいる五人へと振り返りつつ問いかける。そして、その中のキッス以外の四人は嬉しそうに返事を返した。
「勿論!」
「いつも一緒のお友達です!」
「うん!皆お友達だよ!」
「ああ。六人とも仲良しだ」
キッスはその返事に内心複雑な心境だった。それと同時にある事を思い出す。それは、うたのために頑張って宝物ことタイムカプセルを探していたプリルンのあの言葉だ。
「(咲良うたのために頑張るお姉様と、お兄様のために頑張る私が一緒……。確かにそうかもしれない。でも……)」
そんなキッスの複雑な心境は勿論顔に出てしまっていたため、ウインクはそれを遠目に見て何かを感じる。
「キッス……?」
「キュアウインク、ありがとう!」
「うん、またね」
ただ、トークショーを台無しにするわけにはいかないために今はその話を後回しにするべきとウインクは切り替えると元の場所に戻っていく。
また、その様子を後ろの方から撮影しつつ見ていたレイ、田中、森の三人はトークショーが上手く回っている事が嬉しそうだった。
「皆さん、本当に仲が良いですね!最高のお友達って感じです」
「えぇ。……本当にチームの仲は良いですよ」
レイはそう返す中で、胸の中で“多分、あの中の一人を除けば……ね”という言葉を付け足す。彼も彼でキッスの異変には割と早い段階から気がついており、それは自分が参加していなかったうたの祖父の家への訪問の影響だとは薄々感じている様子だった。
「(キッス……頼むから今の時間だけでも笑っててくれよ。お客さんが思いっきりいるんだからな)」
レイがそう考えている隣で田中はトークショーの写真を撮る。そして、時間は過ぎてトークショーは無事に終了。楽屋の中での会話となる。
「お疲れ様でした。本日のPretty_Holicトークショー……大成功です!」
田中はテンションが高いのか、珍しく手を上に上げつつ大きな丸を作って成功だという事を伝えた。
「俺からも言うことは無い。皆、よくやり切ったな」
普段なら色々とやらかしをする面々も今回はそう言った行動は無く、ヒヤヒヤする場面もそう大して無かったためにレイとしても今回はこれまでの活動の中で上位に入る程穏便なイベントだった。
「イェーイ!」
「やった!」
「やったね、ズキューン!」
アイドルは嬉しさのあまり、隣にいたズキューンと思わず手を合わせるとキッスはその行為に心がざわめき始める。
「うん!緊張しちゃった」
「えー?そうだったの?」
「ズキューン、お前にも緊張という概念があったなんてな」
「もう、ソウルまで。私だって緊張する時くらいあるんだよ?」
ソウルはズキューンが緊張したという言葉に意外そうな顔つきを浮かべるとそれを指摘。そして、キッスはその様子に俯く。
「お姉様、お兄様……」
「それに私達、最高のお友達言われちゃいましたね!」
「うん!とても嬉しかったな」
「ね〜!」
キュンキュンからの言葉にウインクも同意し、アイドルも続く。そして、その言葉を聞いたキッスは苛立ったのか口元に怒りを浮かべるとソウルはキッスの異変に気がつく。
「キッス……?」
「……一緒にしないで」
キッスは静かだったが、その声色には怒りが含まれている様子であった。そのまま彼女はソウルとズキューンの手を握って自分の近くに引き寄せる。
「キッス……」
そんな彼女にウインクが不安そうになるとキッスはその怒りの感情のまま、宣告した。
「……だって、あなた達はアイドルプリキュア。私達はズキューンキッスソウル。……でしょ?こう言う時は同じ括りでもあくまで別のチームだから」
「ッ、でも……」
キッスはそう言った直後、ズキューンやソウルを引っ張る形でその場から出て行ってしまう。それをアイドルは慌てて呼び止めた。
「行きましょう。お姉様、お兄様」
「ッ、待って!キッス!」
アイドルに呼び止められて一度止まったキッス。彼女は振り返るとアイドルへと冷たく答えを返した。
「私は……私は、あなた達の友達じゃない!」
「キッス……」
アイドルがそう呟く間にもキッスはソウルとズキューンを連れたまま急いでその建物から出ていく。
「キッス!」
ソウルはその気になればキッスの手を振り払う事もできたが、それを今したら不味いと考えた彼はそのまま彼女に連れて行かれる事になる。
そして、ある程度行った所で三人は変身解除。ただそうなると、人間である影人をメロロンが連れて行くのは難しくなる。
「……はぁ、仕方ない。メロロン、どこに行く?」
「……グリッターメロ」
「グリッターって……。まぁ、わかった」
影人はアイドルことうた達から離れたいのにグリッターでは逆効果だと考えるが、ひとまず今のメロロンの意見を聞いてその答えが出たので影人はプリルンとメロロンを二人のためのポシェットに入れると移動する事になるのだった。
「プリ!?影人、良いプリ?」
「ああ。ひとまずメロロンのやりたいようにさせよう」
プリルンは小声で問いかけるが、影人はメロロンの意見を尊重すべきという事で彼女の行きたい所に……グリッターに行く事になる。
同時刻、取り残されたアイドル達の方ではレイが頭を悩ませていた。一応森への挨拶は済ませたから全員揃ってなくても問題は無い。ただ、やはり今のままでは良くないのも事実だろう。
「……ほんと、どうした物かなぁ……」
「キッス……」
「うん、キッス……メロロンは辛そうにも見えた。私もどうにかしたいよ」
アイドルが呟くとウインクもキッスを心配したような声色を見せる。果たして、チームの仲はバラバラ。それでも今のメロロンの事はどうにかしたいとアイドル達は考える事になる。
また次回もお楽しみに。