キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
メロロンが行ってしまった後。影人はキュアソウルに変身しつつ、すり抜けバグのようなやり方をして後を追うと少ししてどうにか彼女に追いついた。
「メロロン、お願いだ」
「メロ……にいたま、話は……」
「しなくて良い!……一緒にいるだけで良いから!」
メロロンはその言葉を聞いて少しだけ考えると逃げるのを止める。それからソウルは彼女を抱き抱えてから地面に降り立ち、誰もいない事を確認して変身解除した。
「……何で追ってきたのメロ」
「そりゃあ、メロロンを一人にしないためだ。今のメロロンを一人になんてできるわけないだろ」
影人は今のメロロンを見ると少し不安そうな顔をしていた。そんな彼にメロロンは本当に自分は心配をかけさせる程に酷い顔をしているだの察する。
「……それで、メロロン。どこに行く?」
.
「図書館メロ。メロロンが一人でお出かけする時はいつもそこなのメロ」
「一人でお出かけ……。何やら聞き捨てならない単語が聞こえたけど、オッケー。そこにしようか」
影人は妖精であるメロロンが偶に一人で出かけている事実に苦笑いするものの、それを了承。二人で図書館へと向かう。その最中でメロロンは呟く。
「……その、さっきはごめんなさいメロ」
「ん?」
「さっき、影人はメロロンの事を心配してくれたのに……メロロンは……」
それは先程影人がメロロンを心配した際にその気持ちを突っぱねてしまった時の事を指しているのだろう。
「……気にするなよ。メロロンにだって複雑な気持ちがあるのはわかってるつもり……。ここから先は俺の独り言だと思ってくれ。勿論答える必要は無いから」
「メロ?」
メロロンはその言葉に首を傾げる。何故独り言なのに自分の目の前で言うのか。……それがまるでわからなかった。
「メロロンはさ、多分だけど。自分が周りと違う事で悩んでて。キラキランドでもそれで原因で周りと上手く馴染む事ができなかった」
メロロンが困惑する中で影人が語り出したのは彼女の事だ。ただし、これはあくまでも独り言だと話したので影人が勝手に話しているというだけ。つまり、メロロンに対して聞いているわけでは無い。そのため、メロロンは彼が言ってるのは独り言だと念頭に置いて話を聞き流すつもりでおく事にした。
「それからダークイーネの侵攻が起きて、この街に来て。俺に助けられたメロロンはプリルンと同じで俺を慕う事にした。ただ、メロロンにはプリルンや俺以外に頼れる相手がいなくて……。俺はともかく、プリルンの方は自分が行くまでの間の時間が災いして彼女の周りを取り巻く状況を変えてしまっていた」
メロロンは影人からの話に落ち込んでしまう。何しろ、ダークイーネ侵攻の際にプリルンは自分の姉になってくれると言った。つまり、自分を見てくれると言ったのだ。それなのに、少しの間会えない時間ができただけでプリルンの見る方向はアイドルプリキュア……うた達の方へと向いてしまっていた。メロロンにはその事実をどうしても受け入れられず、今もこうして現状を歯痒い気持ちで見ているだけしかできない。
「……ただ、俺達と関わる中でメロロンの気持ちは……変わったはずだ。俺が変わったみたいに。多分、ななやこころもそう。うただって、一人だったらプリルンの記憶喪失のショックから立ち直るのには時間がかかったかもしれない」
影人からそう言われてメロロンの心は揺れる。確かに、目の前には自分が少し受け入れるだけで仲良くなれる状況があった。ただ、それでもメロロンには踏み出せない理由がある。
「……本当はメロロンも変わりたいんだろ。俺達と、仲良くしたいんだろ。けど、友達という枠組みで捉える事ができなくて……。だから俺と夢乃に関しては家族という別の定義にしてから仲良くならざるを得なかった」
「………」
影人の予想はそんな感じだった。メロロンは彼の話に何かを返す事は無かったものの、目立って否定する事も無い。そのため、大筋は合っているのだろう。結局、メロロンは聞き流すつもりだった影人からの話を全てまともに聞いてしまうのだった。
「それでさ、ここからはまたできれば答えて欲しいんだけど。……メロロンはこれからどうしたいんだ」
「メロ……これからどうしたい……」
「多分咲良さんやプリルン辺りはまた戻ったらメロロンを説得しようとしてくる。その度にさっきみたいに会話にすらならないんじゃダメだ。だから予めメロロンの意見はちゃんと聞いておきたい」
それは、先程グリッターでの事を考えれば至極当然の話だ。何しろ先程はプリルンからの説得は耳を傾けるどころか、話にすらせずに突っぱねてしまっている。加えてうたからの話も最初は喧嘩腰だったというのもあって、影人の中ではメロロンはこの件に関しては話すらしたくない面が強いのだと察していた。そのため、まずはメロロンの気持ちをハッキリさせておきたかったのである。話し合いをするにしてもメロロンにその気が無いのなら今回と似たような結果に終わってしまうのだから。
「メロロンがどうしても話し合いをするのも嫌なのならちゃんと教えてほしいんだ。そうすれば対策は幾らでも後から立てることができる。……ただ、メロロンに少しでも話をするつもりがあるのなら……ちゃんと話し合ってほしい」
影人はこの件に関してできる事は最大限するつもりだった。ズキューンキッスが登場して以降、キッスことメロロンはアイドルプリキュアの三人とは距離を取る道を選んだ。ただ、影人達はメロロンが一人でこうして悩孤立している現状を良いとは思ってない。だからできるならメロロンには歩み寄ってほしかった。
「……」
メロロンは俯くとそれから自身の視線の先にある光景を映す。そこにいたのは公園で楽しく遊ぶ子供達であった。
「メロ……」
「ん……あれは、この辺の子達かな?」
すると子供達の顔つきが幸せそうなのを見ていたメロロンの目から一筋の涙が零れ落ちる。
「メロロンだって……本当は皆と……影人や夢乃とだってお友達に……」
メロロンが呟いたその言葉に彼女が胸の内に抱える本心について影人は理解した。ただ、メロロンはその直後に首を横に振ると自分の気持ちを閉じ込めようとする。
「メロメロ!……なれないのメロ!だから、だからメロロンは寂しくなんか……」
しかし、先程から出ている涙は止まる様子は無い。影人はそんなメロロンに寄り添うように優しく頭を撫でる。
「メロ……本当に、影人はお節介なのメロ……」
「別にお節介ってわけじゃないよ。……前にも言ったけど、メロロンに後悔するような選択をしてほしく無いだけ」.
それから二人は図書館に向かうことに。加えて影人のこの言葉を最後に二人は図書館に着くまでは一言も話さなかったのだが、それ以降のメロロンは影人とまともに接してくれるようになった。
同時刻、チョッキリ団アジトにて。ここではまたいつものようにチョッキリーヌがビリヤードに興じていたのだが、彼女は溜め息を吐いていた。
「はぁ……。カッティーにザックリー……。あの二人がいなくなって、そこそこ経つけど……こんなにも時間が経つのが遅くなってしまうとは」
チョッキリーヌはカッティー、ザックリーのいない毎日に寂しさを感じているのか、静か過ぎるバーを見てふと呟く。それだけ、三人で過ごす日々が彼女も好きだったのだろう。
「……チョッキリーヌ、今日も出勤よ」
「ッ……。なぁスラッシュー」
「何?言っておくけど、変な相談ならお断りよ?」
「別に大した事じゃないよ。……ただ、カッティーとザックリーが戻ってきたら……なんて考えていただけさ」
そんな風に後悔するような声色で話すチョッキリーヌ。その彼女の言葉にスラッシューは少し考えると返す。
「そんな事言った所であの二人はもう帰ってこないわよ?」
「そのくらいわかってるよ……」
スラッシューはチョッキリーヌとのやり取りの中で彼女に何かを感じたの溜め息を吐く。
「はぁ……。だったら、今日は息抜き……とは言わないけど。あの場所に行ってみる?」
「何だい?スラッシュー。いきなり変な事言い出して」
チョッキリーヌはいきなり提案してきたスラッシューへと困惑した様子を見せる。
「別に。私も出撃はするしお休みにするわけにはいかないけど、あの場所に行けば心を落ち着かせられる。そう言いたいだけよ」
「そんな場所があるのかい?」
「えぇ。……そこならあなたが今一番探している物が見つかるのかなと思っているわ」
「……スラッシュー、アンタ。随分と親切になったね」
「別に親切になったってわけじゃないわ。最初からこうよ」
チョッキリーヌはスラッシューからの言葉に違和感を感じる。前まで苛立ってしまう彼女からの言葉に対し、何故かそこまで大きな怒りが湧いてこないのだ。
「変わったのだとしたらあなたの方じゃない?チョッキリーヌ。少なくとも、前までの喧嘩腰じゃなくなった分ね」
それを聞いて何となくチョッキリーヌは理解が追いついた。確かに、今の自分はスラッシューへの対抗心が前までのように湧いてこない。いや、確かに対抗心はある。スラッシューに負けたく無い気持ちは残ったままなのだが、それが思わず口に出てしまうほど強くは無いのだ。
「……そう。それで、話が脱線したけどその場所というのは?」
「図書館って所よ」
「図書館?何だいそれは」
「沢山の本が保管されていて、それを読むことができる場所よ。あなたが欲しいって思う本も見つかるかもしれないわ」
「ふーん……。そういえば、よくそんな場所を知ってるね?」
「……向こうの世界に溶け込んだのは向こうの世界の事を知る必要があるから。あなたは私のこの行動を鼻で笑ってたかもしれないけど、ちゃんと意味のある事なの」
「そう……」
チョッキリーヌはスラッシューからの説明に申し訳なさを感じると彼女も彼女なりに頑張っていたのだと感じ取る。
「……そういや、アンタは私に対してそんなに怒らないのね」
チョッキリーヌは今まで散々自分がスラッシュー相手に嫌味な態度を取ってきたと自覚している。いつもスラッシュー相手に棘のある言葉ばかりをかけて、彼女が何かしら失敗すれば傷口を抉るような対応をした。
つまり、スラッシューにとって今の自分は日頃の仕返しをするチャンスなのだ。それなのにスラッシューは何もしてこない。それどころか、こうしてリラックス場所を教えてくれている。
「怒る……。別にそんな事しなくても今のあなたはこれまでの行いが災いして十分痛みを味わっている。これ以上痛ぶらなくても問題は無いわ。それに、あなたは前に私と協力する道を選んだ。だから私だってあなた相手にそれなりの態度で接する。それだけの事よ」
チョッキリーヌはスラッシューの淡々とした言葉に僅かに背筋が凍る感覚がした。何しろスラッシューの言葉を聞いている限り、あの時スラッシューと協力する姿勢を見せなかった場合はもっと酷い目に遭わせるつもりだった……そんな風にも取れる言葉だったからである。
「何?あなたから聞いておいて何を怖がってるの?私は至って普通の事を話してるだけよ?」
「それはわかるけど……やっぱり、アンタは前と比べて凄く変わったね」
「あなたがそう思うならそうなのじゃない?まぁ、少なくとも甘さは無くなったかしら」
スラッシューは変わってしまった。少なくとも、ジョギの手で洗脳されて今みたいな冷酷な戦闘マシーンになる前だったらもっとチョッキリーヌ相手に優しく接しただろう。だがチョッキリーヌが己の過ちに気がついた時、スラッシューは既に洗脳されてしまっていた。
「(もっと早く気づいてたらこんな事にはならなかったのかしらね)」
チョッキリーヌはスラッシューが変わってしまった事を後悔したような事を考えつつ、彼女は早速出撃のために出口へと歩き始めた。それから改めてスラッシューへと話す。
「……アンタの言う通り、図書館も悪くは無さそうだね。それじゃあ早速そこに行くとしよう」
「あら?あなた、随分と素直になったわね。前までなら私から提案されても拒否したでしょうに」
「そうだろうね。ただ、この前アンタと手を組んだあの時から抵抗感が消えたんだよ」
チョッキリーヌは前にスラッシュー相手に頭を下げたことがキッカケでつまらないプライドが消えてくれたのか、彼女を頼る事に抵抗感が綺麗さっぱり無くなっていた。
スラッシューもそんな彼女の変化には気がついており、前と比べると対応は和らげている。それでも、前と比べると冷たい寄りにはなってしまうが。
「そう……。あなたも絆されるようになったのね……」
「別に絆されてるつもりは無いよ」
二人はそうやり取りを続けると、そのままの流れではなみちタウンに存在する図書館へと移動する事になる。その時の二人の距離感は少し前までのギスギスとした物から完全では無いものの、少しは分かり合ったかのように近づく事になった。
そして、それを見届ける男が一人。それはスラッシューを洗脳したジョギである。
「やれやれ。ダークイーネ様が見てるってのに仲良くなっちゃって。まぁ、お仲間内で仲良くなるくらいは許してくれるか。……別にスラッシュー様の方の洗脳が解けてる感じじゃなさそうだし」
ジョギはそう呟くと二人の距離感の変化を彼も感じ取る事に。そして同時に彼の脳裏にある光景が浮かんだのか、少しだけ口元が歪むのだった。
また次回もお楽しみに。