キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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うたの後悔 謎の男登場

キュアウインクに声をかけられた影人は自分と隣にいる少女に触れれば壁も溶かせるレベルの酸が迫っていると知る。

 

「ッ、危ない!」

 

影人は咄嗟に近くにいた少女に心で謝りつつ彼女を抱くと前へと低く跳ぶ。しかも影人は少女が怪我しないように前に跳びながら自分の背中を地面のある方向へと回転。影人は無理な体勢で転がったために背中を打ちつけて痛みが走るものの、おかげで酸の攻撃からは回避できた。

 

「あぐあっ!?」

 

「影人君!?」

 

更にそのタイミングで蓮司の上に存在するキャノピーが酸の液体に溶かされて崩壊を始め、それは瓦礫として落下し始めた。

 

「ッ!」

 

するといきなり蓮司の後ろから一人の青年の影が見えるとそれが蓮司を押し倒すように二人で前へと移動。そのまま瓦礫が落下して周囲に土煙が舞う。

 

「あ、あぁ……」

 

アイドルの目には蓮司が瓦礫に埋もれたように見えたため、絶望が広がる。そんな中、アイドルの目には瓦礫が落ちたすぐ近くに二つの人影が映った。

 

「カイトさん!?」

 

アイドルが見たのは蓮司を救った眼鏡をかけたカイトの姿である。どうやら先程、蓮司を助けたのはカイトであったのだ。カイトはアイドルの言葉を受け止めるよりも先に一緒に倒れた蓮司へと心配の声を上げた。

 

「怪我はありませんか!?」

 

「ありがとう……おお!ワシの若い頃にそっくりだ!」

 

蓮司が助けられたお礼を言った直後にカイトの容姿を見て思わずそう言う。要するに昔も自分はカッコよかったという事を言いたいのだろう。ひとまず無事そうな様子の蓮司を見てカイトは安心した顔つきになる。

 

「大丈夫?ごめんね、こんな怖い思いさせて」

 

「うん……お兄ちゃん、ありがとう」

 

影人の方も少女へと満身創痍の体を動かして彼女の無事を問いかける。すると少女は影人の優しい顔を見て安心したのか涙は止まっており、頷いた。

 

「くっ……ひとまず、お母さんとの合流を……」

 

影人は立ち上がると丁度そこに少女の母親と思われる女性が慌てた様子で走ってくる。

 

「あいり!大丈夫?怪我は平気?」

 

「ママ、だいじょうぶだよ!おにいちゃんがまもってくれたんだ!」

 

「すみません!うちの娘を守っていただきありがとうございました!」

 

「いえ、当然の事をしただけですよ」

 

少女の母親が頭を下げる中、影人は体は痛いもののそれを隠すと謙遜した対応を見せる。そのまま二人はお礼を言いつつ二人でその場から避難し、影人はそんな彼女達を見送った。

 

「影人君こそ大丈夫?凄く強く体を打ち付けてたけど……」

 

「……心配しなくても大事には至ってない。むしろ、あの二人にそれを勘付かれてないのなら役者としては成功だな」

 

「……え?」

 

影人からそんな言葉を聞いて目を見開くウインク。そこにカイトが蓮司と共にいなくなるのを見届けたアイドルも合流。影人を心配する。

 

「影人君、ごめん……私、影人君の友達なのに見捨てるような事……」

 

「……大丈夫。むしろアイドルの判断は間違ってない。若さがあってその場で咄嗟の動きができる俺とお年寄りでその咄嗟の動きが難しい蓮司さん。助けるなら蓮司さんの方だからさ」

 

影人は二人共が助かる確率が少しでも高い方を選ぶのは当然の動きだとアイドルの判断を肯定する。

 

「でも、私……」

 

「今は反省するな。俺に申し訳ない気持ちが出るなら後にしてくれ。今は戦いの最中だぞ。アイドルとして世界を光で照らす覚悟、決めたんだろ?」

 

影人はアイドルの胸にあるアイドルハートブローチへと軽く拳をぶつける。そしてそれは彼女の心に響いた。

 

「ぬう……小賢しい!」

 

「……おい」

 

そんな中、カッティーが苛立つとその言葉を聞いた影人はカッティーへと怒りの目線を向ける。

 

「お前にとって邪魔なのは俺達の方だろ?何関係ない所まで狙ってるんだ?」

 

「ふん。そんな物知った事では無いのですぞ!世界がクラクラの真っ暗になるのなら、誰がどうなっても……のわっ!?」

 

その瞬間、いきなりカッティーの顔面に小石が命中。それを投げたのは勿論影人だ。

 

「ざけんなよ?俺やプリキュアを狙う分には仕方ない。何しろお前らの支配に抵抗してるんだからな。ただ、プリキュアに何の関係も無い一般人の蓮司さんやあの少女のいる方を狙うのは……話が違うだろ!」

 

影人の目がカッティーやマックランダーをギロリと睨むと二人は揃って寒気を感じ、体が震えた。

 

「こ、この自分が震えている……そんなはずは無い!さぁ、マックランダー!あの小僧ごとどんどんやるのですぞ!」

 

するとマックランダーは自身のソーダの上に乗っているアイスをスプーンで掬うとそれを目障りな影人の方へと飛ばす。影人の体は痛みで満足な動きができないためにこれを回避するのは無理だ。ただし、それはこの場にいるのが影人一人だけならの話である。

 

「させない!ウインクバリア!」

 

ウインクがバリアを展開すると攻撃を防御。しかし、マックランダーは回転をしながらアイスをメチャクチャに投げ続ける。

 

「ランダー!ランダ、ランダー!」

 

「良い加減、迷惑行為はやめてよ!」

 

アイドルはその間にバリアの影から飛び出すとマックランダーに接近して回転しているマックランダーへと蹴りをぶつけた。その間に蓮司を避難させた後に建物の影の辺りにカイトが戻ってくる。

 

「アイドルグータッチ!」

 

アイドルがマックランダーからの攻撃が止まって隙を晒したためにすかさず追撃のパンチをぶつけるとマックランダーは連続攻撃を喰らったせいで倒れかける。

 

「あの子達は……しかも、影人君まで……」

 

カイトがマックランダーと戦うプリキュアの二人やさっき一緒にいた影人もいる事に驚きを隠せなかった。

 

「影人君、今のうちに一度下がって」

 

「すまん……」

 

影人が下がろうとするが、体の痛みで上手く動けない。それを見たウインクがすかさず肩を貸す。

 

「影人君、私が支えるから」

 

「ダメだ。俺一人で……」

 

「無茶したらダメだよ」

 

ウインクは影人に肩を貸すと影人はこのままではプリキュアの邪魔になると判断してウインクから差し出された肩を受け入れて避難する。

 

「マックランダー、逃してはならないですぞ!」

 

「影人君に手は出させない!」

 

マックランダーがスプーンを振り上げるとアイドルはそれをさせないと腕を押さえつけた。だがアイドルは少しの間持ち堪えたが、やはり体格の差なのかマックランダーの方が力は強い。アイドルは投げられてしまう。

 

「きゃあっ!」

 

「トドメですぞ!好きな物は最後に食べるタイプの大爆発!」

 

マックランダーは自身の頭に乗っていたさくらんぼの茎を掴むとそれを投げ飛ばす。投げられたさくらんぼは少しずつ巨大化し、更に導火線のように茎が少しずつ燃えて消え始めた。

 

「ッ!?」

 

「させない!」

 

アイドルが慌てる中、影人を安全な物陰に避難させた後にすぐに出てきたウインクがバリアでカバー。爆発を凌ぎ切った。更に爆風に紛れて飛び出したウインクはマックランダーへと回し蹴りを命中させて怯ませるとアイドルへと声をかける。

 

「アイドル!今だよ!」

 

「オッケー!」

 

アイドルはウインクが作ってくれた隙を見逃さずに浄化技のための領域を発動させた。

 

「クライマックスは私!盛り上がって行くよー!」

 

アイドルがインカムを装着するとマックランダーは強制着席。それと同時にアイドルが音楽に合わせて歌い始める。

 

♪決め歌 笑顔のユニゾン♪

 

「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪……プリキュア!アイドルスマイリング!」

 

「「キラッキラッタ〜」」

 

マックランダーは自身に命中したハートによって浄化されるとキラルンリボンが生成。プリルンが付けてポーズを決めた。

 

「プリ!プリルンにも〜っと声を聴かせてプリ!」

 

戦いが終わるとその影響で影人の体の怪我は自動で治る。体力こそ消耗していたが、今回はそこまで大した動きをしていなかったので平気だった。

 

「ふぅ……やっと浄化されたか」

 

「くっ……自分、まさかあんな生身の人間に恐怖を感じるとは……不覚」

 

カッティーはマックランダーが倒された事で撤退し、プリキュアの二人は素体となっていた女性を連れて移動。影人もそれに着いていく形となると近くにあった公園のベンチに座らせる。すると程なくして彼女は目を覚ました。

 

「……んっ」

 

彼女の前にいたのはきゅーたろうであり、隣にはうたの妹のはもりも立っている。

 

「ワン!」

 

「喫茶店のワンちゃん?」

 

「あっ、お姉ちゃん起きた!お姉さん、うちのお店に来てくれたお客さんだよね?大丈夫?お腹空いた?」

 

「あ、ああ……そう?なのかな?……なんかキラキラな夢を見たような……」

 

そんな風に未だに夢から覚めたばかりのような雰囲気の彼女にはもりは袋に入ったクッキーを手渡す。それは先程カイトがサービスとして付けたきゅーたろうをモチーフにしたクッキーだった。

 

「はい!喫茶グリッター特製!きゅーたろうクッキー!これ食べて元気出して!ね、きゅーちゃん!」

 

「ワン!」

 

はもりから渡されたクッキーを見て目を見開く女性。そんな中、彼女がお礼を言うとはもりはきゅーたろうと共に去っていく。

 

「あ、ありがとう」

 

「じゃ、お姉さんまたね!」

 

「う、うん!……また、お店行くね!」

 

女性はクッキーを手にして微笑み、グリッターのお陰でキラキラした時間を過ごせたと感じるとまたお店を訪れる事を心に決めた。

 

そんな中、影人や変身したうた、ななは女性が無事に戻った事を遠くから確認して安心した顔つきになるとうたの考えで街の外れにある海が見える展望台にまでやってきた。

 

「……うーん」

 

「うたちゃん。どうかしたの?」

 

うたは珍しく元気無さそうな顔つきだった。いつもと違う彼女を見てななはうたへと話しかける。

 

「……ちょっと反省」

 

「プリ〜?今日のステージも最高だったプリ!」

 

「うん。でもカイトさんが助けてくれなかったら、れんじいちゃんはどうなってたかわかんない……。それに、影人君の方も反応が間に合ったから良かったけど……間に合ってなかったら二人共……」

 

うたは影人達三人もの人間を命の危険のある状態に晒してしまった自分の未熟さを感じてとても悔しかった。

 

「……さっきも言っただろ?咲良さんの判断は間違ってない。あの時俺が自分で動けなきゃ、どのみちいつか戦闘に巻き込まれて死んでるだろうよ。プリキュアの隣で支えるっていう事はそのくらい重い物だと思ってる」

 

「むしろ、俺がこんな事で巻き込まれるのが嫌だったら俺を仲間から外せば良い。それだけでも俺が巻き込まれるリスクは激減する」

 

「それは……」

 

うたは言葉に詰まってしまう。本当ならプリキュアでは無い影人が生身の姿であんなに前に出るのは間違っている。だからプリキュアの仲間から外れる事を認めるべきなのだと。だが、それがうたにはできなかった。

 

「……私にはそんな事言えないよ。影人君がいないとここまで上手く行かなかったかもしれないし。それに、カイトさんの事もそう。私よりも上手くウェイターが出来るからって、勝手に拗ねて……ありがとうもちゃんと言えなかった」

 

そんな風に落ち込むうた。影人はそんなうたをフォローしようと考える。ななもうたをフォローしようとするが、上手い言葉が見つからなかった。

 

「プリ……」

 

「うたちゃん……」

 

影人が何かを言おうとした時、どこからともなく歌声が聴こえてくる。それうたはその声に釣られて動き始めた。

 

「この声は……」

 

「うたちゃん?」

 

そんなうたを影人やなな、プリルンも少し遅れて追いかけていく。先に行ったうたは暫く歌声の出どころを探してキョロキョロするとその正体を見つけた。

 

そこにいたのは自身の持ち歌である“キミからのEcho”を歌う響カイト本人だったのだ。そして、うたはそれに合わせてその歌を歌った。そのため、カイトはうたの存在に気がつくと彼女の方を向く。それと同時に影人達三人も追いついた。

 

「カイトさんの曲、私……好きです」

 

「ありがとう」

 

「よくここで歌っているんですか?」

 

「うん。ニューヨークに行く前は、いつもこの場所で空に歌聴かせてた。俺の秘密の場所なんだ。ようこそ!」

 

カイトがそう言うとうたはその顔を僅かに赤くする。それと同時にカイトへと言いたかった事を今度はちゃんと口にした。

 

「あの!今日は助けてくれてありがとうございました!」

 

うたが頭を下げる中、影人がななと一緒にいるのをうたの後ろに僅かに確認するとうたへと自然に言葉を返す。

 

「お店の事?良いよ。俺も楽しかったし。……ところで、さっきも思ったんだけど……君の歌。凄く良いね」

 

そうやって優しくうたに話しかけるとうたの心の中でカイトへの認識が変わり始める。そして、カイトは眼鏡を手で少し下にズラすと優しい素顔を見せながら更に続けた。

 

「また会いたくなりそう」

 

その言葉を聞いた後。うたはその場にボーッと立ち尽くしてしまった。そんな彼女に爽やかに別れを告げるとカイトは歩いていく。そして、後ろにいた影人やななともすれ違った。

 

「ッ!!カイトさん……」

 

「……俺からも改めて、ありがとうございました。……色々と」

 

「気にしないで。それと、影人君。君の心にある輝きは本物だよ」

 

そう言ってカイトは二人に挨拶代わりにイケメンがよくやるような仕草を見せると背を向けて去っていく。

 

「……もしかして」

 

「ああ。多分あの感じだと現場にいた生身の俺を見られてる。気づかれてると思った方が良いかもな」

 

「そっか……」

 

影人はカイトが自分達がプリキュアやその仲間と気づいていると判断した上で先程の言葉を言った。恐らく彼なら自分達の事も秘密にしてくれると信じて。

 

「そうだ。うたちゃん!……あれ?どうしたの?顔、真っ赤だけど……」

 

「へぇっ!?」

 

うたはボーッとしている間、ずっと顔が赤くなっていた。それもさっきよりもその色は濃い。そのため、うたは我に返ると慌てて返事をした。

 

「べ、べべべ……別に……」

 

「はぁ……そういう事か。ま、良いんじゃねーの」

 

「影人君まで!?え、え、えっと……あっ!そうだ!影人君もさっきはごめんなさい」

 

うたは慌てて話題を逸らすために影人にも謝罪の言葉を言った。カイトだけでなく影人にも言うべきことがあると思っていたうたはそっちの話をする事で気持ちを逸そうとしたのである。

 

「さっき、カイトさんの事で八つ当たり気味に話をしちゃった事……。その、ちゃんと謝らないとって……」

 

「……別に俺は気にしてない。咲良さんは今回、ちゃんと自分の反省点を自覚してそれをすぐに実行した。それだけでも成長したと思う。だから俺への言葉なんて気にするな」

 

影人にそう言ってもらえてうたはホッと胸を撫で下ろす。ななもちゃんと影人にも謝ったうたに安心し、ひとまずこの話を終わりにしようとした時だった。突如として後ろから風が吹くと二人の人影が現れる。

 

一人はスーツ姿に七三分けの茶髪。赤い眼鏡に黄色いネクタイを付けた無表情の謎の男であった。もう一人はそんな男の隣に並ぶ影人達三人が見覚えのある人物である。

 

「あなた達、プリキュア……ですね?」

 

「よっ。やっぱお前らだったな。……プリキュアとその関係者っていうのは」

 

「「……え?」」

 

「プリ?」

 

「……何でお前がそれを知ってるんだよ……レイ」

 

そこにいたのは影人達三人のクラスメイト……音崎レイであった。彼はニッと笑みを浮かべる。そんな彼に影人達は警戒心を高めることになるのだった。




また次回もお楽しみに。
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