キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ウインクとキッスが交戦を開始した頃、ソウルとスラッシューの方では双方が全力を出すとぶつかり合っていた。
「はあっ!」
スラッシューは火炎弾を生成すると連射。様子見とばかりに飛び道具を利用して中距離から牽制してくる。対してソウルはある手を使って対応していた。
「ウインクの力、ソウルアブゾーブ!」
ソウルはソウルアブゾーブを腕に武装し、それを盾のように上下左右に自在に動かす形で火炎弾を吸収していく。この場合はソウルディフェンダーでも良いのだが、ソウルアブゾーブを使っているのには理由がある。
「だったらこれは止められるかしら?」
するとスラッシューは自身の背後に大量の火炎弾を生成。ソウルを包囲するように弾道がカーブするタイプの一斉射撃を放つ。
「……だったら」
ソウルはそれに対して自身のいる場所にソウルアブゾーブを設置する形で放置。そのまま前に突撃するとソウルを狙っていた火炎弾は彼……では無く、設置されたソウルアブゾーブへと次々と吸収されていく。
「あはっ!面白い手を使うわね!」
ソウルディフェンダーではこんな使い方はできない。攻撃を防ぐ……では無く吸収するタイプの盾であるソウルアブゾーブだからこそできた運用だ。
そして、そんな使い方に笑みを浮かべたスラッシューは同時にその手に炎の剣を生成。遠距離では無く近距離に切り替えてきた。ソウルは突撃しながらそれを受けてソウルアブゾーブを解除。新しく力を使う。
「アイドルの力、ソウルソリッド!」
ソウルはアイドルの力で自在に力を固形化して形成。スラッシューに対抗するための剣を生成するとスラッシューからの剣を受け太刀する。そこからはまるで時代劇のような斬り合いに発展した。
「あら、随分と使い慣れてるわね?」
「お生憎様。俺はこれでも一線級には遠く及ばなくてブランク込みにはなるけど元役者志望だからな」
「ふふっ、そうだったわね!」
ソウルとスラッシューは鍔迫り合いをしてからお互いに少しだけ下がって剣道で言う所の一足一刀の間合いになる。尚、スラッシューがソウルの芸能人関連の話を知っているのは天城としてグリッターに潜入していた期間で少しだけ話題にしたからだ。
「そういえば、スラッシュー。お前あの時やけに芸能界に詳しかったけど、お前のそっちの世界に行こうとした口だったりする?」
「……そんな事考えた覚えすら無いわね」
「……ッ?」
ソウルはスラッシューからの反応を聞いて心の中で何かが引っかかる。スラッシューは今、大事な事に触れた気がする……と。
「覚えすら無い……」
「ほら、考え事をしてる暇なんて無いのよ!」
スラッシューは自身の体に炎を纏わせると全てを焼き尽くす業火の炎と共に突っ込んでくる。
「ッ……」
スラッシューからの突撃にソウルもすかさずソウルメガホンで対応。今度はズキューンの力だ。
「ズキューンの力、ソウルインパクト!」
ソウルは白いオーラを纏ったまま突撃し、二つのエネルギーの塊は激突して押し合う。
「ぐうううっ……」
「ふふっ、流石ソウル。……でも足りないわ!」
スラッシューの顔にはまだ余裕が残っており、ソウルは後ろに押し戻されてしまう。
「まさか、まだ力を隠してたのか?」
「当たり前でしょう?まさか、前回のアレで全力だとでも思ったのかしら?だとしたら甘過ぎるわよ」
スラッシューの言葉にソウルは悔しそうにする。やはりスラッシューの実力は凄まじい。寧ろ、記憶を失ったせいで甘さが消えた分前よりも更に強くなってしまったくらいだ。
「く……」
「さて、そろそろ始めましょうかしら」
するとスラッシューは剣を消滅させるとソウルへと突撃。ソウルはそれに合わせる形で拳をぶつけ合う。そのタイミングでソウルの胸にまた以前のように“ドクン”という鼓動が高鳴る。
「ッ……まただ」
ただ、その鼓動はすぐに引っ込むとソウルはスラッシューと激しく肉弾戦を繰り広げていく。
「ふふっ、もっと……もっと力を上げなさい」
「は?もうこっちは全力なんだよ!」
ソウルはスラッシューの言っている言葉がまるで意味不明と言わんばかりに声を上げる。実際ソウルは全力でスラッシュー相手にぶつかっていた。そのため、これ以上力は発揮できないと言い切る。
「あらそう?でも嘘はよく無いわねぇ……」
「嘘って、お前じゃ無いんだからさ!」
ソウルはあくまで全力なのは変わらないとスラッシューへと声を上げると蹴りを繰り出すとスラッシューは後ろに跳んで回避。スラッシューは両腕を体の右側でエネルギーボールを作り出すように構える。
「ッ!キュンキュンの力、ソウルバレット!」
ソウルはスラッシューからの一撃に合わせるかのように咄嗟に構えを取るとソウルメガホンからの紫のエネルギー弾を作り出す。
「受けてみなさい!」
「だああっ!」
二つのエネルギーはぶつかり合って中央で拮抗する……しかし、今度はスラッシューの方の力が明らかに強い。そのため、ソウルの方の力は押し負けてしまうとそのままエネルギー弾がソウルへと直撃してしまう。
「うぐあああっ!」
ソウルは爆発に巻き込まれると地面に倒れ込む。体の方もダメージからか傷ついていた。
「あら、もう終わりかしら?だとしたら期待外れ過ぎるわよ?」
スラッシューはそう言って彼を煽る。ただ、彼女の言う通りソウルはこの程度で終わってしまう男なんかでは無い。
「……くぅ……。まだだ、こんな物で終われるか」
ソウルはスラッシューの期待通りに立ち上がると彼女と向き合う。そのタフさにスラッシューは微笑む。
「ふふっ。良いわよ、それでこそ私が見込んだだけあるわ」
そんな時、ソウルの胸にまた先程と同じような“ドクン”という音が鳴ってしまう。しかも先程よりその鼓動は強いように思えた。
「ッ、またか……」
「あははっ、ほらほらぁ!もっと抗いなさいよ」
スラッシューはまるで狂気に目覚めた者のようにまた剣を生成して踏み込んでくるとソウルへと向かってくる。それに対してソウルはまた彼女に対応するが、その際、腕から棘のように生やした紫の刃で受け止めた。
「ッ!これ……俺の新しい力なのか?」
もしそうだとしたらまた自分は進化できたという事になるだろう。しかし、ソウルはこの変化にどこか引っかかる。
「(確かにこの力は凄いけど、何か……)」
ただ、とにかく自分の力が強くなったのならスラッシュー相手でも対抗できると考えるとまた二人は肉弾戦を展開していった。
「そうそう、その調子よ。やればできるじゃない」
「まだ余裕そうだな。スラッシュー」
「当たり前じゃない。そんな物じゃ私には届かない。早く新しい力をモノにしなさいよ」
ソウルはまだスラッシューに舐められていると感じると更に力を引き出そうとする。
「だああっ!」
ソウルはバイオレットのオーラを解放するとスラッシューの剣相手に手から生やした牙のような武器で対抗。その動きは普段の防御やカウンター寄りの物では無く、野生のような荒々しいスタイルも取り入れていた。
「はぁあっ!」
「へぇ、スタイル変えてきたのね?」
「ああ……お前に勝つには普段通りじゃ無理なのはここまででよくわかったからな!」
その言葉にスラッシューはまた邪悪な笑みを浮かべる。そして、彼女の中ではこのバトルスタイルの変化を待ち望んでいた。
「(そうそう、その調子よ影人君。君の良い所は自分が良いと思えたスタイルは何でも取り入れて自分の物にできる点。そしてそれはソウルメガホンの力で確認済みだわ)」
スラッシューはソウルと互角に渡り合いつつ、あくまで戦いを平行線で進ませていく。
「だだだっ!」
ソウルはまるで獣のように前屈みになりつつ跳び上がるとスタンピングキックを放つ。スラッシューがそれを優雅なステップで左に避けるとすかさずソウルはスタンプした右脚を軸に方向転換。体を捻るとスラッシューへと体を回転しながら左腕に展開した刃で切り付ける。
「だああっ!」
「ッ!」
スラッシューはそれに受け太刀するが、ソウルの力は更に増しているのか少し押されてしまう。
「良し、行ける!」
「甘いわ!」
するとソウルの真上から炎の剣が降り注ぐ。それを受けて彼は後方へと宙返りしつつ飛び退く。
「反応早いわ……ねっ!」
スラッシューはすると攻撃パターンを変化。近接戦では無く時間差で放つ火炎弾や炎の剣を主軸とした飛び道具主体の攻めに変えてきた。
「(さぁ、影人君。この変化に対応しなさい。そうすれば、あなたの中に蓄えられているあの力は更に共鳴して強くなるわ)」
ソウルはそれを見て火炎弾や剣を腕の刃で弾きつつあったが、スラッシューは絶え間無く攻め続ける。
「ッ!このままじゃ不利か……なら!」
ソウルは再度“ドクン”という鼓動を昂らせつつ、目をバイオレットに一瞬だけ発光させる。そして同時に手を翳すとバイオレットのエネルギー弾を空中に生成。自在に操るかの如く放つ。
「はあっ!」
エネルギー弾と火炎弾はぶつかり合うとそれぞれが相殺していく。更に剣が飛んでいくとソウルはそれに対しては再度ソウルソリッドで作り出した剣を構え、全て受け流す形で弾きつつカウンターの斬撃波を放つ。
「ッ!くうっ……」
スラッシューはソウルの動きに思わず面食らうと驚いたような目を向けていた。
「(影人君の事だから対応するとは思ってたけど、まさか反射までやってくれるなんて……。これだからあなたは私が期待するに足りる男なのよ!)」
「また新しい力……何でだ。さっきから俺の体に力が溢れ出して仕方ない」
「良いじゃない。その力があれば私を振り切れるかもよ?」
「ッ……そうだ、今はこんな事やってる場合じゃ……」
ソウルはスラッシューにそう言われてようやく自分がスラッシューの足止めの思惑にハマっていたのだと認知する。
「だったら俺の新しい力も上乗せしたこの技で一気に終わらせる!」
ソウルはソウルメガホンを取り出すとダイヤルを白と黒に合わせる。そしてそれは彼の単体で出せる最高出力の攻撃用の技だ。
「良いわ。どっちの力が強いか……勝負してあげるわよ」
スラッシューはそれを見てほくそ笑むと両腕を上に掲げると凄まじいエネルギーが爆炎玉として濃縮されていく。これは前のスラッシューが使っていた最強技に当たる物だ。
彼女はブラフとかでは無く本気でソウルへと攻撃をするつもりらしい。そして、スラッシューのエネルギーチャージが完了すると同時にソウルはメガホンを正面に構えた。
「二人の力、ソウルスクリュー!」
「はああっ!」
その瞬間、白と黒の力は一気に放出されると螺旋状に絡み合いながら凄まじいエネルギー波へと変わっていく。それに対してスラッシューも自身の全力を込めた爆炎玉であるため、その内部に詰まったエネルギーは計り知れない。その二つがぶつかると最初はそのパワーが拮抗していった。
「「はぁあああっ!」」
二人が全力を出すと少しだけ双方の攻撃が押し合う。だが、拮抗していたのは最初だけ。ソウルの体にバイオレット色の禍々しいようなオーラが出てくるとそのパワーが上乗せされ、スラッシューからの全力攻撃を粉砕。そのままスラッシューへとエネルギー波は迫っていく。
「ッ!?うわぁああああっ!」
スラッシューは攻撃に呑み込まれると思いっきり後方へと吹き飛ばされていく。それは丁度図書館のある方角だった。一方のソウルは禍々しいオーラが消えると全力以上に力を出したからか息切れする。
「はぁ……はぁ……。やった……のか?」
ソウルは今の発言が基本的にやってない時のフラグになるのはわかっていたが、そう言わずにはいられなった。何しろ、あれだけ凄まじい力を真正面から受けたのならスラッシューでもタダでは済まない可能性が高い。
そう考えるとソウルは彼女を暫く復帰できない程度には倒していると信じたかった。
「……スラッシューは戻って来ない。だったら……行くか」
ソウルはこれ以上仲間を待たせられないと言わんばかりに急いで図書館の方へと向かっていく。しかし、彼が図書館の方に向かった直後。エネルギー波が飛んでいった直線上から少し脇に外れた地点では体が傷つきながらもまだ元気な様子のスラッシューがいた。
「はぁ……はぁ……。流石に今のはヤバかったわね。咄嗟にエスケープしてなかったらどうなっていた事やら」
どうやらスラッシューはソウルの予感通りに生き残っていたのだ。実はスラッシューが攻撃に呑み込まれた直後、彼女はダメージを受けながらも手を横に突き出すとそこから炎の鞭を召喚。
それを近くの建物の柱へと巻き付かせるとそれを支えに自身の体を無理矢理横に移動させ、技の威力の半分くらいの被ダメージで済ませたのだ。
「……でも、瞬間的にとはいえあの子は私を上回った。……これだから私はあの子が欲しいのよ。あの子だったらどんな力だって受け止めてくれる器になる。ダークイーネ様が見込んでいるのもその器ありきの事。絶対に物にするわ……」
スラッシューはソウルの、影人の力に改めて舌を巻く。そして、彼となら良いパートナーになれる。彼女はそう信じて疑わなかった。
「……まぁ、何で引き摺ってでもパートナーになりたかったのかは覚えてないしわからないけどね」
スラッシューはそう呟くと早速ソウルの事を追いかけていく。やはり彼女は大事な事を忘れてしまった。影人を欲した理由こそがスラッシューにとって本当に必要な物でもあったのだが……。彼女はそれをもう覚えていない。
それはさておき、ソウルとスラッシューの移動によりこうして場面はまた図書館の方へと戻っていく事になるのだった。
また次回もお楽しみに。