キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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メロロンが封印した物 彼女の誕生秘話

影人とメロロンがカプセルの中に閉じ込められてから一夜が明けた。そんな時、メロロンが閉じ込められたカプセル内部で彼女は目を覚ます。

 

「……メロ……。ここは……」

 

メロロンが周りを見渡すとそこは光の無い暗闇の世界であり、紫の禍々しい空気が不気味に辺りを包んでいた。一応視界自体は確保されてはいたためにメロロンから周囲の状況はわかる。ただ、一人ぼっちで孤独な世界に閉じ込められてしまっているので心細いことは変わらない。

 

「ここはどこなのメロ……」

 

メロロンは一人ぼっちの世界だとわかってはいたが、もしかすると誰かいるかもしれないと考えて必死に他の人がいないか探す。

 

「メロ……こんな時、影人がいてくれたら……」

 

しかし、メロロンの脳裏に浮かんだのは影人も自分のせいで暗闇の空間に閉じ込められていく瞬間だった。

 

「メロロンのせいメロ……メロロンのせいで、影人が閉じ込められて……こころにも悲しい思いをさせて」

 

メロロンは己を責めていた。影人を巻き込んでしまったのは自分だと、そして……メロロンはある事実を脳裏に浮かべる。

 

「そうメロ……。ハートキラリロックが言ってきたことは何も間違ってないメロ。メロロンが封印した本当に一番大切な物……。それは、ねえたまとの未来じゃ無くて……」

 

ねえたま……つまりプリルンとの未来。メロロンが封印したつもりだった彼女の大切な物だ。ただ、現実は違った。メロロンが本当に封印した一番大切な物……それが心の奥底で一番の願いとして根付いてしまった事だったのだ。

 

「助けて……ねえたま……助けて……影人」

 

メロロンは一人孤独の世界で泣き続ける。自分のやってきた事に後悔の念を募らせながら。

 

そして、場面は変わりはなみちタウンの出張所にて。そこではうた、なな、こころ、レイの四人とうたが家から連れてきたプリルンがやってきていた。

 

「メロロン!メロロン!」

 

プリルンは出張所に到着するなり、早速メロロンの閉じ込められているカプセルの方に飛びつくと必死に呼びかける。だがやはり反応は無い。それを見てからレイが田中へと質問した。

 

「田中さん、どうでした?」

 

「すみません……レイさんが帰ってからも姫野さんやカッティン、ザックリンと一緒に色々試してはみましたが……」

 

やはり何も有効な手立ては見つからなかった。昨日レイ達がカプセルを出張所に持ち込んで以降、レイは家の時間ギリギリまで粘って手伝ったが結局上手く行かず。

 

レイが帰って以降もここに住んでいる田中、カッティン、ザックリンはどうにか助ける手段を探し、姫野も夜遅くまでここでそれを手伝っていた。

 

「姫野さんには申し訳ない事をしてしまいましたね。今度、お礼は話しておきます」

 

尚、その姫野本人は今日も今日とてレイの実家が経営しているサウンドプロダクションの方の仕事があるのでここにはいなかった。それはさておき、プリルンは目に涙を浮かべつつメロロンの入っているカプセルに縋っていた。

 

「こころさんの方は大丈夫ですか?」

 

「はい。まだショックは大きいですけど、なな先輩と夢乃ちゃんのお陰で今は落ち着いてます。私の方でも心配とご迷惑をおかけしました」

 

こころは自分のせいで心配をかけてしまったと謝罪。うた達はこれを許し、ようやくこれからの事を話せるようになった。

 

「プリ……」

 

「それで、皆さんが知りたいのは願いを叶える代わりにメロロンが封印した一番大切な物とは何か……ですね」

 

「はい、メロロンが閉じ込められて……影人君まで巻き込まれてしまった事と何か関係があるんじゃないのかなって思うんです」

 

「プリルンは何か聞いてないんだよね?」

 

「プリ。……メロロンは、教えてくれなかったプリ」

 

それを聞いて一同は暗い顔になる。しかも、プリルンとメロロンがズキューンキッスとして覚醒した当時はプリルンの方の記憶喪失が主な問題として全員で対処していたのでメロロンの方にまで気が回ってなかった所があった。加えて、プリルンは一度記憶喪失をしているのでもしかするとズキューン覚醒当時はメロロンが封印した物がわからないという事自体も忘れていたのかもしれない。

 

何にせよ、ここまでメロロンの問題を先延ばしにしてしまったツケがここにきて回ってきたのだろう。

 

「田中さんと姫野さんもわからないし、勿論カッティンやザックリンにもメロロンは相談していない」

 

「ふむ、そうなるとやはり……知っていそうなのは女王様くらいですね」

 

最終的には女王様ことピカリーネに話を通すという形になり、早速アイドルハートブローチとプリルンのリボンを使ってピカリーネを呼び出した。

 

『そうでしたか、メロロンがそんな事に……。しかも、影人まで巻き込んでしまったと』

 

ピカリーネはうた達から事の顛末を聞き、情報を共有が終わると早速田中が問いかける。

 

「女王様は以前、いつかわかる時が来る……と」

 

『えぇ。……しかしこれ以上、内緒にするわけには行きませんね。メロロンが伝説のハートキラリロックに何を封印したのか……』

 

ピカリーネはできるならメロロンの封印した物は言いたく無さそうな様子だったが、もうこれ以上は隠しても仕方の無い事のために話す事にした。

 

『……メロロンがハートキラリロックで封印した物。……それは、影人の本来持っているキラキラです』

 

その言葉を聞いて一同は目を見開く。そして、同時に何となくだがあのタイミングでいきなりメロロン、そして影人までハートキラリロックの呪いにかかってしまった事に納得が行った。

 

「あれ?でも確かメロロンって、その影人君のキラキラっていうのが自分の封印した物っていう自覚が無かったけど……それってどうしてですか?」

 

『それは、メロロンがハートキラリロックを封印した際に頭の中で自分が封印する物として浮かべていた大切な物と心の奥底で思っていた大切な物で違いがあったからです』

 

それは、メロロンにとっての大きな誤算。ハートキラリロックに封印した物が自分が思っていた物と違ったのだ。そのため、自分がしてはいけないと思っていた行為が実は規約違反にはならず。逆に自分がやりたいと思っていた事が規約に引っかかる内容だったのだ。

 

「その、メロロンが頭の中で考えていた封印する物っていうのは?」

 

『それは、プリルンとの未来……いえ。厳密に言えばプリルンだけで無くうた、なな、こころ、影人……。自分の事を友達として見てくれている人皆とお友達になりたいという未来です』

 

「なるほど、だから友達という単語に過剰反応してはそういう関係になるのを嫌がったのか」

 

「でも、確かメロロンがキュアキッスになった頃は友達という単語に過剰反応まではしてなかったよね?」

 

『えぇ。それはメロロンが自分の望む未来がまだボンヤリとしか描けなかったから……という点が大きいのだと思っています』

 

ピカリーネからの言葉に一同は改めて真剣な顔つきになる。それからピカリーネは更に説明を始めた。

 

『メロロンはハートキラリロックへと大事な物を封印した時はまだプリルンとの未来というあくまで大まかな認識でしかありませんでした。しかし、あなた達と交流を深める中でメロロンはその未来の中身を強く……ハッキリと思い浮かべるようになったのです』

 

「それがメロロンの言っていた皆と友達になりたい……という事に繋がるんですね」

 

ななの言葉にプリキュアチームの三人は納得が行く。確かにあの時に影人ことキュアソウルが闇の力に侵食される直前、メロロンは自分の気持ちをズキューンになっていたプリルンに吐露していた。自分は皆と友達になりたい。仲良くしたいと。

 

もし友達になるのがアウトだとしたらあの時点で封印が発動していただろう。恐らくその辺りからメロロン本人も違和感を感じていたかもしれない。

 

「女王様、女王様がメロロンの願いを知ってて言わなかったのは……メロロンから口止めされてたからですか?」

 

『ええ』

 

レイの問いかけにピカリーネが肯定すると一同はいたたまれない気持ちになってしまう。特にプリルン、カッティン、ザックリンの妖精三人は泣いてしまっていた。

 

「プリルンのせいで……メロロンは無理してたプリ……」

 

「こればかりは仕方ないだろうな。もし仮に事前に話していたとしたら、プリルンはハートキラリロックを使ってプリキュアとしての力を得る事を放棄した危険もある。そうなっていたら……多分、あの時カッティンダーを止める事はできなかっただろうな」

 

レイが小さくそう呟く。ただ、それでも簡単に割り切れる問題でも無いのだろう。知らなかったとはいえ、プリルンがうたを助けるためにハートキラリロックを使うためにメロロンは自分の気持ちを殺してプリルンの願いを叶えるために自らの未来を捧げたのだ。

 

メロロン本人が一番大切な物の認識を履き違えていた影響で色々と拗れてしまったが、彼女が身を切る思いでプリルンのために我慢したと考えるとどうしてもやりきれない思いになってしまう。

 

「(しかもそれで最悪なのがそこまでして固めたメロロンの覚悟が結果的に無意味だったって事なんだよな……。メロロンの頭ではプリルンとの未来が無いっていう状況だから身を切る覚悟をしないとダメって思って実際そうするんだけど……。現実は違う物が封印されてる扱いだから……)」

 

レイは一人でそう考える。この事はこれ以上言及しない方が良いと考えたからだ。もし言ってしまえばメロロンの覚悟が全くの無意味な物だったという事で話の方向が更に悲惨な方に傾きかねないからである。

 

「メロロンは優しい子なんだよね……。プリルンのために、そこまでしようとしてくれて」

 

「……私、そんな大変な想いをしてるメロロンに一時期嫉妬してたって考えると……。後悔ばかり浮かんできます」

 

ななはメロロンが本当はツンツンしているようで本質的には優しい妖精なのだと感じ、こころの方は影人関連の事でメロロンに嫉妬の感情を向けてしまった事に罪悪感に包まれてしまう。

 

『……メロロンはキラキランドの妖精達の中でも特別な子なのです』

 

それからピカリーネはかつての出来事を思い出す。それはメロロンが生まれたばかりの事であった。

 

『……“世界に闇の兆し現れし時、闇を知る者が伝説のハートキラリロックと共に生まれる”。その言い伝え通りに生まれたのが、メロロンです』

 

ピカリーネの脳裏には他のキラキランドの妖精のようにキラキラの木から生まれたのでは無く、いきなりビッグキラキラリボンにほんの小さな黒い闇の部分が出るとそこから黒い球体が降りてくる場面が映る。

 

そして、その球体の中。ハートキラリロックを抱いた状態で生まれ落ちたのがメロロンであった。

 

「プリ……」

 

「闇を知るって……メロロンがですか?」

 

うたの問いにピカリーネは更に説明を続ける事になる。それはキラキランドの妖精の事にも関係していた。

 

『キラキランドの者は皆、光に溢れていて闇を知りません。闇……。それはキラキラを消してしまう暗い気持ち。メロロンは生まれながらにそれを感じ取り、誰とも分かち合う事無く一人で過ごしていました』

 

メロロンが元々孤独だったのはそういう闇を感じ取れる存在として生まれてしまったのも大きいだろう。自分の周りに協調を求めたとしても闇を知らないから完全に分かりあう事はできず。自分一人だけが浮いてしまっている状況で。

 

そういう経緯があったために彼女は積極的に他人と関わる事はしなかった。自分はこのキラキランドでは異物だとわかっているのだから。

 

『だからこそ、大切な物を失う事の重みも理解できる。……伝説のハートキラリロックと共に生まれる事もそのためでしょう』

 

「そうだったんだ……」

 

プリルンがハートキラリロックの力で願いを叶える際、覚悟を決めるまでが割と早かった。うたを……キュアアイドルを助けるためならうたとの想い出を失っても構わない。……ハートキラリロックを使う際に代償が伴うとメロロンから言われてもプリルンは想い出を封印する方に即決して傾いていた。

 

恐らくそれは、キラキランドの妖精の特性として何かを失ってしまう事の重みを知らない……というのもあったのかもしれない。結局、プリルンはうたとの想い出を封印するという事の重大さ。そして、メロロンもそれと同じだけの代償を伴うという事も本質的にわかっていなかったのだろう。

 

「どちらにせよ、ここまではあくまでメロロンの頭の中で失った物だと勝手に錯覚していただけの事象の話だ」

 

「ッ、そっか……ここから!」

 

既にお腹いっぱいになるような内容量だが、まだこれはあくまでメロロンと影人がカプセル内部に閉じ込められてしまうという事態に繋がる物では無い。ここからがある意味本題だ。

 

「それで、本当にメロロンが封印していた事……影人のキラキラと言いましたね。それはどうしてそうなったんですか?」

 

『それは……。メロロンがこの世界で最初に出会い、自分の力で助けたいと思えたのが影人だったから……でしょうね』

 

ピカリーネがそう話を始めたのと時を同じくして。影人はカプセルの中におり、周囲を見渡していた。

 

「ここは……光の無い闇の世界って所か?何で俺までこんな物に巻き込まれたのかはわからないけど……取り敢えず、脱出できるか試してみるか」

 

影人はアイドルキラキラブローチを使ってプリキュアへの変身を考える。……しかし、何故かブローチは見つからない。

 

「あれ?ブローチはどこ行った?」

 

それから少し探したものの、どこにも無い事から影人はある事実を察する事に。

 

「くっ、気絶した間に無くしたのか……それともそもそもこの空間では使えないのか……。どっちもありそうだな」

 

そう思ってふと周囲を探していると割と近くにブローチは落ちていた。その事実に影人はホッとする。

 

「っと、意外にすぐ近くにあった。これを使ってさっさと……」

 

だが、その瞬間。ブローチからいきなり闇の力が溢れ出すとそれがブローチを取り込むような形で人型へと変化していく。

 

「ッ!?何だよ……これ……」

 

そして、影人の前に現れたのはまるでキュアソウルのような戦士の姿だった。いや、厳密に言うとキュアソウルと比べるとカラーリングは黒の割合が多く。キュアソウルを禍々しくしたような姿である。そして、同時に影人は何となく目の前にいる人物に覚えがあった。

 

「嘘……だろ。お前はまさか……」

 

「久しぶりだなぁ。……俺の名はブレイク。お前がキュアソウルに変身する前に一時的に変身していた者だ」

 

そこにいたのは影人がキュアソウルに変身できるようになる前。スラッシューの手によって闇堕ちさせられた際に自分が変身していた姿であった。




また次回もお楽しみに。
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