キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人がブレイクと対面している頃、ピカリーネから話を聞いていたうた達の話は次の話題……つまり、メロロンが本当に封印してしまった物。影人のキラキラについての話となる。
「影人君のキラキラを封印してしまったのはメロロンが自分の力で助けたいと思ったのが影人が初めてだったから……ですか」
『ええ』
「確かにメロロンはカゲ先輩に懐いていた所はありましたけど……。にいたまっていう特別な呼び方してましたし」
「そうだよね」
メロロンは影人相手にプリルンと同じかそれ以上の信頼を寄せていたのは間違い無いだろう。そうでも無ければ彼だけ特別扱いなんてしない。
『メロロンにとって、影人はこの世界で初めて会った人間で頼れる存在。……そして、闇を知っていて尚且つ親近感が持てる人だったのは間違い無いと思います』
「影人が闇を知っていて、メロロンにとって親近感が持てる。……つまり、アイツのキラキラが無いという話に繋がるわけですね」
影人はこの街、はなみちタウンに来た当初……いや、遡ると数年程前から自らの力では芸能界に通用しないと痛感して絶望した影響で自らのキラキラを見失ってしまった。そして、それはメロロンと初めて出会った時もそうだったために闇を感じられるメロロンにとって彼の側は割と居心地が良かったのだろう。
「それに、メロロンが初めてこの街に来た時は姉と慕うプリルンが側にいなくてかなり不安だったと思う。だから、余計に影人君に助けられた事がメロロンにとって大きな意味があったのかも」
何にせよ、メロロンはそれ以降影人に懐くようになった。それこそ、プリルンと同じかそれ以上に影人との時間が彼女にとって大切な物になって行ったのだろう。
『メロロンは影人と過ごしている内に、彼の事を沢山知っていきました。勿論、影人にはキラキラが無いということも』
影人のキラキラが無い事を知ったメロロンが取った行動。それはメロロンが影人のキラキラを取り戻すという決意だった。それは今すぐで無くとも良い。この先の未来。どれだけ時間が経ったとしても絶対に取り戻す。メロロンの決意にはそう言った意味も含まれていたのである。
そんな中で、運命の時が来てしまった。ハートキラリロックの使用とキュアキッスへの覚醒の時である。
『メロロンはプリルンの意思を聞いて、自分もプリルンのためにハートキラリロックを使う覚悟を決めました。そして、ハートキラリロックを使った二人はそれぞれの大切な物を封印。メロロンはプリルンや影人との未来を封印……したはずでした』
メロロンはプリルンの願いを叶えるために自分の一番大切な物を封印。それと引き換えにキュアキッスの力を手に入れた。……しかし、その時点でメロロンにとっての一番大切な物は……プリルンや影人との未来では無くなってしまっていたのだ。
『ハートキラリロックで願いを叶える瞬間。メロロンにとっての一番大切は……恐らくこの時点でプリルンと影人の二人の事から影人の事だけになってしまったんです。頭の中では二人を同列に扱っていても、無意識の間に影人の方の優先度を上げてしまった。私はそんなメロロンの心境の変化が今回の事を引き起こしたと思います』
メロロンがこの時点で影人の方の優先度を高めたのは当時彼のために残した手紙からも想像する事が可能だ。
「そういえば、後からメロロンがキラキランドに行く前の手紙を影人君から見せてもらったけど……」
「うん。その時点でメロロンは影人君の事、友達として認めていたよね。それに、影人君のキラキラを取り戻すこともメロロンは望んでて……」
この直前に手紙として自身の願いを残していたというのもメロロンの気持ちの強さがそちらの方が優先度が高い……という風にハートキラリロックは認識してしまったのかもしれない。
「どちらにせよ、影人のキラキラの方がメロロンにとって一番大切な物として認識が変わってしまったんだな」
『それと、皆さんには……ハートキラリロックによって封印された物が影人のキラキラだと認識する事ができるチャンスが一度だけありました』
「「「えっ!?」」」
まさかの女王からの言葉にうた達女子三人組は驚きの声を上げる。それを聞いて田中はある結論に至ったのか声を上げた。
「ッ……まさか、影人さんの力が一時的に失われてしまったのは……」
「あー……。何でアイツの持ってる力が急に失われたのかと思ったらそういう事か……」
「プリ?どういう事プリ?」
プリルンが首を傾げる中で、レイも田中と同じ考えにまで到達できたのである事実を伝える。
「プリルンは記憶喪失で忘れたタイミングだったんだけど、実はパワーアップしたカッティンダーからライブを守るために戦っていたあの時……アイツはライブ技を使ったんだけど、その技の威力がいきなりガクンと落ちた事があったんだ。しかもその直後から暫く……具体的にはザックリンを助けるあの時までだな。その期間の間、アイドル・ウインク・キュンキュンの力が使えなくなったんだよ」
それを聞いてうた達は納得が行く。確かに当時、影人は急にアイドル達初期メンバー三人の力がいきなり使えなくなった上に一時期は変身さえも維持できなくなるくらいに影人の力が落ち込んでしまった時があったのだ。
「そっか、ハートキラリロックにとってはあれもカゲ先輩の持ってるキラキラですもんね……。プリルンの時は既に持っている物はその場で封印されていましたし、そう考えるとカゲ先輩がその時持っていた分の私達が分けたキラキラは全て使えなくなってしまったという事でしょうか」
「うん。やっと全ての謎が繋がったって感じだと思う」
「あっ。だとしたら影人君があの時その場で封印されなかったのはもしかして……」
ななはある事実に思い至ると今度はピカリーネがななの言葉に反応する形で補足説明を話す事に。
『ええ。ななが思っている通り、影人があの場ですぐに封印されなかった理由はメロロンが封印したと思い込んでいたプリルン、影人との未来と理屈は同じです』
「つまり、まだその時点では影人のキラキラというのをハートキラリロックは具体的に知らなかった……というよりはわからなかったんだろうな。何しろ、アイツ自身も明確に自分のキラキラについて理解できて無かったし」
当時はハートキラリロックにとっても影人のキラキラが何なのかわからなかった。だからこそ既に持っていたキラキラを全て消す方向で制裁を発動したという事だ。ただ、実際はそれとは関係ない所で影人のキラキラは戻った。だからこそ今度は確実に彼のキラキラを封印する方向で動いたのだろう。
どちらにせよ、ハートキラリロックによる封印が発動した当初に影人に起きた事象はメロロンが封印した物が影人の持っているキラキラという事に繋がるヒントだったのは間違い無い。
「……そして、メロロンは自分が封印した物が影人のキラキラだったにも関わらず……影人のキラキラを取り戻す手伝いをしてしまった」
『えぇ。そして、影人はキラキラを取り戻してしまった。周りの人と手を繋ぎ、眩い光を発せられるという他の人とは違うタイプのキラキラを持った影人を封じ込めるために……ハートキラリロックが選んだのは彼その物を封印するという事でしょう』
影人のキラキラが他人と一緒にいて手を繋ぐ事で発動するタイプの物だとしたら、対処として有効なのは彼の持っているキラキラを奪い取った上で物理的に周りと一緒にいられないように隔離してしまう事。
こうして、影人はカプセルの中にその身を封印されてしまったというわけだ。
「そうだったんだ……」
「それで、メロロン本人がカプセルの中に封印されてしまった理由の方は何だろ。この感じだとメロロンが閉じ込められる理由がわからないな」
レイは影人の方が捕まるのはわかるが、メロロンの方がこうなってしまう理由の方がわからなかった。そのため、田中が自身の予想を話す。
「それは恐らくですけど、影人さんがキラキラを取り戻す一番の鍵になったのがメロロンだから……でしょうか。メロロンが影人に関わった影響で影人がキラキラを取り戻してしまった感じでしょうし、仮に影人がハートキラリロックからの脱出に成功した時のための保険として彼女も封印してしまったのかなと」
影人が割と何でもありな万能人間だという事はハートキラリロック側もメロロン内部から見ていてちゃんと理解しており、そのため影人が何かしらの方法で内側からカプセルから脱出に成功するパターンもあり得ると思ったのだろう。
だから万が一脱出されてしまったとしても再び彼がキラキラを取り戻せないようにするため、一番貢献していたメロロンも一緒に引き離したというべきだろうか。
「そんな……折角カゲ先輩が……活き活きとした姿を取り戻せたのに……そんなのあんまりですよ!それに……そのせいでメロロンが友達を作れるのに作れない状況ができて……」
こころは残酷な現実を思い知らされて声を上げる。そして、それはうた達も同じだ。幾らプリルンの願いを叶えるためとはいえ、ここまでの事をしなくても良いのではないかと考えるのは自然だった。
「プリ!プリルンは、プリルンはメロロンも影人も助けたいプリ!それから、メロロンには皆とお友達になってほしいプリ!」
「私だって、カゲ先輩の事を助けたい!それからカゲ先輩には……キラキラを持っててほしい!やっと絶望から立ち直れたのに……このままなのは絶対にダメですよ!」
こころとプリルンは閉じ込められてしまった二人に戻ってきてほしい。そして、ハートキラリロックのせいで失ってしまった未来を取り戻してほしいという気持ちが強かった。プリルンがハートキラリロックの呪いを打ち砕く事ができたのだから理論上は可能なはずである。
「私だって、二人を助けたい!メロロンとはお友達になりたいし、影人君にはキラッキランランになってほしい!」
「女王様、二人を助ける方法は無いのでしょうか?」
ななはピカリーネなら何か解決方法を知っているのではないのかと考えたため、彼女へと何か案が無いか問いかける事に。ただ、彼女からの答えは芳しく無かった。
「……ごめんなさい。それは私にもわからないのです」
「……そうですか……」
「勿論俺達だってこんな状況のままではいたくないのは一緒だ。だから、俺も、田中さんも。カッティンもザックリンも……姫野さんも夢乃ちゃんだって……。できる事があったら何でもする。プリルンだって助けられたんだから助け出す鍵はどこかに落ちてるはずだ」
レイは落ち込んだような顔をするななを励ますように声をかける。今は少しでも希望を見せてモチベーションを上げるべきタイミングだ。逆にここで希望を示せないと悪い空気に飲み込まれてしまうだろう。
「二人を助ける手を考えるのは俺達に任せてくれ。プリキュアとして戦えない分、こういう時は俺達が頑張る番だからな」
こうして、レイは田中、カッティン、ザックリンと組んで二人を助け出す方向を考える事になる。その姿を見たななはうたやこころ、プリルンへと話しかけた。
「……私達も、二人のためにできる事を探そ」
「ななちゃん」
「レイ君達だけに頑張らせたらきっとダメ。助け出す案を考えるのはレイ君達の仕事だとしたら、私達は助ける手段が見つかるまでの間に少しでも二人に声を届けられるようにしよう」
「そうですね!そうすればきっとお二人は希望を持ってくれるはず!」
「うん、そうと決まれば早速行動だね!」
「プリ!」
こうして、うた達は二人を助けるためにそれぞれが行動を開始。この状況を解決しようとするのだった。
同時刻、チョッキリ団アジトにて。そこではチョッキリーヌがダーツを投げており、既に四本程が刺さっていたもののまだ一発もど真ん中は取れていなかった。
「ここ!」
ただ、五本目でようやくど真ん中に命中。チョッキリーヌはど真ん中を取れた嬉しさからか笑みが漏れる。
「ふふっ、やったね!」
「お見事よ、チョッキリーヌ」
チョッキリーヌが嬉しそうにする中でそこにやってきたのはスラッシューであった。彼女はその後ろにフードの男を一人連れてきており、チョッキリーヌは見た事ない男に目を細める。
「スラッシュー。……その後ろの男は何者なんだい?」
「この子?ああ、そういえばチョッキリーヌは知らなかったわね?紹介するわ」
それからチョッキリーヌがそのフード男を前に出すとそれは前々からこっそりとチョッキリ団に所属していたジョギであった。そして、このタイミングでようやくチョッキリーヌと顔合わせしたのである。
「どうも、初めまして。チョッキリーヌ先輩。……僕はジョギ。ダークイーネ様イチオシの新人ですよ」
ジョギは冷静な様子でチョッキリーヌへと話しかける。そんな彼を見てチョッキリーヌは声を上げた。
「スラッシュー、まさかと思うけど」
「ええ。私の部下よ」
「ッ……」
チョッキリーヌはいきなりズカズカと入り込んできたジョギへと警戒心を露わにしたのか顔つきが歪む。加えて、自分の知らない間に部下が増えていたスラッシューへと対抗心がまた僅かに燃える。
「ダークイーネ様の……」
「部下がいなくなってお困りでしょう?それに、スラッシュー様とあなたはまだ折り合いが悪そうですし。仲介役くらいはいても良いんじゃないんですかね?」
「別に、今はそんなに揉めてるわけじゃ……」
「まぁまぁ、そう言わなくても良いじゃないですか」
ジョギはまるでチョッキリーヌからの弁明を聞く様子は無く。むしろ済ました顔のまま彼女の持っていたダーツを一本手に取った。
「折角命令できる駒が増えたんですよ?少しは喜んでも良いのでは?」
ジョギからの掴めないキャラにチョッキリーヌはすっかりペースを乱されており、彼女からのジョギへの警戒心は下がらない。
「ま、今日は僕に任せてくださいよ。極上の真っ暗闇を……お約束しますから」
そう言ってジョギはダーツを投げるとそれもど真ん中に命中。しかもその衝撃でチョッキリーヌが先に命中させていたダーツを全て落とさせてしまうのだった。
「ッ……」
こうして、チョッキリーヌとの初顔合わせが終わったジョギは早速街へと出撃していく事になる。
また次回もお楽しみに。