キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
時間を遡り、ジョギがダークランダーを召喚する少し前の事。カプセルの中に閉じ込められていた影人は自身が闇堕ちした姿であるブレイクと出会っていた。
「……お前、何でいきなり」
「答えは簡単だ。……ここが光が届かない闇の世界だからな」
光の届かない闇の世界。影人は何となく頭の中でわかってはいたが、改めて聞いて納得はできた。
「それで、お前は何で出てきた?」
「当然、俺を止めるためだ」
影人はブローチが無い状況下で超人的な力を持つ相手と戦わないといけない事に苦い顔つきをする。
何しろ、先程ブレイクが出てくる際にブローチは彼の内部に取り込まれてしまったのだ。これでは影人はプリキュアへの変身ができない。
「ッ……どうやって勝てば」
このまま生身でやり合っても勝てない事は影人も承知している。そのため睨み合いを維持しつつどうにか勝てる方法を探していた。
「……どうやら、何か勘違いしてないか?」
「は?」
「別に俺はお前の事を力で捩じ伏せようとか思ってない」
「だったらどうするんだよ?」
「……ちょっとばかり心から壊れてもらうだけだ」
つまり、ブレイクはあくまで物理的では無く精神的に影人の事を痛ぶりにきたらしい。
「心から壊れるって穏やかじゃ無いんだけど」
「じゃあ抵抗してみるか?俺相手に生身で勝てるのならの話だけど」
ブレイクがそう言って影人を煽りにかかる。それは生身の状態では絶対に勝てない事を確信した言い方であった。
「く……」
「そうそう。それで良いんだよ」
ブレイクからの言葉に影人は警戒態勢を解かざるを得ず。構えを下ろすとブレイクは笑みを浮かべつつ指を鳴らした。
するとどこからともなく闇の力が纏われた漆黒の鎖が飛んでくると影人の四肢を拘束。これで影人がこの場から逃げる術も無くなってしまった。
「くくっ。どうだ?プリキュアの力も無くて、自分で輝く事のできない無力さを知って」
「何言ってるんだよ。俺はあの時確かに……」
影人はブレイクの言葉に違和感を感じる。自分は確かに囚われる直前まで輝きを取り戻していた。それなのに何故そのような言い方になるかがわからなかったのである。
「ああ、お前の本来の光を取り戻せていたさ。だが、お前はその力を封印された。あのメロロンとかいう妖精の願いを叶えるためにな」
それを聞いて影人は何となく状況を察した。メロロンがプリキュアとして覚醒する代わりの代償として封印したのは自分の輝きなのだと。
「そうかよ。だからあの時謝ってたのか」
影人は自分が封印される直前にメロロンが謝っていたのをどうにか聞き取ってはいた。そして、その理由にようやく気がつく事になる。
「お前の力はあくまで他人と手を取り合えなければ発動できない脆い力だ。今のお前の周りには誰もいない。所詮お前だけでは何もできないんだよ」
ブレイクはそう言って影人の心を折りにかかる。この絶望的状況で仲間の助けも無いという事を示す事でブレイクは影人を潰そうとしたのだ。
「……」
「お前がアイドルプリキュアとして覚醒できたのはお前の彼女のキラキラありきの力だ。キュアキュンキュンと色が似たのはそういう事だし、お前はプリキュアとしての特性で他のプリキュアの色が使えたのもお前の中にその色が無いからでしかない」
ブレイクの言葉に影人は言い返せない。彼の言葉は実際の所何も間違っては無い。影人が今までプリキュアとして戦ってこれたのはアイドル達五人が自分の輝きを分けてくれただけに過ぎない。
最初にブレイクから浄化した時にキュンキュンの光で変身のための土台を作り、そこに五人が後から力を入れた事でキュアソウルは五人の力を自在に使い分ける事ができるようになっていった。
「お前を色で例えるなら……そうだな。無色……とでも言った方がわかりやすいんじゃねーのか?所詮他人の力依存で無双していただけなんだよ。お前自身の力なんてこれっぽっちも無いくせに力を手に入れてはしゃいでさ、恥ずかしくないのか?」
ブレイクは口汚く影人の事を罵っていく。こうすれば彼の心は勝手に折れていくと思っているのだ。実際影人は何の反応も示さずに黙り込んでいる。
「へっ、反論できないからって黙ったか。まぁ、そうだよなぁ。お前は昔から何も変わってない。自分に力が付いたなんて大間違いも良い所だ。仲間の力を借りて強がってるだけのお前じゃ、誰も見てくれねぇんだよ」
ブレイクがある程度罵倒の言葉を言い終わるまでの間、影人は静かにその言葉を全部聞いていた。そして、それを言い終わると口を開く。
「……それで、お前の主張は終わりか?」
「……うん?」
ブレイクは影人が全く感情的になっていない事に疑問符を抱くと影人はゆっくりと反論を開始する。
「ブレイク、確かにお前の言ってる事は間違ってなんか無い。結局俺は他人任せの輝きしか使えないんだからな。それに少し前までなら俺は現実を突きつけられて、他人の力を借りているだけの現状が嫌になってしまったかもしれない」
影人はあくまで冷静に、ブレイクからの挑発なんて全く効いてないと言わんばかりだった。
「……でも、今はそうは思わない。この場にいなくたって俺の周りには……俺の事を照らしてくれる仲間がいるって信じられるから」
影人はうた達と出会えてこの約半年で成長した。うた達と出会う前に同じ事を言われていたら確実に自棄になっただろう。ただ、もう今は違う。自分には信じる事ができる仲間がいる。その仲間がきっと孤立している自分やメロロンの元に助けの手を差し伸べてくれるとわかっているからこその言葉だった。
「ほう。あくまで仲間を信じるか。だが、無駄だ。この闇の世界に光なんて届かない。あるのは永遠の闇だけだ」
ブレイクの言葉に影人は動揺する事なくうた達を信じ続ける。それが、今一番大事な事だと思った事だから。
影人とブレイクが向かい合う中で、外の世界ではうたとプリルンの元にメロロンが持っていた本である“キズナのリボン”を読み終わったななとこころがやってきていた。
ちなみに影人の囚われたカプセルはちゃんとこころが持ってきている状態である。
「お待たせ。これ、読み終わったよ」
「えっと、“キズナのリボン”?」
「メロロンが図書館で読んでた本だそうです」
プリルンはそれを聞いてメロロンを助ける方法が書いてあるのでは無いのかと思ったために質問する。
「もしかして、二人を助ける方法が書いてあるプリ?」
「ううん。……でも、メロロンの気持ちについては少し感じられたかも」
そもそもなながこれを読んだのはメロロンを助けるヒント的な物を探すためでもあった。そのため直接二人を救出する鍵がある……というのはあまり期待できないだろう。
ただ、勘違いしてしまったとは言えメロロンが封印したと思い込んでいた物である影人やプリルン……友達と過ごす未来に憧れた理由については何となくわかったらしい。
「……この本にはこう書いてあったんだ。本に出てくる五人の女の子達。歳は中学三年生くらいなんだけど、幼い頃からの大切な友達だった。それこそ中学生になってからも一緒にいるくらいには」
どうやら、メロロンが読んでいたのは友達に関連する本だった。それからななは更に話を続ける。
「でも、彼女達はある日。別々の道を進まないといけなくなっちゃって。自分達の道を進むには離れ離れにならないといけない。そんな女の子達はお別れの日、リボンをお友達の証にしようって約束したの」
中学生、別れ。そう考えると恐らく高校進学によるお別れの時が一番しっくり来そうな内容だったが、そんな事はさておき。ここで出てきたのが物語のタイトルにも繋がるリボンの話だ。
「このリボンは“キズナのリボン”。遠く離れてもずっと一緒の友達の印。重なる想いを繋ぐ……絆のリボンだよって」
女の子達は例えすぐに会えなくなってしまっても、心の中ではずっと一緒にいられるようにどこにでも伸びていく事ができるリボンを絆の証として決めたのだろう。
「メロロンは皆と友達になりたいって気持ちに戸惑っていた。だから、友達との絆の話を読んでみたくなったのかも」
そして、その話はメロロンにとってまだ未知の気持ちである他人と友達になりたいという気持ちを理解するために必要だと思ったために彼女は図書館でこの本を読むようになったとななは推測したのだ。
「プリ!プリルン、絆のリボン欲しいプリ!メロロンに想いを届けたいプリ!」
「でも、メロロンが実際に封印してしまったのはカゲ先輩のキラキラ。それでも上手く行くのでしょうか……」
ただ、やはりここで大きな問題となってしまうのがメロロンが封印した物が彼女の想定とは違う物であると言う事だ。このままでは例えメロロンを救出したとしてもメロロンを真の意味で救う事にはならない。
「……多分だけど、上手く行く……と思うよ」
こころの改めての疑問にななは大丈夫と話す。何故大丈夫なのか。その根拠についてだが……。
「メロロン、話してた。影人君の力は周りの人と手を取り合って輝ける物だって。それって、この“キズナリボン”の話と合わせる事ができると思うの」
「ッ!そっか。カゲ先輩の所にまで絆のリボンが届けば……」
「プリ!皆が仲良しになれるプリ!」
そしてそれが影人の封印されたキラキラを再度復活させる鍵になり得る。これならメロロンが残してくれた“キズナのリボン”というヒントを元に二人を助ける事も可能だろう。
「でも、問題はどうやって届けるかですけど……」
「……きっと届くよ」
「えっ?」
こころが悩んでいるとうたはそう呟く。その言葉を聞いて全員の視線が集まる中、うたは更に呟く。
「重なる想いを繋ぐ、キズナのリボン。……離れていても、想いは……繋がる!」
それからうたは手に持っていたメロロンが囚われたカプセルを日差しが照る空へと翳す。
「先輩?」
「……プリルン」
それからうたはプリルンへと語りかけるように話しかけるとプリルンはその言葉に驚く。
「プリ?」
「……キズナのリボンはきっとあるよ」
「プリ!?」
そして、そのままの流れでうたは歌を歌い始める。その歌が二人の元に届くと信じて。
「メロロン……影人君……。ララララ♪ラ〜ララ〜キズナリボン〜♪」
うたが歌を歌ったその時だった。突如としてプリルンのポシェットに入っていたキラキライトが飛び出すとキュアアイドルの色であるピンクに発光していた。
「プリ!?」
「キラキライトが!?」
それからキラキライトは勝手に宙へと浮かぶとうたは自らの胸に浮かんだ歌を続けていく。
「重なる想いの強さを歌に乗せて〜♪」
「プリ……プリィイッ!」
プリルンはうたの歌を聞きつつ、覚悟を決めたかのように浮かんでいるキラキライトへと手を重ねる。
そして、その瞬間だった。メロロンの囚われているカプセルの内部にプリルンの気持ちが届いたのかキラキライトが出現する。
「メロ……これは……」
メロロンは一人暗闇の中で孤独な状況だったために悲しみに暮れていた。しかし、うた達の想いのお陰なのか光がそこに届いたのである。
「ラララララ〜ララララ〜照らしてみせる〜♪」
そして、同時に影人やメロロンの囚われたカプセルに虹の輝きが灯るとメロロンのカプセルの方が宙に浮いた。
「溢れる思いを残らず伝えるんだ〜♪」
そして、うたの歌によって起きた光に自分達の想いも重ねるようにななやこころもキラキライトに手を置く。
外にいる四人がうたの歌を起点に想いを重ねているとその光は影人の元にも届いており、ブレイクが驚いたような顔つきになる。
「馬鹿な……何でこんな所に歌と光が……」
「だから言っただろ……。皆が光を届かせてくれるって」
影人はうた達が歌を使って自分の元に光を届けてくれた事に微笑むとその心に希望の光が再度強く灯り始めた。
そしてその瞬間、ブレイクの胸から光が飛び出すと影人の手に収まる。それは、アイドルキラキラブローチが変化したアイドルキラキラマイクだ。ブローチの力の方はブレイクが使ってしまっているためにいきなりこちらの方での登場である。
「……皆の光、受け取ったぞ」
同時に影人が自身を捕らえている鎖をあっという間に粉砕。同時に体が順番に変化していく。
まずは影人の体が一瞬だけシルエット化すると直後に上下の服が装着。それから金のエポーレット、ロングブーツ、腰からのローブが次々と出揃っていく。
それから服に差し色のラインが入っていくとグローブ、イヤリングが装着。最後に髪の色、瞳の色が変化した。
「ふざけるな……だったらまた光を奪ってやる!」
ブレイクは自ら輝く力を失ったはずの影人が変身できている事に苛立つと手を翳して紫のエネルギー弾を放つ。しかし、影人はそれを弾いてしまうとそのエネルギー弾は弾かれた先で地面に当たり消え去った。
「ハートをメラッと熱くする……キミと高まれ、キュアソウル!」
こうして、影人はキュアソウルへと変身完了。同時に外から聞こえていた歌や光も無くなっていた。
「ぐ……。だが、さっきの光は所詮一時的な物だったようだな。……本当なら手荒な真似はしないつもりだったが、お前にここから出られるわけにはいかない。大人しくしてもらおう!」
「多分この光は時限式……。だったら、速攻でお前を倒す!」
「「はぁあああっ!」」
こうして、ソウルとブレイクは激突。二人の拳がぶつかり合うとその場に衝撃波が駆け抜けるのだった。
また次回もお楽しみに。