キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
カプセル内部に閉じ込められてしまったソウルと連絡を取ったアイドル達三人。アイドルはダークランダーと交戦しながら、ウインクとキュンキュンは拘束を破ろうとする動きは継続しつつその話を聞いた。
『……キュンキュン、行くぞ』
「はい!」
『3……2……1……送るぞ!』
ソウルからのカウントダウンが終わると同時にソウルとの通信が途切れると同時にキュンキュンの体に一気に力が溢れ出る。
「ッ!ソウル、絶対に助けます!」
同時に彼女は体に力を込めると自らを捕える鎖を粉砕。するといきなり鎖を粉砕できるまでにパワーアップしたキュンキュンにジョギは驚く。
「おいおい、さっきまで鎖壊せるような力は無かっただろ?」
「ええ、悔しいですが私一人ではこれは壊せませんでした!」
キュンキュンの言葉にスラッシューは彼女が何故いきなりパワーアップしたのかを思い至る。
「ッ、キュアソウルの接続能力か」
つまり、ソウルは自らの中にある光をキュンキュンの持つ光に全て転換。通信機を接続のために使うリボンの代わりにしてキュンキュンへと転送したのである。
「だが、そんな事をすればキュアソウルは……」
スラッシューがそう考えた同時刻。ブレイクは先程までやる気満々だったはずのソウルがいきなり変身解除した事に逆に面食らっていた。
「何だと……?」
「どうした?そんなに驚いた顔をして」
「お前、何のつもりだ?」
ブレイクはソウル相手に彼を正面から叩き潰すつもりだったし、実際つい先程まで殴り合っていたはず。なのにソウルはいきなり勝負を捨てたかのような姿勢を見せたのである。
「何のつもりって……ここから出るつもりだよ」
「だからってお前、変身解除だなんてふざけてるのか!」
「ふざけてないよ、むしろこっちは大真面目だ」
「チッ……何でこいつはいきなり……」
影人があくまで平然と話している事にブレイクは攻撃を一時中断して彼の狙いを探る。そして影人はこれを狙っていた。
「(……良し、闇の俺が元なら相手が不可解な事をした時に相手の意図を探ろうとするために様子見すると思っていた。それに、俺が今変身不能って事もわかってないみたいだし……。後は頼むぞ、皆)」
影人はソウルに変身するために必要な光を全て外にいるキュンキュンの一時的なパワーアップのためだけに送ってしまったのだ。つまり、今はもう彼に変身する事は不可能。ブレイクから攻撃をされたら生身で対処をしないといけなくなる。だからこそ、ブレイクがソウルの仕掛けた作戦に気がつくまでのこの時間が勝負所だった。
場面は戻り、外の世界へ。ソウルから光を受け取ったキュンキュンはパワーアップによってオーラを纏うとブローチにタッチする。
「させないわ!」
そこにスラッシューがズキューンの前から一瞬で移動。キュンキュンへと襲いかかった。彼女も何となくキュンキュンに自由にさせたら不味いと感じたのだろう。
「ッ、そう来ると思ってました!」
するもスラッシューが放ってきた右腕による拳を防御姿勢でしっかりと受け止める。
「これは……」
スラッシューはキュンキュンが防御姿勢で堪えた所で基本的なパワーの差で押し切れると思っていた。しかし、彼女はスラッシューの考えに反して攻撃をしっかりと耐えて踏ん張っている状態である。
「ソウルが私に力を分けてくれたんです……。だから、そう簡単にやられるわけにはいきません!」
「チッ……」
スラッシューがそんなキュンキュンに舌打ちする中でキュンキュンは先にタッチしておいた技を一気に解き放つ。
「キュンキュン……レー……ザー!」
キュンキュンは溜めの時間をしっかりと取るとその溜めによって凄まじい火力になったキュンキュンレーザーを放出。その中の八割程をスラッシューへとゼロ距離で命中させる。
「がああっ!?」
スラッシューがその威力に明確にダメージを負うと残っていた二割がウインクを捕える鎖に命中。そのまま彼女の鎖も砕かれて解放された。
「ありがとうキュンキュン!」
「くっ、キュアウインクも自由になったわね……」
「だったらもう一度自由を奪えば良いんですよ。ダークランダー」
ジョギは淡々と話すとダークランダーはそれに応えるように鍵をまた地面に突き刺そうとする。
「ダーク……」
「ううん、もう捕まえさせないよ!ズキューンバズーカー!」
だが、そのタイミングでズキューンがズキューンバズーカーを使用。ズキューンから放たれた強力なエネルギー弾がダークランダーへと真横から命中するとそのまま横倒しにする。
「ラン!?」
「ッ!?」
「ウインク、キュンキュン!」
そのタイミングで三人が揃うと耳にインカムを展開。ライブ技で使う三人による曲が流れ始めた。ただし、今回は浄化技のようなライブ会場では無くあくまでこの場での歌だ。
〜挿入歌 Trio Dreams〜
「「「ウー、レッツゴー!Try, try, trio dreams♪」」」
『Let's sing, let's swing, let's dance, let's bound,Let's smile, let's fly』
「何……何故いきなり。しかも、ライブ会場では無くこの場でだと?」
スラッシューはダークランダーを浄化されると身構えていたが、そうでは無い事に困惑する。
「「「ハート上げてくよ!」」」
スラッシューが困惑する間にも三人の曲は前奏が終わり、三人による歌を歌い始める。
「「「Sing!♪音符に夢乗せて〜♪キミ、あなたのもとへ〜for you!♪もっともっと輝き合えるね〜♪みんな、キラッキラン!♪瞳水晶にいつだって〜♪笑顔映し合おう〜promise!♪」」」
三人による歌が波動を発生させるとそれが影人が囚われているカプセルの中に注がれていく。それを見てスラッシューは目を見開いた。
「まさか、これが狙いなの!?」
「「「キミがいるからパワー、生まれるよ、今日も〜♪Try, try, trio dreams♪」」」
『Let's sing, let's swing, let's dance, let's bound,Let's smile, let's fly』
同時刻、カプセルの中に閉じ込められていた影人の方はブレイクがいつまで経っても仕掛けて来ない影人を見て何かに思い至る。
「ッ……まさかお前……」
「……やっと気がついたか。ああそうだ……。俺はさっき変身解除して以降、今の今まで変身すらできない状態だったんだよ。……そして、この感じだと俺の考えは上手く行ったみたいだな」
影人が笑みを浮かべるとその暗闇の中に三人のプリキュア達が送ってくれた光が届くと再度彼の胸に光が宿る。
影人の狙い。それは、三人に再度外側から光を送ってもらう事だった。ただし、今度はより確実に長持ちするようにライブ技に近い形としてである。
「ただ、外の戦況を聞いて相当ヤバい事を知った時には少し焦ったけどな」
影人は通信機能があるインカムなら外とのやり取りができると信じていた。そして、会話を飛ばせるなら同じ要領で自分の内部にあるキラキラも送ったり受け取ることが可能と読んだのである。とは言え、外が影人の思っていた以上に押されていたために彼は賭けに出る事にした。外のメンバーに自らのキラキラを託す代わりに、外側の状況をすぐに打開してくれる事を信じたのだ。
「俺の信じた通り、アイツらは自分達の事をやり遂げてくれたようで良かったよ」
それを見てブレイクは自分が完全に影人相手にしてやられた事に思い至った。
「くっ……クソ!」
ブレイクはそんな影人を見て怒りに震える。いつまでもしぶとく抵抗されている事に。そして、己の胸の内を叫んだ。
「何でだよ……。もうお前に自分で輝く力なんて無いはずなのに……。どれだけ頑張っても他人頼みの不安定な力しか持てないくせに!」
「……」
「教えてくれよ……。何で俺は輝けないのに……お前は輝けたんだ……。どれだけ頑張っても無駄で、無意味で……俺なんて、認めてすら貰えなかったのに」
ブレイクの心は乱れる。同じ黒霧影人なのにどうして自分とキュアソウルはそんなにも違うのか。彼は悔しさのあまり場に崩れ落ちると声を震わせる。それはブレイクからの悲痛な叫びでもあった。
「……別にお前と俺に大きな差なんて無いよ」
「嘘吐くなよ……。何で自分の光が封印されてるくせに、俺から見たお前はこんなにも輝いているんだ」
ブレイクの瞳にはハートキラリロックの影響で封印されて出ていないはずの影人の銀色のキラキラが薄らと見え始める。影人はそれからブレイクを見下ろすと呟く。
「……やっぱり、お前は昔の俺だ。どれだけ頑張っても認めてもらえなくて、他人に認めてもらうために一人で無茶をし続けてきた俺……」
「ッ……」
影人の言葉にブレイクは悔しそうに拳を握り締める。それから影人は改めてブレイクへと語りかけた。
「……それは俺が周りを信じて頼れたかどうかの違いだ。俺自身はそんなに大きく変わってない」
「大きく変わってない……か。……そんなわけ無いだろ。俺はもっと他人を頼らなかっただろ。自分一人で辛さを背負って、大切な人に対してはとにかく過保護で。他人を信じるなんてやらなかった。今だってそう……」
ブレイクの瞳には涙が流れていく。それはまるで周りを信頼できる人達に囲まれた今の影人を羨ましそうな目だった。何しろ、彼だって同じ黒霧影人だ。だからこそわかっていた。ソウルがここまで強くなれたのは周りの人のお陰だと。
「だろうな。実際こころや夢乃に対しては相当過保護だったのは否定しない。うた達に気を使っていたのもそう。周りを信用しきれなくて、結局俺は自分のやりたいと思える事すら探せなかった」
だが、影人は仲間の影響で周りをもっと信じるようになった。それ以降の影人はやりたい事を見つけ、周りのキラキラに触れていく間に少しずつ自分のキラキラの本質にも気がつけたのだ。
「俺にはそんな事できない。……お前の言う通りだったよ。俺は……卑怯な臆病者だ」
ブレイクは落ち込んだような声色になる。そんな彼を見て影人は歩み寄っていくと手を差し伸べた。
「……お前なら変われるよ」
「は?何でだよ。俺には無理だって。だって俺は闇の……」
「だからこそだろ。例え闇の俺だったとしても……俺は俺だ」
影人はブレイクへとそっと優しく話しかけると彼は影人を下から見上げる。
「むしろ、俺が変わったって思えるのなら……同じ変化くらいブレイクにだってできるよ。だって、俺がプリキュアに変身した時と同じくらい強かったし」
不完全とはいえ影人の変身したキュアソウルと互角以上に戦えていたブレイク。それなら力以外の面だって自分と同じかそれ以上の所に来れると影人は信じていた。その言葉に固かったブレイクの顔つきが少しだけ柔らかくなる。
「……ほんと、変わったよな……未来の俺」
「だから、変わってねーよ」
ブレイクは影人の手を取って立ち上がると向かい合って二人は微笑み合う。
「同じ俺なら変われる……か」
「おう、だから俺と……」
『変わる必要など無い』
そんな時だった。突如としてダークイーネの言葉がその場に響くといきなりブレイクの体が禍々しいオーラに包まれる。
「あ……がぁあ……」
「ッ!?この声は……」
『妾はダークイーネ。ブレイクよ、何を絆されている。お前は闇だ。光り輝くなど不可能。さっさと黒霧影人を呑み込め』
ダークイーネはブレイクへと命令を下すかのように更に闇の力を送り込む。
「ダークイーネ様……俺は……俺は!!」
「おい、しっかりしろ!ブレイク!」
影人がブレイクを心配する中、彼の体は少しずつ禍々しいオーラに侵食されると抵抗する意思は削がれていった。
『黒霧影人、お前には闇の力がお似合いだ。お前も絶望してわかっただろう?光なんて不要だと。自分に光なんて似合わないと。それなのに何故光を欲する。叶わない願いと諦めたくせにみっともないぞ』
ダークイーネがそう言い終わるとブレイクの体から一瞬力が抜けたかのように体がダランと垂れ下がる。それを見て影人は直感した。……ブレイクは完全に意識を奪われてしまったと。
『それにお前は闇の子……メロロンと言ったか。彼女やスラッシューと同じ。闇の力を操るのが相応しい。それにお前はスラッシューと同じ、一度深い絶望を味わって闇に堕ちた者だ。妾はそれを買っているんだぞ?これ以上無い喜びと思わぬか?』
「……悪いけど、それなら買い被り過ぎだ。それに、俺はもう一人じゃない。俺一人で絶望していたあの時と違う」
『そうか。あくまで妾と敵対すると……ならば、もう一度孤独の闇に堕とすまで。他でも無い、過去の自分の手によってな!』
同時にダークイーネがその場からいなくなると再度ブレイクは立ち上がり、影人を睨みつける。ただ、その瞳には先程のようなハイライトは無い。完全にダークイーネに支配された傀儡と化してしまった。
「……ブレイク……かつての俺の姿。過去に囚われて取り残されてしまった俺の闇。……だったら、お前も今の俺のいる所にまで引き摺ってでも連れて行く!それが俺の……俺のやるべき事!」
その瞬間、どこからともなく白と黒の光も飛んでくる。その力も影人の中に取り込まれると彼の体は五人の力で再び輝きを取り戻す。
「……皆、もう一度力を貸してくれ!プリキュア、ライトアップ。キラキラ……ショータイム!」
影人がそう言うとその姿がまたキュアソウルへと変化していく。そして、再び名乗った。
「ハートをメラッと熱くする!キミと高まれ、キュアソウル!」
「がぁあああっ!」
ブレイクは自我を失った影響か、奇声を上げる事しか出来なくなっている状態である。そのため、ソウルは改めて彼と向き合うとその姿を見据える。
「今助けてやる。皆と手を繋いだ、俺の力で!」
同時にソウルは一瞬だけ銀色の光を見せながら再度闇の底に堕ちてしまったブレイクとの決戦を開始するのだった。
また次回もお楽しみに。