キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人が閉じ込められたカプセル内部。そこでは影人が変身したソウルとダークイーネによって暴走させられたブレイクの二人が激突していた。
「がああっ!」
ブレイクは咆哮を上げると両腕に闇の力で集約したナックルを武装。それにより腕力を強化した。
「アイドルの力、ソウルソリッド!」
対してソウルもソウルソリッドで両腕にグローブのような装甲を生成。どうやら、五人から安定した力を供給されたお陰でソウルメガホンが復活。普通に五人の力も使えるようになったらしい。
「ッ、自我を失っても考える事は同じか!」
「がうっ!」
どうやらブレイクは暴走しても彼自身の潜在意識は残っているらしく。あくまで影人の動きをトレースしたような動きをしてきた。
そのため二人は走って行くとそのまま殴り合いに入る。ブレイクが左フックで二連撃放つとソウルはしっかり腕で受け止めて防御。押し返すとすかさず返しの右ストレートで反撃。ブレイクはそれを咄嗟に左ストレートで受けるが、体勢が不十分な分ソウルが力で押し切る。ブレイクはこのままだと不利なので押される勢いを利用しつつ後ろに跳ぶ事でダメージを逃す。
ただ、ソウルは姿勢を低くしながらブレイクが跳んでいる空中での時間の間に接近。着地で体が下がるのに合わせてアッパーカットを放つ。
「があっ!」
だが、これは咄嗟にブレイクがアッパーカットを防御したためにそこまでのダメージにならず。それどころか打ち上げられたブレイクはそれを利用してソウルの背後を取ると右の拳で裏拳を繰り出す。
「甘い!」
しかし、ソウルはこれを両腕を横並びに合わせる形でガード。拳の威力でブレイクの右側に飛ばされたが、しっかりと着地してダメージを抑える。同時に二人は武装を解除すると今度はブレイクが闇のエネルギーを五本のミサイルのような形で生成し、そのまま解き放つ。
「ミサイルか!」
ソウルはそれを見て飛んできたミサイルを回避するために走る。するとブレイクの目が光り、同時にミサイルの軌道がクルリと変化。ソウルの事を追尾する形で飛んでいく。
「なるほど、追尾式って感じね」
ソウルが死角から飛んでくるミサイルを避けつつ動き回る。ただ、ミサイルは中々消滅しない。そのため彼はある手を考えた、
「だったらこの前と同じだ。ウインクの力、ソウルアブゾーブ!」
ソウルの取った手は前に本のミサイルを使ってきたクラヤミンダーの時と同じ。ソウルアブゾーブを使った遠隔での攻撃吸収戦法である。これに合わせてソウル自身がブレイクへと方向転換。彼との距離を一気に詰めていく。
「キュンキュンの力、ソウルバレット!」
ソウルの今いた場所に出てきたソウルアブゾーブの力でミサイルは全て吸収されると消失。同時にソウルはソウルメガホンから生成された紫のエネルギー弾を右腕に生成して構える。
「がう!」
するとそれを見越したのか、ブレイクは手を翳すと自身の前にブラックホールのような闇の穴を生成。それを使って飛んできたソウルバレットの力を吸収し、失わせようとした。
「そう来ると……思ってた!」
ソウルがソウルバレットを使う予定だったのに踏み込んでの接近を選んだ理由。それを見せると言わんばかりにソウルは一気にブレイクに接近。対してブラックホールの能力なのかソウルの体ごとそのエネルギーに吸われ始めた。
「わざわざ引っ張ってくれてありがとよ!お礼にこれでも喰らっておけ!」
ソウルはブラックホールの穴を埋めるかのようにソウルバレットを突き出すとそれは穴にピッタリ重なる。すかさずソウルが自らのエネルギーを流し込むとソウルバレットは爆発。煙がソウルとブレイクの前に出てくる。
「が?がああっ!」
ブレイクはそれに対して直前までソウルが目の前にいた事を加味し、自分ならその場に留まらずに側面や背後を狙うと判断。そのため、咆哮を上げると全方位に衝撃波を放つ。
だが、ブレイクの予想に反して衝撃波を防ぐ音は彼の正面から聞こえた。そこにはソウルディフェンダーを構えたソウルが衝撃波を完全にシャットアウトしていたのである。
「キッスの力、ソウルディフェンダー。……悪いけど、これも読めてるんだよ!」
ソウルはソウルディフェンダーに電撃を纏わせるとブレイクへとシールドチャージという形で体当たりして衝突。彼の体に凄まじい電撃を浴びせた。
「がぁあああっ!?」
ブレイクがダメージに声を上げるとソウルはすかさずソウルディフェンダーから手を離すと同時にソウルディフェンダーを後ろから押し込む形でドロップキックをぶつける。ブレイクはそれによって後ろへと倒れた。
「これでどのくらい入るか……」
ソウルはブレイクの反撃を警戒して少しだけ下がる。対してブレイクはソウルディフェンダーを掴み、投げ捨てる形で引き剥がすとまだまだやれるのかソウルを睨みつけた。
「がうう……」
「見た所そんなにダメージは無さそうだな」
するとブレイクはその体に禍々しいオーラを纏うとソウルへとそのエネルギーを纏ったまま突進。
「力比べか。なら、付き合ってやる!ズキューンの力、ソウルインパクト!」
ソウルは白いオーラを纏い、ブレイクと真っ向勝負と言わんばかりに向かって行く。そのまま二つの凄まじいオーラを纏った戦士はぶつかると力比べを開始。
「はぁあああっ!」
「がぁああああっ!」
二つの力は少しだけ拮抗したものの、最終的にはやはりソウルが打ち勝つ形でブレイクを吹き飛ばす。だが、ブレイクは吹き飛ばされつつ何度か地面にぶつかってバウンドする際に体勢を立て直すとすかさず地面を蹴って再度向かってくる。
そのままの流れで二人はまた肉弾戦になるが、また今度も拳が主体となる。それから少しして、二人の殴り合いは自力の差か出たのか少しずつソウル有利に傾いていく。それに苛立ったブレイクはソウルの足元を狙った足払いを仕掛ける。
「っと、俺ならそうするだろうよっ!」
だがソウルはそれを見切ったと言わんばかりにその場でバク転。ただし、今回は距離を取る目的でやったわけでは無い。バク転の際に上がる脚を利用して完全にガラ空きのブレイクの顎を蹴り上げるとそのまま両手を地面に付けて体を捻るように動かす事でブレイクを真横から蹴り飛ばした。
「ごはあっ!?」
ブレイクが体勢を立て直す頃には下がってたはずのソウルが一気に接近しており、左の拳が迫って行く。
「がう!」
するとブレイクが右腕に盾を展開してそれを止める。ソウルはそれを見るとすかさず左手を開いてブレイクの盾を掴んで逃がさないようにした。ブレイクも咄嗟に盾から放出した電撃で反抗。
「ぐ……二人の力……」
ソウルは電撃によるダメージに耐えながら手にしたソウルメガホンをブレイクの腹に当てるとブレイクはソウルが何をするのか察して抵抗しようとするが、もう遅い。
「ソウルスクリュー!!」
ソウルがメガホンのトリガーを引くと凄まじい威力の白と黒の電撃がブレイクの体を貫くように突き抜けていく。ソウルもその威力の反動でダメージを負ったが、ブレイクの方は体から電撃が現れるくらいの重傷で崩れ落ちる。
「はぁ……はぁ……」
ソウルが息切れしながら立ち上がるとブレイクから僅かに禍々しいオーラが消え始めた。
「……ッ」
「……なぁ、未来の俺……」
ソウルがそれに気がつくとブレイクは多少意識を取り戻したのか、弱々しい声で話し始めた。
「何だよ……」
「お前は信頼できる仲間と出会えたんだよな……」
「……ああ」
「そうか……。なら、俺の存在はもう必要無いな」
ブレイクは寂しそうにそう話す。あくまで自分は闇。そして、本来ならとっくに消えている存在だ。そのため今の黒霧影人には必要無いと感じると生きるのを諦めるかのように呟いた。
「俺にトドメを……」
「それはお断りかな」
「は?……何でだよ……俺みたいなのが残ってたって仕方ないだろ?それに、外に出ないとお前は……」
ブレイクはソウルを外に出すために自分が消えるつもりだった。暴走した状態でソウル相手にここまでやられれば勝ち目が無いと悟るのも無理はない。だが、ソウルはそんなブレイクに消えてほしく無さそうな言葉をかける。
「悪いけど外には出る。でも、このままお前にトドメを刺す気にはなれない」
「何だよそれ……。ならどうするって言うんだ」
ブレイクは困惑したように話しているとソウルは少しだけ考えてからブレイクへと話す。
「……お前が最初俺に対して狙ってた事をするだけだ」
「……は?」
ブレイクが意味がわからないと言わんばかりの答えを返した瞬間にソウルは浄化技のための領域を展開する。
「ッ!?」
「お前に俺のライブを見せてやる」
ブレイクはソウルの言葉に唖然とするが、ソウルは構う事無く浄化技を使用した。
「クライマックスはこの俺!フィナーレ、決めるぜ!」
これによりソウルはインカムを装着するとブレイクは唖然とした顔つきのまま技の影響で席へと強制着席。その後、ソウルの歌が始まった。
♪決め歌 魂の鎖を解き放て♪
「己の力〜♪(my soul!)そんな物はな〜♪(my soul!)鎖を壊し、強くなるためにある♪!君の笑顔を〜♪守るためにな〜♪俺の歌を響かせるから〜♪心燃やせよ魂〜♪……プリキュア!ソウルシャウト!」
ソウルから繰り出された星のエネルギーが着席したまま無抵抗のブレイクへと降り注ぐとその体を浄化していく。そして、ブレイクはソウルが眩しく輝くのを見ながら見惚れてしまう。
「……これが、今の俺の輝き」
そして、ブレイクの体を包み込んでいた浄化の光が消えるとその体は薄く溶けて消え始めた。
「……こりゃあ、俺の負けか。完敗だよ」
「できればさっきの暴走は無い方が良かったけどな。暴走のリスクを抑えるために浄化技ぶちこまないといけなくなったし」
「そんな事は良い。お前、何で俺を……」
ブレイクは浄化技を受けたのにまだ完全に消えていない自分の体を見て首を傾げる。普通なら暴走したままソウルに負けた時点で自分は消滅させられてもおかしくなかった。それなのに、瀕死状態とはいえブレイクは生かされている。その意味が知りたかった。
「だから、さっき言った通り。俺はお前を消したらダメなんだよ」
「それは、闇の自分も必要……そう言いたいのか?」
ブレイクの答えにソウルは頷く。しかし、やはりブレイクは理解できない。自分を生かすことの意味を知りたいのだ。
「俺は、皆のおかげで輝きを手に入れられた。それは間違い無いんだけどさ。……だからって闇の自分を切り離して捨ててしまう……なんて事はしたらダメだと思う。むしろ、お前がいてくれるから俺は俺として輝ける気がするんだ」
「闇の俺が必要……。気持ちは嬉しいが、俺がいたらまた絶望した時に困るだろ」
ブレイクはソウルを心配していた。自分が残る事で、ソウルがまた絶望するような事態になった際にその影響が大きくなるのではないのか。そうなるくらいならいっその事闇なんて捨てた方がマシ。そういう意味を込めて話す。
「別に絶望ぐらい誰でもする。……俺の場合はその絶望が大き過ぎただけだ。逆に、暗い感情無しじゃ……人は生きてはいけない。俺は、お前という存在から目を背けたらいけないんだよ」
ソウルの話を聞いてブレイクはようやく納得できた。そして、同時に自分では目の前にいるソウル……今の黒霧影人には絶対敵わないと感じてしまう。
「闇から目を逸らさない……か」
「だから良い加減戻ってこい。俺には闇としての側面も必要なんだ」
ソウルから言われてブレイクは観念したかのように溜め息を吐くと胸から蝶々結びに結ばれた暗い色のリボンを出してその中に取り込まれていく。
「……はぁ。こうなった以上は何も言わない。だけど、また俺がずっと前に出ないといけないような状態にだけはするなよ?」
「言われなくてもわかってる。お前を長く引き出すつもりは無いよ」
「そうか……。それとさ。俺が言うことじゃ無いかもだけど、一つ頼んでも良いか?」
するとブレイクは何やらソウルに頼みたい事があるのか彼へとその事を問いかける。
「頼みたい事?」
「……スラッシューの事だ」
「スラッシュー……。そういや、お前が生まれたのもスラッシューが原因だったよな」
ソウルはブレイクが生まれた元凶であるスラッシューの事を言われてその事実を思い出す。それからブレイクは更に話した。
「……あいつには元々……仲間がいたみたいなんだ。志を同じくする仲間がな」
「は?お前何でそんな事知ってるんだよ」
ソウルは何故かブレイクがスラッシューの事を知っていると聞いて唖然とする。ただ、ブレイクには時間が無いために理由を簡潔に話した。
「詳しい事はわからない。何しろ、ブローチの中に断片的に入ってた記憶だからな。……ただ、ハッキリしてるのは自分の隣で歌ってくれる人が欲しかった……それに一番適してたのが俺だったってだけ」
「……そうか」
「頼む……スラッシューを救ってあげてほしい。彼女の本当の気持ちを思い出させてあげてほしいんだ」
ブレイクはスラッシューに生み出された存在として、主人である彼女を助けたい気持ちが強かった。しかし、自分はソウルに負けて消えてしまう。そのため、ソウルに後の事を託したかったのだ。
「……わかった。お前の分までスラッシューは俺が救う」
ソウルは当然のようにそれを了承。そして、同時にブレイクの姿は殆ど闇のリボンに取り込まれていた。
「ありがとう。これで俺は安心してお前の中に戻れる」
そして、ブレイクは最期の言葉を口にするとその場に彼が取り込んでいたアイドルキラキラブローチが落下。同時にブローチは砕け散るとソウルが持っていたアイドルキラキラマイクとプリキュアリボンも消滅して変身解除した。
「ッ……。ブレイクの消滅でプリキュアの力も失われたのか……」
影人はそれからブレイクの本体と思われるリボンを体の中に取り込むと同時に闇の世界に少しずつヒビが入っていく。恐らく外に出られるのだろう。
「(外に出られるのか……。けど、プリキュアの力まで消えたのは想定外だな……)」
プリキュアになれなければ折角ブレイクに託されてもスラッシューを救うのはかなり厳しくなる。だが、危機的状況なのに対して影人の魂の熱さは先程以上に高まっていくと彼の中の不安は徐々に消えていた。
「(でも不思議と力が無くなった感じがしない。むしろ、逆に力が溢れてくる。やっと……取り戻せたんだ)」
そして、彼は外にいる仲間の元に行く。仲間と手を繋ぎ、ブレイクと一つになった事で取り戻した輝く未来に行くための力を胸に秘めて。
また次回もお楽しみに。