キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達とメロロンが真の意味で仲直りをした頃。チョッキリ団のアジトではジョギが帰還していた。
「ふぅ……プリキュア、侮れない存在だったな……」
彼がアイドルプリキュアと初めてまともに交戦してみて彼女達が強い敵であると認識。するとバーにいたチョッキリーヌが話しかける。
「ジョギだったか?スラッシューが先に帰ってきたと思ったら気絶していたけど、まさか……」
「えぇ。プリキュアにしてやられましたよ」
ジョギはチョッキリーヌ相手にスラッシューが気絶したのはプリキュアの仕業だと話す。実際は転送する際に与えるショックで強制的に気絶させて錯乱状態から戻しただけなのだが……。
「ッ……。あんた達二人がかりでもダメだなんて。強くなってるのかい?」
「えぇ、まぁ。でも、いずれは勝ちますよ。僕だって馬鹿じゃありませんし」
「……そうかい」
チョッキリーヌが淡々と話すと彼女がバーの出口に向かって移動し始める。
「……あれ?チョッキリーヌ先輩。もう戦いは終わってるのに今更出勤すか?」
ジョギは何故かこのタイミングでバーから出て行こうとした彼女が気になったのか呼び止めた。
「……別に。ちょっとした用事だよ」
チョッキリーヌはそう言ってバーから出ていく。ジョギはそんなチョッキリーヌを見送ってから先程まで彼女が座っていたカウンター席の所に行くとそこには一冊の冊子が置いてあった。
「うん?何々……“部下をやめさせないための本”。へぇ……。案外あの人も自分の部下がいなくなった事、気にしてるんだ」
ジョギはチョッキリーヌが残した本を見て彼女が何をしたいのか察すると笑みを浮かべる。それから未だに気絶して目を覚さないスラッシューの方を向いた。
「さて……それはそうとして。彼女にももう少し強めに記憶封印をかけておくとするかな。ま、あの子達と会う限りは多分無意味なんだろうけど」
ジョギはスラッシューの記憶が戻ってしまうのは半ば仕方のない事だと諦めている節があった。それだけアイドルプリキュアの影響力が強いのだと感じているのである。
その頃、はなみちタウンの公園にて。一人の女性がベンチに腰掛けるとスマホ片手に持っていた。その姿は銀髪のミディアムヘアで黒い丸眼鏡をかけており、服装は上が白で下が青のロングスカートとなったワンピース。いかにも真面目そうな雰囲気の人である。
「今日がオーディションの合格発表日……今度こそ……今度こそ……」
彼女の目は不安と期待が入り混じっており、彼女が言っている通りで何かのオーディションを受けている様子だった。今日がその合否発表の日なのだろう。
「お願い……。今日が最終選考で、ここが通れば……」
彼女は祈るような雰囲気で合否発表の画面を開く。……しかし、現実はいつも非情な物だ。
「そんな……不合格……またの挑戦をお待ちしています……」
女性の顔つきはみるみるうちに曇ってしまうと俯いて唇を噛み締めた。今回の結果に自分の頑張りがまだ足りないのだと否が応でも感じてしまう。
「またダメだった……。早く結果を出さないといけないのに……でないと……あっ」
女性はかなり焦っているような様子だった。するとそんな彼女の元にメッセージアプリから連絡が来る。その送り元を見て顔が強張ってしまう。
「……」
彼女は正直、そのメッセージを開きたく無かった。もし開いてしまえば……嫌でも向き合わないといけない現実を見てしまう事になる。
「……ッ」
女性はどうにか心を奮い立たせてそのメッセージを見るとそこには彼女が今掘り起こされたくない言葉が淡々と並んでいた。
「“もう良い歳なんだから夢ばかり追いかけるのは止めて、戻ってきなさい。それだけ夢を追えただけ十分でしょ”……。はぁ……。とうとう来ちゃった」
女性はここ最近、夢を追いかけられるタイムリミットが近いとわかっていた。だから今回のオーディションは絶対に落としたく無かったのだ。そうなってしまえば……こうなる事が何となくわかっていたのだから。
「私は……このまま終わりたく無いのに……。折角、折れかけていた私の心の癒しができて……また頑張ろうって思えたのに」
それから女性がある動画の画面を見るとそこにはアイドルプリキュアやズキューンキッスソウルが歌を歌い、キラキラと輝く姿が映されていた。
「私も彼女達みたいなキラキラした人になりたいのになぁ……」
女性の目にはアイドルプリキュア達の輝きがとても眩しく映っており、オーディションに落ち続けていた彼女の心はアイドルプリキュア達によって支えられている。
「……へぇ。面白そうな闇を持ってるじゃないか」
「ッ!?だ、誰ですか!?」
すると突如として女性の近くから声が聞こえると彼女はその方を振り向く。そこにいたのはアジトから出てきて用事を済ませに来たチョッキリーヌであった。
「お前、アイドルプリキュアが好きなんだろう?」
「えっ……。は、はい」
「私と来ればアイドルプリキュアと会える……そう言ったらお前はどうするかい?」
その言葉を聞いて女性は目を見開く。アイドルプリキュア……。ここ半年近くで急成長してきた今、一番勢いに乗っているアイドルチーム。そして、女性もその虜になっていた。そんなアイドルプリキュアと会えるならこれ以上無い喜びである。
ただ、チョッキリーヌの言い出した事はかなり胡散くさい。正常な者であれば甘い誘惑であると見抜く事ができる。
「それは、本当なんですか?」
「ああ。アタシと一緒に……アイドルプリキュアを追いかけようではないか」
「ッ……!こんな私に……こんな私に、アイドルプリキュアと……」
だが、今の女性は精神的にかなり追い詰められてしまっていた。自分の頑張りは認めてもらえず。このままでは夢を諦めざるを得ない状況で。そんな中で甘い餌をぶら下げられればどうしても心は揺らぎやすくなってしまう。
「さぁ、どうする?」
「……行き……ます。……お願いします、私をアイドルプリキュアと……」
「ふふっ。なら契約成立だな」
その瞬間、チョッキリーヌが指を鳴らすと女性の足元の影にダークイーネの姿が映される。
「ヒッ!?これは……」
「妾はダークイーネ。チョッキリーヌ、この者で良いのだな?」
「はい。彼女の闇、気に入っていただけたでしょう」
「……悪くは無いな。ならば、お前は今日からチョッキリーヌの部下として働くが良い」
「ッ……きゃあああっ!」
そして、影から飛び出した漆黒の闇は女性の体を包み込んでしまう事になるのだった。
その日の夜。はなみちタウンの出張所では田中がデスクワークのためにパソコンと睨めっこしている状態だった。
「ふぁああ……」
「タナカーン、大丈夫ッティン?」
「あまり働き過ぎは良くないリン」
田中の欠伸に気がついたこの家に住む妖精二人。カッティンとザックリンが彼の肩に止まる形で話しかける。
「いえ、少し疲れを飛ばすためにボーッとしていただけです。それに、今は前々から進めていたあの企画が最終段階に来ていますので」
それを聞いて二人はその企画が何なのかを思い出す。すると部屋の扉がノックされた。
「はい」
「失礼しますね……」
扉を開けて入って来たのはいつの間にか来ていた姫野だ。実は影人達が帰った後。仕事を終えた姫野は大慌てでこの出張所へと戻っていたのである。
ただ、彼女が来た頃には全てが解決してしまっていたために田中からの誘いで今日はここに泊まることにしたのだ。
そんな事情があって出張所にいる姫野。彼女の手にはコーヒーが入ったマグが二つ握られており、少し緊張したような顔を浮かべている。
「田中さん、お疲れ様です」
「ありがとうございます。……ふぅ。……すみません。わざわざ来てもらって。今日だって仕事をした後なのに」
「いえ……。私こそ皆さんが大変な時なのに……」
姫野が手にしたマグの片方を田中の前にそっと置くと田中はそれを手に取り、コーヒーを口に含む。その様子を見る中で姫野は申し訳なさそうにする。
彼女は影人やメロロンがカプセル内に囚われた後。前日の夜に二人を助ける手立てを探す手伝いをしていた。ただ、助ける方法はその日の夜では見つからず。今日も姫野は仕事を休んでまで二人を助ける手伝いをしようとしていた。……しかし、その話を聞いたレイは事務所での仕事のある姫野は無理に来なくていいというわけで断ったのである。
「レイさんも今朝話していたでしょう?姫野さんは本業を疎かにしたらダメだと。あくまであなたはサウンドプロダクションの一社員。助けてもらえるのは嬉しいですが、そこを履き違えたらいけませんよ」
「はい……。すみません」
姫野は田中に言われて頷くとカッティンとザックリンがそんな姫野をフォローする事にした。
「ヒメーノは自分の仕事だけじゃなくてアイドルプリキュアを支える事もやって。凄いッティン」
「俺達、チョッキリ団の仕事をやるだけでも手一杯だったリン」
「そうだったんですね……」
そんな風に話をしているとふと姫野は出張所の違和感に気がつくとそれを指摘する。
「……そういえば、今日からもうプリルンとメロロンがいないんでしたよね」
「えぇ。お二人共、うたさんの家に行きましたよ」
普段なら出張所内におけるムードメーカーを勤めていたプリルン。普段から騒がしい彼女やプリルンの事になると饒舌になるメロロンがいない事で、余計に出張所の中が静かに感じてしまうのである。
「偶には静かな所も悪くないリン」
「でも、どちらかといえば寂しい気持ちが強いッティン」
「私は少し心配ですね……」
カッティンとザックリンがプリルンやメロロンのいない出張所について話し合っていると田中はふと心配したような顔つきを見せていた。そんな彼を見て姫野は疑問符を浮かべる。
「えっと、心配……というのは?」
「……プリルンの事です。久しぶりにうたさんの家に泊まれる影響で興奮した結果……また必要以上に動いていないかなと」
田中からの指摘に姫野も何となく納得できた。確かにプリルンに大人しくしろと言ったとしても彼女が素直に大人しくなるという想像がどうしてもできないからだ。
「プリルンならやりそうリン」
「でも、その気持ち。少しわかるッティン」
「カッティンが……ですか?」
カッティンが何故かプリルンの気持ちがわかると言い出したために思わず姫野はその理由が気になって質問する。
「そうッティン。カッティンもチョッキリ団にいた頃、推しのアイドルプリキュアをスマホの画面越しに見て。その眩しさに興奮していたッティン」
「本当リン。カッティンがあまりにもアイドルプリキュアを観てばかりだからチョッキリーヌ様を誤魔化すのは毎度大変だったリン」
姫野はその興奮とは少し違うのではないのかと思ってしまうが、それでも大好きな人を前にすればつい興奮してしまうのも仕方ないと考えるとそれ以上は特に追求しない事にした。
「そうなんですね。……あ、あの」
それから、姫野は何かを言いたそうな雰囲気を見せていた。そんな彼女を見て三人が気になったのか問いかける。
「何でしょうか」
「何か言いたい事があるッティン?」
「遠慮なく言って良いリン」
「で、では……。一つお願いなのですが。……これからこの家で寝泊まりしても大丈夫でしょうか?」
それは、姫野からこの家で寝泊まりしても大丈夫かとの事だった。彼女はその件について言って恥ずかしそうな顔をする。そして、話を聞いた三人は彼女のお願いを快く受け入れた。
「大丈夫ですよ。丁度寝るための部屋も一部屋空いたわけですし」
「ヒメーノなら安心できるリン。これからよろしくリン」
「ッ!ありがとうございます!」
「そんな堅苦しい言葉は無しッティン。これからは自分達は一緒にこの家で住む仲間ッティン」
姫野は受け入れてもらえて一安心していると田中のパソコンから何かの通知音が鳴る。
「……うん?通知音?何でしょうか」
田中がパソコンでの変化に気がつくと他の三人も気になったのか、それぞれがパソコンに近づくとその画面を覗く。
「えっと、送り主は……“バッサリーナ”?誰でしょうか」
「もしかするとまたアイドルプリキュアの動画を観てメッセージを送って来たのかもしれませんよ」
姫野からの推理に他の三人は納得の顔になると改めてそのメッセージを開き、読む。
「「「「えっと……“アイドルプリキュア・ズキューンキッスソウルのマネージャーである田中さん、初めまして。私、バッサリーナと申します。……突然のメッセージをすみません。アイドルプリキュアやズキューンキッスソウルの動画を拝見させていただきました”」」」」
どうやら、姫野の予想は当たっていたらしい。バッサリーナと名乗った人物はアイドルプリキュア達の動画を観てメッセージを送ってくれたらしい。
「「「「“あなた方のステージはとてもキラキラしており、それはこの世界に僅かな期間でアイドルプリキュア旋風を巻き起こす程です。……そこで本題なのですが、私の所属する会社……。ミュージカルガーデンの方で、アイドルプリキュア・ズキューンキッスソウルの全国ツアーをプロデュースさせてください(ッティン)(リン)……」」」」
そこまで読んだ所で四人はその言葉の意味を飲み込むとようやく事の重大さに気がつく。……何しろ、唐突の全国ツアーの話である。そのため、四人は少しだけ顔を見合わせてからその場で叫ぶ事になってしまった。
「「「「……ええーっ!?」」」」
こうして、夏休みの終わりに突如として舞い込んできた全国ツアーの話。果たしてどうなってしまうのだろうか……。
はい。今回はここまでですが、今回のオリジナルストーリーの元ネタがわかる人にはわかると思います。
……それが、キミプリのドリームステージに当たる物です。ただ、私自身はドリームステージ自体は観てない状態なので色々と条件が付きます。
その条件というのが、あくまで今回の話はドリームステージ相当の話なのでドリームステージとは話の展開が大幅に変わるという点。また、そこに出てくるオリキャラであるバッサリーナのキャラもある程度ネットに上がっている情報から予想して書くのでドリームステージで出てくる彼女とは設定やキャラが変更される可能性が高い点です。
以上の他にもまた細々と条件が付くかもしれませんが、大まかには上二つの条件を参照してもらえると助かります。
それではまた次回もお楽しみに。