キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
バッサリーナと呼ばれる人物から突如として舞い込んできたアイドルプリキュアの全国ツアー。勿論ズキューンキッスソウルもその中に入っている。……勿論田中達としては今回の件を受けたい気持ちが強かった。
ただし、全国ツアーとなるとそれなりに長い期間を準備やその公演に費やす必要がある。加えて、会場や人員の確保。プリキュア達本人の練習期間を加味すると流石に本人達の意思を無視して勝手に決めるわけにはいかない。断る可能性は低いだろうが、これは絶対であるために田中や姫野はバッサリーナへの返信自体はしたものの……一旦明確な返事を後回しにした。
「……まさかメロロンの件が解決した翌日にこんな事になるなんてな……」
そして、今現在。影人はレイと共に出張所に向けて歩いていた。最初はグリッターで相談するのも考えたが、今回の件は明らかに話の規模が大きいために不特定多数の人が出入りする危険があるグリッターよりもアイドルプリキュアの関係者しか行かない出張所の方が適しているという事でそちらに話を回したのだ。
「……そういや、お前の父さんは何か言ってるか?プロデューサーと言えば、サウンドプロダクションの方でしてるんだろ?他所の方からの勝手な介入を許して良いのかよ」
「うーん。それが、まだ不確かな話に踊らされるのは良くないから。あくまで俺からの正式な情報を見てから反応を返すって」
「流石ハジメさん……。あくまで堂々とした不動の構えだな」
影人は相変わらず仕事の事に関すると冷静沈着なレイの父親の動きに苦笑いを浮かべた。
「親父の事もそうだけど、影人。お前の意見を貰っても良いか?」
「俺の意見か……。正直、できるならやりたい気持ちはあるけど。レイの所の父さんと大まかな所は同じかな。あくまでその……バッサリーナさん?って人からちゃんとした話を聞かない事には安全か危険かなんてわからない」
影人としての意見はあくまでやりたい方よりではある。ただし、だからと言って軽率に決めるというわけには行かないので結局はレイの父親と同じ。この話を提案して来たバッサリーナからの直接的な概要説明が無い事には首を縦に振るのは難しいと言った所である。
「そっか。……ちなみに調べたんだけど、ミュージカルガーデンという会社自体はちゃんと存在するよ。主にミュージカル等の全国ツアーに関しては結構やってるっぽい。ただ、アイドルのプロデュースに関してはまだそこまで大きな物には挑戦してなさそう」
「つまり、俺達アイドルプリキュアが初めてって事になるのか」
影人の中ではこの部分に関しては少しだけマイナス要素ではあった。まだアイドル関連で大きな仕事をやっていないという事は、その方面に関しての知識が乏しいという事にも繋がる。勿論ミュージカルの全国ツアーから引っ張って来れる知識はあるだろうが、初めてなら色々想定外も起きやすいだろう。
「(とは言え、どの会社も初めてはそんな物だ。逆に俺達のプロデュースに成功すれば、大きな成果になるだろうし。……だったら尚更レイの父さんが静かにしている理由がよくわからないな。普通こんな事されたら何かしら言いそうだったけど)」
「影人も俺の父さんが静かなのは気になるか?」
「あれ?顔に出てたか?」
「何となくだ。……あの人は会社の利益に関連する事になると結構食いつき早いからな。この状況は他の企業に利益を横取りされる事になりかねないはずなんだけど……」
「あはは、それについては俺も同意見。あの人は何考えているんだろうな……」
影人とレイがハジメの思考について話をしていると正面に出張所が見えて来た。どうやら二人だけの雑談の時間は終わりらしい。
そんなわけで出張所の中に入った影人とレイ。二人が中に行くと既にうた、なな、こころ、プリルン、メロロンは出張所に到着済み。他には最初からこの家に住んでいる田中、カッティン、ザックリン。そして荷物の運び込みを終えた姫野もしっかりといる。
「あ、影人君にレイ君。おはよー!」
「おはよ、咲良さん」
「もう皆勢揃いか……」
影人とレイの二人が既に全員が揃っている事を確認。そのまま話に入ろうとしたそんな時。
「……なぁこころ。どうしてメロロンはあんなに幸せそうな顔をしてるんだ?」
影人の視線の先。そこにいたメロロンは顔つきが緩んでおり、幸せ空間を満喫した後みたいに見えた。
「あ、アレですね?メロロン、うた先輩やプリルンに挟まれて寝たのが幸せ過ぎてああなってるらしいです」
「えぇ……」
「久しぶりにうたとも寝られて幸せなのメロ」
影人はそんな風に幸せいっぱいなメロロンの顔つきを見て唖然としてしまう。少し前まで影人やプリルンの事を取られたらその瞬間嫉妬のあまりローリングメロロンアタックを仕掛けてきたぐらいだ。
ただ、今日の件でうた達相手でも心を許すようになってそこまで神経質になる必要が無くなった。それどころか、周りに甘えられなかった分を甘えているような感覚である。
「昨日はうたとプリルンとメロロン。三人で川の字になって寝たのプリ!」
「二人の温もりが温かかったのメロ」
そんなわけでメロロンが話をしていると話を聞いていた影人が苦笑いを浮かべた。
「メロロン、あんなに咲良さんの事を嫌がってたのに」
「ここまで甘々になってると今までの塩対応が嘘みたいに思えてくるな」
「あ、それと姫野さん。今日からここに住む事にしたんですよね?」
「「えっ!?」」
影人達がメロロンの話をしているとななが今日からここに住むという話になった姫野の事について触れる。その急展開にうたやこころが驚いたような顔つきになると姫野の方へと詰め寄った。
「姫野さん、それ本当なんですか!?」
「もしかして、とうとう田中さんに……」
「うええっ!?ち、違いますよ!今回のはただ……」
「「ただ?」」
姫野は二人から詰め寄られるといつものクールキャラはどこへやらと言わんばかりに動揺。そして、しどろもどろになりつつも彼女はどうにか理由を絞り出す。
「その……田中さんが一人で頑張っている所を見て私もサポートしたいなぁ……なんて」
「む!カッティンも頑張ってるッティン!」
「ザックリザックリンも頑張ってるリン!」
「あっ……」
ただ、慌て過ぎたせいでカッティンとザックリンの存在を失念してしまった姫野は今度はこの妖精二人組から色々と言われてしまうのだった。
「では、そろそろ本題に入りましょうか」
姫野がカッティンやザックリンから一通り色々と言われ終わった後。良い加減本題に入らないといけないという事で田中の方から声がかかった。
「それで、今回の話は昨日の夜舞い込んできたアイドルプリキュアの全国ツアーの事です」
「アイドルプリキュア……」
「全国ツアー……」
田中から言われてうたとこころが今にも感情を爆発させそうになる中で二人が完全にやる気になっている事にななは苦笑い。
「……でもそれ。本当にやってくれるんですか?一回だけの普通のライブもやってないのにいきなりツアーだなんて」
そこはやはりどうしても引っかかる。世間一般のアイドルチームは基本的に小さなライブから少しずつファンを獲得していって、大きなライブをできるくらいになった上で更に人気度が爆発したらやれるのが全国のツアーだ。
今の例えはかなり大雑把なので、間に細々としたイベントが入る可能性はあるが、どちらにせよそう易々とできるものでは無いのは間違いない。
「でも、アイドルプリキュアの人気を考えたら全国ツアーだとしてもできるんじゃ……」
「まぁ、知名度だけならな。……俺達にはツアーをする上で一番必要な周りから一目見てライブが絶対に成功するっていう実績が無いんだ……」
加えて、ライブをするためには色々と準備が必要となる。ツアーをやれる程となるとそれなりの数の全国の会場を確保しないといけない。
「そのプロデューサー。バッサリーナさんだっけ?その人からはその辺の説明ってされました?」
「一応、この後直接来てもらえるという事ですが……」
「ん?もしかしてここですか!?」
「いえ、流石にここでは無いですよ。それこそグリッターの方になると思います」
それを聞いて安堵の顔を浮かべる影人。この出張所に来られるというのは色々とリスクが高いからだ。
「うたさんに聞いた所。今日の午後ならグリッターが確実に誰もいない状況になるとの事で」
それなら午後にバッサリーナがグリッターを訪れたタイミングが大まかな擦り合わせの時となるだろう。
「アイドルプリキュアの全国ツアー……今から楽しみ過ぎてキラッキランラン〜!」
「待って、気が早くね!?まだやるって決まったわけじゃ……」
「え〜!影人君こそ考えが固いよ〜」
「何でそうなるんだよ!?」
既にやる気になってしまっているうたを影人がどうにか押さえ込もうとする。このままだと衝動的に全国ツアーを開いてしまいかねない。影人は夢乃がドリーム・アイとしてアイドルプリキュアとコラボしたいと言い出した時もそうだったのだが、とにかくこういうビッグイベントの事になると余計に慎重になってしまう。
「プリルンも全国ツアーやりたいプリ!」
「メロロンもねえたまや影人の眩しい姿を全国で見られるのは嬉しいメロ!」
「何でバッサリーナさんからの詳しい話を聞いてないのに皆乗り気なの!?」
「すみませんカゲ君。私も心キュンキュンして断れそうにないです……」
「ごめんね、影人君。私も実は楽しみなんだ」
「嘘ぉ……。俺が悪いのこれ……」
流石にここまで賛成多数となると影人に拒否する権利は無さそうだった。そんな状況を見かねたレイがそっと影人をフォローする。
「大丈夫だ。もし、バッサリーナさんと直接会った時に怪しそうな事してたら俺が真っ先に反対する。それに、田中さんや姫野さん辺りにも立ち会ってもらうつもりだから」
「レイがそう言うのなら……わかったよ」
こうして、この日の午後に備えて一同は準備を進めていく事になるのだった。そして、同時刻。チョッキリ団アジトにて。
「チョッキリーヌ様……ここは一体……」
「ここかい?ここは私達の溜まり場。まぁ、アジトとでも言うべき場所ね」
そこに来ていたのはチョッキリーヌと前日ダークイーネによって闇に染まってしまった女性である。女性の方は闇堕ち前と比べると目元に僅かに暗めなアイシャドウが増えており、それがチョッキリ団配下になった証だ。
ちなみに、あの後二人は主従関係を確かめた後に少しだけ別行動の時間を取っていた。女性がチョッキリ団アジトに行く前にやりたい事があると言い出したためである。
その別行動が終わると改めて二人は揃ってチョッキリ団アジトにまで来たのだ。
「戻って来たんすね、チョッキリーヌ先輩。それで、良い奴は捕まえられました?」
「ふん。捕まえるなんて人聞きの悪い事言わないでくれる?」
チョッキリーヌはジョギが悪い言い方をしたために彼の事を睨みつける。そんな視線に睨まれたジョギは溜め息を吐くと半ば適当に声を上げた。
「はいはい。それで、その新入りの子っていうのが?」
「ああ。それがこっちにいる」
「初めまして。私、バッサリーナと言います!チョッキリーヌ様の部下として精一杯頑張ります!よろしくお願いします!」
彼女の名はバッサリーナ。……そう、彼女こそがアイドルプリキュアの全国ツアーのプロデューサーとして名乗りを挙げた本人なのである。
「へぇ。随分と真面目そうな奴だね。……僕はジョギ。まだ眠ってるけど、スラッシュー様の部下さ。こちらこそよろしく。僕とチョッキリーヌ先輩はこんな感じだけど、君とは仲良くやっていけたらと思うよ」
「はぁ!?ジョギ、アンタまた余計な事を!」
「別に良いじゃないっすか。僕にだって先輩風吹かさせてくださいよ」
「お黙り!バッサリーナはアンタの部下じゃなくて私の部下だからそこを履き違えないで!」
チョッキリーヌはまたジョギ相手にムキになると声を荒げる。やはりチョッキリーヌはスラッシューやその部下と相性が悪いということだろう。
それはさておき、バッサリーナは二人のやり取りを唖然とした顔つきで見ていた。入ったばかりのチョッキリ団で自分の上司と別部署の部下がここまで揉めていたら仕方ないかもしれない。
「そうだバッサリーナ。アンタ、折角ここに初めて来たんだ。歓迎会でもやるかい?」
「え、えっと……」
「いきなりそんな事に誘ってもハードルが高いですよ。ほら、バッサリーナが困ってるじゃないですか。チョッキリーヌ先輩」
「はぁ?上司と部下とはいえ私達はチームでしょう!親睦を深める事の何が悪いのかい?」
「あははっ!新しく部下を雇ってしかも歓迎会まで。部下二人に逃げられて随分と丸くなりましたよね?チョッキリーヌ先輩は」
「それはカッティーとザックリーが私のせいでいなくなった事に対する嫌味かい!?」
チョッキリーヌとジョギの言い争いが少しずつエスカレートしていくとバッサリーナは何か言いたそうな顔つきだった。
「え、えっとですね……。チョッキリーヌ様、ジョギ先輩?」
「「何(だい)(かな)?」」
「その、歓迎会ですが。今すぐは参加できません。……ちょっとこれから出かけないといけなくて」
「「えっ……」」
すると今度はバッサリーナからの言葉に色々言い合っていたはずの二人の会話が止まると視線がバッサリーナへと集まる。
「実は、色々あってアイドルプリキュアの懐に入る事にしました」
「へぇ。スラッシュー様みたいな事をするって事?」
「アイドルプリキュアを間近で見て、その弱点を探るんです」
どうやらそれがアイドルプリキュアの全国ツアーのプロデューサーになるというメッセージを送った理由らしい。
「ほう。ならやってみれば良い。困った事があったら私達に相談してくれて良いからね」
「はい!精一杯アイドルプリキュアの事を見てきます!」
そう言ってバッサリーナはアイドルプリキュアの元に行けるのが嬉しいと言わんばかりに出ていく。それを見送ってジョギは無言で考えていた。
「(アイドルプリキュアの懐に入る……。またスラッシュー様みたいな事にならないと良いけどね)」
ジョギはバッサリーナが初手からアイドルプリキュアの懐に入るのは良いが、闇に染まって日が浅い今の段階からアイドルプリキュアの近くに行くのは危険だと感じていた。ただ、彼女の方はアイドルプリキュアの近くにいたそうであるために特に何も言わないでおいたのである。
「さてと。どうなる事やら……」
こうして、バッサリーナはアイドルプリキュアの面々にプロデューサーとしての説明をするために喫茶グリッターへと向かう事になるのだった。
また次回もお楽しみに。