キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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バッサリーナからの概要説明会

バッサリーナがアジトから出て少しが経過。お昼ご飯を終えた喫茶グリッターでは丁度うたの家族の和、音、はもりの三人がお出かけでいないという事でお店は閉まっている。

 

ここに来ているのは影人達中学生組。プリルンとメロロンの妖精コンビ。田中、姫野のマネージャー組である。ここにいないカッティンとザックリンに関してはいつも通り出張所でのお留守番役だ。

 

そして、昼をまたぐ関係で影人達はグリッターのテーブルを利用して各々が昼食を摂っていた。それが終わるともうすぐ来るであろうバッサリーナの事を話をする事に。

 

「バッサリーナさん、どんな人なんだろうなぁ……」

 

「普通に姫野さんみたいにスーツ姿なのかな」

 

「多分名前からして女性……ですよね」

 

うた達女子組はバッサリーナの人柄についての予想大会を始めてしまっている。

 

「プロデューサーに選ばれる程ですし、姫野さんみたいに仕事熱心なんでしょうね」

 

「うーん。でも、プロデューサーって事は全体の方針を決める監督みたいな人だよね。硬派なのは良いけど、柔軟性とかも求められる場面とかで凝り固まった思考の人だと無理そうな気がするなぁ」

 

「私は折角なら遊び心のある人の方が良いかな!その方が一緒にやってて楽しいし!」

 

うたは折角同じ仕事をするのならある程度親しみやすい人の方が助かるとの事だ。あまり話しづらい人とだとやりにくいのは確かだろう。

 

「どんな人なんだろうな……考えただけでもうキラッキランランな気持ちだよ!」

 

「はい、心キュンキュンが止まりません!」

 

「これはもう二人共張り切っちゃってるね」

 

女子達がバッサリーナについての話を進めていると影人はそれを見ながらまたいつもの如く心配したような顔を浮かべている。そんな彼を見たレイが苦笑いしつつ話しかけた。

 

「影人、お前毎回心配し過ぎだって。ヤバそうならちゃんと言うからさ」

 

「いや、そうなんだけどな……」

 

「……だったら心配を少しは隠せって。俺も心配の気持ちは同じだ」

 

「ぐ……」

 

影人は前々から感情を隠すのは苦手な部類なのだろう。自分のキラキラが信じられなくなって不貞腐れていた時も感情自体は結構露わにする方だった。

 

キラキラを取り戻した……自信が戻った後なので今の影人はその時よりも余計に感情を隠せなくなっているのかもしれない。

 

「できるなら俺も感情を隠せるようになりたいよ。そう考えるとレイが羨ましい」

 

「あはは。確かに感情を隠せたら便利なのは間違いけどさ。影人はある程度なら感情は隠せてるし、それ以上に隠せるようになったら気持ち悪いよ。今の俺みたいにさ」

 

珍しくレイが自虐的な言葉を口にする。彼としては感情を隠す事は事務所の社長に向いているかもしれないが、それ以外では弊害でしか無いと考えているのだ。

 

「それは、蒼風さんと付き合う上ででもか?」

 

「……ああ。ななと話す時に自分の気持ちを隠して返事してるって自覚しちゃったら……。彼女に申し訳ないからな」

 

「………」

 

普段から自分の本音を隠すようになってしまうとそれが気持ちを曝け出さないといけない時も隠す事を無意識にやってしまうという事でレイはこの長所が自分の中で苦手だった。

 

「せめてななと話す時は……ちゃんと本音で話し合いたいんだけどなぁ」

 

「そっか」

 

影人達がそれぞれで雑談をしているとグリッターの入り口をノックする音が聞こえてくる。そして扉が開くとそこにはここに来ると連絡があったバッサリーナが立っていた。

 

「……えっと……どちら様ですか?」

 

「あっ、初めまして。私は昨日そちらにメッセージを送らせていただきました!ミュージカルガーデンのプロデューサーの……」

 

バッサリーナはグリッターの中に入ると早速自己紹介を始める。そして、名前を言う前に何故か溜めを入れるのと同時にポーズをし始めた。

 

「バッサリーナと申します!」

 

するとバッサリーナは右腕を左斜め上に突き出してからその腕を扇を描くように右斜め上に持ってくるとすかさず左腕を右斜め上に挙げ、まるでどこぞの一号な仮面の戦士が変身する時のようなポーズを見せる。

 

「「……はい?」」

 

バッサリーナが自己紹介と同時にどこぞの○イダー変身しそうなポーズをしてしまったために彼や姫野の二人が唖然とした返事を返してしまう。また、影人達もいきなり取った彼女の変身ポーズを見て思わず固まってしまう。

 

「えっと、あなたが昨日の……」

 

「はい!メッセージを送らさせていただきました!まずはこちらを!」

 

バッサリーナは先程までのトンチキ行動はどこへやらと言わんばかりに真面目な顔つきに戻ると自らの名刺を差し出す。

 

「っと、ご丁寧にありがとうございます。私、アイドルプリキュアのマネージャーをしております。田中と申します」

 

田中はバッサリーナからの名刺を受け取ると自分も名刺をバッサリーナへと手渡した。

 

「田中さんですね!よろしくお願いします!あ、それとそちらのカッコいい方は……」

 

「か、カッコいい!?私は姫野と言います。田中さんとは違ってアイドルプリキュアのマネージャーでは無いんですけど、今回はアイドルプリキュアの主なプロデューサーをしていますサウンドプロダクションの代表として来ました」

 

「あっ、そうなんですね!でしたら、姫野さんともしっかりお話ししないといけませんし。今日はよろしくお願いします!」

 

それを聞いて影人はレイの父親であるハジメが特に動かなかった理由にある程度は納得が行った。わざわざ自分が出張らなくても姫野がサウンドプロダクションの代表として行ってくれると読んだ上で今回の静観をしているのだと。

 

それはさておき、バッサリーナの挨拶を見ていたうた達はまだ唖然とした顔つきのままだった。

 

「えっと、バッサリーナさんって結構ユニークな人なんですね……」

 

「あー。正直俺もあの登場には驚いちゃったな」

 

「というか、あの変身ポーズみたいなアレ。もしかしなくても○面ライダー好きなんだろうなぁ……」

 

影人達は何となくバッサリーナの趣味にある程度勘づく。ただ、見た所彼女はそこさえ除けばかなり仕事熱心な人であるというのもあってそこまで悪印象は受けなかった。

 

「そういえば、あちらにいる方々は?可愛いぬいぐるみもいて……。あっ、もしかしてあのぬいぐるみがマスコットキャラだったりします?」

 

「ええ。順番に紹介しますと、こちらにいる子達がマネージャー見習いです」

 

田中からの説明を受けて影人、うた、なな、こころ、レイの五人が自己紹介。バッサリーナが頷いていると今度はプリルンやメロロンの話になる。

 

「そして、バッサリーナさんが思った通りでこの二人がアイドルプリキュアのマスコットキャラになります」

 

「おお!あの、この子達を抱いてみても良いですか?」

 

「え?まぁ構いませんが……」

 

「ふわぁああっ!」

 

バッサリーナはプリルンとメロロンを見て嬉しそうに二人を抱き抱えると彼女達へと頬擦りを始めてしまう。それを受けてプリルンやメロロンはくすぐったい気持ちになったものの、今動いたら色々とアウトなのでどうにか我慢する。

 

「こういう可愛いマスコットも大好きなんですよ!この子達の着ぐるみとかはありますか?」

 

「いえ、着ぐるみはありませんね」

 

「でしたら今回の全国ツアーを機に着ぐるみも作りましょう!折角ならこの子達用のキャラソンとかも欲しいですね!曲名は……“なかよしJ♡YFUL”とか!」

 

それを聞いて影人は何となくその曲名に既視感を覚えるが、ひとまずその話はさておき。自己紹介で脱線しまくったプロデュースでの話をしないといけないためにようやく本題についての話を始める事にした。

 

「あっ。長々と余計な話をしてしまいましたが、本題に入りましょう。まずは昨日の事、急にすみません。今日もお忙しい中でわざわざ時間を作ってもらって」

 

「いえ、こちらこそ良いんですか?こんないきなり全国ツアーだなんて」

 

田中はバッサリーナがいきなり全国ツアーをやりたいと言い出した事について聞いてみた。やはりネックなのは今回の件が普通のライブ……では無く最初から全国ツアーという事だろう。

 

「確かに皆さんもそこが心配だと思います。ですが、私が思うにアイドルプリキュアはもっともっと世界中に広めるべき存在だと思ってるんですよ!」

 

「世界中に……」

 

「広めるべき存在!」

 

「急に話が壮大になってきたなぁ……」

 

うたやこころがバッサリーナからの話に興奮すると影人がいきなり世界規模に広がった今回の話題に唖然とする。

 

「アイドルプリキュアはつい半年前。突如として動画投稿サイトに光る流星の如く突然現れた無名のアイドル達。最初はキュアアイドル一人だけだったのに世間の人々の視線はそれに釘付けにされていきました」

 

それ以降もウインク、キュンキュン、ソウルと一人ずつ増えていく仲間達。そして、ある程度世間にアイドルプリキュアが浸透したタイミングでまさかのサプライズでのズキューンキッスの発表。

 

「その後、ソウルがアイドルプリキュアからズキューンキッスの方に合流するという一件がありましたけどそれで人気が衰える事は無くて。……むしろ人気は今でも大爆発中!それを見て私達の事務所の社長達はこの子達ならもっと伸びると判断したんです!」

 

バッサリーナの瞳には情熱の炎が見え隠れしており、彼女の中にあるやる気の大きさが溢れ出ていた。

 

「なるほど。今回の件はアイドルプリキュアがこれから伸びるという事を加味した先行投資……みたいな一面があるって事ですね」

 

「簡単に言うとそうですね!勿論サウンドプロダクションさんの方がこの件について反対でしたら私達の方も折り合いが付けられるように交渉する用意はあります」

 

ひとまず、バッサリーナの所属するミュージカルガーデン側にやる気が無い……という事態にはならなさそうである。彼女達も今回の全国ツアーに大きな情熱を持ってくれているとわかっただけ大きな収穫だ。

 

「でしたら質問良いですか。全国ツアーのための会場やそれに必要になりそうな人員は集まるんですかね?アイドルプリキュアはまだ大掛かりなライブの経験が皆無。いきなり全国ツアーをやる話を持ち込んで……その辺りの条件は揃ってくれるんですか?」

 

レイからの質問。それは割と当たり前の質問だった。ここがちゃんとしてないと全国ツアーをやるどころの話では無くなるのは明白。全国ツアーをやると口だけでは無く、ちゃんとやれるだけの現実的なビジョンを持っているか。これも話をする上で必要な事だろう。

 

「そこは大丈夫ですよ。全国ツアーはあくまで最終的な目標。その途中の過程を無視して良いはずがありませんし、最初は大きな会場でのライブ。それを重ねていって、最終的に全国ツアーをできるまでアイドルプリキュアをプロデュースする。それが私に課された会社からの仕事です!」

 

彼女の見せた情熱的なその瞳に嘘偽りは無さそうである。そして、同時にバッサリーナが今回の件でプロデューサー役に任命された理由もレイの目には何となくだが見えて来た。

 

「(なるほど、俺の父さんが俺にしている事と大体一緒か。将来有望な若い彼女にアイドルプリキュアという話題性の大きなアイドルグループを預ける事で、アイドルプリキュアというチームを立派に全国ツアーにまで導くという実績を積ませたい……そんな所だろう)」

 

彼女はまだ会社では若くて実績の無いプロデューサーになりたての新人枠。当然周囲にいる他のプロデューサー達からしてみればバッサリーナはそこまで大きな実績の無いのに運良くプロデューサーになれただけの小娘程度に思われているだろう。会社の上役達はその事情がわかっているからこそ今回の件をバッサリーナに任せた。

 

同じく経験値不足な話題のアイドルグループを成長させ、同時に自身の成長に繋げられれば……それはバッサリーナにとって大きな経験となり得る。しかも仮に彼女が失敗したとしてもアイドルプリキュアはあくまで半年前に有名になったばかりの所謂ポッと出。自社が受ける反動も無名の新人プロデューサーであるバッサリーナを降格させるのみという小さな物に抑え込めるという利点もついてくる。

 

「(確かにこれはミュージカルガーデンにとってはかなり都合の良い話になってくるなぁ……)」

 

だからと言ってアイドルプリキュア側にとってもデメリットばかりでは無い。むしろ今回の件が成功した場合、受けるメリットは大きな物だ。全国ツアーのみならず、そこに行くまでに必要な経験が全て受けられるとなればアイドルプリキュアはリアルのアイドルとして大きく成長できる。

 

「なるほど……」

 

「これなら良い条件じゃないですかね?」

 

「うん。全国ツアーだけじゃなくて、ちゃんとそこまでの道も進ませてくれる……」

 

「凄くキラッキランランだよ!」

 

実際うた達の目には好感触であり、田中や姫野もそこまで疑っている様子は無かった。影人も先程までバッサリーナに対して多少疑念を持っていたが、彼女の話を聞いてある程度それは解消されていた。

 

加えて、バッサリーナの性格を見た感じだと真面目でパートナーである自分達に真摯に向き合ってくれている。若くしてプロデューサーに選ばれる能力を考えても十分有望株と言えるだろう。

 

「……田中さん」

 

するとレイが何かを思ったのかバッサリーナに気づかれないように田中の元に移動。それから彼へとボソッと伝言をした。

 

「!!……わかりました」

 

田中がレイの言う事に了承すると目の前にいるバッサリーナへとレイからの件も含めた返事を返した。

 

「バッサリーナさんのご意見は承りました。ただ、少しだけ考える時間が欲しいので明日に返事を返す……という事でお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

田中が出した結論にうた達は驚いたような顔つきになる。先程までの流れなら完全に了承するような雰囲気だったからだ。

 

「えっと、それはまた直接会う形ですか?それともメッセージでですか?」

 

「できれば直接会う形が望ましいです。バッサリーナさんの都合にもよりますけど」

 

「……わかりました。明日のまた午後でもよろしいでしょうか?」

 

バッサリーナは僅かに申し訳なさそうな顔を浮かべると笑顔を作ってから田中へと答えを返した。

 

「ええ。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、わざわざ話を持ってきていただきありがとうございます」

 

「はい。では失礼しますね……」

 

バッサリーナは真面目な声色で答えを返すとグリッターの扉を開けて出ていく。それを見届けたレイは小さく呟いた。

 

「……そろそろか」

 

「レイ君?」

 

「悪い皆、ちょっと用事ができた。先に話を進めておいてくれ」

 

レイが小さく呟くといきなり用事を口にするとグリッターの扉を開けて飛び出してしまう。

 

「えっ!?ちょっとレイ君!?」

 

「レイ……もしかして何かを感じたのか?」

 

「ッ、呼び止めますか?」

 

「いや……。アイツにはアイツの考えがある。今は今回の事を受けるか否かを明日までに考えないといけないし」

 

こうして、影人達は全国ツアーの返事について話し合いを開始。その間にレイもある事を済ませに行くのだった。




また次回もお楽しみに。
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