キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
クラヤミンダーを浄化してキラルンリボンをまた新しく獲得したプリキュア達。事件が解決したためにまずはクラヤミンダーの素体にされた蓮司の方への対処を進めた。
「蓮司さん、大丈夫ですか!?」
「う……んんっ……」
蓮司の事を店の人として一番知っているアイドルが中心となって介抱すると彼は割とすぐに意識がある事を示す。そのため、六人は安堵の顔を浮かべた。
「良かった……蓮爺ちゃんが無事で……」
「うん。それに、バッサリーナさんも巻き込まれずに済んで良かった」
「……だけど、私達が戦ってる姿……見られちゃったわね」
キッスからの言葉を聞いてソウルビート達はその事実を受け止めざるを得なかった。
「……多分、バッサリーナさんになら見られても大丈夫。そんな気がする」
「ソウルビート?」
「それってどうして?」
「……何となく。根拠の無い直感だけどさ」
ソウルビートは苦笑いしつつそう言う。ただ、彼女にアイドルプリキュアの戦う姿を見られてしまった事でプロデュース対象から外される危険はやはりどうしても残ってしまうが。
「ひとまず、グリッターに戻ろう。レイがここにいなかった所を見るとちゃんと避難したっぽいし」
「そうだね!レイ君ならきっと無事だよ」
それから六人はやるべき事が終わったためにその場から立ち去るとそこにバッサリーナが戻ってくる。ただ、その顔は青ざめていた。
「はぁ……。クラヤミンダーが……まるで通用しなかった」
バッサリーナは今回の戦いで自分が召喚できるクラヤミンダーがどのくらいプリキュア相手に通用するか見るつもりだった。しかし、実際はまるで相手にすらならず。
このままではプリキュア六人を相手に勝つどころか、まともな戦果すら出せないだろう。
「どうしよう……。このまま成果を出せなかったらきっと……」
バッサリーナの脳裏に映るのは社長室と思われる場所で年配の老人が自分へと厳しい口調で何かを通告するかのように話す姿だった。
「……嫌だ。夢を終わりにしたくない……。私はまだ……夢を捨てたく無い」
バッサリーナは苦しそうな顔つきをすると息が荒くなる。そして、小さく呟いた。
「アイドルプリキュアを私が倒して世界が真っ暗になればきっと……私は……また夢を……」
バッサリーナには夢があった。チョッキリーヌからチョッキリ団として誘われる前までずっと追いかけてきた夢が。
「アイドルプリキュア。今回は試運転って言い訳できるけど……次は絶対に仕留めなきゃ……。そうしないとまた……」
バッサリーナはそんな風に心の中で自分を追い詰めてしまう。これもまたチョッキリーヌから言われた事なのだが、あまり失敗を繰り返すとダークイーネに呑み込まれてしまう前例もあるとの事で。
「ひとまず、今回の件について報告しないと……。はぁ」
バッサリーナはあまりに呆気なくやられてしまった事に憂鬱になってしまうと一度チョッキリ団アジトに向かうのだった。
場面は変わり、喫茶グリッター。そこでは戦いを終えた影人達が戻ってくる。
「田中さん、姫乃さん。無事に終わったよ」
「はい、お疲れ様でした」
「皆さんなら勝てるって信じてましたよ」
田中や姫野はうたからの帰還の挨拶に優しい言葉をかけるとその奥からあの場所にはいなかったレイが声をかけた。
「お、無事に帰ってきたか」
「レイ君!……もう、レイ君こそ心配したんだよ」
「あはは、それは悪かったな……。でも、心配してくれてありがとう。なな」
やはり、レイが巻き込まれていた可能性を考えていたレイの彼女であるななは人一倍心配していた様子である。ただ、ななはレイに頭を撫でられると安心したのかその温かさを感じる事になった。
「それで、バッサリーナさんは大丈夫だったか?」
「バッサリーナさんなら巻き込まれそうになってた所を助けられました」
「どうしてレイがバッサリーナの事を心配するプリ?」
「さっきレイが追いかけたのはやっぱりバッサリーナなのメロ?」
レイがバッサリーナを心配したのを見て、メロロンはやはり先程飛び出したのはバッサリーナが原因だと察する。
「ああ。ちょっとバッサリーナさん本人に用事があってな。で、ちゃんとそれは済ませられたけど彼女が行った先にチョッキリ団が出たらしくて」
「……あれ?でもさ。今日はチョッキリ団、いなかったよね?」
うたが思い出したかのようにそう話す。普段ならクラヤミンダー若しくはダークランダーを召喚したタイミングでその近くに召喚主であるチョッキリ団幹部がいるはずだ。
しかし、今回は珍しくそのチョッキリ団幹部がおらず。指揮者が誰もいない状態でクラヤミンダーが攻撃してくるという奇妙な事態になっていた。
「チョッキリ団の幹部不在……。普段ならいるはずの存在がいない……何か引っかかるな」
クラヤミンダーがいるなら必ず出てくるはずの幹部。それがいないとなると考えられる可能性は二つ。一つ目はその場にいない状態で遠隔から召喚する事。二つ目はその場で召喚した後に何かしらの理由で見える場所にいなかった事だ。
「ま、でも今考えたって仕方ない事か。まず必要なのは明日のバッサリーナさんへの返事を考える事だし……」
影人は召喚主不在で暴れていたクラヤミンダーの事も気になるが、今はそちらよりも優先するべき事である全国ツアーへの返事を考えるべきと判断。その話題に切り替えようとした。
「あー、そのバッサリーナさんへの返事なんだけどさ。少しだけ調べてから結論を出したい」
「「「えっ!?」」」
「調べ物って何を調べるプリ?」
「そうメロ。さっき気になってたバッサリーナとの会話はできたって言わなかったメロ?」
「それはそうなんだけどさ。また新しく疑問というか、確かめないといけない事ができちゃってな……。多分この場では調べられない事だし」
レイがそのように意見を話すと影人達は彼の考えに賛同の意思を示す事になる。
「わかった。どのみち回答期限は明日の昼まであるんだし、相手に対して疑問があるのならちゃんと解決する必要がある。だったら、俺達はレイの意見が出るまで待つよ」
「うん。レイ君が私達のために頑張ってくれてるんだし、その答えが出るまで私達はちゃんと待つ。だって、全国ツアーなんて大きな事をやるんだもん。慎重にならないとだしね」
影人やなながレイの答えが出るまで待つ事をハッキリ表明するとうたやこころも同じくその意見に了承と言わんばかりに小さく頷く。
「ありがとな。それじゃあ、時間も惜しいし。さっさと調べに行ってくるよ」
そう言ってレイはその場から去っていくとサウンドプロダクションへと向かっていく。それを見送った影人達もレイが答えを出すまで今回の件を話し合っても仕方ないという事でこのままの流れで再度出張所に戻ってアカペラ練習の方に入る事になるのだった。
その日の夜。チョッキリ団アジトではバッサリーナがチョッキリーヌへの報告を終えていた。
「アイドルプリキュアが六人になって……キュアソウルがキュアソウルビートになっていたって!?」
チョッキリーヌがバッサリーナからキュアソウルビートの件を聞くと驚いたような顔を浮かべつつ直様ダーツを一人で投げているジョギの方を向く。
「ジョギ!キュアソウルが進化したなんて聞いてないよ!?」
「ええ。言ってないので知らなくて当然ですね」
「そういう事を言いたいんじゃない!報告くらいしっかりしてもらわないと……」
「別に俺はあなたの部下じゃないんですから言わなくても大丈夫でしょ?」
チョッキリーヌは情報漏れがあった事に対してジョギへとその矛先を向けるものの、彼はのらりくらりとした様子であった。
「ぐっ……」
「ジョギ。意地悪するのもその辺にしておきなさい」
すると部屋の奥の方からようやく目が覚めたスラッシューが出てくるとジョギへとその対応を諫めた。
「スラッシュー様……」
「ダークイーネ様から一応経緯は聞いてるわ。初めましてね。バッサリーナ」
「はい、改めまして。チョッキリーヌ様の部下、バッサリーナです!」
「スラッシューよ。それにしてもチョッキリーヌ。随分と従順そうな部下を手に入れたわね?」
スラッシューはチョッキリーヌが見込んだ部下にしては珍しく真面目そうだと言わんばかりの目線を向ける。
「別に誰を部下にしても良いだろう」
「ふふっ。そうね。前の部下二人みたいに途中でリタイアされたら……困っちゃうものね」
スラッシューは若干皮肉気味に冷たい言葉遣いで話しかけるとチョッキリーヌはやはり彼女は冷たい心のままなのだと実感する。
「え、えと……」
「ああ。怖がらなくても良いわ。これがいつもの私とチョッキリーヌのやり取りだから」
バッサリーナはスラッシューから感じるプレッシャーに思わず押されてしまうとそんな彼女を見たスラッシューは頬を緩める。
「それで、バッサリーナ。あなたはこの後どう動くつもり?」
「勿論、明日のアイドルプリキュア側からの返事待ちになります」
「そう……」
スラッシューからの返事を聞いたバッサリーナは少しだけ間を空けてからある事を言い出した。
「あの、お願いなのですが……。私にもダークランダーを呼ぶ力をください。申し訳ないのですが、今のクラヤミンダーではプリキュア相手に太刀打ちすらできません。……なので、ダークランダーを呼ぶための力をいただけたらと……」
バッサリーナは今回のプリキュアとの戦いにおいて、クラヤミンダーではもう今のプリキュア達相手には対抗できない。それを痛感すると彼女達が話していた怪物……ダークランダーであればある程度はアイドルプリキュアと戦えるのかもしれないと考えていた。
今の自分の力ではダークランダーを呼ぶ事はできない。そのためバッサリーナはそのための力を欲する。
「ダークランダーを呼ぶ力……ねぇ」
「ジョギ、あなたなら与えられるでしょう?」
スラッシューはジョギへと力を与えるように促す。ただ、ジョギは難しそうな顔を浮かべた。
「うーん。確かにアイドルプリキュアを相手するにはダークランダーを使えた方が便利……だけど、今の君にはまだ無理かな」
「ッ……どうしてですか!」
バッサリーナはジョギから文字通りバッサリ言われて困惑したような声を上げる。そんな彼女に対してジョギは笑みを浮かべつつ話す。
「……今の君にはまだ迷いがある。チョッキリ団としてここにいたいのなら余計な感情は捨てないと」
「くっ……」
ジョギに顔を覗き込まれて悔しそうにするバッサリーナ。ただ、助けを求める彼女相手に何もしないというのは流石に可哀想なのでジョギはその手にダークランダー召喚用の赤い水晶を出す。
「けど、このまま君を手ぶらで送り出すのは流石にダークイーネ様もお許しにならないだろうし。水晶だけでも渡しておくよ」
「これが……ダークランダーを呼ぶための」
「ダークランダー呼ぶ力は人間の闇。それを見極められるようになる事から始めれば良いよ。せいぜい頑張ってね」
バッサリーナはジョギへと頭を下げるとひとまずこの日の夜は自宅に戻ってゆっくりするためにその場を去っていく。それを見送ったスラッシューは笑みを浮かべていた。
「わざわざありがとうね」
「いえいえ。俺としても彼女が成長するならそれはそれで面白いので」
「はぁ、アンタ達。私の部下に変な事吹き込んだらタダじゃおかないからね?」
「変な事?吹き込むつもりなんて無いわ。むしろ、あの子がアイドルプリキュアを潰してくれるならそれはそれでこっちの手間が省けて助かるし」
こうして、バッサリーナがいなくなった後のチョッキリ団幹部の三人も他愛のない会話をする事になる。
場面が変わり、音崎家。そこではレイが自室である事を調べていく。それはバッサリーナの素性についてだ。
「……やっぱり。バッサリーナって名前の人はどこにも見当たらないな。というか、多分あの名前は外国人だからああなってるんじゃ無くて普通に偽名だな」
レイは父親であるハジメに続いてバッサリーナという名前が偽名だと見抜いた。そして、同時に彼はある事実を思い出す。だいぶ前の事だったが、バッサリーナによく似た女性を見たという事だ。
「バッサリーナさんに似た誰か。名前は忘れたけど、何となく会った事がある気がする」
レイはどうにか記憶の底にあるバッサリーナに似た女性を思い出そうとする。同時にパソコンで色々とバッサリーナも似たような顔つきの女性がいないか探していた。
「バッサリーナさんが何で隠し事をしているかは知らないけど、少なくともこのままじゃダメだ」
レイはバッサリーナの目的をどうにか探るべく必死に彼女について探していく。そして、とうとうとあるページを開いた。
「ッ……これは!」
レイがそこにあったのは過去のサウンドプロダクションのオーディション用紙にあったバッサリーナ……いや、桜庭花という名前であった彼女のプロフィールである。
「いた……。証明写真も同じ。多分この人だ……」
そして、同時にレイは彼女の持っている桜庭という苗字を見てそこからも何かを感じ取る。
「桜庭……。確か……あー。複雑な家庭事情ってそういう事かぁ……。しかも、若くしてプロデューサーとしての活動やその言葉に現実味があったのも納得かも……」
レイはパズルのピースがハマるかの如くバッサリーナの正体に辿り着けた。そして、同時に思考する。今回のアイドルプリキュアの全国ツアーには応じるのは危険だと。
「……やっぱり、あの人は本心を隠してた。さて、後はどうやって本心を引き出すかだな。……少なくとも、そうしないと全国ツアーの方は受けられない」
レイはパソコンを閉じてからベットに寝転ぶと天井をボーッと見上げる。そして、明日の対応をどうするべきか。考える事になるのだった。
また次回もお楽しみに。