キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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バッサリーナが溜め込んでいた闇

バッサリーナからダークランダー召喚のための水晶を見せられた影人達。それから彼女は改めて話し合いをするために移動する事を提案。この場でダークランダーをいきなり呼ばれるよりはマシという事で影人達は了承せざるを得なかった。

 

「……この辺で大丈夫……ですかね」

 

バッサリーナは川の堤防を降りた所にある開けた場所へと移動。ここなら周囲に人が少ないという事で彼女は後ろから着いてきた影人達へと振り返る。

 

「バッサリーナさん……改めてですけど、それって」

 

「……まず最初に。もうわかってると思うけど、全国ツアーの話はあなた達に近づくための嘘。……でもツアー自体は実際に開くつもりだった」

 

「ツアーを開いて……どうするつもりだったんですか?」

 

「ほら、チョッキリ団の使命はキラキラを奪う事。人々のキラキラを一箇所に集めれば効率良くキラキラから闇……クラヤミンダーを生み出せる……。そう思って計画したんです」

 

「そんな……酷い」

 

とうとう自らの計画を話すバッサリーナ。その瞳からは申し訳なさが滲み出ていた。そう、レイが前日彼女と一対一で話した時に感じたように。

 

「でも、本気でやろうと思ってたらあんなに迷うような心は見せないはず。……躊躇いがあったんですか?」

 

「当たり前ですよ!私だってこんな事間違ってるってわかってる……。アイドルプリキュアのファンとして、同じファンからキラキラを奪ってはいけない事くらい……。ファンとして最低な事をしてる事ぐらい区別できますよ……」

 

「だったらどうして……」

 

バッサリーナは悔しそうに顔を俯かせると拳を握り締める。それから己の内に溜めていた気持ちを吐き出した。

 

「私は……幼い頃からずっとアイドルや女優に憧れてました……。テレビの向こう側でキラキラしてて、観る人々の心を奪うそんな存在……私はそんな風になりたかった。けど、それを目指し始めた学生時代から親にはずっと反対され続けていて……」

 

バッサリーナは学生時代に親へと自分の決意を語ったものの、親から良い返事を貰うことができず。それどころか反対ばかりされてきた。悔しさを感じた彼女はそれでも見返してやると言わんばかりに強く気持ちを訴え続けた。

 

「幼い頃から会社を継げって口酸っぱく言われてきたこともあって……その頃の私はきっと親への反抗心が強かったんだと思います。勿論それとは別で夢に向かって走りたい気持ちはあったんですけどね」

 

バッサリーナが強く強く主張を続け、更に自分が努力している所も親に見せてきたお陰で彼女は自分の夢に反対する親を押し切るとどうにか援助をしてもらえるようにはなった。

 

「やっとスタートラインに立って、絶対に反対してきた親を結果で見返す。……そう思って私は頑張ってきましたが……やっぱり現実は非情で」

 

バッサリーナはその日からどうにか芸能界へとデビューするために必死になって芸能界に挑み続けた。しかし、どのオーディションも落ちるばかりで成果無し。勿論、自分と同年代の人達の中にはどんどん有名になって世間に浸透していく者もいる。

 

「悔しいんですよ……。私だけ置いていかれてる気がして……努力してる時間が無駄に思えて!それでも最近まで頑張ってきました……なのに!」

 

バッサリーナが努力を重ねている間、実家の会社にいる両親は彼女が成果を出せていない事を全て見ていた。今まではずっと努力するバッサリーナに免じて許されてきたものの、もう何年も彼女が芽を出せない様を見てこれ以上は……となってしまったのだろう。

 

しかし、バッサリーナにとってその言葉は今一番聞きたく無い事だった。夢への道を自分で諦めるのであればまだしも、他人からその道を閉ざされてしまう事を良しとしなかったのである。

 

「……カゲ先輩、バッサリーナさんは……」

 

「正直、レイの時よりもかなり深刻な状態だな。アイツの時も諦めるのに時間がかかったけど……。バッサリーナさんはもう引き返せない段階に来ちゃってるから」

 

「でも、このままなのは可哀想だよ……」

 

影人、うた、こころは悲痛な思いを語るバッサリーナを心配したような顔つきになる。そして、そんな時だった。チョッキリーヌからの誘いが来たのは。

 

「そんな私の前に、チョッキリーヌ様は私に世界を暗闇に染める道を示してくれた……。世界が真っ暗闇になれば、私の夢を邪魔する人はいなくなる……。私は心ゆくまで夢を追いかけられる!だから、だから……」

 

「えっ……バッサリーナさん……それ、本気で言ってるんですか?」

 

ななは思わずバッサリーナの言葉に反応。それは、世界が真っ暗闇になった後に彼女は夢を追えるという話。影人達からしてみればまるで意味がわからなかった。

 

「当たり前ですよ!チョッキリーヌ様が世界が真っ暗闇に染まったら私の夢を邪魔する人はいなくなるって!そう教えてくれたの!」

 

「そんなの、嘘だよ!世界が真っ暗闇になんか染まったら……あなたは夢を追う事なんてできなくなっちゃう!」

 

ななが慌てた様子でバッサリーナへと反論するとバッサリーナは彼女からの言葉に困惑。そして、ななの言葉に影人達が反対意見を言わないために余計に頭が混乱する。

 

「嘘よ……嘘!私を元の居場所に呼び戻したいからって、そんな出鱈目を……」

 

「出鱈目なんかじゃ無いメロ!」

 

「そうプリ!世界が真っ暗闇に染まっちゃったら、夢も希望も無くなっちゃうプリ!」

 

バッサリーナのトンデモ発言に加えて、彼女が自分の意見が正しいと信じて疑わないという姿勢に流石に影人達も困惑してしまう。

 

「バッサリーナさん、今ならまだ引き返せます。俺達と一緒に……」

 

「戻ってどうするの……。どうせ戻ったとしても、私にはもう夢を追いかける事なんてできない……。それに、もし仮に戻れたとして……私は本当に幸せって言えるの?親のコネで入った家族が社長の会社。右も左もわからない状態で一からスタートして。才能の無いくせに親のゴリ押しで入れただけの役立たずって言われて……」

 

バッサリーナはそう言って崩れ落ちると瞳から光が消えてしまっていた。そして、同時に彼女は後悔を口にする。

 

「こんな事になってしまうのなら、頑張らずに諦めてれば良かったのに……。アイドルや女優なんて……目指さなきゃ良かったのに!!」

 

その瞬間、バッサリーナの体内から大量の闇が溢れ出す。それは彼女の中に溜め込まれていた負の感情がとうとう抑えきれずに暴発した結果だった。

 

そして、彼女から溢れ出る闇を空中で見守る影が一人。それはバッサリーナの様子を見に来たジョギだった。

 

「なるほどねぇ。迷いが吹っ切れただけでここまでの闇を放出できるなんて……。チョッキリーヌ先輩にしては珍しく当たりを引いたみたいだ」

 

ジョギは闇に身を任せたバッサリーナの潜在能力がここまでとは思っておらず。彼女を誘ったチョッキリーヌの見る目が確かだった事に笑みを浮かべた。

 

その一方で、闇のせいで半ば自棄になってしまったバッサリーナを見たこころが彼女へと声をかける。

 

「バッサリーナさん、落ち着いてください!」

 

「どうせもうダメなの……。アイドルプリキュアみたいになんて私にはなれない……。これからの私の未来なんて真っ暗で……もう何もかも終わりなの!!」

 

バッサリーナは錯乱してしまっており、とうとう自分の未来まで否定し始めてしまった。この様子に影人達はどうにか彼女を呼び戻そうとする。

 

「バッサリーナさん、そんなに悲観しなくても大丈夫です!」

 

「まずは落ち着いて、それからゆっくり話をしましょう!」

 

「話……。話をして何になるの……。もう私とあなた達は敵同士だってわかったのに」

 

バッサリーナはもうこれ以上の話をするつもりは無いと言わんばかりの顔つきである。だが、影人達は話を終わらせたく無かった。

 

「そうかもしれません。……でも、今のバッサリーナさんを放ってなんておけませんよ」

 

「アイドルプリキュアの全国ツアーの話だって、折角持ち込んでくれたのに……このまま企画を捨てちゃうなんて勿体ないよ!」

 

「だから、あれは嘘だって言いましたよね!?何でまだ信じてるんですか!」

 

バッサリーナは真面目な口調が荒くなる程に動揺し、影人達に八つ当たりすると言わんばかりの声を上げる。

 

「……だって全国ツアーをやりたいって語っていたバッサリーナさん……とてもキラッキランランだった……。あの瞳が嘘だなんてそんな事ありません!」

 

うたの言葉を聞いてバッサリーナは目を見開いてから体を震わせる。そこには怒り、悲しみ……そして、嫉妬だった。

 

「そう……。そうやってキラキラしてるあなた達は良いわよね……。他人の事を気にする余裕があるのだから……私如きがちょっと輝けたからってそうやって上から目線で……。ずっと泥水を啜ってきた私の気持ちを踏み躙って……」

 

「ッ!?私、そういう意味で言ったんじゃ……」

 

「……止めろ、咲良さん」

 

「でも……」

 

うたがバッサリーナの誤解を解こうとするが、それを影人が静止して止める。彼は今のバッサリーナがどういう状態なのかを察していた。

 

「今のバッサリーナさんはさっきまでとは明らかに違う。……チョッキリ団の話をする前まではまだ自分の純粋な気持ちで話してた。けど、今のあの人は闇の心に完全に支配されてる!」

 

影人の言う通り今の彼女の心を支配しているのはオーディションに落ち続けた事や家族に呼び戻された事、アイドルプリキュアに向けた負の感情。それらの闇の心が充満して爆発してしまっている。

 

その心のせいで今すぐに周囲の人々に危害を加えてもおかしく無いくらいだ。それでも彼女がここで大暴れしないのは彼女自身の真面目な心がまだほんの少し残っているからだろう。

 

「私はアイドルプリキュアのファンとして沢山あなた達を推してきた。いつまでもキラキラ輝いてほしい。……けど、私はチョッキリ団……。もうあなた達に私の行いなんて応援してもらえない……。あなた達の光は受けられない」

 

バッサリーナはまるで諦めたかのような絶望しきった顔つきで話す。彼女の心は闇に染まると瞳から涙をポロリと溢した。

 

「アイドルプリキュア……今ここで、私の邪魔をするあなた達を倒します」

 

すると、闇が無ければ使えないダークランダー召喚用の水晶がひとりでに浮かび上がるとそれがバッサリーナの体内へと吸収。同時にダークイーネの物と思われる闇のエネルギーが彼女の影から湧き出すとそれがバッサリーナへと取り込まれていった。

 

「う……あぁ……がぁあああっ!」

 

「そんな、バッサリーナさん……」

 

ダークランダーの水晶を取り込んだバッサリーナの姿はカッティンやザックリンがチョッキリ団にいた際に変化した怪物と同じようにロボットに似た物になっていく。

 

四肢は太く強靭になり、体は金属のような硬い物へ。頭部もカッティンダーやザックリンダーのように元の変身者の姿を機械風にアレンジした物となる。彼女の眼鏡はバイザーのような物に変化。ただ、カッティンダーやザックリンダーとの相違点として全体的に女性の体つきの影響か、両者よりも全体的に細いシルエットだった。加えて胸にあった赤い鋏も一回り小さくなっている。

 

その代わり、胸の辺りには女性に存在する二つの果実をモチーフにした丸みを帯びた物体が存在していた。加えて、彼女の趣味の影響か腰にはベルト帯や真ん中に赤い鋏のような紋章もある。

 

「バッサリンダー!」

 

彼女が変身した怪物の名はバッサリンダー。そして、バッサリンダーのバイザーが赤く発光すると影人達を睨みつける。

 

「マジか……幹部が怪物化したらこうなるとは何となく思ったけど……」

 

「バッサリーナさんもカッティン達みたいに……」

 

バッサリンダーはプリキュアである影人達を完全に敵として認定しており、衝突は避けられない物になりつつあった。

 

「もうこうなった以上はやるしか無い……」

 

「うん、レイ君は危ないから下がってて」

 

「ああ……。皆、頼むぞ」

 

ななが変身できないため戦えないレイに離れてもらうと影人達はバッサリンダーと向かい合う。そんな中でジョギがバッサリンダーを見ながらその力の高まりを感じていた。

 

「この高まり方。もうダークランダーの力に慣れたって所かな……。ホント、最初に見た時は何でこんな闇を知らない真面目そうな奴を入れたのか疑問だったけど……。ダークイーネ様が引き入れるだけある。何なら、ザックリーとかいう奴が変身したザックリンダーよりも強いんじゃないかな」

 

バッサリンダーの潜在能力にジョギが嬉しそうに笑う一方で、影人達はそれぞれ変身するためのアイテムを構えると変身する事になる。

 

〜おまけ NGシーン〜

 

バッサリンダーが降り立った直後、その姿を見た影人達。そんな中で影人はバッサリンダーのある場所を見た……いや、見てしまった。

 

「バッサリンダー!」

 

「マジか……幹部が怪物化したらこうなるとは何となく思ったけど……」

 

「……カゲ先輩良いですか?」

 

そして、影人の向く視線の先を見たこころは彼が何を見ているのか察すると不機嫌そうな声色で話しかける。

 

「何だよ、ここ……」

 

「カゲ君、さっきからバッサリーナさんのどこを見てるんですか?」

 

「どこって……胸のあた……あっ」

 

影人はこころに問われて反射的に答えを返してしまう。そう、彼がバッサリンダーの降臨時に思わず胸を見てしまったのだ。そして、その胸には機械仕掛けだが、男性に無くて女性にある大きめな二つの果実がしっかりとあった。こころは彼氏がその大きめの胸を見ている事を知るとすぐさま瞳からハイライトが消えた。

 

「ふーん、やっぱりカゲ君が好きなのは大きい物なんですね……すみません。私彼女なのに物足りない大きさで」

 

「いや、こころ落ち着け。そういうつもりなんじゃ……」

 

「影人最低メロ……」

 

「メロロン!?だから誤解だって!」

 

こころだけで無くメロロンにも軽蔑の目を向けられて慌てる影人。そんな彼等のやり取りにうたは慌てる。

 

「うえっ!?ちょっと三人共!?今はそれどころじゃ無いって!ほら、ななちゃんからも……」

 

このままでは戦う前に内部崩壊しかねない状況を見たうたがななに助けを求めようとするが、彼女も彼女でレイへと視線を送っていた。

 

「レイ君?」

 

「なな、どうし……」

 

「レイ君は変に女性の胸とかジロジロ見たらダメだからね?」

 

「え、ちょっ。俺は別に……」

 

「見たらダメだからね?」

 

「は、はい!畏まりました!!」

 

ななからの冷たい目線を向けられて脅迫されたレイは思わず彼女へと敬語を使ってしまう。ななも壊れてしまい、うたは唖然とした。

 

「嘘、ななちゃんも!?」

 

「うた。ななやこころ、メロロンは何で怒ってるプリ?」

 

「うえっ!?え、えっとねこれは……」

 

プリルンは何故うた以外の女の子三人が怒っている事態になっているのかわからず。そのため今一番手が空いているうたに質問するが、うたはどう返して良いかわからずに混乱してしまう。

 

「バッサリンダー……」

 

こうして、バッサリーナを救わないといけないという大事な状況なのに影人達は混乱状態に。そして、バッサリーナもこの異常な光景に思わず唖然としてしまうのだった。




今回ラストでNGシーンを入れましたが、これを本編でやってしまうとバッサリーナを救わないといけないという大事な状況なのに色々と雰囲気が台無しになってしまうので番外編的なIFルートとしてやりました。

なので、最後のNGシーンは本編とは全くの無関係です。加えて、このNGシーンの世界線での影人は戦いの後にこころからのお説教及び、数日間口を聞いてもらえないの刑を受けた形となります。

ちなみに、本編で影人がバッサリンダーのどこを見て台詞を言ったのかについては読者のご想像にお任せします。

それではまた次回もお楽しみに。
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