キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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レイからのバッサリーナへの説得

暴走するバッサリンダーに対してレイがアイドルプリキュアの力を借りると闇に呑まれて瞳に光が失われて虚な目をしたバッサリーナが姿を現したた。そして、すかさずレイが声を上げる。

 

「バッサリーナさん、聞こえてるなら返事をしてください!」

 

レイが何度か声をかけるとバッサリーナは僅かに目線を声をかけてきた彼へと向ける。そして、その動きにレイは目を見開くと反応を返してくれた事に笑みが浮かんだ。

 

「バッサリーナさん、話はまだ終わってません。勝手に闇に染まらないでください!」

 

「話が終わってないって……これ以上何を話すの……」

 

バッサリーナは小さく呟くように力無く答えを返す。そんな彼女にレイは更に話を広げようとする。

 

「アイドルプリキュアは……いや。俺はあなたに前を向いて欲しいんです!」

 

「前を向く……?そんなの、今更無理に決まってますよ……。私なんてもうあなた達からして見たら敵でしか無い」

 

「それは違います!アイドルプリキュアはあなたを消そうなんて少しも考えてない。むしろ、あなたに笑顔を取り戻して欲しいんです」

 

レイはどうにかバッサリーナと話をしようとするが、当のバッサリーナ本人にその言葉は届かない。今のバッサリーナを引き戻そうとするならまずは話を聞けるような状況にしないといけない。

 

「……ふぅ。だったら、俺の話をします。あなたが過去を語ったように俺にも過去がある」

 

それからレイは自分が夢を追いかけて来た事、それは親の影響で握り潰されてしまった事。それでも前を向けるようになった事。バッサリーナは全てを聞き終えると自虐するように呟いた。

 

「そう……。それは良かったですね……。私と違って前を向けるようになって。所詮、私なんか……」

 

「……バッサリーナ!そう言って目の前の現実から逃げるのかよ!!」

 

レイはそこまで説得するためにできる限り優しい言葉をかけて来たが、それが全く持って効果を示さない。それどころかバッサリーナ本人が自虐するような顔つきになったために彼はアプローチを変えるべきと判断。バッサリーナへと強い口調で指摘する。

 

「ッ……あなたに……何がわかるんですか……そうやって周りに助けられて、支えてもらって……。私にはもう何も無い!今実家に戻ったって誰も私の事なんか……!」

 

バッサリーナはレイからの言葉に乗ると負の感情が強かったものの、話自体はしてくれるようになった。加えて先程までの無気力だった彼女がしつこいレイを敵視するようになったために彼を睨みつける。

 

「ッ、レイ先輩どうして……」

 

「いや、アレで良い。さっきまでと比べたら話せるようになっただけマシだ!」

 

キュンキュンはレイがバッサリーナを煽った事に疑問符だったが。ソウルビートはレイの意図を理解していたためにそう補足する。

 

「バッサリーナさん。どうしてあなたは誰も支えてくれないって決めつけるんですか!」

 

「だって、私は家族にアレだけ反対されたのに自分の我儘を押し切って……。それで結果が出せなかったんですよ!?そんなの、家族から見限られたから戻って来いって……」

 

「その後あなたは家族と一度でも会話をしましたか?一度でも家族と直接会ってその反応を見たんですか?」

 

レイが訴えるように問いかけるとバッサリーナは驚いたような視線を向ける。どうやら、レイの指摘した通りバッサリーナは未だに家族と話を一度もしていないらしい。

 

「ッ、そんなの私を罵ってくるに決まってます!私なんかが出来るはずないって思ってたって。私の事を受け入れてくれるなんて……」

 

「それは違うだろ!」

 

レイがバッサリーナへと大声で意見を否定。それを聞いたバッサリーナはその声の大きさにピクリと反応して改めてレイの方をしっかりと向く。

 

「……えっ」

 

「……あなたの事を嫌ってたら……家族はあなたの活動のために資金援助をしてくれたり、実家に戻って来いなんて……そんな事言いませんよ」

 

レイからの指摘を聞いてバッサリーナは困惑する。自分はずっと家族から嫌われてきたと思っていた。バッサリーナは幼い頃から両親の方針に反発し、自分は役者の道を目指すと言って聞かず。半ば無理矢理両親を納得させて家を出た。そのため、家族は自分の事を大嫌いだと思っていた。だから結果を出して見返すまでは帰れないと。自分の言った事が正しいと証明しないといけないと躍起になったのだ。

 

「嘘……嘘よ……私の事を心配してるなんて……。そんなはず無い!そんなはず……無い……」

 

バッサリーナは頭が真っ白になっていくような感覚に陥っていた。これでは今まで自分が馬鹿みたいに悩んできた事が無意味に思えてきてならないからである。

 

「アイドルプリキュアの事を推すようになったのも元を辿ればそれが理由だと思います。家族に助けてもらえなくて、誰も頼れない中で自分の心を応援してくれる。そう思えたあなたはアイドルプリキュアを好きになった」

 

「あ……あぁ……」

 

バッサリーナはレイから鋭く指摘された影響で瞳に少しずつハイライトが戻り始める。

 

結局の所、彼女は頑張る自分を応援してくれる何かが欲しかったのだ。長い間自分一人で頑張り続けたせいで己の心が壊れかかったタイミングで自分の支えになってくれたアイドルプリキュアに恩を感じたバッサリーナは応援してくれるお礼として彼女達を推す道を選んだ。

 

しかし、そこに自分を嫌っていると思われる家族からの強制的な帰宅命令が来てしまったせいで自分は家族から見捨てられたと思ったのだ。いつまでも結果を出せないような自分に構うだけ無駄だと家族に思われた……そう決めつけたバッサリーナは心を更に追い詰めてしまう。

 

だからチョッキリ団にその闇を付け込まれてしまったのだと察せられる。同時にアイドルプリキュア相手に自分は助けられた恩を仇で返したと感じたバッサリーナ。その顔が青ざめていく。

 

「私は……私はなんて事を……」

 

バッサリーナは自分がやろうとした事に対する後悔の念が急激に高まっていく。

 

「バッサリーナさん。そんなに責任を感じなくても大丈夫ですよ?」

 

「で、でも……」

 

「アイドルプリキュアはそんな程度であなたを応援するのを止めたりなんてしませんから」

 

しかし、それでもバッサリーナは自分の勝手な思い込みのせいでアイドルプリキュアに八つ当たりしてしまった事。加えてアイドルプリキュアに全国ツアーをするなんて嘘を吐いて騙してしまった事。自分の失態の責任感に追われてしまう。

 

「私のせいで……私のせいで、アイドルプリキュアは……」

 

「……バッサリーナさん。あなたはどうしたいんですか?」

 

レイはこれ以上変に突くとバッサリーナが更に余計な責任を感じると思ったのか、また攻め方を切り替えてきた。今度はバッサリーナ自身の気持ちを問いかけたのである。

 

「私は……私は……」

 

「……結局はどれもいつか向き合わないといけない現実なんです。俺だって夢を捨てさせられたのは辛かった。でも、だからってその事に向き合わないと何も解決しない。あなたが現在から逃げたいのなら逃げれば良い。今すぐ向き合えないのなら少しくらいなら顔を背けても良い。それでもいつかは面と向かい合わないとダメなんですよ!」

 

レイは前に進めないバッサリーナを後押しするように叱咤激励。そして優しく彼女へと話しかけた。

 

「……俺の自慢の彼女は……昔、勇気を出して踏み出さないといけない場面で一歩目が出せなかった。でも、大切な友達から勇気のおまじないを教えてもらって最後には勇気を出して自分から踏み出したんです」

 

レイは自分の彼女であるななが一歩を踏み出した時の事を例として提示。それを受けてバッサリーナは呟くように話す。

 

「一歩……踏み出す……Win-Winウインク……あっ……」

 

バッサリーナはそれを聞いて一瞬だけウインクの方を向くと彼女はバッサリーナへとファンサであるウインクを見せた。

 

「だからあなたも勇気を出して向き合ってください!ずっと逃げてきた家族との対話を……あなたにならできます!」

 

その言葉はレイにとっても強く刺さる言葉だった。自分はサウンドプロダクションの社長にして父親であるハジメとあまり向き合えていなかった部分もある。だが、だからこそバッサリーナにはちゃんと向き合ってほしかった。

 

「アイドルプリキュアはあなたが自分の気持ちで決めた事ならきっと応援してくれる。こんな姿になったしても……バッサリーナさんはアイドルプリキュアのファンなのだから。ファンを応援するのはアイドルとして当然の行動だと思いますよ」

 

目の前にいる家族と、ずっと目を背けてきた現実と。そして、アイドルプリキュアはそんなバッサリーナが闇に染まって決めた事では無く、自分自身で考えて決めた事であればそれを最後まで応援してくれると後押ししたのである。

 

「私を……応援してくれる……」

 

バッサリーナの瞳から涙がこぼれ落ちると彼女の中のハイライトが戻って来た。これにより、バッサリーナは自分の意思を取り戻したのだ。

 

「……やった!」

 

「バッサリーナさんの意識が戻った!」

 

「これなら浄化させられる!」

 

バッサリーナの意識が戻った今であれば浄化してダークランダーの水晶を消し去ればバッサリーナは元の人間として戻って来れるはず。ソウルビート達はバッサリンダーの拘束を解除すると彼女は両腕を広げてプリキュアからの浄化技を受け入れようとする。

 

「お願い、アイドルプリキュア。私を……」

 

『何故勝手に逃げられるとでも思っている?』

 

「……え?」

 

そんな時だった。バッサリンダーの脳内にダークイーネの声が響くとバッサリンダーの影からダークイーネの赤黒い闇が溢れ出した。

 

「ッ!?あれって!」

 

「またですか!?」

 

「ダークイーネ……」

 

ソウルビート達もダークイーネの登場に気がつくとバッサリーナはダークイーネへと慌てて言葉を返す。

 

「ダークイーネ様……私はもうここにはいられません。私を心配してくれている人達の所に帰らないと……」

 

『ふん。自分の闇に負けて妾達の元に擦り寄っておいてこのザマか。本当に身勝手が過ぎるぞ?』

 

「ッ……それは……」

 

ダークイーネに痛い所を突かれてバッサリーナは顔を曇らせる。そして、ダークイーネは彼女を睨みつけるように冷たく言い放つ。

 

『これだから人間は身勝手なのだ。あれだけ自分の深い闇に呑み込まれていたのにアッサリと立ち直って……。貴様はわかっていないから教えてやろう』

 

「えっ……」

 

『今貴様が取ろうとしている選択は自らを更に苦しめる事になる。これが最後通告だ、バッサリーナ。妾を裏切るか考え直すか答えを聞こう』

 

ダークイーネは威圧するようにバッサリーナを牽制。それは抜けたら許さない……という彼女の意思にも近い物だった。

 

「ッ、バッサリーナさんは自分の道を……」

 

『ふん。雑魚は黙っていろ』

 

レイがバッサリーナへと脅迫を止めるようにダークイーネへと言うが、ダークイーネはバッサリンダーの影から黒い影を伸ばすと生身であるレイへと直接攻撃しようとする。

 

「させるか!」

 

ソウルビートはレイの肩を掴むとすぐにその場から離れる事で回避。その一秒後にレイのいた場所にだけ地面から闇が吹き出した。

 

『む……』

 

「ソウルビート、ありがと」

 

「……」

 

そんな中でソウルビートは僅かに戦慄を覚えていた。そのためレイからの言葉に返事を返せずにレイはソウルビートへと改めて声をかける。

 

「ソウルビート?」

 

「ッ、ああ悪い……」

 

「どうしたんだ?」

 

「……ダークイーネの攻撃を見て思ったんだ。今のは多分レイだけを狙った攻撃だから庇えたけど……もし広範囲にアレをやられたら対処できないんじゃ無いのかなって」

 

『ほう?』

 

ソウルビートの予感にダークイーネは僅かに関心を持った様子だった。そして彼女は小さく呟く。

 

『流石にスラッシューが認めた男。アレだけで妾の力の片鱗を察するとはな』

 

ダークイーネは周囲に聞こえない声で話すと改めてバッサリーナへと問いかける。

 

『……そろそろ答えを出してもらおう。バッサリーナ』

 

「……ッ。私は……私は、このまま闇に負けたくなんかありません!」

 

バッサリーナは文字通りバッサリとダークイーネからの言葉を拒否した。それはレイに直接気持ちをぶつけてもらったお陰で彼女の中に深く根付いていたモヤモヤが解消されたのも大きいのだろう。

 

ただ、そんな答えにダークイーネは当然納得がいかないわけで。彼女は失望したような声色でバッサリーナへと宣告する。

 

『……なるほど、あくまで妾を裏切るつもりか。ならばもう貴様は必要無い』

 

バッサリーナの答えにダークイーネはもう彼女を必要としないと判断。地面から飛び出した闇がバッサリンダーへと鎖として巻き付くとバッサリーナを無理矢理闇に呼び戻す。

 

「ッ!?きゃあああっ!」

 

『せめてアイドルプリキュアを倒し、妾の役に立って見せろ。バッサリーナ』

 

「アイドル……プリキュア……助けて……!」

 

バッサリーナは呑み込まれる刹那に自分の意思でアイドルプリキュアに助ける事を求めた。同時にバッサリンダーは核であるバッサリーナが戻った事で再起動してしまう。

 

「バッサリンダー!」

 

しかし、バッサリーナが最後に残してくれた言葉をソウルビート達はしっかりと受け止めていた。

 

「皆、聞いたか?」

 

「うん。バッサリーナさんの気持ち。受け止めたよ」

 

「私達のキラキラで助けよう!」

 

ソウルビート達はバッサリーナに助かりたいというちゃんとした意思がある事を確認。絶対に彼女を助け出すという気合いを入れる。

 

「レイ君、バッサリーナさんを説得してくれてありがとう」

 

「ここからは任せてください」

 

「ああ。頼むぞ」

 

「絶対に闇から助け出す」

 

こうして、六人は今度こそバッサリーナを完全に救出するために動き出す。助かりたいという意思を示してくれた彼女を救うために。




また次回もお楽しみに。
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