キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

260 / 329
結局今回はアニメ31話に入る前の繋ぎ的なエピソードになりました。なので、まだアニメ31話には戻りません。それではどうぞ!


影人の調べた昭和のアイドルユニット

バッサリーナこと桜庭花に関連する事件がひと段落したその日の夜。影人は自室でワイヤレスイヤホンをしながらある動画を観ていた。

 

「………」

 

そこにいたのはステージの上に立つ二人のアイドルの姿である。一人は黄色いドレスを着て髪をポニーテールに纏めた可愛らしい女性であった。また、ポニーテールに纏めている髪には大きめな黄色いリボン。そして、その雰囲気はうたに何処かしら似ているようにも思えた。

 

そして、もう一人は水色の衣装を着て黒髪のセミディヘア。瞳の色は青色で少し暗めだったものの、それでも彼女は儚く咲き誇る美人のようだった。ポニーテールの方の人と比べるとアイドルとしての明るさは足りてなさそうだったが、それでも歌に対してひたむきで。ポニーテールの子を引き立てる役としてハモリのコーラスを歌う事で二人の歌には周りを惹きつける魅力が溢れていた。

 

「ふと動画を観てたら見つけたけど、昭和時代のアイドルってこんな感じなのか。映像とかも古そうだし、多分当時の動画だと思うけど……」

 

影人が観ていたのは昔のアイドルと呼べる存在だった。今は大人数で歌うアイドルグループが凄まじく増えた影響で覚えきれないという人も多くなる中、昔はアイドルというのは少人数の方が多いイメージが合うらしい。

 

「……右の人。Utakoさんか。名前が似てるのは偶然だと思うけど、咲良さんに似た感じがするな。彼女の歌が周りにいる人全てを照らして笑顔にしている」

 

Utako。昭和時代を代表すると言っても良いアイドル。二人組のアイドルとしてデビューしてから僅か数年でトップアイドルとして上り詰めた彼女の歌は全てを魅了する程の力に溢れていた。

 

「レジェンドアイドルの響カイトさんとは別の方向性だけど……この時代に生まれてたら、カイトさんと同じかそれ以上。それこそレジェンドアイドルの座が彼女に取られててもおかしくない」

 

影人はUtakoの歌がそれだけ周りの人にとって自分達を照らす太陽のような明るさを持っているのだと画面越しながらも感じ取る。

 

「そして、左側のこの人。Kotoneさん」

 

影人がUtakoの隣で歌う女性に目を向ける。彼女の歌声はUtakoと比べると明らかに見劣りしてしまう。何と言えば良いのだろうか。歌の上手さは勿論ある。しかし、歌に自信が無いせいかUtakoにある周りに与えられる強い輝きが無いのだ。その代わりに彼女の歌は相方のサポートに特化しているイメージがある。

 

「彼女のサポート無しでは多分Utakoさんの歌は100%……いや、この動画みたいに120%以上の歌声にはならないと思う。メインは張るのはキツいかもしれないけど……引き立て役としては完璧過ぎる仕事をしてる感じ」

 

影人はUtako単独の歌唱動画も観てみたが、違いは一目瞭然だった。Utako一人だと確かに歌は凄いと思えるが、歌に存在する音の厚みが二人の時と比べるとやはり劣ってしまう。

 

「まるでアイドルとしての光と影って感じの……二人が揃って初めて真価を発揮できるアイドルユニット。確か名前はUtaKotoneだったか。二人の名前を繋げた安直な名前だけど、それが二人の関係性の深さを表しているように見えて俺は好きなネーミングだよ」

 

影人は二人の奏でる周囲の人全てを魅了してしまう美しい歌声に惚れてしまっていた。ただ、同時に影人の中にある疑問が湧く。

 

「まぁ、この二人の評価はその辺にして……。気になる事が幾つかあるな」

 

それから影人の視線はUtako……では無く、隣にいるKotoneに向く。影人は彼女の雰囲気に何処となく見覚えを感じていた。

 

「Kotoneさん……何回見てもやっぱり似てるんだよな。スラッシュー……いや、天城切音さんに」

 

影人の感じていたKotoneに対する既視感。それは、チョッキリ団の方にいるスラッシューの人間として擬態していた姿。天城切音に。

 

「勿論髪色や瞳の色が違うし、纏っている雰囲気がKotoneさんと比べるともっと闇寄りだから別人と言えば別人だけど……。どうも引っかかるんだよなぁ。名前も偶然一致してるし」

 

勿論、Kotoneという名前は芸名に当たる名前なので本名では無いという事。更に言えば彼女は昭和時代にあの若い姿なのだ。現在まであの若々しい姿を保つのは幾ら若作りの技術が進化した今でも無理である。

 

「うーん……でもなぁ……」

 

影人は何か大事なピースが揃えばこの違和感も解決するのかもしれないと悩んだ。そんな中でふとある事を思い出す。

 

「そういえば、このアイドルユニット。調べる時に候補の中に失踪ってあったけど……何か事件に巻き込まれたのかな」

 

そして、影人が検索サイトでUtaKotoneの失踪事件について何か無いか検索するとそこには目を疑うような記事が掲載されていた。

 

「ッ……はぁ!?」

 

そこに書いてあったのは日本中を虜にした伝説のアイドル・Utakoが海水浴中に行方不明になったというニュースだった。日付は今から約40年前の夏のある日の事。当時、歌を聴いた誰もを魅了した日本を代表する有名ユニットであるUtaKotoneの二人は忙しい日々の合間に出来た僅かな休みの日に海水浴に出かけた。

 

その際に二人は不運にも波に攫われてしまう。それから少しして、Kotoneは波打ち際に流される事で最初はぐったりしていたものの奇跡的に生還。しかし、Utakoに関してはその後付近をどれだけ捜索しても見つからず。その後暫くして死亡扱いされてしまったようで。日本中が彼女のあまりにも早すぎる死を惜しむ事になった。

 

「……なるほど、ここまで日本中を虜にしたアイドルが何で今語られていないのか……。そりゃあ、こんなにも早くいなくなってしまえば語られる事もなくなっちゃうよな」

 

この事件が40年前であれば何事も無ければ彼女達は今でも生きているはず。だが、Utakoに関してはもう生きてないとなればどうしても時間がその記憶を風化させてしまうのだろう。

 

「それで……Kotoneさんの方は……」

 

影人はひとまず、もう一人の方であるKotoneについての記事を探す。すると彼女も約一年程後に行方不明になってしまったらしい。彼女がいなくなる直前に相方であるUtakoの亡くなった海に行ったという話を聞いた関係者もいたらしく。もしかすると彼女の後を追ってしまったのかもしれないという憶測までネットで立てられるぐらいだった。

 

「……Kotoneさんもか。二人揃って早くにこの世界から去ってしまって……。だから今でも彼女達のアイドルとしての輝きは記録に残っているだけの伝説になってるのかもな」

 

どちらにせよ、影人は二人の伝説のアイドルの輝きをサイトの記事で見ただけだが目の当たりにした。そして、うたの事を思い浮かべる。

 

「咲良さんは……大人になったらアイドルになるのかな?いや……夢の話をした時はやらないって言ってたし。まだ今はやるつもり無しか」

 

ただ、もし彼女がアイドルをやりたいと言い出したら……。このような最期は迎えてほしく無いと影人はそう考える事になる。

 

「はぁ……。何でこんなにこの記事を見て胸がザワザワするんだろ。……やっぱりさっき引っかかった通りでスラッシューと何かしら関係があるのかな」

 

影人は少し考え込むが、これ以上考えても仕方ないという事で一旦この件について考える事は止めることにするのだった。

 

同時刻、チョッキリ団アジトでは……。チョッキリーヌがやらせない顔つきでバーの机に突っ伏している。

 

「はぁ……。今度は何を間違えたんだい」

 

「あら?チョッキリーヌ。何をしてるのかしら」

 

「別にアンタにはどうだって良いだろう?」

 

チョッキリーヌは珍しくスラッシューから揶揄われても大きな反応を返さなかった。

 

「折角誘ったバッサリーナが速攻で抜けてしまった事に落ち込んでるんですよ」

 

するとバッサリーナがいなくなった件について事の顛末を知ってるジョギがスラッシューへと事後報告をする。それを受けてスラッシューは目を細めるとチョッキリーヌへと話しかけた。

 

「ふーん。それは気の毒だったわね」

 

「……アンタにしては珍しく皮肉を言わないんだね……」

 

相変わらずチョッキリーヌが力無くスラッシューへと話す中で彼女も仲間がいなくなる事にはやはり思う所があるのか呟く。

 

「そうね……。今回はあなたの接し方が悪いせいでいなくなったんじゃ無いのだから別にとやかく言うつもりは無いわ。……ただ」

 

「ただ?」

 

「……私だって大切な人がいきなりいなくなる事の辛さはよくわかってるつもりよ……」

 

チョッキリーヌはスラッシューの言っている事の意味がわからずに思わずキョトンとしてしまう。するとスラッシューはそこまで言った所で我に返ったのか首を横に振る。

 

「ッ……私、何言ってるのかしら……。何でも無いわ」

 

スラッシューはそう言ってその場から立ち去っていく。それを見届けたジョギはやはり何かを感じたようで。

 

「(スラッシュー様、また思い出しかけちゃってるし……。しかも今回はプリキュアがいない場所で……。もう封印し続けるのも限界なのかなぁ。ただ、ダークイーネ様は何故かスラッシュー様を切ろうとないし……。僕も凄い気になるよ。スラッシュー様がどういう経緯でここに入ったのか)」

 

ジョギはここまでボロを出しまくってるスラッシューをダークイーネが側に留めておきたい理由を知りたかった。バッサリーナの方は割とアッサリと見捨てていたために余計に気になってしまうらしい。

 

「……チョッキリーヌ。あなたは暫く休みなさい」

 

「……それはどうしてだい?」

 

「その精神状態だと暫く出られないでしょう?少しの間休めば良いわ」

 

スラッシューからの言葉にチョッキリーヌはやはり違和感を感じてしまう。ザックリーがいなくなった辺りからスラッシューは人が変わったかのように残酷な性格になっていたはず。それなのに何故弱り切った自分を心配するような言葉をかけたのか。

 

これではまるで彼女の人格が二つあると言われてもおかしく無いだろう。そんなチョッキリーヌの心境を他所にスラッシューはジョギの前に立った。

 

「そんなわけで、ジョギ。今度はあなたに任せるわ」

 

「はいはい。ただ、俺にも準備があるんで。少しだけ時間は貰いますよっと」

 

ジョギはスラッシューからの要請に割とアッサリと了承。これには彼の中にある思惑も関係していた。

 

「(チョッキリーヌ先輩はあんな風だし、正直今のスラッシュー様に出張られるとまたアイドルプリキュアの影響を受ける。そう考えると消去法にはなるけど僕が行くのが妥当だろうね)」

 

チョッキリ団の上司二人組はそれぞれ出られないとなるとやはり自分が行かないといけない事はジョギ自身もわかっており、むしろ自分で無ければまともに戦えないとさえ思っている。だからこそ怠そうにしつつもやる気は出す事にした。

 

こうしてチョッキリ団の方での動きが決まる中、再び場面は影人のいる黒霧家。ただし、部屋は夢乃の方である。彼女は今現在、ドリーム・アイとして歌ってみたの配信中だった。

 

「は〜い、今歌ったのが“○わいいだけじゃだめですか?”だね」

 

夢乃はドリーム・アイとして夏休みの間はできる限り配信頻度を増やしてきた。ただ、それも今回がラスト。彼女も夏休みが終われば学校があるので配信頻度はどうしても減ってしまう。そのため、今回は視聴者リクエスト型の歌ってみたをやる事にしたのだ。

 

「ん〜?“アイちゃん、前より歌うの上手くなった?”いや〜照れちゃうね〜。実は、ある企画のために歌の練習をしてて」

 

夢乃は緩い雰囲気のままそんな話を出すと視聴者達は即反応。驚いたようなコメントを上げ出した。

 

「“えっ!?マジ?”、“もしかして有名歌手とコラボ!?”他には……“やっぱり歌が上手くなったの気のせいじゃ無かった!!”えへへ……。詳細についてはまた解禁の時まで楽しみにしててね〜」

 

夢乃はアイドルプリキュアとのコラボのためのアカペラ練習をしている事はしっかり隠し通すとファンの視聴者達へと今後の楽しみを一つ増やした。

 

「えっと、何々……。“つい最近アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルが一つのチームとして合流したけど、アイちゃんはアイドルプリキュアのセンターって誰だと思う?”えーっと、アイドルプリキュアのセンターかぁ」

 

実は、アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルの合流に関しては結局六人でのライブ曲配信の準備に少し手間取った事もあってそれぞれがバラバラに告知する事になった。そのため、ファンの中の一人が声を上げたのである。

 

するとまたコメント欄が増え始める。そこには“真ん中にいるからキュアアイドルかキュアソウルじゃ無いの?”とか、“公言されて無いから他の子と交代する可能性もあるだろ”とか“キュアソウルじゃ無くて今はキュアソウルビートね!”とか。兎に角一瞬にしてコメント欄がアイドルプリキュアの話題に染まる。

 

「うーん。私はチーム合流の影響で一回話し合うのかな……なんて思ったりしてるよ。まぁ、今まで通りならアイドルかソウルビートって感じになると思うけど」

 

ただ、チーム合流の関係で立ち位置やら色々調整するかもしれないと思った夢乃。彼女は翌日辺りに兄へとアイドルプリキュアのセンターについて改めて話を持ち込む事にしようと考える。

 

「でも個人的な願望はキュアウインクかな……。私はウインク推しの人だし」

 

こうして、夢乃は夏休み最後のドリーム・アイとしての歌の配信をしつつアイドルプリキュアのセンターという話題についてファンと語り合うのだった。




今回はここまでですが、今回の内容に関してはまた色々と分かる方には分かる仕込みをしました。これもまたいずれ回収しますのでよろしくお願いします。そして、次回はアニメ31話の話に戻ります。それではまた次回もお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。