キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
グリッターの二階スペースに残った影人とこころの二人。そんな状態で向かい合って座っていた二人の内、まずは影人が先に話しかける。
「……それで。言いたい事、あるんだろ?」
「えっ?」
「見たらわかるって言うか。話の最後の方だけは聞いてた。アイドルプリキュアのセンターについてだろ」
「……聞いてたなら言わなくてもわかるじゃないですか。先輩は……何でそんな頑なにセンターをやりたがらないんです?」
こころは改めて影人へと何故センターをやらないのか問いかける。彼女としてはやはりセンターは影人にやって貰いたい。ただ、その意見をあの場所で言えるのなら堂々と言っている。
それは、昼休みのあの場所で影人が自分から進んでセンターをやるつもりが無さそうな返事だったために余計にこころは言うのを躊躇ってしまったからだ。
「……別にやりたく無いわけじゃないんだよ」
「だったら余計に何で……」
「さっきこころが自分で言っただろ?アイドルグループに必要なのはあくまで誰もが認めるセンター。俺が一人出しゃばった所で意味は無い。そりゃあ、他の人達が揃って俺じゃ無いとダメとか言ってくるなら話は別だけどな?」
こころはそれを聞いて唇を噛み締める。つまり、たった一人や二人が納得して影人ことソウルビートがセンターになった所で周りは納得してくれない。それどころか、もし他に適切な人物がいた場合になどなってしまえばファンからの不平不満は免れないのだ。
「……何で。何でダメなんですか……。カゲ先輩は輝いてますよ。アイドルプリキュアの中で一番を争えるくらいに。皆さんだって納得してくれるはずなんです。私が勝手に行くのとではわけが違うんですよ」
こころは影人に言われても納得してないようで。彼女はこのままでは影人が自らセンター争いの場から降りてしまうような気がして嫌なのである。
「ごめんな。……せめて、俺達の誰がセンターに相応しいかを可視化できれば良いんだけど……」
もうここまで来てしまうとアイドルプリキュアの中だけで勝手に決める……というわけにもいかないのかもしれない。
「先輩、もしファンの皆さんの意見を受けた上で……センターに相応しいという話になったら……受けてくれるんですよね?」
「……ああ。その場合はセンターをやるという事になっても良いよ。俺だってそれだけの証拠が揃ってるなら堂々とセンターとして出る事ができると思う」
こころは影人の言質を取ったと言わんばかりに頷く。そして今度は世間にアイドルプリキュアのセンターに相応しいのは誰なのかを聞くための案を考える事になるのだった。
時間が経過してこの日の夜。レイはハジメのいる社長室へと向かって行った。その際に部屋から一人の女性が出てくるのを見つける。
「……うん?」
その女性は茶髪のボブヘアで全体的に下に向かう程広がっている髪型をしており、ピンクに近い瞳。大学生ぐらいと思われるその女性は身長も高く、体つきも魅力ある大人の女性みたいな雰囲気を与えた。
「ああ、君が社長から聞いていた息子さんだね」
「……どちら様ですか?」
「私は藤代聖。今日はあなたの父親である社長に用事があって来たの」
レイはそれを聞いて困惑する。幾ら人としての性格が終わっているハジメと言えども、夜のこの時間帯に若い女性を連れ込んでのアウト行為をする程外道では無いと彼はわかっていた。ただ、レイはこの人を今日初めて見る。そのため、彼女が何者なのか。そして、何の用事で来たのかがわからなかった。
「藤代さん……。社長と何のお話を?」
「ああ、それなら大した話じゃ無いよ。ウチのアカペラグループに社長が興味を示したというだけ。まぁ、機会があったらまたあなた達と会うかもしれないけどね」
レイは彼女からその話を聞いてようやく全てが繋がるとその答えに繋がる回答を返す。
「アカペラグループ……藤代さん……まさかParabolaですか?」
「あら。あなた達もアカペラをやってると聞いたから知ってると思ったけど、知っててくれて嬉しい限りだよ」
その言葉を最後にアカペラグループであるParabolaのリーダー。藤代聖はその場から去っていく。
「マジか……。大学アカペラグループ最強の呼び声が名高いParabolaに興味を示したのか。ウチの親父は」
レイはそれを受けて何となく自分の父親のやりたい事が理解できた。ただ、それはあくまで先の話。今は社長室に入ることになる。
「失礼します」
「入りたまえ」
それからレイとハジメが対面するとその場の空気に緊張感が出ててその中で早速ハジメから話を始める。
「……さて、レイ。君が来てくれた事だし話を始めよう。話題は勿論、アイドルプリキュアのセンターの話だ」
「やはりお見通しなんですね」
「当然だろう?アイドルプリキュアとズキューンキッスソウルが統合して改めて決めなければならないのはグループの花形のセンターポジション」
「最初に言っておきますけど決めるのはアイツら自身ですよ?」
レイはハジメへと牽制するように釘を刺す。彼女達がセンターを決めるのにハジメに勝手に介入されては堪らないからだ。
「ふふっ、そう警戒しなくても。私はあくまで君達の自由を尊重するよ」
「では何故、わざわざ俺を呼んだんですか」
「……彼女達の監督者として置いた君の意見を聞いておきたくてね。どうかな?」
レイは内心頭を抱える。またハジメから試されているのだと感じたからだ。ただ、だからと言って答えられませんでは話にならない。そのため、ハジメが納得いくように話をする事にした。
「……俺は私情を抜きにした場合。現状維持のままが良いと思ってます」
「ほう、現状維持か。……という事はキュアアイドルとキュアソウルビートの二人が真ん中のままで良いと?」
「はい。……俺はあの二人だからこそアイドルプリキュアのセンターが務まると思っています」
それからレイはハジメへと理由を詳しく説明。そして、説明を聞いたハジメはうんうんと頷いていた。
「そうか。君の考えはよくわかった。……奇遇だけど、私も同じ答えだね。ただ、あくまでそれは最善の答えというだけだ。そこから先は君達に任せよう」
「………」
ハジメの答えにレイは内心ホッとする。ここで彼が変な口出しをしてくる危険もあったからだ。そしてそれが無かった今、レイは部屋から出て行こうとする。その瞬間、ハジメが声を上げるとレイを呼び止めた。
「レイ」
「……何ですか?」
「さっきのアカペラグループの人だけどね」
「藤代さんですか?」
「今後の流れ次第だが、彼女達のグループの支援もやろうと思っている」
レイはそれを聞いて思わず振り向いてしまう。今の世の中、アカペラというジャンル自体がマイナーで世間の音楽業界からもそこまで光を浴びていない。そんな物に何故ハジメが執着するのか。レイの脳は混乱する。
「それは……」
「まぁ、分の悪い賭けにはなるが……彼女達はこの先伸びる。そんな気がするからね」
「……社長がそう言うのでしたら……」
レイは何か言いたそうではあったが、それでも今の所はハジメ相手には正面切って反対できる要素は無い。そのため、複雑な気持ちを抱きつつも納得してその部屋を後にしていく事になるのだった。
それから場面が変わりつつ時間が経ち、深夜ごろ。咲良家では電気が消えてベッドに入ったうたは先程こころが話していた誰もが認めるセンターについて考えていた。
「(……もしウインクがセンターだったら……)」
うたは自分以外がセンターだった場合のシミュレーションをしており、まずはキュアウインクを思い浮かべる。うたがそれによって思い浮かべた光景は、まず得意なピアノを弾くウインク。続けて、彼女が主導で展開される清廉潔白な美しいライブステージ。スポットライトで注目を浴びた彼女が綺麗なお辞儀を見せる場面も浮かんでくる。
「キラッキランラン〜!じゃあ、もしキュンキュンだったら……」
次にキュンキュンがセンターの場合を考えると彼女は同じく得意のダンスでファンを魅了し、元気いっぱいな彼女の主導のライブ。六人の中で一番身長が低いというのもあってまるで一生懸命頑張る子供を見る親のような温かい目線も貰えるだろう。
「(キラッキランラン〜!それじゃあそれじゃあ。ソウルビートだったら……)」
最後にソウルビートがセンターの場合を想像。そこでは普段以上に光り輝いた彼がパフォーマンスをする度に湧き上がる空間が思い浮かぶ。そして、五人もそれに連動する形で完成度の高いライブステージとなっていくだろう。
「(キラッキランラン〜!うーん、どれもキラッキランランだね!)」
うたはズキューンやキッスのステージは先程想像したために一旦割愛すると考える。それは、やはり先程のこころの言葉の“誰もが認めるセンター”が大事であるという事。それを満たせるのは誰なのかと想像する。
「(……誰もが認めるセンター……あっ、そうだ!)」
うたはこの時、ある事を思いつく。誰もが認めるセンター。これを見つけ出すために必要な事を……。
翌日。学校に登校した影人が教室へと入ると早速既に登校していたレイが話しかけてきた。
「おはよ、影人」
「ああ。おはよう……あれ?咲良さん何してんだ?」
すると影人の視線の先には珍しくうたが熱心に机に向かっている状態である。そのため、影人は気になるとそこにななもやってきた。
「どうしたの?」
「いや、咲良さんが机に向かって真剣に向き合ってる所を見るのが珍しいと思ったからさ。何かやってるのか?」
「なら折角三人揃ったし見に行くか」
影人達は三人揃ってうたの席へと移動。するとそこでは彼女がとある紙を広げており、その中には六つの枠とアイドルプリキュア達の名前。そしてそれぞれのメンバーカラーのシールが枠内に並ぶ形で貼られていた。
「おはよう、うたちゃん」
「あっ、皆おはよう!」
「ッ、それって……」
「こころが昨日“誰もが認めるセンター”がいるって言ってたでしょ?だから、誰がセンターが良いかアンケートを取ってるんだ!」
それはアイドルプリキュアの中でセンターに相応しい人を問うアンケートであった。そして、そのアンケートこそ昨日影人が欲しいと思っていた周りの人達の客観的な意見を得るのに有効だった。
「……なんだよ、もう始めちゃったのか……」
「影人?」
「何でもねーよ」
影人は偶々だったが、うたの気の利いた行動に嬉しさが湧くとそれを彼女に悟られないように呟くのみに留める。
「ちなみに、はもりはキュアウインクだって!」
「本当!?」
「うん!」
ななはうたの妹であるはもりからキュアウインク推しだと聞いて嬉しそうな顔つきになると影人は隣にいるレイへと小声で声をかけた。
「レイも投票したいのなら投票して良いんじゃないのか?」
「……いや、俺達はアンケートを取る側だしそういうので意図的に操作したらダメだろ。咲良さんだって現に入れてないだろうからさ」
「俺としてはレイはアイドルプリキュアじゃないんだから別に入れても良いと思うんだけどな」
影人は少し勿体無さそうに答えを返すとうたの話を聞いてある案が浮かんだ。
「あと研究会の皆と……田中さん達にも聞かなくちゃ!」
「咲良さん。一個提案なんだけど」
「え?影人君どうしたの?」
「折角そうやって話を聞くならさ。アイドルプリキュアのファンクラブの公式ホームページとかでアンケート取ったらどうなんだ?」
それを聞いてその場の一同は納得したような顔つきになる。確かに今のままでもアンケート自体は取れるが、やはり聞ける人数に限りがある上に身内の分だけだと偏りが出かねない。
その分ファンクラブの公式ホームページからであれば全世界。アイドルプリキュアを知っている人なら全員がアンケートに参加可能。勿論、ファクラブ登録していない人も投票を可能にする事で更なる票と世間からの評価を見る事ができる。
「ただ、サイトを作るのならそれなりに手順がかかるし。田中さん達行けそうかな?」
「うーん。今すぐは厳しいかもな。田中さん達も色々準備してるから。……だけど、案としては悪くないと思う。俺もこの形式だと聞ける範囲と人数に制限がかかり過ぎると思ってたからな」
「おぉ!という事は、世界中の皆から見てアイドルプリキュアのセンターが誰が良いかを決めてもらえるってわけだね!超キラッキランラン〜!」
「うん。……やっぱり、影人君は他の人と繋がる事で誰よりも強く輝けるよね!」
アンケートという案を出したうた。そしてそれを上手く広げて世界規模ができるような案に昇華した影人。どちらも今回の件で良い案を出してくれたと言えるだろう。
「……ほんと、お前がセンターに相応しいのは普段から見せてるそういう所だって」
「ん?レイ、なんか言った?」
「何でもねーよ」
レイもそうやって影人が自らセンターをやりたがらないのに少し勿体無さそうな顔つきを見せていた。そんな彼が何かを言ったと思って影人が問いかけるが、レイは何でもないと返してしまう。
そんな影人達のやり取りを聞いていた妖精組はうたの鞄に付けられたポシェットの所から声を上げる。
「そういえばタナカーン達。確か今日は家にいないと思うのメロ」
「プリ?」
「そういえば、色々準備をしているんだって?」
うたはメロロンからの話に問い返す。そして、なながレイへと確認を取った。
「レイ君は何か知ってたりするの?」
「ああ。知ってるぜ。けど、その答え合わせは放課後にだな」
レイはこの場での説明を勿体ぶると今は学校であるために一同も話を終えることになる。
今回、分かる人には分かるクロスオーバー系のネタを仕込みましたが……一応今の所はこのアニメ作品とも多少話を交えようかなと思ってます。そのためにアイドルプリキュア×ドリーム・アイによるアカペラプロジェクトを仕組んだまでありますから。
果たしてこの辺りが今後どうなるか。次回の話も含めて楽しみにしてください。