キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
その日の放課後。影人、うた、なな、こころ、レイの中学生組五人はプリルン、メロロンの妖精二人と共に街中へと移動していた。目的地はそこにあるとある建物。そこに到着した一同は早速建物へと入った。
「「「ふわぁああっ!」」」
「プリ〜!」
「マジか。ここ最近田中さんや姫野さんがバタバタしてたのはそういう事かよ」
そこに広がっていたのは辺り一面に広がるアイドルプリキュアのグッズ達が綺麗に並んだ棚だ。キラキライト、クッションに団扇、アクスタ、缶バッチ。正面にはアイドルプリキュア六人の全身の絵やこのお店の名前が壁に描かれていた。
ここは正に、アイドルプリキュアのグッズが全て網羅されているお店と言っても過言では無い場所である。その名も……。
「アイドルプリキュアの公式ショップ。プリキュア・プリティストアメロ!」
「わぁ……」
「アイドルプリキュアのショップ!?」
「待ってました!キュアアイドル達のグッズ!心キュンキュンしてます!」
「プリ〜!」
こころは目の前にずっと待ち望んでいたアイドルプリキュアのグッズがあるという事実を見ただけで大興奮。そのまま駆け出すとプリルンも後に続くように飛んでいった。
「なるほどなぁ。田中さんや姫野さんがメチャクチャ頑張ってた理由に納得が行った」
「一応夏休みに入った頃ぐらいからちょくちょく準備は進めてたけど、やっと開店にまで漕ぎ着けられたよ」
このプリキュア・プリティストアの開店はこころがアイドルプリキュアに入る直前。はなみちタウンにあるアイドルストアでこころがアイドルプリキュアのグッズが無いことを嘆いたあの時の事を受けて、前々からずっと話を進めていた。
そして、少しずつグッズ商品の制作を進めていきここでやっと開店する段階まで来られたのだ。
「とは言ってもズキューンとキッスは他三人と比べて登場が遅かったからグッズはどうしても少なめになっちゃうし、ソウルビートに至ってはつい最近名前や姿が変わったばかりなせいでほぼグッズが前のキュアソウルのままだけどな?」
このストアにあるソウルビートの全身絵も開店直前になって彼の改名が入ったせいでどうにか手直しする方向になってしまった。そして、その他諸々のトラブルを乗り越えて無事にオープンしたのである。
「タナカーン、ヒメーノが張り切って夜な夜な準備してて。このお店は二人の頑張りの結晶なのメロ」
「「はい!」」
すると、メロロンの言葉に合わせる形で田中と姫野が返事をしつつこのお店の店員の服を着た状態で出てくると二人はそれぞれ名刺を差し出してきた。
「アイドルプリキュアのマネージャー兼、グリッターのアルバイト兼、プリキュアプリティストアの店長の田中です」
「ドリーム・アイのマネージャー兼、サウンドプロダクションの社員兼、プリキュアプリティストアの副店長の姫野です」
「いやいやいや、自己紹介の文が長いですって!」
「掛け持ちし過ぎ!?」
影人とうたは幾ら二人が仕事熱心だからと言って役職を二つも三つも兼ねるなどという無茶をしている事に思わずツッコミを入れてしまう。
「お二人ならやりそうだとは思いましたけど、本当にやるなんて……」
「お店のオープン前にアイドルプリキュアが六人に纏まってくれたのは思いがけない幸運でした」
「そりゃあ、二つのチームのままだったらもっと長いですよね。このお店の名前とかその名刺に入っていた文字数とか」
事実、ほんの少し前までアイドルプリキュアとズキューンキッスソウルでニチームになっていたために今回二つのチームが合流してくれたのは田中にとって都合の良い展開だったのは間違い無いだろう。
「事務所と事務局も改名しましたしね」
そして、アイドルプリキュアが一つに纏まってくれた事にはもう一つ利点があった。それは、プリルンとメロロンが出張所から出て行った事で表札を変える事ができた点である。そのため、今の出張所の名前は“アイドルプリキュア事務所・オフィシャルファンクラブ事務局”であった。
「我々もこれから忙しくなりますよ!」
「ね、お二人共」
田中と姫野が振り返るとその視線の先にいたのはレジのカウンターの奥。お店の裏方に続く物陰から二人の男性が出てきた。そして、その二人は影人達も見知っている。
「これも推し活……いえ、推し事ですぞ!」
「めんどくせぇが、ザックリ手伝ってやるぜ」
「おお、カッティンにザックリン。二人が店員として入ってくれるんですか」
その二人は他でも無い人間態となったカッティンとザックリンである。二人は浄化された後も人間態への変身ができるのは再会した際にわかっていたが、そのおかげでこうして足りない人員として補充できるようになったのである。すると、うたが二人の左胸辺りに付いているものを見て声を上げた。
「あ!缶バッチ可愛い!」
「ザックリンのはウインクですね!」
「た、偶々だよ!」
カッティンはキュアアイドルの缶バッチを、ザックリンはキュアウインクの缶バッジをそれぞれ付けている。ただ、ザックリンの方はこころに指摘されて少し恥ずかしそうな様子だった。
「ファンの皆さんが話しかけやすいようにと」
「確かに、店員さんがファンだってわかっていた方が話はしやすいだろうし。良い判断だと思う」
レイが二人の判断を尊重しているとうたは嬉しそうな顔つきを見せてから例の件を聞く事に。
「嬉しいな……あ、そうだ!アイドルプリキュアのセンターって誰が良いと思う?」
「ふむ……自分はやはり、キュアアイドルが良いと思うのですぞ」
「ふふっ、ありがと!」
「推しですもんね。それで言うとザックリンはキュアウインクですか〜?」
するとこころはザックリンを揶揄うような目線で見つめる。それを受けてザックリンは恥ずかしそうな顔を更に赤らめて声を上げた。
「お、推しじゃねーし!」
「相変わらずのツンデレムーブだなぁ……」
「キュアウインクの缶バッジを三つも付けてるのメロ」
「め、メロロンテメェ!」
ザックリンの反論にレイが“やれやれ”と言わんばかりの顔をするとメロロンがザックリンの胸に付いたウインクの缶バッジが三つもある事を指摘。ザックリンは思わず声を上げてしまった。
「ほ、本当ですか!?」
「こ、こ、こ、これは……ザックリ選んだだけで!?」
ななが嬉しそうな顔をするとザックリンはかなり焦ったような反応を見せてしまう。そのためこころは更に追撃を入れた。
「でもキュアウインクがセンターだったら……?」
「だからでも関係ねぇよ!!キュアウインクの奴、ザックリどこにいたって眩しいし……」
「キュン!ザックリンさん……」
ザックリンはメチャクチャに恥ずかしがりながらキュアウインクへの愛を語るとななは嬉しさのあまり応援を受けるアイドルとしてときめいてしまう。
「この話は終わり!!」
「あー、終わりにしたい所悪いけどな。……ウチの彼女を誘惑した罪だけはしっかり問わせてもらおうか?」
「……What!?」
ザックリンはレイからの宣告を受けて唖然としてしまう。これに関しては仕方ないだろう。何しろファンとしてアイドルを褒めるためとはいえななを口説こうとしたと思われてもおかしくない言葉をかけた挙句、当の本人がキュンとしてしまったのだ。当然レイだって文句の一つや二つは言いたいだろう。
「い、いやでもキュアウインクが照れたのは本人の意思で……」
「は?その前に口説こうとした奴が何言ってんだ?」
言い訳を続けるザックリンに対してレイの目からハイライトが消え始める。ザックリンはそんなレイに詰め寄られてしまうととうとう彼からお叱りを受けてしまうのだった。
「覚悟は良いだろうな?」
「えっ、ちょっ。ザックリ言って理不尽過ぎないか!?」
「レイ、怒るのも良いけど程々にしろよ?」
「わかってるって。そのくらいは加減できるっての」
影人達はレイに怒られるザックリンに同情の視線を向けつつも、話を次に進めるために一旦は置いておく事になる。そして、話は田中にも振られる事になった。
「田中さんと姫野さんは?」
「私は……マネージャーなので選べません」
「あっ……確かに……」
「真面目ですね」
田中はアイドルプリキュアのマネージャーという事であくまで中立公平な立ち位置になる形を取る。そして、もう一人のサポート役。姫野の方は……。
「私は……ソウルビートが良いと思ってます」
「……はい?」
「ですよね!!」
「何でこころはそんなに食いついてるんだよ」
姫野が言い出したのはソウルビートをセンターとして推すという事で影人が唖然とする一方、こころはこれ幸いとばかりにすぐに彼女を援護する動きを見せた。
「姫野さんはソウルビートが良いと!」
そんなわけで姫野達の票を追加した所で現在の得票数を見てみるとキュアアイドル、キュアソウルビートの順で僅差のツートップ。他の四人は少し離れてほぼ互角の票数であった。
「やはりこうして見ると今のままが良いファンの人が多めではあるよね」
「カゲ先輩、これでもカゲ先輩はやりたく無いって言うんですか?」
「……そりゃあ今の時点ではそうだけど……」
やはり歯切れが悪そうな影人。一応この後に田中や姫野が作れれば世界中のアイドルプリキュアファンに誰がセンターが良いかの投票をしてもらう事になるのだが……。影人はそれでも自分から進んでセンターをやりたそうには見えなかった。
「俺よりもアイドルプリキュアのセンターに向いてる人は幾らでもいるだろうにさ」
「いないからこうしてお願いしてるんじゃないですか」
「……はぁ」
影人は溜め息を吐いてしまう。前までアイドルプリキュアやズキューンキッスソウルのセンターポジションにいながら、自分の光を信じているはずの彼がどうしてもやりたがらない理由がこころにはわからない。
「カゲ先輩は自分のキラキラを信じるって言って、キュアソウルビートになって……こうして立派にセンターを務めてるじゃないですか」
「……確かに外面だけ見ればな。だけどズキューンキッスソウルの時はともかく、アイドルプリキュアには俺以上に眩い光を放つ人がいる。それに輝きだけなら蒼風さんにも、こころにもあるだろ」
影人の言い方は自分の輝きがその三人に劣っているような言い回しにも見えた。強い輝きを持つ者二人がセンターにいればそれで十分。影人が拒否する理由をこころは悔しそうな顔で聞いていた。
「……こころ。影人に無理に薦めるのは止めた方が一回良いんじゃないか?」
「レイ先輩まで……」
そこにいつの間にかザックリンへのお積極が終わったレイが戻ってくる。こころが納得いかなさそうな顔を見せる中で彼は考えていた。
「……正直俺も影人がセンターポジションをやるべきって気持ちは同じだ。だけど、本人が嫌がってるのに無理矢理やらせても長続きしないだろ。本人のモチベーションが下がるくらいなら一旦薦めるのは止めるべきだ」
こころはレイに諭されて一度落ち着くと悲しそうな顔つきを見せる。レイの言うことは最もだとわかっている。わかっているからこそやるせなかった。
「そうだ、田中さん」
「はい」
「アイドルプリキュアのセンターアンケートの件。行けそうですか?」
「ええ。どういう物かのアイデアを貰えれば」
「……でしたら私がメインで主導します」
姫野がアイドルプリキュアのセンターアンケートをホームページに作る件を聞いた直後に自分に任せて欲しいと立候補する。
「しかし……」
「確かに私はアイドルプリキュアのマネージャーではありません。ですが、田中さんはそれ以上にやるべき事が沢山あります。こういう雑用的な仕事ならそこまで深く関われてない私でもできますし」
「わかりました。姫野さん、概要はまた送りますができる限り早めにお願いします。センターアンケートは今すぐにでも欲しい物なので」
「はい、二日間貰えるならその間に他のやる事も含めて片付けますよ」
レイは仕事の事になると頼もしい姫野の支援に感謝しつつ、田中へと向き合う。
「田中さんもよろしいですね」
「え、えぇまぁ。……あ、それとは別でこちらからも。テレビの方から出演の依頼です」
「おお!また情報番組ですか!?」
「はい。以前にうたさんと影人さんが出た番組に今度は六人全員で来てほしいとの事で」
「本当プリ!?」
それを聞いてプリルンは嬉しそうに目を輝かせる。この反応から彼女は前回、アイドルプリキュアとしては出られなかったので余計に出たい気持ちが強いのだろう。
「プリルン、やる気十分だな」
「勿論私達もやる気満々ですよ!」
「ねえたまが出たいのならメロロンも頑張るのメロ」
そして、レイはななの方へと視線を送ると彼女もそれに気がついて聞いてきた。
「レイ君、どうしたの?」
「今回のテレビ出演だけど、試しでセンターを変えようと思う」
「えっ!?」
「センター争いをするのならまずはその場所で活動するという意味を早めに知った方が良い。だからチャンスがあればできる限り順番で回す。まずはキュアウインクからだ」
「う、うん。わかったよ!」
ななは緊張したような声色ながらも、センターを決めるためという事で一時的な仮センターとして出る事に決定した。
「それ以外のメンバーだけど……。咲良さんは影人のポジションに、影人はななのポジションに移る形で変える」
「わかった」
「オッケー、任せて!」
つまり並び順は正面左側から見てキュンキュン→キッス→アイドル→ウインク→ズキューン→ソウルビートとなるだろう。
「普段慣れないポジションでのテレビ出演になるが、皆。頼むぞ」
レイの掛け声に一同は力強く答えを返し、こうしてアイドルプリキュアは今週末の休みにあるテレビ番組への出演の件について備える事になるのだった。
また次回もお楽しみに。