キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
プリキュアプリティストアの件から数日後の土曜日。アイドルプリキュアの六人はテレビ局にやってきていた。勿論今回はプリキュアとしての出演なので全員が変身済み状態での現場入りとなる。引率はレイと田中の二人。レイはマネージャー見習いとしての参加だ。
尚、ここにはいない姫野は勿論自分の仕事があるために今回は不参加である。
「あ、アイドルプリキュアです!この度は……」
「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」
今回はセンターポジションにななことキュアウインクが決められているために現場入りの際の挨拶やらはウインク主導でやる流れになっていた。これもセンター確定までの暫定的な措置とはいえ、こういうセンターの子がやるべき仕事を早めにやる事で少しずつ慣れておこうという狙いの元やっているわけである。
「ここがテレビ局の中ですか……」
「わぁ、面白そうな機械がいっぱい……」
「ズキューン?下手にウロチョロして放送事故にしたら許さないからな?というか、それだけで仕事が来なくなるから。前にも言ったけど、頼むから変な真似はすんなよ?」
ズキューンはやはり変身しても中身はプリルンから変わらない様子であり、改めて見たテレビ局の中に好奇心が爆発してしまっていた。そのためソウルビートが改めて脅すような声色で念押しする。
「もうソウルビートはお堅いなぁ……」
「このグループ全体のために注意してるんだよ」
「お姉様、あまり変に目立つと今度からここに来られなくなります。お姉様もそれは嫌でしょう?」
「はーい」
ズキューンはキッスにもフォローされる形でどうにか納得はしてくれた。ソウルビートからしたらズキューンに変な真似をされるのは本当に冷や汗ものである。ただし今回の彼は前回のテレビ出演である程度慣れたのか、緊張は薄めだった。
他のメンバーについてはアイドルは当然としてズキューン、キッスも一度来ているというのが大きいのかこの三人は平気そうである。問題があるとすれば……。
「うぅ……初めてのテレビ局でセンターポジション。私がチームを引っ張らないとなのに……」
「ここがテレビ局の中……偶に番組の特集とかで撮影現場の裏側とかは観ますけど、実物はやっぱり空気感が違いますね……」
「ウインク、キュンキュン。大丈夫だ。もし二人が失敗しても俺達は六人チーム。お互いの失敗はカバーし合おう。仮にミスしても誰か一人でもカバーできればそれはミスにならないから」
ウインクとキュンキュンにとっては初めてのテレビ局内部。しかもウインクはいきなりセンターポジション。そうなるとどうしても緊張感は出てしまう。そんな二人をソウルビートが落ち着いた様子でしっかりフォローしていた。
「……やっぱり、ソウルビートは……凄いのに……」
そして、フォローされた二人の緊張感が少しだけほぐれるとキュンキュンは僅かに悲しそうな顔をしてソウルビートの事を見る。
それから今回の出番についての段取りが説明される。自分達の出演は“ドドンとはなみち”というコーナー。六人になったアイドルプリキュアの方にスタジオ内でインタビュー形式のように幾つか質問が投げられるような感じだそうだ。
「この前は一瞬の出番だったけど、これはそこそこ長そうな感じだな」
「ああ。一応向こうから質問に関してはある程度提示はされてる。ひとまず出番までに答え方を絞っておくのと、誰が答えるかについてをアナウンサー側にできれば伝えてほしいという事だ」
これに関しては進行をスムーズに行うための仕込みだろう。質問に対して誰が答えるかがわからないのと、最初から誰に対して質問すれば良いかをわかっている状態ではアナウンサー側もやりやすさが大きく違うのは間違い無い。そのためある程度出番のある時間まで考える流れになった。
「ソウルビート、お前も余裕はまだ無いと思うけど……」
「ああ。できる限りは支える。ウインクもキュンキュンもしっかりしてるから、ある程度までなら大丈夫だと思うけど……ヤバかったらフォローするから」
ソウルビートは前回のテレビ出演よりも余裕が残っている今回は緊張し過ぎないようにしながら他のメンバーのフォローもできるようにする状態で臨むことを第一に考えて挑む事に。
そして、時間が経過してとうとうアイドルプリキュアが出番の時間となった。
「続いては、ドドンとはなみち!話題のアイドルプリキュアが、六人で初登場です!」
六人での合体技の際に歌う曲である“キミとシンガリボン”をイントロに流しつつアイドルプリキュアの六人が紹介されるとその姿が映される。その際のポジションは前列にキュンキュン、ウインク、ソウルビート。後列にキッス、アイドル、ズキューンが並ぶ形だ。
「こ、こんにちは。わ、私達……」
「「「「「「アイドルプリキュアです!」」」」」」
まずは紹介されたという事でウインクが音頭を取る形で挨拶……なのだが、ウインクの元々の性格が引っ込み思案なのと今回の出演に対する緊張感の影響で声が震えてしまっていた。
ただ、それでもそこまで大きな違和感は無かったために撮影はそのまま続行。ウインクのこの緊張感もまだデビューして時間が経ってない新人だからこその反応として捉えてもらえたらしい。
「それではまず、キュアウインクに。チームが六人になって良かった事はありますか?」
「え、えっとぉ……」
ウインクは事前に話を聞いていて質問はわかっていたはずなのだが、上手く答えを返せていなかった。これは彼女自身が緊張しているのが大きいのだろう。
「ろ、六人に増えた事で華やかさが増した所……です!」
「そうそう!六人になってもっとキラッキランラン〜な感じ!」
それを聞いてレイは撮影セットの外から様子を見て眉間に皺が寄るとソウルビートは内心頭を抱えてしまう。
「(アイドル待て!?今はお前の番じゃ無い!!)」
「では、ズキューンに質問ですがアイドルプリキュアに合流してみてどうですか?」
「うーん、合流してみて……。私はアイドルプリキュアの事が好きだったから入れて最高って感じ!」
ズキューンも割と怪しかったが、答えとしてはちゃんとしているのでその言葉に周りは一安心である。
「キュンキュンへの質問ですが、六人での新曲はバトンのパフォーマンスがあったと思います。あれを練習するのはかなり大変だったと思いますが……その練習はどうでした?」
「バトンのパフォーマンスは、とにかくできるまでひたすら反復練習でしたね。特に片手で回しながら歌っているので……え、えっと……」
キュンキュンは答えを返す途中で台詞を忘れかけてしまう。そのため答えが不自然になってしまう。このままでは不味いという事でレイがもしものために準備しておいたカンペを出そうとする。
「とても難しかったけど、その分達成感は凄かったかな!お陰でキラキラしてる皆の笑顔が見られたし」
「(またかよぉおおっ!?)」
ソウルビートはまたアイドルが一人で勝手に出しゃばったことに唖然としてしまう。ただ、だからと言ってそれを顔に出す程ヤワでは無い。そのためどうにか感情を押し殺す。
こうして色々とあったものの、無事に撮影が終わると一同は撮影スタッフに挨拶をして移動。それからアイドルプリキュアのための楽屋内部。そこに戻ってきた六人のプリキュアが出演を終えたというわけで中に入ると休んでいた。
「お疲れ様〜。ウインク、センターどうだった?」
「うん、緊張しっぱなしだったよ〜。アイドルがやってた事って凄かったんだって実感できた」
特にウインクは今回が初センターポジションという事で彼女の疲れが一番大きいように見て取れる。
尚、ズキューンとキッスは一足先に変身解除すると妖精であるプリルン、メロロンの状態で楽屋の方に用意されていたお弁当を美味しそうに食べていた。
「センターが正式に決まるまで、皆で順番にやるという話にして。トップバッターがウインクになったけど……やっぱりいきなりテレビはハードルが高かったかな」
「ううん。それでもセンターをやるならいずれは全部の現場でやらないといけないし……むしろ貴重な経験ができて良かった」
レイが少し申し訳なさそうにウインクへと話すと当のウインクは特に気にしていない様子である。
「いつもと違う立ち位置、新鮮でした!」
「ふふっ、次は順番的にキュンキュンセンターだね!」
「うっ……。まぁそうなっちゃいますよね……。今回台詞を途中で忘れてしまっていて。なので、次回はリベンジのために頑張ります!」
アイドルに笑顔でそう宣告されてキュンキュンはその事実を受け止めて緊張感で一瞬だけ固まってしまうが、それでもアイドルプリキュアのためと頑張る事を決意。するとその際にレイがアイドルへと指摘をした。
「それと、今回のアイドル。少し反省点があるぞ」
「うえっ!?私?」
「ああ。……今回のセンター、ウインクがやっただろ?」
「えっと、そうだね」
「センターというのはグループで一番目立つポジション。つまり極端な話、他のメンバーはウインクを立てないといけないんだ」
レイの話を聞いてアイドルは自分の行動を振り返ると顔が少しだけ凍りつく。
「あっ……もしかして」
「……そ。今回のアイドル、ちょっと目立ち過ぎてたんだよ。良い意味でも、悪い意味でもな」
ウインクをセンターポジションにしたとしても、それ以外のポジションがセンターの光を超える程に輝いてしまうとそれはセンターの意味を成さなくなってしまう。ファンからすれば目の前にいるセンターの子よりも目立っている他の子をセンターにした方が良いという事になるのだから。
「うぅ……でも、やっぱりどうしても質問されたら前に出ちゃうというか……」
「それ自体は悪い事じゃ無いんだけどな?でも、センターを変える以上は自分がチームの中心では無くなるという事。そして、新しくできたチームの中心を自分が一歩退いて立てるという事も必要になってくるんだ。今すぐは難しいかもしれないけど、これからもアイドルプリキュアが活動する上で必要な事だから……」
レイの言葉にアイドルは少しだけ納得がいかない顔つきを見せるが、それでもチームのためという事でその場では納得するしか無かった。
「うぅ……。わかったよ」
アイドルの言葉を聞いてレイは内心難しそうな顔つきを見せる。それは、キュアアイドルの存在感の大きさの問題だ。今まではキュアアイドルがセンターポジションにいてドーンと全力で存在感を放ち続けてきた。だからこそファン達はそんなアイドルに惹かれてチームとしてのアイドルプリキュアを推してくれた人も多い。
……しかし、他のメンバー五人の誰かが仮にセンターをやるとして。今度は逆にアイドルの存在感の大きさが裏目に出ている感じが課題として浮き上がってきたのである。
「(……それにしても、アイドルプリキュアが四人チームだった時からアイツはずっと気を遣ってたんだよな)」
それからレイはチラリとソウルビートの方を向く。思えば、彼のプリキュアとしての特性は周囲を含めたキラキラのコントロール。
アイドル達初期メンバー三人が単独でクラヤミンダーを浄化した際も彼がキラキラをコントロールして上手く個人個人の力だけを強化して上乗せしたためにパワーが劣る単独浄化技でも上手く行っていたという経緯があった。
「(……ホント、悔しいけど親父の予想した通りだな。アレだけチームに貢献してて結果を残しているのに……本人はセンターをやりたがらないとか勿体無さ過ぎるだろ)」
レイはアイドルプリキュアが四人チームだった際もアイドルとソウルビート*1のダブルセンターをやっていたのにチームがバランス良くなっていた理由がやっと理解できた感覚である。
「……光にとって影に徹する役は最も必要で重要な人材なんだな……」
レイはそう小さく呟くとソウルビートのやっていた役割を考えた。するとアイドルプリキュアの楽屋が突然“コンコン”とノックされる。
「はーい!どちらさ……うえっ!?」
「何だよ、騒がし……ッ!?」
アイドルがノックに対して対応しに行くと扉を開けた先にいる人物を見て思わず驚いてしまう。
「嘘、カイトさん!?」
「今来るのか!?ヤバい!」
そこに来たのはレジェンドアイドルの響カイトである。そしてソウルビートは丁度プリルン、メロロンの妖精コンビがお食事中という事で動きまくっている事を考慮してすぐに対応。
「お疲れ様!」
「レジェンドアイドルスマイル……」
そんな時にカイトからの笑顔を受けたアイドルがその光にやられる中で彼女も妖精コンビが動いている事に気がつく。
「ッ、ヤバっ!」
「すみませんカイトさん。ちょっと中の方は収録終わったばかりでバタバタしているので、外でお話ししましょうか」
「そっか。それで構わないよ」
アイドルが慌ててプリルンやメロロンを見られないようにフォローしようとした時、彼女が対応する前に中から出てきたソウルビートがカイトとアイドルを前に押し出す形で楽屋の外に出るとすかさずその扉を閉める。
「ソウルビート……」
「ひとまず話は外でするよ。中でしたら色々とバレる危険があるし」
ソウルビートはさりげなくアイドルへと小声で話をする形で彼女へと今回の事への補足説明を入れる。そのためアイドルも納得してくれた。
ソウルビートはアイドル一人ではカイト相手に対応し切れないと判断したため、少しでもボロを出さないようにするためのフォローである。そして、二人は楽屋の外でカイトとしっかりと向き合って話をする事になるのだった。
また次回もお楽しみに。