キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
テレビ局での出演を終えたソウルビート達アイドルプリキュアの楽屋にやってきたレジェンドアイドルの響カイト。そんな彼にソウルビートとアイドルが楽屋の外に出る形で対応する。
「カイトさん、どうしてここに?」
「俺も収録があったんだ。映画の宣伝でね」
それを聞いて二人はカイトの後ろに貼ってあったポスターを見てここ最近公開された映画にカイトが出ている事を思い出す。
「ああ、映画!」
「そういえば、ありましたよね。タキシード姿で仮面を付けた正義のヒーローが主人公のアクション映画」
「ふふっ、そうだよ。まだ映画は観てないよね?」
「そうですね……。まだ観てないです」
カイトからの問いにうたが答えを返すとカイトは六枚のチケットを差し出した。それは、アイドルプリキュアの六人で映画を観られるようにするための映画のチケットである。
「はい、良かったら観て」
「良いんですか!?ありがとうございます!」
「すみません、気を遣ってもらって」
アイドルがカイトからのチケットに嬉しそうな声を上げるとソウルビートが彼に気を遣わせたと思って申し訳なさそうに話す。だが、彼はそんなに気にしてないようで微笑むと彼がここに来た目的と思われる事を聞き始めた。
「そういえば、さっき番組に出ているのを観たけど、今日は立ち位置が違うんだね」
「あぁ、はい!いつもは何となく私がセンターだったんですけど、ちゃんと決まるまでは固定しない方が良いのかなって」
「へぇ……」
それを聞いてカイトは納得してくれたものの、少しだけ疑問があるような顔つきを見せる。
「カイトさん……。どうしてそんな顔を?」
「ああ、ごめんごめん。深い意味は無いんだよ。だけど、今までずっとセンターが決まって無かったのはちょっと意外だなって」
「あはは……ダメですよね……私達アイドルなのに」
「うーん、俺はソロ活動のアイドルだからその辺りの事情に詳しくは無いし……。他のアイドルグループの中には曲毎でセンターを変えてる所もあるから」
「あー……そんなアイドルグループもいましたね……」
それを聞いてソウルビートもピンと来た様子である。そのアイドルグループは今はメンバーが相当増えており、今は最盛期を過ぎて減速気味ではあるが40人規模のメンバーが所属。そうなると、できる限り多い人数を使うために曲毎での選抜メンバーとその中でのセンターが決められるパターンもある。
何にせよ、センターを決める事情をソロ活動のアイドルであるカイトは知らないのでそこまで厳しい指摘は無かった。するとアイドルは向こうから話しかけてくれたのは丁度良いと言わんばかりにそのセンターについてのアンケートをカイトにもする事にした。
「ちなみにカイトさんは誰が良いと思います?」
「うーん、そうだなぁ……」
カイトが考えるような仕草を見せると少しだけ間が空いた後にアイドルとソウルビートを一瞬ずつ見る。
「………ッ」
アイドルはカイトに見られて少し気恥ずかしそうな顔を浮かべるとソウルビートの方は冷静な顔つきのまま。そして、カイトはそんな二人に答えを返す。
「君はどうなの?」
「うぇ?」
「確かに他人に聞くというのも良いけど、センターは一人ではできない。近くにいる大事な人を見ないと」
「カイトさん?」
カイトの言う事は正しい。センターは大人数でチームを組むからこそセンターとしての役割を果たせる。一人だけでは当然真ん中というポジションは発生しないのだから。そして、彼の言葉には妙な説得力があった。まるで自分が何処かで体験したような……そんな説得力である。
「……お互いを見れば、センターが誰かなんて自ずと見えてくるんじゃないかな?」
カイトはその言葉を残して背を向けて去っていく。そんな彼の言葉に唖然とした二人。その中でソウルビートはカイトの言葉の意味を考えていた。
「近くにいる大事な人を見る……」
ソウルビートの脳裏に思い出されるのは自分を強烈にセンターへと推薦するキュンキュン……こころの姿である。
「……なぁ、アイドル」
「ん?どうしたのソウルビート」
「俺は……センターをやっても良いのかな」
ソウルビートからの問いにアイドルはキョトンとした顔を浮かべていたが、彼へと笑顔で答えを返す。
「良いんじゃないかな。ソウルビートが何でセンターをやりたがらないのかはわからないけど、少なくとも今まではソウルビートがセンターでいてくれたお陰でチームが成り立っていたんだから」
ソウルビートは小さく頷くと二人揃って楽屋へと戻っていく。そんな中、二人の前から去っていったカイトは一人勿体無さそうな考えをしつつ自身の楽屋へと戻っている所だった。
「(キュアソウルビート。さっきのアイドルプリキュアのテレビ出演を局の中に設置された休憩所のテレビで観たけど、彼の存在は多分大事だ)」
それは本来、ソウルビートのポジションがしなければならないセンターに注目ができる限り集まるようにする行為を今回そこにいたアイドルができていなかったという事実についてである。
「(さっきのテレビ出演の時はキュアアイドルが思わずいつもの癖でセンターのキュアウインクの存在感を食ってしまっていた。多分、キュアアイドルはそういう場のコントロールに慣れてない。ダブルセンターをするのなら真ん中二枚の二人は陰と陽。センターを目立たせるためにもう一人の真ん中のメンバーはできる限り、センターの子と対比関係を作らないといけないんだけど……)」
ただ、アイドルにそれが向かないのは今回の件で明白だろう。彼女自身が存在感の塊みたいな物だ。だからこそソウルビートが今までやってきた場のコントロール能力が必要なのである。注目度のバランスを保ち、できる限り本命のセンターであるアイドルに注目を集めつつ、自分もしっかりと存在感を示す。そんな難しい役割だ。
「(多分アイドルプリキュアが六人グループ……偶数人数でやる限りは、彼の存在無しでは成り立たないと思うんだけどなぁ)」
カイトは本当に今のままセンターが交代してしまうのは勿体無さ過ぎる。どうしてもそう考えずにはいられなかった。ただ、その答えをプリキュア側に彼から言う事は無い。自分に甘えているようではアイドルとして成長は無いからだ。
こうして、彼も彼で複雑な心境になりつつも多忙であるために次の仕事に向けて切り替えていく。
こうして、この日のテレビ局での活動は終了してソウルビート達アイドルプリキュアは上手く仕事をやり切る事になるのだった。
翌日、チョッキリ団アジトでは未だにチョッキリーヌが無気力状態のままであった。しかもここ数日食事も満足に摂れて無いのかグッタリとさえひてしまっている。
そんな中で近くではバーにあった古いテレビにアイドルプリキュアの六人でのライブ曲映像を流しつつそれを観ていたジョギがいた。
『『『『『『重なる想いの強さを歌に乗せて〜♪届けるに来たよ Sing For You 照らしてみせる〜♪溢れる思いを残らず伝えるんだ〜♪どんなときでもYou and I 〜♪私とキミを結ぶキズナシンガリボン〜♪』』』』』』
「チョッキリーヌ先輩。下手したらこのまま死んじゃいますよ?」
「うぅ……私が何をしたって言うの……あの子の闇は本物だったのに……良い仲間になれたのかもに……」
「はぁ……。これじゃあチョッキリ団の上司としてかなり情けないですよ?先輩」
ジョギはチョッキリーヌに対してテレビを観ながら声をかけるが、彼女の返事は芳しく無い。そのため彼は面倒くさそうにしつつも、チョッキリーヌは直属で無いとはいえ上司であるので声をかけてやる気を少しでも戻そうとした。
「……はぁ、本当に見てられないわね。チョッキリーヌ」
そこにやってきたスラッシューはチョッキリーヌがグロッキー状態なのを見て呆れたような目線を向けていた。部下にいきなり逃げられてショックな気持ちはわからなくも無いが、このままではいつまでも働く事すらできない。
「……ジョギ、あなたはアイドルプリキュアの方をどうにかして。こっちはこっちでどうにかするから」
「スラッシュー様。良いんすか?」
「助けるのなんて面倒なのは私も同じ。……だけど、このまま見捨てたら私はきっと後悔するわ」
するとスラッシューの脳裏にある光景が浮かぶ。それは海の中で溺れて沈んでいく自分の手を掴み、必死に助けようとしてくれた一人のポニーテールの女性の姿だった。
「……ッ」
スラッシューはその際に僅かに頭が痛くなるが、そんなの気にしないと言わんばかりにジョギの方を向く。
「はぁ……。わかりましたよ」
スラッシューは指を鳴らしてその姿を人間としての物に変化させるとチョッキリーヌを背負った状態でその場から姿を消す。一連の動きを見たジョギは二人を見送ると考えていた。
「やれやれ……アイドルプリキュアが六人になったかと思えばチョッキリーヌ先輩は動けなくなって。……本当にあの人はお仲間がいないと何もできない人だなぁ……」
ジョギはグロッキー状態のチョッキリーヌに呆れたような感情を向けており、彼女自身の自業自得とはいえ今のやる気無し状態になったのを面倒そうに考えていた。
「……それにしても、アイドルプリキュアが六人に増えて。その絆も固い。ふふっ……まぁ僕としてはその方が面白いから良いんだけどさ」
ジョギはその言葉を最後にバーから姿を消す事になる。同時刻。昼間のはなみちタウンに転移したスラッシューと彼女が連れたチョッキリーヌはとあるラーメン屋の屋台にやってきていた。
「スラッシュー……何するんだい……」
「あなたここ最近弱りきってまともにご飯食べてないでしょ。……今日くらいは私が出すからまずはあなた自身が元気になりなさい」
それから二人はラーメンを注文し、出てきたタイミングで早速啜り始める。
「……アンタ、何でここを……」
「……知ったのはだいぶ前だけど、偶然近くを通ったのよ。それであなたとカッティーがここでラーメンを食べてる場面を見て」
「ッ!!」
それはカッティーがチョッキリ団を離脱してしまう前の事。お腹が空いて仕事ができなかったカッティーと共にチョッキリーヌはこのラーメン屋の屋台に足を運んでいたのだ。
「……その時はあなたにそんな一面がある事を知らなかった。だから、ザックリーを蔑ろにしていた時は余計に許せなかったのよ。部下を思いやる気持ちはちゃんとあるのに……」
「私もあの時は焦ってたんだよ。カッティーがいなくなって……これ以上失敗したらアンタに追い抜かれるんじゃないのかって……」
「だったらあなたが出れば良かったのに……そうすれば……」
スラッシューはチョッキリーヌと隣り合わせで座ると話を進めていく。ただ、やはりザックリーの酷使してしまった頃の話をすると二人の空気感はどうしても冷え込んでしまう。
「正直、ザックリーが離れたのは私のせいだというのは痛い程よくわかってる。……だからバッサリーナの事は大事にしたかった……なのに」
「……そうね。私もあなたがバッサリーナを大事にしようとした事ぐらいちゃんとわかってるわ」
チョッキリーヌは酷く後悔したような声色を見せるとスラッシューも優しい方の話し方を見せてチョッキリーヌに付き合った。するとチョッキリーヌが指摘する。
「……そういやアンタ、ここ最近二重人格と思えるくらいに冷酷な時と優しい時でだいぶ雰囲気が違うけど……何かあったのかい?」
スラッシューは近くに置いてあった水を少しだけ口に含むと少しだけ言いづらいのか考える。
「……別に。優しい方は取り繕ってるだけよ。元々私は冷酷な性格の方が素。だからあなたがザックリーを使い捨てた時にあそこまでキツく当たったの」
「本当にそうなのかい?……私はむしろ……取り繕いと素が逆に見える時があるけど……」
スラッシューはチョッキリーヌの言葉にもう一度黙り込む。やはり彼女の中でも色々と違和感があるらしい。それは何だか胸にポッカリと穴が空いてしまったような。大切な何かを忘れてしまったような感覚だった。
「……はぁ、そうね……。少し前からずっと感じてるこの胸の違和感。冷酷な自分を見せてる時に私はどこか自分が自分で無いようにも感じてしまうの。けど、それが当たり前だと思うから私はそのまま冷酷な自分でいる」
「………」
チョッキリーヌはそう言われて思わず無言になるとそのまま静寂が流れていく。そして、スラッシューは少しだけ正面の斜め上をボーッと見つめるとふと呟いた。
「チョッキリーヌ」
「……何だい?」
「あなたは私が過去から来たって言ったら……信じられる?」
「は?……何だいそれ……。信じるも何も、そんな事できるのかい?」
それからスラッシューは財布と思われる物を出すと一万円札をそこから抜いて彼女の前に見せる。
「……これ、少し前に使われてた一万円と同じじゃないのかい?」
そこにあったのは谷沢諭吉と呼ばれる偉人の顔が描かれた一万円札を見せる。今の一万円札は大沢栄一と呼ばれる偉人の顔が描かれており、それはほんの数年前に変わったばかり。そのためそこまで珍しい物では無い。
「……よく見て。こっちが最近まで使われてた一万円札の方よ」
チョッキリーヌがスラッシューから見比べ用と言わんばかりの同じ谷沢諭吉の一万円札を見せる。
「確かによく見るとデザインが少し違うような……」
「そう、違うの。……これが使われてたのは約40年程前。今はそこから二回くらい変わったみたいだからもうこっちが使われる場面は殆ど無い」
スラッシューは説明を終えたので不要となったお札をしまう。そして、彼女は改めて呟いた。
「私は何故かこれを最初から持ってた。もう当時の記憶は無いけど、少なくとも私は過去の存在なんだと思う」
「……そうなんだね」
「……意外ね、あなたなら何かしら言ってくると思ったけど」
「別に……アンタならそういう事もあるのかもしれない。そう思っただけよ」
「……そう」
チョッキリーヌはスラッシューからの話を聞き、スラッシューの言葉を信じているかのような答えを話す。チョッキリーヌとしては今のスラッシューの話には色々と妙な説得力があったらしく。一応信じてはくれたようだ。
そして、それから二人は更に語り合ったが大きく揉める事も無く。そのため色々と雑談をしながら二人だけの時間を過ごすのだが……それはここでは割愛するとしよう。
また次回もお楽しみに。