キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュアのリハーサル終了後。さっそく一同はトットの案内で今回のライブに招待された他のアイドル達を観に行く事にした。
最初に移動した先はかなり小さなライブ会場であった。そこにいたのはアイドルの衣装を着たアリ達のグループである。
「まずはこちら、世界最小のアイドルグループ……“アンティアンズ”!」
「アリさんにもアイドルグループとかあったんだね……」
会場はかなり小さいためか、観客達がライブを観るには上から覗き込む必要がある。そのため一度に観れても数人が限界だろう。ただ、その可愛らしさにウインクはキュンとしたようで……。
「ふぁああ……小さくて可愛い!」
「ふーむ、俺の彼女ながらウインクの反応も見てて可愛すぎる……」
「何だよレイ。彼女自慢か?」
「それ以外の理由いる?」
「それもそうだな……」
レイが彼女であるウインクの可愛い顔に満足した目線を向ける中、次の場所へ。続けて案内されたのは機械アイドルのブースである。
「続けてロボットアイドル、“メカニカルハーツ”。なんともシャープネスな魅力に満ち溢れておりますでしょう?」
するとロボット特有の素早い動きや逆立ちしつつ首だけずっと前を向いたまま首から下の体を高速回転させる事によるブレイクダンスも見せつけた。
「なるほど、頭だけを固定しながらそれ以外を高速回転させるっていうのはロボットだからこそできる芸当だなこれ」
「私もあのダンス、いつかできるようになりたいです!」
「いや、キュンキュン。流石にロボットみたいなダンスは人間にはできないからな?」
ロボットなので他のアイドルグループと比べると表情や感情表現がある程度固定化されてしまうのは痛い所だが、それを補って余りあるロボットだからこそできるダンスという点で魅力を獲得している所だろう。
更に場所が変わって今度は岩場のステージ。ここは獣人のアイドルグループのエリアになるのだが……。
「こちらはアニマルアイドル“サファリア”の皆さんです!」
「今度は動物のアイドルグループだね!早速話を……」
「待ってくださいお姉様、少し様子が……」
ズキューンは前の二つのアイドルグループとはあまり話ができなかったのもあって彼女達と話をしようとしたが、キッスがそれを止める。その理由は何故かグループのメンバー同士が半分ずつくらいで向かい合って立っていたからである。
「やっぱりこの振り付け、ダサいわよ!」
「はぁ?なんですって!?そう言うそっちこそ……」
「み、皆……仲良くしようよ〜」
丁度グループのメンバー同士が振り付けやポジション等の調整が上手く行っておらず。絶賛対立中であった。そのためソウルビート達はすぐに出る事ができずに様子を見る事に。
「あなた達、おやめなさい。今は対立している場合ではなくってよ。違うかしら?」
『わぁ……』
そこに現れたのは一人だけ他のメンバーよりも身長が一回り大きく、更に容姿の面でも金髪で大人っぽい美しさを兼ね備えた“サファリア”のリーダー的存在。彼女こそがこのチームのセンターを務めるゴリラの獣人であった。
『はい、お姉様!』
「お姉様……。あの人は私にとってのお姉様と似たような存在なのかしら」
「なんか凄い!」
「……というか、一人だけ声やそこから出てくる雰囲気に格の差を感じるなぁ」
「ソウルビート、ちょっと今の発言はメタいですよ?」
キュンキュンが苦笑いを浮かべる中で一同はサファリアのメンバーがゴリラのお姉さんセンターを中心に纏まっていく様子を見届けて別の場所に移動する事にした。
そして、今度はお化け屋敷のような雰囲気を醸し出すライブ会場に到着。そこでは会場の雰囲気通りと言えば良いのだろうか。……ゾンビ達によるアイドルグループ。そしてグループ名はそのまま……。
「そしてこちらは……“ゾンビアイドル”のライブ会場です」
「えっ!?や、やっぱりここ……お化けのアイドルがやる会場じゃ……」
「アイドル、お化けが苦手だからなぁ……」
「で、で、でもアイドルやってるなら何とかギリギリ……」
アイドルはゾンビアイドル達相手にお化けが苦手な事も相まってビビり散らかしていた。そして、そのアイドルのセンターと思われるショートツインテールのゾンビの子がアイドルプリキュア達を見つけると嬉しそうな顔つきになる。
「わ〜!そこの子達、美味しそう!」
「……美味し……えっ!?」
アイドルがそんな事を言われてギョッとすると同時に周囲にいたファン達の視線も一斉にアイドルプリキュア達の方に向く。
「あ……あ……し、失礼しましたぁ!」
アイドルはゾンビアイドルどころか周囲の客からの視線を浴びて恐怖心に駆られると慌ててその場から逃げるように撤収。その際にウインク、キュンキュン、キッスも恐怖を感じていたが、ソウルビート、ズキューン、レイ、田中、トット辺りは平気そうな感じである。そして、アイドルプリキュア達のメンバーがいなくなった後に声をかけたゾンビアイドルの子が少しだけ勿体なさそうな顔つきになった。
「そんなすぐ行かなくても良いのに……美味しそうだったしもっと仲良くなれたよ〜」
「ほら、多分だけど食べられるって思ったんじゃない?」
「あっ、そっかぁ……えへへ」
ちなみに、誤解が無いように言っておくと今のゾンビアイドルが言った“美味しい”という単語。これをソウルビート達の言葉に置き換えると可愛いの比喩表現らしい。だからこそ声をかけた少女は少し残念そうにしたのだが。
そんな余談はさておき、一同はアイアイ島の美しい海が一望できる砂浜にて。ソウルビート達はそこに逃げ込むようにやってくるとアイドル達恐怖を抱いたメンバー四人と田中が疲れたように息を整えていた。
「あ〜びっくりした……。でも本当に色んなアイドルがいるんだね!」
「うーん。でもこんなに沢山の人が集まるフェスって、開催するのは凄く大変そう」
「ふふっ、ご心配には及びません。この島の海はあらゆる海と繋がっています。ですから浜辺には昔から色々な物が流れ着くのです」
トットからの説明を聞いてソウルビート達は驚いたような顔つきになるのと同時に確かにこれなら10年に一度のアイドルフェスを開催できる事は可能だろうと考える。
もしかすると招待状を送ったのもこの海がありとあらゆる海と繋がっている事に起因するのかもしれない。それからトットはこれまでに何が流れ着いたのか幾つか例を挙げて説明する。
「マジか、カセットテープに昔の沈没した船……。あと動物の肉球の形をした何かの木の実に……青く輝く宝石。本当に何でも来るんだな」
「ええ。色々な場所の色々な物。稀に動物や人までも。場所や時間すら超えて訪れるそれらを……この島は受け入れてきましたので」
「場所や……時間……」
ソウルビートが静かに呟くとウインクもトットから話されたスケールの大きな話に反応する。
「時間を超えて……。凄いですね」
「ええ。……サンゴ礁は数千年の時をかけて作られます。共に生きる私達サンゴの精も……皆気長でのんきに暮らしています。全ては女神アマス様のご加護のおかげです」
「女神……」
「アマス様?」
トットの説明の中でまた気になる存在が語られた。それは島全体に加護を与えると言われた女神。アマスについてである。
「あちらちおわす、このアイアイ島の守り神たるサンゴ礁の女神様です!」
トットが指し示す先。それはアイアイ島の中央部にある山の頂上に存在する巫女のような女性の石像であった。
「大きい……」
「そりゃあ神様だからスケールもその分デカいって事だろうけど……」
一同は女神アマスの姿に少しの間見惚れる事になる。それはさておき、時間が経ってこの日の夕方。場所を移動したソウルビート達は他のアイドル達を見る時間を終えてプリキュアから変身解除。夕日が海の向こうに沈んでいく光景を島の高台から見ていた。
「わぁ……!キラッキランラン〜♪」
「プリ〜!」
「メロ〜!」
「宝石みたいです!」
夕焼けの中で沈んでいく太陽は美しく。影人達はその光景を楽しんでいるとうたが思わず脳裏に浮かんだ歌を歌詞が無いながらに歌い始めた。
「ラララ〜♪ラララ〜♪ラララ〜ララ〜ララ〜♪ラララ〜ラララ〜♪ララ〜ララ〜♪ラララ〜ラララ〜ラララ〜♪」
「素敵な旋律」
「プリ〜!」
「咲良さん、よく思いついたよな」
「えへへ……。なんかこの景色を見てたらふわ〜っと歌いたくなっちゃって」
どうやらうたも何となく歌いたくなった曲らしい。そんなうたに彼女らしいという視線を向ける影人達。するとうたは何かに気がつく。それは、先程ライブのステージ裏でも見かけた少女の姿であった。
「……はっ!」
「うた、どうしたプリ?」
「えっと、女の子が……あれ?」
うたが改めてその場所を見やるとそこに少女の姿が無くなっており、キョロキョロと見渡すと割と近くの坂道を登っていく彼女の姿が見えた。
「ッ!待って!!」
「プリ?」
うたは慌ててその場から駆け出すと幽霊のような不思議な少女を追いかけていく。
「えっ?ちょっと、うた先輩!?」
「ひとまず追うぞ。トットさんもすみません!」
「え、ええ」
そして、そんな彼女を見たこころが慌てる中で影人は冷静に走って行ってしまったうたやそんな彼女の後を追ったプリルンを更に後から追いかける形で移動を開始。
それから暫くうた、プリルンを先頭に一同は頂上へと登っていく。その間に日がすっかり暮れてしまうと夜空が出始める。
そして、謎の少女を追いかけたうたと彼女に着いて行ったプリルンの二人は山の頂上へと到着するが、周りを見渡してもそこには誰もおらず。少女の事を見失ってしまった。
「あれ……いない」
「うたが見たっていう子、いないプリ?」
「うーん、おかしいなぁ」
うたが首を傾げているとそこに影人達も追いつく形で到着。いきなり駆け出したうたへと話しかけた。
「うた先輩!どうしたんですか?」
「いきなり走り出すから何かと……」
「メロ!?あれを見るのメロ!」
ななが一人息を整えているとメロロンは何かに気がついて指を指す。その先にあったのは先程下から見上げていた巨大な石像……女神アマスの像だった。
「遠くから見ててもデカいと思ったけど……近くに行くとここまでのサイズ感があるのか」
「これが、女神アマス様……」
そこには巨人と言えるくらいに巨大な石像としてのアマスがおり、その姿は正にこの島の守護神として天へと祈りを捧げているようにも見えた。
「アマス様の足元にあるのは……何かの絵か?」
「これ、何の絵メロ?」
影人とメロロンがアマスの足元に如何にも昔に作られた実際に起きた出来事を描いたような絵が存在していた。ただ、その絵は時間の経過と共に風化してしまったのか……。中心部を重点的にその一部が欠けてしまっている。
「一番大事な所が欠けちゃってますねこれ」
「変な絵メロ」
「あはは、それはこの島の1000年前の出来事を描いた壁画なんです」
トットが言った事実。この壁画自体が1000年前の出来事が元になっているとなると当然長い時間が経過しているために経年劣化の影響をモロに受けても仕方ない。むしろよく保っていた方だろう。
「1000年前……」
「1000年って……」
「凄く昔メロ……」
「そうですか?」
「ん?」
「あれ?」
再びこのタイミングでトットの1000年という言葉に対してそこまで大きな反応を見せなかった事に影人やななは首を傾げる。それからななは続けて質問した。
「どんな出来事があったんですか?」
「1000年前……この島を大きな厄災が襲い、島の住人諸共滅びそうになった事があるそうです。しかし、女神に仕えた“伝説の巫女”の歌と踊りから力を得て……女神様は自分が石像になってしまうのも顧みず。全てを投げうって島を救ってくださったのですよ」
「石像にって……」
「という事は、この像は後から女神様を模して作ったとかじゃ無くて本当に女神様ご本人……という事になるな」
何にせよアマスが自らが石像になる程に全力を使った事で島は滅亡の危機から救われた。そんな島の英雄的存在に力を与えたのが“伝説の巫女”である。
「伝説の巫女……なんかアイドルみたいですね!」
「でしょ?この伝説の巫女に倣い、女神様に歌と踊りを奉納するお祭り……それがフェスの始まりなのです!女神様と巫女様の関係は、正にファンとアイドルそのものと言えますからね!」
女神アマスは伝説の巫女の歌と踊りを活力にした……つまり、アマスが伝説の巫女を推した事で二人の関係は巫女をアイドル。アマスがファンだという事が言える。
「つまり巫女様は女神様の推しって事ですね!」
「その通りです!」
トットはどこからか出したキラキライトを手にするとそれでこころをビシッと指し示す。
「ファンは推しがいるから頑張れる。島が救われたのは両方の力が合わさった結果なのですよ」
「「おお!」」
「プリ〜!」
「……そんなので良いのメロ?」
アイドルとファン。そんな関係の巫女と女神の二人が協力して島が救われた結果だという事にうた達が納得する中でメロロンは一人呆れたような声を上げていた。
「まぁ、別に良いじゃん。島の人は巫女様と女神様がアイドルとファンの関係になってくれた事を喜んでるんだからさ」
「むしろ、その関係ができてなければこの島はとっくに滅んでたわけだし……」
過去に伝説の巫女と女神によって島が救われた事で今、こうして影人達はライブをする事ができる。そう考えると影人達もその二人に感謝しても良いくらいだ。
「伝説の巫女……どんな人だったんだろう?」
「……あれ?海が……」
うたが伝説の巫女への想いを馳せる中、ななが何かに気がつくとそれにつられて影人達の視線は島を取り囲む海の方に移った。そこには青いはずの海が何故か暗い闇の色に染まり始めていく。
「あの黒いのはまさか……ですが、あり得ません!」
「何か知ってるんですか?」
トットは何かを知ってる様子であり、彼が困惑しているとその闇がアイアイ島にある陸地にまで到達。海の中から黒い体をしたクラゲのような怪物が多数飛び出してくる。
「ヤミ〜!」
「ヤミクラゲ!?」
そして、トットがその怪物……ヤミクラゲを見た瞬間ゾッとしたような顔を浮かべる。
「ヤミクラゲ?」
「生命のエネルギーを食い尽くし、全部石にしてしまうんです!」
「嘘だろ?ヤバすぎるだろそれ!」
ヤミクラゲはこのアイアイ島を一周ぐるりと取り囲む海に発生。まずは海の中に存在するサンゴや魚等を石に変えつつ進むと次々と島に上陸。そのまま街の中へと進軍しつつ島の中にいるありとあらゆる生物から生命エネルギーを吸い取り始めた。
「女神様の力でずっと島は守られていたはずなのに……何故……」
何にせよ街で被害が出始めてしまった以上は見過ごすなんてできない。すぐに影人達はヤミクラゲへと対応する事に決めた。
「皆、行こう!」
「うん!」
「はい!」
「プリ!」
「メロ!」
「良し!」
こうして、六人はヤミクラゲの集団によって被害が出始めた街とその人々を救うためにプリキュアへと変身する事になる。
また次回もお楽しみに。