キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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飛ばされた先での少女との出会い

いきなり虹のゲートに吸い込まれたアイドルプリキュアの六人。そして、影人は気絶していたのか目を閉じていた。

 

「く……うっ……」

 

影人が目を覚ますとうつ伏せ状態から起き上がる。すると見える景色が空に近く。広々とした海が見渡せるために自分の位置が割と高い場所にいると自覚する。

 

「……あれ?何でこんなに視界が開けてるんだ?」

 

ただ、自分が高台にいるにしては周りに何も無く。影人がキョロキョロと周りを見渡していると視線は自然と自分の足元へ。そこには眼下にうっそうとした森が広がっていた。……そう、自分の今いる場所の遥か下の方に森が広がっていたのである。厳密には、今自分がいるのは何故かピンク色の木の枝の上だったのだ。

 

「はぁ!?ちょっ、何でこんな所にいるんだ……ッ、そうだ!他の皆は……」

 

影人は自分の変身が何故か解けている事、こんな木の上にいきなり放り出された事、知らない場所に移動していた事。色々とツッコミたい気持ちをどうにか抑えて自分達が転移する前まで周囲にいた他の五人を探す。

 

「近くにいてくれると良いけど……ッ!咲良さん!メロロン!」

 

影人は近くの枝で同じく気絶しているうたとメロロンを発見。このままだと二人が気を失った状態のまま落ちてしまうかもしれないという事で影人は声をかける。

 

「咲良さん、メロロン!起きろ!このままじゃヤバい!早く!」

 

影人はどうにか二人の元に行きたかったが、今影人がいるのはかなりの高さのある木の枝の上の方。下手に振動を与えてしまうと枝が折れたり、振動がキッカケで二人の体が滑り落ちる危険がある。

 

メロロンは最悪飛べるので反応が間に合えば助かるだろうが、うたはそんな事できないので落ちたら最低でも大怪我は確定。そのため影人はどうにかして二人を声だけで起こそうとする。

 

「頼む二人共、起きてくれ!このままだと本当に大怪我するから!」

 

「メロ……何だか騒がしいのメロ……」

 

そんな時、メロロンが影人の声の大きさに目がゆっくりと開くとフラフラと浮かび上がる。

 

「メロロン!良かった……」

 

「影人、メロロンを起こしたのは影人メロ?」

 

「ああ。色々と理解が追いついていないかもだが、まずは咲良さんを起こす。このままじゃ彼女が落下死するかもしれない」

 

「メロ?そんなに不味い状況メ……ロ?」

 

メロロンが未だに寝ぼけ眼で影人の言葉を聞いていたが、メロロンが下の方を見て状況を理解。眠気が一瞬にして吹き飛ぶ。

 

「メロ!?何でこんな所にいるのメロ!?」

 

「状況の整理は後でする。だから早く咲良さんを!」

 

「メロ、任せるのメロ!」

 

メロロンであれば浮かべるので枝を伝わなくとも近くの枝に倒れているうたを直接起こしに行ける。

 

「うた!うた!起きるメロ!」

 

メロロンがうたへと近くで起きるように促す。するとうたの目が僅かに開くとメロロンの姿を見る。しかし、彼女らしいと言えば良いのか……。

 

「むにゃ……あと5分……」

 

「ダメメロ!落ちるメロ!」

 

うたはいつもの朝に弱いという寝ぼけ癖を発揮。もう一回寝ようとしてしまう。そんなうたを見た影人は唖然としてしまう。状況を知らないとは言えこのまま寝てたらいつかは落下する。そして自分がそれを助けに行くのは厳しい。

 

メロロンもこのままでは不味いのはわかっているので二度寝をしないように声を更に強くする。

 

「え〜?何言ってるのメロロン……。こんな木の枝から落ちるわけ……へ?」

 

うたは寝ぼけたような声を上げていたが、彼女も自分が木の枝にいる事とその遥か下に森が広がっているのを自覚。頭が真っ白になると慌て始めた。

 

「うえっ?ええーっ!?」

 

「やっと俺達の置かれてる状況を理解したか……」

 

影人はうたが自分達の置かれているヤバい状況にやっと気がついてくれたと言わんばかりの顔をすると頭に手を置く。その間にもうたはいつものリアクションの大きさを如何なく発揮。

 

「うわーっ!!な、な、な、何で!?っていうかここどこ!?皆は?ヤミクラゲは?」

 

「わかんないのメロ!メロロンも、そこにいる影人も気がついたらここにいたメロ」

 

「そんな……って、影人君もいたんだ!」

 

「気がつくのが遅いんだよ……」

 

うたは自分一人だけじゃ無く、影人やメロロンがいた事に安堵したような顔になる。ただ、それでもこの危機的状況をどうにかしないといけないのは間違い無い。

 

「どうにか降りれる方法……あ、咲良さん。プリキュアになるためのブローチ、あるか?」

 

影人は自分がプリキュアに変身するためのアイテムであるソウルリンクライトを持っている事を確認。そして、うたの方にアイドルハートブローチがあるか確かめる。

 

「っと……良かった。ちゃんとある!」

 

「良し。俺達二人はプリキュアに変身して降りるぞ。メロロンは変身無しでも降りられる」

 

「オッケー、まかせ……ん?」

 

影人の示した策でプリキュア化して木から降りようと考える二人。するとうたと彼女の前にいたメロロンの上に大きな影がかかった。

 

「鳥だ!おっきい……」

 

「ここで鳥?嫌な予感が……」

 

影人が二人の上にいる鳥を見ると彼の脳裏にある光景が浮かび上がる。それはかつて、メロロンが初めてはなみちタウンに訪れた時の物だった。

 

「まさか、この前と同じ事には……」

 

「メロ?」

 

その瞬間だった。影人の脳裏に浮かんだあの光景通り、メロロンの頭をガシッと鳥の脚が掴んでしまう。鳥はそのまま問答無用でメロロンを連れ去ろうとした。

 

「メロ〜!?」

 

「グエ〜!」

 

「おいおい嘘だろ!?」

 

影人は一番起きて欲しくない事が起きてしまったと慌てる中、メロロンはどうにかして脱出しようとする。

 

「メロ!メロ!メロ!」

 

「メロロン!って、うわぁああっ!?」

 

「お前もかい!?」

 

メロロンはどうにか脱出を図るが、頭を掴まれているせいで上手く行かない。更にうたもメロロンを助けようと手を伸ばす。しかし、こちらもその影響でバランスを崩すと木から落下してしまう。影人は立て続けに起きた出来事のせいで反応が遅れてしまう。

 

「うわああーっ!?」

 

「くっ、プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ソウルリンク!」

 

それでもどうにか助けるために変身して飛び出すが、反応が遅れた分一歩届かない。このままうたは無惨に地面に激突してしまう……そんな時だった。

 

「たあっ!」

 

「えっ!?」

 

いきなり下の方に広がる森の中の木から一つの影が飛び出すとそれがうたを受け止める。ソウルビートはいきなり飛び出してきた存在に驚いたような顔を浮かべた。

 

「うっ……あ、あれ……」

 

そしてうたは地面に激突すると思って目を閉じたは良いものの、中々その衝撃と痛みが来ない事に困惑。目を開けるとそこには自分を抱えている少女がいた。

 

「んっ、んっ!」

 

そのまま少女は森の木々を足場にして崖がすぐ近くにある広場のような場所に飛び出し、うたから手を離しつつある場所に放る。

 

「へ?うわーっ!?」

 

うたは問答無用で地面に激突すると思ったが、彼女が落下した先はクッション性の高いシャコ貝が開いたような形状に近い不思議な植物の上だったために特に目立った怪我は無かった。

 

「ッ、ここの植物の特性を理解してる。やっぱりあの子はここに住んでる人か」

 

ソウルビートがうたの隣に降り立って変身解除。そして、鳥に捕まって上空に行ってしまったメロロンの方は先程の少女が助けに動く。

 

「メロ〜!」

 

「ハッ!」

 

少女が投げたのは両端に手頃なサイズの石を括り付けた狩猟道具であるボーラのような物である。そして、それが飛び去ろうとする鳥の元に行くとその体をグルグル巻きにして拘束。ただ、翼ごと拘束された影響でメロロンを捕まえたまま鳥は落下を開始。また、鳥は捕まってしまった事に恐怖を感じたのか目を回してしまう。

 

「メロ〜!」

 

「メロロン!」

 

「しまった、変身解くんじゃなかった!」

 

影人は変身解除してしまった事を悔やむが、もう遅い。このままでは鳥ごと纏めて海に落ちる。そんな時に少女はいきなり髪を触手のように伸ばし始めた。

 

「ったく……」

 

「ッ、あれは……」

 

影人達がその光景に驚く間に長く伸びる触手と化した少女の髪は落下してしまう鳥を絡め取り、同時にメロロンを助け出した。

 

「セーフ……!」

 

「ホッ……」

 

「メロ〜」

 

それから影人がメロロンを鳥の脚から外す。するとうたが自分達を助けてくれた少女へと声をかける。

 

「ありがとう!お陰で助かったよ!」

 

「俺からも二人を助けてくれてありがとう」

 

「……あれ?」

 

そんな時だった。うたは何かに気がつく。目の前にいた少女は先程フェスのライブ会場等で見かけた少女にそっくりだったのだ。ただし、その時の少女と比べると髪はかなり短いショートヘア。加えて瞳のハイライトも白の割合が少なく、先程の時に感じた神々しさも消えている。

 

それでもうたからして見ればこの少女は先程出会った子と同じに思えたために話しかける。

 

「あなた、さっきの……」

 

「はぁ?何言ってるのよ。って言うか、枝の上で暴れるとかバッカじゃないの?」

 

「え……」

 

「メロ……」

 

しかし、残念ながら少女からして見ればうたとは初対面なのか……素っ気なく冷たい対応で返されてしまった。

 

「あと、何でそっちの方はあの場所から降りられたの?」

 

「ぎ、ギクッ!?」

 

また、少女は何故かこの場所に来られた影人を見て怪しむ。うたはプリキュアの事がバレたかもしれないと硬直するが、影人は至って冷静だった。

 

「俺か?実は俺も普段から鍛えててある程度なら運動には自信があるんだ。君が森にある木から木に飛び移ったみたいにしたんだよ」

 

「ふーん……。まぁ、良いわ。偶にそういう動きができる人がいるのは何となくわかるし。私だって実際にやったわけだからね」

 

影人はプリキュアの事は話さずに上手い事誤魔化した。鍛えているのは朝にこころとランニングしているため本当だし、木から木に飛び移ったのもプリキュア化してから同じ事をしている。そのためある程度信憑性があると取ってもらえたのか、少女も納得してくれた。

 

「それで、この鳥はどうするの?」

 

「は?そんなの逃すに決まってるじゃん」

 

「いや、俺達はこの島に来たばかりでここの当たり前を知らないんだよ」

 

「あっそ。それなら仕方ないわね」

 

それから鳥の方は少女が話した通り、ボーラによる拘束を解いて逃す事に。その事にうたは疑問を抱くと影人が説明する。

 

「どうして逃すの?」

 

「ここの人達は鳥をあまり食べないのかも。それに、もしそうだとしたら下手に殺して生態系を崩すわけにはいかないしな」

 

「なるほど……」

 

何にせよ、メロロンの救出に成功した影人達。鳥は解放された事で飛び去っていく。それを見届けてから早速うたがお礼を言おうとすると先に少女が手を出す。

 

「グエーッ!」

 

「はい」

 

「改めてありがとう!お陰で助か……」

 

それを握手と受け取ったうたは彼女の手を両手で握る。しかし、少女が期待していたのは握手では無かったようで。慌ててその手を振り払うと離れた。

 

「違うわよ!」

 

「え?」

 

「感謝は形で返して!」

 

少女はジト目をすると三人を見つめる。どうやらこの島では感謝は言葉では無く形で示すのがルールらしい。

 

「形?」

 

「ふん!」.

 

「影人君、メロロン。何か持ってる?」

 

「何も無いメロ」

 

「悪いが俺も何も持って無い」

 

残念ながら三人共この場所へと移動した際に他人に譲れるような物は全て無くなってしまったらしい。手元にあるのは最低限の衣服と腕に付けたブレスレット。そしてアイドルプリキュアへと変身するためのアイテムのみである。

 

「あ?」

 

「あっ……ごめんね。今、何も持ってなくて……」

 

「助けてもらったのに本当に済まない。俺達、ここに来た時に他人に譲っても大丈夫な物が全部紛失したみたいで……」

 

「いや、私。アンタの事は助けてないからアンタからは無理してまで貰わなくても良い」

 

そう言って少女は影人からのお礼は要らないと拒否。この辺りは彼女のポリシーの問題なので影人はこれ以上言及しないようにした。

 

「それで、そっちの二人は今の話の間に何か思いついた?」

 

「えっ、えっと……あっ。そうだ!」

 

うたは話を戻されて慌てるが、その直後に何かを思いついた様子でメロロンへと内緒話で話しかける。

 

「メロロン、こしょこしょ……」

 

「メロッ!?」

 

「お願い、どうにかしてメロロンと二人分のお礼にするから」

 

「仕方ないのメロ……」

 

うたからそうせがまれては仕方ないと言わんばかりの顔つきをするメロロン。それにもしここでうたに乗らないと別途でお礼を要求されるリスクがあったのでメロロンは乗らざるを得なかった。

 

「それではお礼です。受け取ってください!」

 

するとうたとメロロンは少女の前に並ぶ。ただ、うたが前に立ったのでメロロンは隠れて見えなくなった。

 

「なんて不思議な出会いだろ〜♪助けてもらったよ♪感謝〜♪」

 

「メ〜ロ〜♪」

 

それはうたが得意な歌である。これならメロロンも合いの手として参加できるし、二人分のお礼にできる自信があった。うたが揺れるのに合わせてメロロンも動き、一体感を出す。そして二人が合いの手のフレーズまで見せる。しかし、少女からの目線は残念ながら微妙だった。それはまるで嫌いな物を見るような感じで……。

 

「……あなた、アイドル?」

 

「あ、うん!私、アイドルプリキュアだよ!」

 

「うんうん、アイドルプリキュア……って!」

 

うたは少女から問われて思わず自分がアイドルプリキュアだと暴露。影人は最初こそ頷いていたが、そんなうたに唖然とする。

 

「言っちゃダメなのメロ!影人が上手く誤魔化したのに!」

 

「メロロンこそ俺が誤魔化した事をバラすなよ!?」

 

そしてそんなうたへとメロロンがツッコミを入れるが、そのツッコミには先程の影人の誤魔化しの件も入ってたために影人が更にツッコミを重ねる。

 

「はぁ……何を見せられてるのかしら。それと私、アイドル嫌いなの」

 

「え〜!何で!?」

 

「どうだって良いでしょ?」

 

「う〜ん……」

 

そして、少女からまさかのアイドル嫌い宣言が入るとうたはそれ以外に返せる物が無いため落ち込んでしまう。少女はそんなうたを見ると流石に申し訳無かったのか、素っ気ないながらも妥協案を出した。

 

「もう、しょうがないわね。良いわ、他の方法でそのうち返してもらうから」

 

「わかった」

 

「ごめんな、満足させられる物を見せられなくて」

 

「いや、だから何でアンタが謝るのよ」

 

少女は何故かうたの保護者か何かと思えるような言動を見せる影人へと唖然としつつもツッコミを入れた。するとうたが少女へと詰め寄る。

 

「でもいつか!私の歌であなたをキラッキランランに出来たら嬉しいな〜!」

 

そう言って少女へと太陽のような笑顔を見せるうたに少女は思わず恥ずかしさで顔を赤くする。

 

「は?何よ、キラッキランラン……?意味わかんない」

 

「あはは……こうなった咲良さんは止められないからな」

 

少女がまた慌てて後ろに下がると影人達三人は少し遅めの自己紹介を始める。

 

「私、咲良うた!こっちは……」

 

「メロロンメロ」

 

「俺は黒霧影人、よろしく。それで君は?」

 

「ッ、テラ……よ」

 

それに対して少女も……テラもそっぽを向きつつ自己紹介で返す。アイアイ島にいた影人達が転移した先で出会った少女、テラ。そんな彼女との出会いはこうして行われる事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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