キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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テラと過ごす一時

テラとの出会いがあってから少し後。影人達の四人の姿は森の中にあった。そこで彼等は会話しつつある場所を目指す。

 

「それで、テラは俺達以外とは誰とも会ってないんだな」

 

「そうよ。見つけたのはアンタ達だけ。他の人間なんて知らないわ」

 

「そうか……他の三人もこの島に来てると良いんだけど」

 

テラは影人達と一緒に転移したはずのなな、こころ、プリルンを知らない様子であった。恐らく、三人はこの森のある別の地点に転移したと見るのが良いだろう。

 

「わぁ〜っ!この海って!」

 

「ここ、やっぱりアイアイ島メロ?」

 

「決まってるじゃない」

 

「だから、俺達はここの事を知らないんだから知ってて当たり前風に言われても……」

 

「まぁまぁ影人君、落ち着こ?」

 

「いつもはしゃいでるお前にだけは言われたくねぇよ!?」

 

テラにまるで自分達がこの場所を知っているかのような口振りをされて影人が指摘を入れ、それをうたが宥めようとしたために影人が更に苛立ったように声を上げる。

 

テラが一人銛の刃の切れ味を確認していると影人達三人はその近くで何かに気がつく。

 

「それにしても何か違うっていうか……」

 

「街もステージもおっきな女神像も無いメロ」

 

「そうなんだよね。まるで土地の開発度が昔に戻ったような感覚だよな」

 

影人達が幾つもあったライブ会場、数多くの観客や島の住民が集まって賑わっていた街。そして山頂にあった巨大な女神像さえもこのアイアイ島には無くなっている。

 

「はぁ、女神本人がいるのに像とかあるわけ無いでしょ」

 

「だよね〜……って」

 

「「女神様いるの(メロ)!?」」

 

テラが呆れたように女神がいると宣言。そして、その情報を聞いた二人は慌てて食いついた。

 

「当たり前じゃない」

 

「あー……女神様が生きてるって事は……うん。ここの事情は何となくわかったわ」

 

影人も今の情報から自分達がどういう状況に置かれたのかを何となく理解。そんな彼を置いておくようにうたやメロロンは本物の女神について問いかける。

 

「それで、テラは女神様に会った事あるのメロ?」

 

「もし会った事あるなら紹介して!生の女神様と会いたい!」

 

「会った事?そんな事無いわよ。私は会いたく無いし、そもそも会えやしないわ」

 

テラの会う事すらできない宣言に影人達は疑問符を浮かべる。するとテラは今女神様がどういう状態なのかを伝える事に。

 

「会えない……?」

 

「何でメロ?」

 

「……やる気を無くして引き籠ってるの」

 

女神がやる気を無くしている。それは相当に由々しい事態だろう。テラの口調だとその前は人前に姿を現して女神としてやるべき事をやっていた可能性が高い。そう考えると今がどれだけ異常なのか予想できる。

 

「引き籠り……それは大変だろうな」

 

「そうよ。あなたの言う通り、島は今大変な事になってるわ」

 

「大変って何が?」

 

「……ヤミクラゲが大量発生してるの。おかげで私も……」

 

テラは何かを言いかけた様子だったが、途中で話を区切ってしまう。これ以上は言いづらい事情があるのかもしれない。

 

「そうか、苦労してるんだな」

 

「ええ」

 

「それにしてもヤミクラゲって……」

 

影人がテラの気持ちに同情するとうたやメロロンは二人の後ろで顔を見合わせてヤミクラゲの事を思い出す。

 

「ねぇメロロン、ヤミクラゲって……」

 

「メロ。きっとメロロン達が戦っていたアイツらの事メロ」

 

そんな事を話しているとうたのお腹が“グーッ”と鳴り響く。そして、その気の抜けた音にメロロンはジト目を向けた。

 

「呑気なお腹メロ」

 

「えへへ……」

 

「咲良さん……」

 

「ホント、しょうがないわね」

 

影人やテラもうたのお腹の音はバッチリ聞こえていたらしく、二人からも唖然としたような目を向けられる。そして、テラはそのタイミングで手に魚を獲るために使う銛を持っていた。

 

「それを使うって事は……」

 

「そうよ。海に行くの」

 

「えっ、海に?ヤミクラゲは大丈夫なの?」

 

海に行くと聞いてうたはテラの身を心配するが、生身であるテラはヤミクラゲからもし仮に生命エネルギーを吸われたら石化してしまうだろう。

 

「心配しなくても、この辺りはまだ大丈夫よ。それに、歌じゃお腹は膨れないでしょ」

 

「面白そう!私も……」

 

「ダメ」

 

「え〜っ!?」

 

どうやらこの辺りにまではヤミクラゲが侵攻していないらしい。するとうたがテラと一緒に魚を獲りたいと言うが、アッサリと拒否されてしまう。

 

「ヤミクラゲが出なくても、海は危険がいっぱいなの」

 

「折角面白い事ができるチャンスなのに、勿体無いよ!」

 

「……咲良さん、テラの言う通り待っていよう」

 

「影人君まで……」

 

うたは今年の夏はアイドルプリキュアとしての活動をしていた影響であまり海等で泳げておらず。折角夏休みの延長戦みたいな感覚で海に囲まれた島に来ているのに泳げない事に勿体無さそうな顔を浮かべる。だが、影人の目は至って真面目だった。

 

「テラの言ってる事は何も間違って無い。それに、今の俺達は海で泳ぐための準備とかを全くしていないからな。テラはこの辺の海を熟知しているけど、俺達にそんな知識は無い。そんな状況下で勝手に海に入って事故を起こす方がリスクだ」

 

その瞬間、影人の脳裏にフラッシュバックするのは少し前に調べていた40年前の二人組の伝説級のアイドルユニットが相次いで失踪したあの事件である。

 

そして、その二人が失踪した際も海による水難事故の可能性が濃厚だった。そう考えると海の危険を口にするテラの気持ちも理解できる。

 

「わかった、テラちゃん。気をつけてね」

 

「ッ……わかってるわよ」

 

うたは二人に止められては流石に不味いと思ったのか、一緒に行くのを断念。その代わりにテラへと声をかける。そのテラは心配されたのが恥ずかしいのか、少しだけ顔を赤くすると早速海に飛び込める崖の方に移動した。

 

「んっ!」

 

テラは服が海を泳ぐ上で邪魔にならないようにある程度袖やお腹の辺りをまくる事で体に衣服を極力密着させる。そして、その状況を作ってから海へと飛び込んだ。

 

「わぁ……カッコ良い〜!」

 

「それにしても、この辺の海は澄んでるよな。俺達の世界の海よりも凄い透き通ってる」

 

影人がふと海を見るとゴミが一切浮かんでおらず。浜辺には自然由来の物しか存在していない。海は綺麗だから自分の体を浸からせて立つとしっかり脚の先端まで見えるだろう。

 

「あ〜あ、でも折角なら私もやってみたかったなぁ……」

 

「咲良さん……」

 

「わかってるって……。影人君もテラちゃんも私の事を心配してくれてるんでしょ?そのくらい私にだってわかるよ……」

 

それからうたが海の中に顔を突っ込むと透明度が高いためにテラが泳いでいる場所まである程度見通す事ができた。尚、本来であれば海の中に顔を突っ込んで目を開ける際はゴーグルの着用が奨励される。

 

何しろ海水に含まれる塩分を取り込みすぎると目が使い物にならなくなるリスクがあるからだ。

 

「あ……」

 

それはさておき、うたはテラの漁を海に顔を突っ込む事で見学。そこでは長く伸ばす事ができる髪を利用して海藻に見せかける事で魚を誘い込み、十分に近づいた魚を手にした銛で一瞬にして仕留めていた。

 

「ふぅ……」

 

テラが海から顔を出すと海水を振り払うような仕草を見せる。その姿にうたは思わず見惚れてしまった。それから彼女が影人達の元に近づくとうたが話しかける。

 

「ッ……凄い……凄っごく綺麗!」

 

「そうね、この海はまだ……」

 

「違う違う!綺麗なのはテラちゃんだよ!凄っごくキラッキランラン!」

 

「ええっ!?」

 

うたがテラの漁の際の手際の良さと海から顔を見せた際の凛々しさからか、彼女を褒める。更にうたは影人にも促した。

 

「影人君もそう思うでしょ?」

 

「ああ、海から顔を出す時とか特にそう思える」

 

それによって褒められたテラは恥ずかしさから顔を赤くするとそっぽを向きつつ謙遜した。

 

「べ、別に普通よ。こんなの……島の者なら誰でもできるわ」

 

「あ、もしかして島には他にも誰かいるの?」

 

「ええ、村が幾つかあるわよ。私は色々あって一人でいるけど」

 

どうやら、島に住んでいるのはテラ一人だけじゃ無いらしい。これならなな達三人が他の村人達の所にいる可能性も出てきただろう。

 

「友達を捜しに後で行ってみても良い?」

 

「……好きにすれば?」

 

「わあっ!」

 

それから影人達三人は引き潮の際にできる浅い海水の溜まり場のような場所に移動する。

 

「咲良さん、ここに来たって事はもしかして」

 

「うん!折角海に来たんだよ?ここだったら溺れる心配も無いし、小さめだけど魚もいるよ!」

 

うたが指差す先には小さな魚が溜まり場で泳いでおり、うたはこの魚を掴み取りしようというわけだ。

 

「まぁ、そのくらいなら……」

 

ただ、影人の脳裏にはある胸騒ぎがあった。この浅瀬は足首が浸かる程度の海水しか無い。ここまでの浅瀬で人が溺れるなんて事にはならないだろう。それでも得体の知れない嫌な感覚が彼の中にあったのだ。

 

「よ〜し、私も頑張るぞ〜!」

 

「相変わらずの元気さメロ。影人はやらなくても良いのメロ?」

 

「俺は良いよ。ちょっと考えたい事もあるし」

 

「え〜?折角なら影人君もやれば良いのに」

 

メロロンは影人の肩に乗った状態でいつもの調子ではしゃぐうたに呆れた目線を向けており、影人の方は考え事をするためにこの件には不参加だった。

 

「やあ〜っ!」

 

そう言ってうたは声を上げつつ魚を捕まえようとするが、アッサリと回避されてしまう。

 

「あれ、何でだろ?やあっ!やあっ!」

 

うたは何度か捕まえようとするが、全くもって魚は捕まらない。メロロンはそんなうたを見てまたもやジト目を向けていた。

 

「ヘタっぴメロ……」

 

「あはは、うたと声がちょっと似ているあのアニメキャラとは大違いだな」

 

「それって誰なのメロ?」

 

メロロンが問いかけると影人はそのアニメキャラを脳内に浮かべる。そしてとんでもない事を言い出した。

 

「確かその子は金髪の不良娘・ナチュラルボーンエロリストとか言われてたな」

 

「どんなアニメ観てるのメロ!?」

 

「ああ。勘違いしないで欲しいけど、実際にエロい事やったわけじゃ無いというか。その子は完全なる風評被害なんだけどな?あとついでに言うとメロロンに声が似てる奴も出てきてたな」

 

「そうなのメロ?」

 

「えっと、確かその子は配信者をやってて、そこで湧いてくるアンチと争う度にファンが増えるっていう配信の中でも外でも弄られるキャラだったな」

 

「メロロン似の声の子はどんなキャラ性をしてるのメロ!?」

 

メロロンは自分やうたと声が似ているキャラに対して声を上げていると丁度そのタイミングでテラが獲った魚を持ってやってくる。

 

「持ってきたわよ」

 

「ああ、ありが……へ?」

 

影人はテラが持ってきた魚の量が凄まじい事に唖然とする。そこには魚を持って移動する用のそこそこ大きめな網の中に大小合わせて15匹くらいは入っていたのだ。

 

「テラ、もうそんなに捕まえてきたのか」

 

「そうよ。ただ、四人分捕まえないといけないし……結構かかったけど」

 

「いやいや、十分早いって」

 

ひとまずうたはまだかかりそうな感じだったので影人とテラで魚の調理を担当する事になり、テラの家とも呼べるような場所でご飯の支度をする事になった。

 

「ここがテラが活動している家か」

 

「ええ。とは言っても自然にある物を利用しているだけに過ぎないけど」

 

そこは人が数人入ってもかなりスペースが残るくらいの大きめなシャコ貝のような形であり、しかも貝の下側が砂の中に埋まっているという中々特殊な構造をしていた。

 

「それはそうと、あなた……こういうのは初めてに見えるのに手慣れてるわね」

 

「別に。料理に関してはある程度はできるってだけだし、大した事じゃ無いよ」

 

テラは影人が料理に関して手伝ってくれた事に多少感謝の気持ちを感じるものの、彼女自身が少し素っ気ないのもあってその気持ちを伝えることは無い。それから暫くして、薪を使って火を起こしつつ魚を焼き終えると四人で早速採れたての魚を食べる事になった。

 

「ん〜、美味しい!キラッキランラン〜!」

 

「骨があるから喉に刺さらないようにね。その、歌えなくなるわよ」

 

「うん!」

 

うたが幸せそうに食べるのを見てテラは注意の言葉をかける。そして、影人とメロロンも魚を食していた。

 

「海が綺麗だからか魚を食べるのに抵抗感が無くていいな」

 

「身が柔らかくて美味しいのメロ」

 

尚、一番体が小さいメロロンが一番大きな魚を食べたのは余談である。プリルンと言い、本当にあの小さな体でよく食べられるものだ。

 

「ごちそうさまでした……」

 

「あれ、咲良さん。さっきよりなんか元気なくなってないか?」

 

「うん……何だかお腹いっぱいになって、なんか……」

 

その瞬間、うたがその場に倒れ込んでしまうと苦しそうな顔を浮かべる。それを見て影人達は慌てた。

 

「うた!?」

 

「咲良さん!?」

 

テラはそんなうたの足首を見るとそこには布が巻かれているのを見つける。そして、うたへと問いかけた。

 

「まさか、怪我したの?」

 

「あはは。凄く派手な色のお魚がいて、ちょっと……掠っただけだから……」

 

うたが思い出したのは先程の魚獲りの時、浅い海の溜まり場の中に丁度紛れ込んでいた透明感のある体に様々な体色を持つ一匹の魚棘に触れてしまった事である。

 

「七色毒カサゴだ。棘に触ったな」

 

「メロ!?」

 

「カサゴ……ッ。さっき感じた違和感の正体はこれか……」

 

海の危険……それは溺れる事による水難事故のみでは無い。その中を泳ぐ魚の中にも当然危険な個体は存在する。ましてや、アイアイ島の生態系に関して影人達はあまり知らない。そのため、テラ無しだとどの魚が安全でどの魚が危険かの判別ができないのである。

 

「大丈夫、ちょっと寝ればすぐ……」

 

「うた!しっかりするメロ〜!」

 

「まったく……世話の焼ける!」

 

メロロンが慌てているとテラがこの毒に対処できる治療をするために必要な物を取りに海へと走り出した。そして、彼女が戻ってくる間に影人達が気を失ったうたへの対応をする。

 

「影人、何か対処法はわからないのメロ?」

 

「普通のカサゴの毒なら真水で洗い流してから患部……つまり傷の部分をお湯に浸すのが正解なんだけど……」

 

ただ、やはりここでアイアイ島固有の生物である七色毒カサゴの毒に対してこれと同じやり方が通用するかわからない。そう考えるとやはり……。

 

「多分治療法を知ってるテラを待つのが最善だ。俺達が下手に治療しようとして悪化させるよりは数倍マシ。だから……今は俺達にできる事をやる。メロロン、タオルを水で濡らして絞ってきてくれるか?俺は咲良さんの体勢をできるだけ安全な物に変える」

 

「わかったのメロ」

 

それから影人とメロロンはテラが戻ってくるまでの間にできる事を行なっていく。

 

「メロ……うた……」

 

「ん!」

 

すると、約十分程後にテラがその手にとある海藻を持ってきた。そして、それをメロロンが受け取る。

 

「メロ?」

 

「テラ、これがあのカサゴの毒を取るのに有効なのか?」

 

「そうよ。これを傷口に」

 

「わかったメロ!」

 

恐らく、海藻の中に含まれている成分がカサゴの毒を中和して無害にするのに役立つのだろう。そして、メロロンが傷口に海藻を当てている間にテラはその場に座り込む。そんな彼女に影人が話しかけた。

 

「ホントにもう!」

 

「テラ、ありがとう」

 

「別に、あのまま見捨てるなんて後味悪い事をしたく無いだけ!それに……」

 

「それに?」

 

「……ッ、何でも無い!」

 

テラは素っ気ない態度ながらも、うたを見捨てる事はしたく無かったらしく。どうにか彼女の協力を得てうたの治療に取り掛かる事になる。

 

「(ねえたま……なな……こころ……どこにいるのメロ?ここはどこなのメロ?)」

 

そして、メロロンはうたの傷口に海藻を当てて彼女の毒を治療しつつこの場にいない三人の友達の事を考える事になる。




また次回もお楽しみに。
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