キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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女神様と伝説のアイドル

日が沈み、辺りが暗くなった頃。なな、こころ、プリルンは村人達が住む村の方にまで戻ってきていた。そこで先程話した通りにこの島、アイアイ島に流れ着いた伝説のアイドルと女神の関係についての話をする事になった。

 

ただ、先程の男性はやる事があったために話すのは目の前にある鍋で夜ご飯を作っているミドリである。

 

「ミドリさん、あの暗い海にヤミクラゲがいるんですか?」

 

「……えぇ。ヤミクラゲについては知っているのね」

 

「はい」

 

ミドリはこの事からヤミクラゲについての説明は要らないと感じると早速本題であるヤミクラゲがここまで発生している理由について話す事にした。

 

「元々ヤミクラゲは何故かこのアイアイ島の周囲に偶に発生してね。姿を見せては島の人を困らせていたんだけど、それでも女神様とアイドル様が仲良くご一緒されていた頃は決してあんな事にはならなかったんだよね」

 

女神とアイドルが仲良くご一緒されていた頃。それはつまり、今はそれに当てはまっていない事を意味する。

 

「どうしてそうなったんですか?」

 

「島を守るために色々ご苦労様なさってた女神様だけど、アイドル様と出会ってからはその歌と踊りを凄く気に入ってね。生きがいみたいにアイドル様の事を応援するようになって」

 

伝説のアイドルはこのアイアイ島に流れ着いて以降、女神アマスやこの島の住民達のためにライブをするようになった。伝説のアイドルは最初こそ何かを気にしていた様子だったが、それも少しずつ無くなっていった様である。

 

勿論、伝説のアイドルからしてみたら気にしている事が完全に無くなったわけではない。ただ、彼女はプロのアイドル。目の前にいる観客達に見せるパフォーマンスに私情を持ち込んだせいでその質を落とすのは……彼女のプロとしての自覚が嫌ったのだろう。

 

「アイドル様の歌と踊りは女神様の力の源になって。いつしか女神様はその力でこの島を守るようになっていった」

 

伝説のアイドルの事情はさておき。彼女はアマスに頼まれた日は常にライブを行った。その度に島の住民達は伝説のアイドルの魅力の虜となり、ファンとしてその輝きを応援する。

 

ご丁寧にもペンライト代わりに発光するサンゴの枝を使うくらいに女神や島の住民の気持ちを鷲掴みにした伝説のアイドル。彼女の輝きはアイアイ島に来ても十二分に力を発揮したのだ。

 

「稀に出て悪さをしていたヤミクラゲも女神様のお力の前では手も足も出せず。島はとても平和になって」

 

アマスは伝説のアイドルに貰った力を行使する形で島の脅威として度々現れていたヤミクラゲを光の力で浄化。定期的にこの流れを繰り返すだけで島全体は平和な日々が続く事になったのだ。

 

「女神様。それまでは辛い顔をされる時も度々あったのだけど、アイドル様が来て以降は優しく穏やかなお顔をされるようになってねぇ。良い人が流れ着いてくれたって皆も喜んでたんだけどね……」

 

「“喜んでいた”……って、じゃあ今は?」

 

「ん……それがね……」

 

それからミドリが話を続ける中で場面が一度影人達の方に切り替わる。ここでも焚き火を囲む形でテラから似たような話を聞いていた。そして、この三人も伝説のアイドルが他の世界からアイアイ島に来たのだと知る。

 

「えっ!?じゃあ、女神様が推してるアイドルって……この島に流れ着いた他の世界の人なの?」

 

「“推し”?……に関してはよくわからないけど、とにかくそうらしいよ」

 

テラは“推し”という単語に関してよくわからなさそうだったが、それを抜きにしても彼女は影人達が話を理解できたと考えて答える。

 

「そういえば、トットさんが言ってたのメロ」

 

「“場所や時間すら超えて訪れる”……だったな」

 

「時間すら……」

 

やはりアイアイ島の海の特性上、他の世界の人は訪れると考えた方が良さそうだった。影人達が元来た場所のアイアイ島でさえそうなのだから、ここも同じアイアイ島である以上は元いた場所と同じ事ができたって何もおかしな点は無い。

 

「あっ、もしかしてさっきの夢って……」

 

「夢……咲良さんが毒に侵されてた時のか?」

 

うたは先程カサゴの毒でダウンしていた時に夢を見ていた事を思い出すとすかさずテラへと問いかける。

 

「うん。実はその時に夢を見ててね。……ねぇ、テラちゃん」

 

「何よ」

 

「テラちゃんは……どうしてアイドルが嫌いなの?」

 

「……わかんない」

 

うたからの問いに対してテラはわからないという答えで。影人は理由も無くアイドルが嫌いになるはずがないと詰め寄る。

 

「待て待て、テラはさっきの話の流れだとアイドルの事を直接見た事は無いんだよな?」

 

「そうね。直接アイドルと会った事は無いわ」

 

「だったら何でアイドルが嫌いなんだ。直接見てもないのにアイドル嫌いになんて……それは食わず嫌いと何も変わらないぞ」

 

影人はアイドルと直接会った事すら無いのに何故かアイドルを嫌いだと言って目の敵にするような発言をしたテラを咎める。

 

「そんな事言っても嫌いな物は嫌い。……とにかく、アイドルにも女神にも近づいちゃいけないって感じがするのよ」

 

「おいおい……てっきり実際に見た上で嫌いだと思ってたんだけど」

 

「仕方ないのメロ。恐らく一回だけでもちゃんと見てくれる機会があればきっと好きになってくれるのメロ」

 

「うーん……」

 

影人とメロロンが会話をしているとそこではうたが一人何かを考えていた。それを聞いてメロロンが問いかける。

 

「うた、どうしたのメロ?」

 

「えっとね、さっき見た不思議な夢なんだけどね。その夢の中には女神様が出てきて、なんか少しテラちゃんに似てる気がしたから」

 

これに関しては実際に夢の中で見たうたにしかわからない事なので影人達にはわからないのだが、それでも女神の姿がテラに似ているという事は二人の間に何かの関係性を持たせられるのかもしれない。

 

「テラと似ている……例えばどんな所が?」

 

「えっと、髪の色とかその頭からちょこんって生えてる角?サンゴ?首にかけてるアクセサリー。あと顔つきがちょっと……」

 

「意外と似てるのメロ」

 

「はぁ!?あんなのに似てるとかやめてよね!女神もあのアイドルもどっちも無責任だし!」

 

うたに似ている所を幾つもあげられてテラは苛立ったのか声を荒げる。この調子だと女神の事もかなり嫌いらしい。

 

「そこまで言い切っちゃうか……。どうやってアイドルを好きにさせるか……」

 

「待って、テラちゃん。女神様やそのアイドルが無責任ってどういう事?」

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

それからテラは二人が無責任だと思った理由を話す。同時刻、ミドリからの説明を受けたなな達が驚いていた。

 

「アイドル様が行方不明に!?」

 

「ええ。……女神様に歌や踊りを披露していたアイドル様はある日、黙っていきなり姿を消しちまったんだよ」

 

ミドリが言うには島の住民達やアマスの事を湧かせていた伝説のアイドルはを境に黙って島の住民達やアマスの前から姿を消してしまったらしい。それ以降、アマスは伝説のアイドルがいなくなってしまった悲しみのあまりすっかり塞ぎ込んでしまうと人前にすら出てこなくなってしまった。

 

「女神様、沢山探したんだけどずっと見つけられなくて」

 

「“えーん、えーん”って。可哀想なの」

 

アイドルオタクにとって、推しのアイドルが急にいなくなってしまった悲しみや寂しさは計り知れない。引退宣言をした時でさえ惜しむ声が出るのだから急にいなくなってしまえば余計に……である。

 

再度場面が変わり、影人達の方へ。そこでもテラから急にいなくなってしまった伝説のアイドルの話を聞いて三人が悲しそうな顔を浮かべていた。

 

「急にいなくなった伝説のアイドル……か」

 

「推しがいきなり消えたら確かにファンはショックだよね」

 

「それに話を聞いた感じだと女神様はそのアイドル様から力を得ていたんだからな。力の源を丸ごと取られたような物か」

 

「だから、さっきから気になってたんだけどその“推し”って何よ?」

 

「“推し”っていうのはね……」

 

またまた場面が変わってなな達の方。そこではこころが“推し”の概念についてミドリへと話をしていた。

 

「応援しているアイドルの事です」

 

「“推し”かい……なるほど」

 

こころからの説明を受けたミドリは納得したような顔になる。“推し”の概念を聞いてアマスが何故そこまで伝説のアイドルに没頭したのかを理解できたらしい。

 

「女神様はね、その“推し”が消えて本当に気落ちなさって。私らの前にも姿を見せなくなっちまったのさ」

 

「推しがいなくなるプリ?」

 

「プリルン、例えばプリルンの前から黙ってうた先輩が……キュアアイドルがいなくなったと考えてみてください」

 

「……プリ……プリィイイッ!絶対に嫌プリ!」

 

プリルンは最初、女神の気持ちがわからなかった。ただ、こころからプリルンにとって大好きなキュアアイドルがいきなりいなくなった時の事を想像させられて彼女はそれを考えると悲しさのあまり声を上げる。

 

「ファンにとって推しは生きる活力その物になる場合もありますからね……。そう考えると、女神様が失った物は大きいですよ……」

 

「姿を見せなくなったという事はヤミクラゲも……」

 

ななの指摘する通り、稀に出て悪さをするだけに留まっていたヤミクラゲも天敵となるアマスからの光が無ければその暴走に歯止めが効かなくなってしまう。だからここ最近は前と比べて活動が活発化してきたと言えるのだ。

 

そして、また場面が移って影人達の方へ。テラはこの話を終えると伝説のアイドルや女神アマスへの憤りの気持ちを口にする。

 

「二人共、自分の仕事を放棄してホント、無責任ったらないわ。ずっとこのままなら島はいずれ……」

 

「確かにそうだろうな……」

 

テラはこのままの状況が続くのであれば、確実に島はヤミクラゲに侵略される。ここに来る前のアイアイ島でも無数に増殖したヤミクラゲを相手に影人達は苦戦した。それと同じ事がこの島でも起きてしまう。

 

その話から食事を終えた影人達は浜辺の方へと移動。そしてこのタイミングでうたやメロロンも今自分達が置かれている状況を認識する。

 

「……もしかして今メロロン達がいるのって……」

 

「大昔のアイアイ島……かも」

 

「メロロンもそう思ったのメロ!影人は気がついてたのメロ?」

 

「テラからこの島がアイアイ島って知らされた時には何となくな」

 

影人は前々からこの状況に関しては何となく察していた。この事を言わなかった理由として、転移した時は大昔に行ったばかりでうた達の気持ちの整理が付いていないだろうという影人の配慮があったのだ。

 

「でもちょっと変だと思うのメロ。確かお話だと伝説のアイドルはちゃんと女神様に力をあげていたメロ」

 

「うん、だから多分だけど……」

 

「俺達がこの時代に呼ばれたのは恐らく……」

 

「行方不明になっちゃった伝説のアイドルを捜すため!」

 

影人達がミラクルアイアイブレスによって過去に飛ばされてしまった理由。それは伝説のアイドルがいなくなって危機に陥ったこの島を救うためにいなくなった伝説のアイドルを見つけるという事だとうたは考えた。

 

「メロ!」

 

「ななちゃん達もきっと同じ事考えてるよ!」

 

「ああ、俺達がここにいるのならきっと他の三人も島のどこかにはいるはず。もしかすると他の場所で住民に保護されてる可能性が高い」

 

トットの話が確かなら様々な場所から流れ着いた人や動物を島は受け入れてきたという事で。これが1000年前でも同じなら確実に他の三人も島の住民達にその存在を受け入れてもらってるだろう。

 

そのなな達三人も影人達と同じ。村のある場所で影人達と同じ結論に辿り着いていた。

 

「私達で伝説のアイドルを捜しましょう!カゲ先輩達もきっと同じ事をしているはずです!」

 

「プリ!きっとそうプリ!」

 

「うん、それが未来のためにどう繋がるかはわからないけど……今はとにかくできる事を!」

 

影人達となな達。場所は違えど同じアイアイ島の夜空の下。考える事も一致した彼女達の目指す場所も同じ。そうなれば、最後には六人で合流する事ができるはずだ。

 

「(……ただ、一個引っかかるのが……何で俺達が転移させられたのかなついてだ。多分、ただ伝説のアイドルを捜すだけなら俺達プリキュアが来る必要性は無い)」

 

勿論ヤミクラゲが危険だからと言えばそれで話は片付くかもしれない。ただ、アマスの力が使える状況……つまり伝説のアイドルを見つけ出す事ができればアマスの光で全てが戻せるわけだ。

 

「(……待てよ。確か1000年前の伝説では島の厄災を退けるために女神アマス様が石化する程に全力を出したんだよな?それをしないといけないくらいヤバい状況。……まさか、これをどうにかするためとか言わないよな?)」

 

影人はトットが言っている厄災の正体が現代で大量増殖したような無数のヤミクラゲの事を指しているのだと過程。そうなるとこれから自分達はこの時代でもう一度そのヤミクラゲを相手しながら伝説のアイドルを捜さないといけなくなる。

 

「(この事を咲良さん達には……言わないほうが良いか。まだ今の状況が1000年前の厄災の直前だと確定したわけじゃ無い)」

 

影人はこの考えをうた達の前では言わない事にした。今のはあくまで影人が一人で勝手に考えた妄想の話。しかもこれから捜しに行くという希望的な状況でこんな事を言えば士気の低下だって招くだろう。

 

「(それに、そんな事言ったら伝説のアイドルはもうヤミクラゲにやられて石化。その時からずっと動けない可能性だって。……ずっと動けない?待てよ、伝説のアイドルはいきなりいなくなったって聞いたけど……彼女はこのアイアイ島に流れ着いてからどのくらいの時間を島の住民達のために捧げたんだ?)」

 

「影人?どうしたのメロ?」

 

「いや、何でもない。ちょっと想像が行き過ぎただけだ」

 

影人はメロロンに悩んでいる姿を見られたのか心配される。それを聞いて彼は余計な心配をかけさせないように答えを返した。ただ、同時に影人の脳裏にはある怖い想像が浮かんでしまう。

 

「(……頼むからこの予想は外れててくれよ……)」

 

影人は伝説のアイドルがまだ動けてアマスの元に戻れる事をただ祈るしかできなかった。そうでなければ……影人達でアマスを元気にするしか方法が無くなる。そういうある意味無理ゲーな状況ができてしまうのだから。




また次回もお楽しみに。
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